石原発言への緊急抗議行動報告

　４月９日、東京都の石原慎太郎都知事が陸上自衛隊第１師団の記念行事に出席し「東京では不法入国した多くの三国人、外国人が凶悪な犯罪を繰り返している。大きな災害が起きた時には、騒じょう事件すら想定されれ」との発言について、APFSの外国籍メンバーからも、強い憤りの声があがっています。

　特に、４月12日に行った「説明」会見では、「（三国人とは）不法に入国し、不法に駐留している、滞在している外国人のことを言った。現にその犯罪はばっこしている。私はその人間を対象としただけだ」と「不法」滞在外国人が犯罪の温床であるかのような言葉を堂々と繰り返しました。日本の首都、東京の顔である東京都知事がこういった発言をすること自体に、憤りを通りこして、哀しみさえ覚えます。

APFSでは、こうした一連の発言に対して、抗議の意を示すために、緊急行動として、13日午後１時半より、APFSの外国籍メンバー（バングラデシュ、イラン、インド、ビルマ）約30名が都庁１階ホールにて座り込み行動を行いました。拡声器等でのアピール等は一切行わず、無言で座り込むことによって、都知事発言への抗議の意を表しました。２時30分からは代表者５名が秘書室課長の宮坂氏と、約30分間、面会し、抗議文を手渡しました。その間、ほかのメンバーは都庁７階の知事室前に場所を移し、座り込み行動を続けました。宮坂課長から特にコメントはありませんでしたが、抗議文を受け取ったという受領印を宮坂課長自身が押し、数日中に石原都知事に必ず手渡す約束を取り付けました。

▲都庁１階ホールにての座り込み

特別寄稿

石　原　都　知　事　発　言

エスノセントリックな排外主義を煽る石原発言に抗議する

　　渡戸　一郎（明星大学教員）

　４月９日の石原都知事の発言は、日本に非正規に入国または滞在する外国人すべてを潜在的な凶悪犯であると決めつけたという意味で、きわめて悪質なフレーム・アップである。この発言は、APFSが昨年から支援している在留特別許可取得一斉行動の足下を掬いかねない危険性を孕んでいる。最大の問題は、一人のポピュリスト型の政治家の発言が、近年増加する凶悪犯罪の原因を非正規外国人に帰すことによって、大衆の喝采を得ていることである。しかし、現実には、増大する凶悪犯罪の大半は日本人によるものである。また、外国人による凶悪犯罪も増加しているが、それには日本で荒稼ぎして帰国する短期滞在者によるものも含まれている。

　非正規外国人の多くはむしろ、日本人が忌避する３K職場などで真面目に働き、この10数年の間に日本で一定の生活基盤を築いてきた。今年２月にはこうした人びとの内、日本人との家族的結びつきのない16人に法務大臣から在留特別許可が認められたばかりであり、在留特別許可を求めてカム・アウトする人びとが続いている。４月30日の銀座街・大パレードはマスコミの注目を集めたが、石原発言が煽った世論の風向きを変えるには、まだまだ多くの努力を必要とするだろう。

　一方、2005年以降、日本の労働力人口が減少することが予測されている。この状況を踏まえて一部の財界人や政治家から、最近、移民労働者を大幅に導入する必要性が強調されるようになった。法務省も技能実習制度の適用範囲を「農業」や「水産加工食品製造業」の分野で拡大した。今後は「介護」分野などでの適用も検討されていく可能性がある。しかし、この技能実習制度は実質的な低賃金労働の確保であり、多くの問題を含んでいる。新たな移民労働者を導入する前に、日本社会に適応し、日本経済を底辺から支えてきた超過滞在者の正規化を積極的に検討すべきである。

APFS　ニュースレター「This Land is」

2000年５月号より転載