G8サミットを問う連絡会「国際調整会議」行われる(08年3月8日)

事務局 山浦康明(日本消費者連盟)

初日3月8日はセッション1から4まで行われた。

(1)第1セッションはG8とは何か、それに対して市民はどのように考えるのかを、事務局の栗原康さんの司会で以下のグループがそれぞれの立場から述べた。

 まずピープルズプラン研究所の小倉利丸さんが「G8で日本政府は何を打ちだそうとしているのか」についてプレゼンテーションを行った。G8の全体的意義について、また今後、閣僚・大臣会合が千葉、東京、新潟、神戸、横浜、青森、大阪、沖縄、京都と続くことなどを説明した後、とくに日本政府の対応に触れた。すなわち日本は地球温暖化・環境問題を主要な議題の一つに取り上げる、としているが、環境問題をてこにして新興国の経済的影響力を削ごうとしており、また、日本政府自らは環境対策と言うそばから「道路特定財源」にこだわり、あいかわらずの環境破壊を続けようとしている、としてその提案のまやかしを明らかにした。

 次に国際協力NGOセンター(JANIC)事務局長の下澤嶽さんが「G8サミットNGOフォーラム」の考え方とその活動についてプレゼンテーションを行った。環境NGOが中心となって、日本で開かれるG8に提案していこうという主張が06年10月ごろから起こり、07年1月には貧困問題、人権問題などに取り組んでいるNGOとともにNGOフォーラムが設立された。参加団体は現在114団体となっており、フォーラム世話人のもとに3つのユニット(環境、貧困、人権)に別れて今年7月に向けて活動している。NGOフォーラムは各国首脳陣、関係団体、官僚などに提言しNGOの主張をG8のコミュニュケに反映させることその後のウオッチングをしていくことを目的としており、現在も外務省担当者との定期的な意見交換会の実施、今後4月にはサミットのシェルパ会合に参加し、そこにNGOリーダーたちの意見を反映させる、4月から7月まで「(七夕の)タンザク・キャンペーン」を行う、7月のG8サミットの直前行動として7月6日から8日まで「オルタナティブサミット」を開くことなどを説明した。

 「G8サミットを問う連絡会」からは山浦が次のように活動目的と特徴、今後の予定をプレゼンテーションした。07年10月から設立準備と活動が始まった当会は、G8会合そのものに疑問を持つ団体、個人が集まって立ち上がった。そして非暴力を旨としてG8の問題点を追及する緩やかなネットワーク組織を作った。現在32の団体、150名を超える個人が賛同し、反軍事、反貧困、経済、農業・食料、ジェンダー、キャンプ、国際連帯などのワーキンググループをつくり7月に向け活動している。賛同している人々のG8会合に対する考え方は、即時ストップを求める意見からG8のあり方を見直すべき、というものまで幅広いが、いずれも現在のG8には多くの問題がある、ということは共通して認識している。またこの連絡会はスポンサーを持たず、参加者の自発性に基づいて活動していることも特徴である。資金的には潤沢ではないが、各自独立して当該関係機関に厳しく対応できる。今後、本日の国際調整会議を経て、3月15日の国内調整会議で他団体との調整をはかり、7月の札幌での行動に向けて各地でワーキンググループを中心に連続した行動が繰り広げられる。ウェブサイトも作成し、その内容も次第に充実してきた。

 次に札幌から駆けつけた越田清和さんがG8サミット市民フォーラム北海道の活動を紹介した。北海道の市民グループなどはG8サミットに対して、地域独自の視点からこれまで問題点を指摘してきた。すなわち広い地域を占める自衛隊基地問題、森林伐採問題があり、また北海道には女性問題、先住民族問題・植民地支配と和解をめぐる問題に取り組むグループもある。G8では議題に取り上げる見込みのないこうした問題を考える上で「市民フォーラム北海道」に集まった人々は、国や自治体が勝手に誘致した「G8は歓迎しない」というスタンスで、6月中旬から7月9日にかけて「G8市民ウイーク」を繰り広げる、と述べた。すなわち6月14日、15日は「フェアートレードフェスティバル」、7月1日からは基地、女性、開発、先住民、森林問題を市民のサミットとして討議する。7月5日にはピースウオークを札幌で繰り広げる。6日〜8日にはオルタナティブサミットを開くと説明した。

 また、木下ちがやさんが「サミット人権監視弁護士ネットワーク」事務局として、どの市民グループにも属さない立ち場から、サミットに関して起きる恐れのある入国拒否や市民の活動に対する弾圧に取り組む準備をしている、と述べた。昨年からすでに始まった外国人を入国の際に監視するUSビジットシステムや3月6日に韓国CAWのメンバーが入国拒否された事例などをはじめ、7月に向けて活動したい、と述べた。

(2)第2セッションは午後1時20分から4時まで行われた。これは「G8サミットーーもう一つの声」と題して海外ゲストの話を聞き、G8の問題点を共有しようとするものだ。司会は山浦が務めた。

