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これでいいのか!? 北朝鮮報道 「北朝鮮報道のあり方」を考える記者会見

北朝鮮と在日について意図的な混同と、
レッテル張りが行われている
                    野村 進(ノンフィクションライター)

 5年ほど前に『コリアン世界の旅』という本を書きまして、その前から在日を含む海外のコリアンの取材を続けてきました。今のメディアの報道のおかしさについて具体的に申し上げます。もうたがが外れてしまったのではないかということを感じた最近の例を2つ挙げます。
 最初は、いしいひさいちさんという漫画家が、週刊誌の連載で描いた漫画のことです。私は個人的にはいしいひさいちさんの漫画が好きで、個人攻撃では決してないと解釈してほしいのですが、どういう漫画かというと、北朝鮮の沿岸で、北朝鮮の艦船のなかで、北朝鮮の軍人同士が話しています。正体不明の不審船がやってきた。司令部に問い合わせたら、あれは日本からの援助物資を内緒で運んできた船なんだよ、というオチなんです。
 それはいいとして、そのなかで「パカ」「パカ野郎」という言葉が3回使われているんです。北朝鮮の軍人同士が「パカ」「パカ野郎」なんて言うわけがない。何でこういう表現を使うのか。いしいひさいちさんは、昭和20年代生まれだと思うのですが、在日1世の方が日本語をうまく発音できずに、朝鮮人、朝鮮人とばかにするなとさんざんあざ笑われた歴史をご存じないのだろうか。あれだけ聡明な方だから、意識的に描かれている気がしたんです。北朝鮮をお笑いにするのは自由ですが、「パカ」とか「パカ野郎」という言葉を使うこと、その嘲笑が在日朝鮮人に向かってしまうということにあまりにも無自覚だと思います。
 もう一つの例は、平沢勝栄さんという国会議員が、在日北朝鮮人という言い方をしていることです。在日北朝鮮人という在日は存在しません。在日を国籍で言うなら、韓国籍と朝鮮籍だけなのです。これは意図的に言っているとしか思えません。北朝鮮の国民と在日朝鮮人を意図的に混同して、それをメッセージとして伝えてしまっているんです。メディアの方も、自分は違うと思っていても、無意識のうちに在日朝鮮人と北朝鮮の国民を混同しているところがあるのではないでしょうか。はっきり申し上げたいのですが、在日と北朝鮮の国民はまったく違います。
 今の在日の9割以上は、今の韓国で生まれて、強制的に連れてこられたか、あるいは、追われるようにして日本に来た人たちとその子孫なんです。北朝鮮の出身者は一割に満たないわけです。しかも一世の方々は、高齢化されて人口が減っていまして、今は2世、3世、4世、5世、6世もいるという話を先日聞きました。日常的には日本語で生活していて、日本文化のなかで生まれ育った人たちです。北朝鮮の国民よりはるかに日本人に近い考え方、感じ方をしています。
 今まで何度か、民族学校の朝鮮人の子どもたちに対する迫害がアピールされましたが、実は在日の9割以上の子どもたちが日本名で、日本の学校に通っています。その子どもたちも多分、相当心苦しい思いをしていると思います。そのこともメディアのなかでどれくらい知られているでしょうか。意図的な混同がなされているということと、レッテル張りで括られているという、二つの大きな問題があると思います。メディアの方々には在日についてもっと勉強していただきたいと思います。

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