国際調整会議2日目 報告

 国際調整会議二日目、3月9日にはセッション(5)と、国際調整会議がおこなわれた。

 セッションでは、フォーカス・オン・ザ・グローバルサウスの代表であるウォールデン・ベロー氏による問題提起がおこなわれた。

 ベロー氏はまず、そのはじまりから90年代にかけて、サミットが果たしてきた役割について論じた。サミットは70年代前半に、二つの目的をもってはじまった。ひとつは世界経済をマクロに管理するという目的であり、もうひとつは「西側」諸国が「南」の諸国に対抗するという目的である。80年代において、サミットは前者の目的においてはかならずしも成功してこなかったが、後者の目的においては、IMF/世界銀行を用いた構造調整プログラムによって大きな成功をおさめてきた。90年代においては、サミットは企業によるグローバリゼーションを主導する国際的機関として、WTOの設立とアジア通貨危機の発生に大きな役割を果たした。
 このように、サミットが企業によるグローバリゼーションを推進し、「南」の諸国を支配しつづける道具であると市民社会に認識されはじめたのは、2001年のジェノバサミットからである。ジェノバでのサミットへの抗議行動は、大規模で非暴力の市民的不服従の運動となった点で画期的であった。2005年のグレンイーグルズサミットでは、ブレア首相などにより「人間の顔をしたグローバリゼーション」が喧伝され、NGOの主張を吸い上げることによって、エイズや債務、気候変動の問題が取り扱われた。だが、G8はこれらの問題についての約束をことごとく反故にしたため、2007年のハイリゲンダムサミットではふたたび「G8はいらない」という大規模な市民的不服従の運動が湧き起こった。
 とくに昨年のハイリゲンダムサミットでは、気候変動が重要なイッシューとして取り上げられ、今年の洞爺湖サミットでも焦点とされている。だが、そこには経済成長と環境対策が両立可能であるかのように論じられているという大きな問題がある。経済成長と消費の水準を見直さずに、技術的な問題として気候変動に対処するという点においては、サミットは決して妥協しない。これまで気候変動への具体的な対策として語られてきたのは、大規模なダム開発による水力発電や、炭素ガスを地下に貯蔵する技術の開発、原子力発電の推進などである。だが、炭素ガスを地下に貯蔵する技術が可能となるのは40年後とされているし、原子力発電の推進によって気候変動を緩和するためには、世界で毎年20基ずつ原子力発電所を増やしていく必要があるという。
 日本政府は昨年のバリ島会議で温暖化ガス排出制限の数値設定に強力に反対したが、その背景には産業界が気候変動についての政策を支配しているという現実がある。今回のサミットは、ポスト京都議定書の枠組みを作成するという点で非常に重要な機会となる。気候変動についての取り組みを後退させないためにも、今回のサミットは、毎年開かれるひとつのサミットではないことを認識する必要がある。
最後に氏は、今回のサミットは、アジアの社会運動がグレンイーグルズの道を選んでしまうのか、それともジェノバ/ハイリゲンダムの道を選ぶのかという岐路に立っているという意味でも重要であることを主張した。

 戦略会議では、今回のサミット対抗運動を契機に、どのようにアジアの運動のネットワークを強化していくべきなのかという論点を中心に議論がおこなわれた。
とくに海外の運動団体からは、サミット対抗運動は国際的な問題であり、海外の人々も声をあげられるような配慮をしてほしいこと、グローバル・アクションにむけたスローガンをつくってほしいことが要請された。また、日本国内の運動団体が、協力して力を結集すべき時ではないかと提案された。
 ほかにも海外の団体から、気候変動についての議論は、企業ではなく、市民社会が日本政府を巻き込んで動かす必要があり、そのためにはデモや直接行動が必要ではないかと提案された。

国際調整会議一日目のレポート
http://www.jca.apc.org/alt-g8/?q=ja/node/86

日本語で入手できるウォルデン・ベロの書いたもの
「バリ気候変動会議の南北のドラマ」『季刊ピープルズプラン』41号(2008年冬)、ピープルズプラン研究所、現代企画室発売
「【インタビュー】ウォルデン・ベロに聞く——洞爺湖G8を「最後のG8」にしよう◆聞き手:小倉利丸 『季刊ピープルズプラン』40号(2007年秋)、ピープルズプラン研究所、現代企画室発売
『脱グローバル化、新しい世界経済体制の構築へ向けて』、戸田清訳、明石書店、2004年。詳細