 まずG8サミットを問う連絡会がなぜG8を問題にしているのかについて山浦が説明した。G8は非公式の先進国首脳会議にすぎないのにこれまで、経済のグローバリゼーションと、各国の構造改革を押し進めてきた。この非民主的な組織は巨大アグリビジネスを優遇し、世界中の小規模農家の生活基盤を破壊してきた。G8はこれまで企業活動を優先し環境破壊を黙認してきたが、今、地球温暖化問題に対しては根本的な解決にならないばかりか逆に環境破壊を引き起こす原子力発電所建設や新たなマネーゲームとなる排出権取引、京都議定書の全否定といった提案をするしまつである。G8が進めてきた「規制緩和」は公共サービスを民営化し、その結果生きるために必要なサービスさえ受けられない人々が増えている。またG8は軍事化を推し進め、テロ・治安対策では人権侵害を引き起こしている、と。

 次に、午前中の越田さんのスピーチの続きを伺った後、ビア・カンペシーナのインドラ・ルビスさん(インドネシア)がグローバリゼーションに対抗して闘っている農民運動の立場から「なぜ世界の農民はG8を問題にするのか」と題してプレゼンテーションした。インドラさんによれば今、食料生産のイニシアティブはアグリビジネスに握られており、農家は多くの問題を抱えている。農産物生産は国家の農業政策ではなくアグリビジネスの進める貿易システムの元に置かれ、自由貿易の推進により各国の農業政策は制限を受けている。農家にとって重要な種子は農民や先住民、国家の手から奪われ、多国籍企業の支配を受けるようになった。アジア各国では農民は小作農として土地を所有できず、またインドネシア政府が外国から援助を受けても農村問題の解決にはならない。貧困が拡大し気候変動が進行している今、各国の農民は現状の認識を深め共通の戦略を考えよう、と結んだ。

 ジュビリーサウスのマルー・タビオスさん(フィリピン)は「途上国債務問題から見えてくるG8が進める開発の問題点」を指摘した。途上国が負う債務は不当なものが多く途上国政府が国民の意向を聞かずにかってに国際金融機関から受けた融資などによるものが多い。こうした政策を推し進めたのがG8なのである。この融資は化石燃料を燃やす火力発電所や環境破壊をもたらす水力発電所建設などに使われ、気候変動の一要因、立ち退きによる農家からの土地収奪による貧困の増加の原因にもなっている。現在途上国が抱える債務は返済不可能なものとなっており、ジュビリー・サウスとして途上国債務の帳消しを求めている、と述べた。

 グローバリゼーションモニターのメイ・ウオンさん(香港)は中国が現在世界で占めている比重が高まり、次のような新たな問題を引き起こしている、と指摘した。すなわち2001年に中国がWTOに加盟する以前から中国は外国の投資を受け入れ、世界の資本が中国で存在感を示している。日本企業も中国への進出は著しく、例えばパナソニックの電池工場では労働者の健康被害、環境汚染が起きている。また中国政府は国営企業を作りそれを海外進出させ、外国での雇用の促進を進めている。資源の争奪戦でも中国はアフリカなどで大きな力を発揮しており、中国企業の現地の工場では労働者の人権侵害なども指摘されている。G8でもこの問題を取り上げて論ずる必要がある、と述べた。

 民主労総(KCTU)のイ・チャングンさん(韓国)は、「G8が進める労働の不安定化とそれに対抗する労働運動」と題して、G8が世界経済へ大きな影響を及ぼし貿易ルール(WTO/FTA)や知的財産権問題などにおいて、新自由主義政策が推し進められている状況を批判した。そしてWTO交渉が停滞している今、FTA交渉が進められており、日韓FTA交渉はG8をきっかけに再開される恐れもあり、北海道でのNGOの闘いにおいてアジアの民衆運動の連帯を探りたい、と述べた。

 マイグラント・フォーラム・イン・アジアのアイリーン・アバノさん(フィリピン)はアジアの移住労働者の人権問題に取り組んできたことから、G8においてこの問題を取り上げるべきだと強調した。G8は各国に構造調整プログラムを押しつけてきたため、労働者もモノ扱いされ海外での労働を余儀なくされてきた。農民も気候変動でこれまでの農業ができなくなり移住労働者となる例が多い。こうした現実があるにもかかわらず、G8は企業の利益を優先させ人々を海外へ移動し易くする制度を作ってきたのだ。そこでは女性、移住労働者の権利を決して認めない。一方、先進国側においても外国人労働者の受け入れによる国内労働市場への影響を緩和したいといった議論にとどまるきらいがある。G8をきっかけに日本やアジア各国の移住労働者問題に取り組むネットワークを作りたい、と彼女は述べた。

 フォーカス・オンザ・グローバル・サウスのマリールー・マリグさん(フィリピン)はG8で焦点となる「貿易と気候変動問題」に関して、市場原理に基づく解決策が論じられても不十分だ、と批判した。

 最後に山浦が、「今日は、G8で議論される議題とともに取り上げられない重要な問題を各国のゲストから指摘してもらった。7月に豪華な洞爺湖ウンザーホテルで行われるサミットでは、企業の利益を優先するために、決してこのような大切な議論はされることがないだろう。本日の議論をもとにG8の抱える構造的な問題をこれからも追及し、人々の連帯行動を作っていこう」とまとめた。

9日午前中には、フォーカスのウォルデン・ベロが洞爺湖サミットと気候変動の問題を中心にスピーチを行った。(写真はウォルデン・ベロ)