2005年7月30日、板橋区グリーンホール601号室にて「緊急シンポジウム 日本の入管政策を問う −長期滞在者7名はなぜ在留特別許可を認められなかったのか−」が開催されました。約70名の参加をえたこのシンポの主催は「在留特別許可を求める長期滞在外国人を支援する会」です。
午後2時過ぎ、APFS白取芳樹運営委員の司会でシンポは始まりました。まずはAPFS吉成勝男代表の開会挨拶です。
吉成さんは「昨年9月21日に在留特別許可を求めて出頭した長期滞在者は、結果的に許可が認められず即座に国費でバングラデシュに送還されてしまいました。私たち『支援する会』はその後、色々な話あいをした結果、このまま運動を終息させてはいけない、何か手を打たなければならないとの結論に達し、本日の緊急集会を行うことにしました。在留特別許可、そして日本の入管政策そのものが大きな曲がり角にきている今日、私たち市民団体の側がどのような役割を果たすことができるのか、今日はさまざまな意見を聞かせていただき考えていきたいと思います」とシンポジウムの位置づけを説明しました。
基調講演は名城大学教授の近藤敦さんにより「恣意的に退去強制されない権利としての在留特別許可」というテーマで行われました。
近藤さんはさまざまな事例を豊富にあげながら、在留特別許可を法務大臣の「恩恵」としてのみ説明する行政府や裁判所の姿勢は改められるべきであり、非正規滞在者にとって「権利」としての側面を持った基準作りが必要である旨を強く主張されました。その場合、子どもがいる家族は5年間、長期滞在者は10年間の継続居住という目安を作り、許可の条件とすることで在留特別許可の恣意的な運用を防ぐべきであるというのが近藤さんの結論です。確かに恣意的な退去強制を防ぐためにも在留特別許可の基準を法文化し、透明性や公平性を確保するのは喫緊の課題といえるでしょう。
◇ 裁判を提起する権利すら奪われた…。 国家損害賠償請求を求める!!
この後、津川勤APFS副代表から、7名が国家損害賠償請求訴訟を提起する決意を固めたとの発表がありました。
7名は、現在バングラデシュの地で途方にくれながらも、限りない憤怒と悲しみを抱いています。十数年にわたり暮らしてきた「日本」という国は7名にどんな仕打ちをしたのか。
7名はアパートの解約や荷物の整理、預・貯金の解約、友人・知人への挨拶など一切を許されず入管収容施設から成田空港まで手錠をはめられ連行されたのです。
「在留特別許可が認められなかったのは残念だが仕方ない」と7名は言います。
「でもなぜアパートの整理すら、させてくれないのですか。銀行へ行き自分のお金をおろすことを許してくれないのですか。何より……私たちが愛する日本の人たちへの最後の挨拶をなぜ認めてくれなかったのでしょうか?」
彼らは、政治的思惑から東京入管が行った退去強制令書発布後の即時執行(国費送還)を人間として許せない行為であると糾弾しています。当然です。通常であればこのような場合、「出国準備」のため一定期間、収容施設から出て、身の回りの整理が出来るはずなのです。
そんな当たり前の事も許されず、退去強制令書発布処分取消しの裁判に訴える権利さえも奪われたとして、7名は国に対し毅然として損害賠償を求める決心を固めました
この7名の国賠訴訟の決意を知り、会場は割れるような拍手と歓声に揺らぎました。
◇ 支援は続く。あの時も、今も。
休憩をはさみ、長期滞在者7名のバングラデシュにおける現況を伝えるビデオが上映されました。これは7名の出頭時から国費送還まで一貫してビデオ取材を行ってきたフリージャーナリストの石川寛子さん撮影になるものです。7名の姿を追った石川さんの映像はこれまでもテレビ朝日「報道ステーション」などで広く社会に問題提起をしてきました。そして石川さんは7名送還後に自らバングラデシュにおもむき、彼らにインタビューをしてきたのです。
「日本は素晴らしい国だけれど、入管が私たちにしたことは許せない」「入管の人たちは酷い。金正日さんより悪い」口をそろえて入管−法務省を批判する7名の映像は私たちの心をうちました。
続いてパネルディスカッションに移ります。コーディネーターは「支援する会」の代表でもある明星大学教授、渡戸一郎さんです。
パネリストは鈴木江理子さん(一橋大学大学院)、児玉晃一さん(弁護士)、山口智之APFS事務局次長、そして基調報告を行った近藤敦さんです。鈴木さんは、日本の外国人労働者受け入れ政策が現在転換期にあると指摘。また今回7名に対して行われた「国費送還」がいかに例外的であったか等を豊富な資料を使用し説明しました。
在留特別許可取得一斉行動弁護団の一員である児玉さんは、APFSが1999年9月から3次にわたり行なった在特集団出頭行動の経過を説明しつつ7名の即時退去強制執行を厳しく非難し、いまだ日本の入管政策は決して人道的とはいえないこと、こうした現実にはきちんと批判をすべきであると言いきりました。
7名の長期滞在者による在特取得出頭行動を一貫して先頭に立ち続け支援してきた山口さんは、「今回は今ひとつ運動を拡げきれなかった」と反省しつつも「7名に対する即時国費送還は、私たちの運動に対する入管側の報復的措置」と断言し、その上でこのまま運動が終えることはなく7名の闘いは国賠という形で連綿として続くのであり、今までに増して7名を支援しよう、と力強く提起しました。
近藤敦さんからの各パネリストへの意見や質問の後、会場から声があがりました。
「今回の7名の無常な国費送還は、決してまれなことではありません。これまで私が携ってきたケースでもこのようなことはありました」
外国人支援を長年続けて来られた弁護士の方からの言葉でした。
◇ 国賠訴訟に勝利しよう!
日本の入管行政はあまりに時代遅れであり、いまだに前近代的な側面が多々見受けられます。それゆえ、長期滞在者が決意した国賠訴訟は日本の外国人政策に一石を投じるものになると確信します。今回7名が受けたような仕打ちは二度とあってはなりません。そのためにも国賠訴訟で国の非を認めさせるのが必要である、というのが7名と「支援する会」の結論です。
とはいえ、この裁判は決して簡単なものではありません。原告7名からの聞き取りや委任状の作成など、まずは弁護士をバングラデシュへ派遣することから始めなければなりません。この弁護士渡航費を含め、訴訟には多額の費用がかかります。
どうか国倍訴訟の支援をお願いいたします。心ある皆さま、どうかご寄付をお寄せください。7名と「支援する会」はこの訴訟に必ず勝利する所存です。
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