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『ACT―市民の政治―』166号(2002年3月25日)

Line Up

  ◆辛口レビュー 今どき稀有な批判的経済学者
              山家悠紀夫さん(神戸大学大学院経済学研究科教授)
  ◆いずみ(編集長コラム)  ◆CATCH UP
  ◆静岡・浜岡原発止めようツアーに参加して
  ◆3・14 異議あり 有事法制!
  ◆〈案内〉3・30シンポ まやかしの外国人研修制度 「研修って、働くこと?」
  ◆水俣病関西訴訟
     国・件の上告取り下げ求め東海道53次行脚
         ―インタビュー・大沢忠夫さん
  ◆ひとときの光(14)  光を求めて歩き続けたい
  ◆Make Green More 緑の政策研究会・結―YUI―レポート
    第4回勉強会報告「グローバリゼーション時代の食料・農業・農村問題」
                        講師:田代洋一(横浜国立大学教授)
  ◆経介☆政子の永田町たちばなし(2)
  ◆法談閑談(8)  予断排除の形骸化
  ◆アイヌ民族「共有財産」訴訟―3・7札幌地裁で不当判決
  ◆市民派議員リレートーク(43) のぐち英一郎(鹿児島市議)
  ◆ECOひいき
  ◆BOOK Review 清水耕介『市民派のための国際政治経済学』
              木野茂・山中由紀『新・水俣まんだら』
  ◆かわたなつみの英国ECO留学日誌(13) フェアトレードブランド
  ◆「ACT基金」にご協力ください
  ◆広告(2・3面) 『QUEST』No18……オルタフォーラムQ
             社会主義理論学会研究集会
             『創』3月号/『「脱社会化」と少年犯罪』……創出版
             『記録』4月号/『帰国子女自らを語る』……潟Aトラス
           

辛口レビュー

今どき稀有な批判的経済学者
 山家 悠紀夫さん
(神戸大学大学院経済学研究科教授)

許せない経済(学)の本末転倒

地域を単位に生活重視の経済にくみかえるべきだ

山家 悠紀夫
やんべ ゆきお
 1940年、愛媛県生まれ。64年、神戸大学経済学部卒業。第一銀行入社。91年、第一勧業銀行総合研究所発足とともに、取締役常務理事、調査本部長。94年、専務理事。2001年4月から、神戸大学大学院経済学研究科教授。97年に刊行した『偽りの危機 本物の危機』(東洋経済新報社)で、当時主張されていた構造改革論を「偽りの危機を煽り、かえって本物の危機を招く」と警鐘を鳴らした。事実、橋本内閣の下で経済危機が到来し、予見が的中した。他に『日本経済 気掛かりな未来』(東洋経済新報社)、近著に『「構造改革」という幻想』(岩波書店)。長年住んでいる国立市をこよなく愛し、再開発という名の破壊に反対する市民運動も闘っている。【文:小寺山康雄】

構造改革の最大の狙い―労働力市場の規制緩和

 小寺山 『「構造改革」という幻想』はタイムリーな本で、小泉内閣の経済政策に対する数少ない批判の書です。今日は、この本の背景にある考え方をお聞きしたい。
 山家 「構造改革」という考え方は、橋本内閣からずっと続いている自民党の主流的考え方で、要するに規制緩和と小さな政府論。規制緩和の最大の狙いは、労働力市場の柔軟化。つまり必要なときに雇って、不要になれば解雇できる自由を企業に与えるということです。マルクスの『資本論』の時代に逆戻りさせるといっても過言でない。
 規制緩和は市民の生活にも多大の弊害をもたらします。『偽りの危機 本物の危機』で書きましたが、食品や医薬品に対する規制を世界(アメリカ)基準並みに緩めることで、私たちの生活の安全性が著しく脅かされています。あるいは建築基準法を緩めて居住環境を悪化させています。
 効率至上主義は労働と生活のすべての領域で人びとの安全と快適を脅かしています。
 小寺山 山家さんが批判されていることは、この国の経済学者や専門家の間では逆に常識とされていることで、そうした意見が多数派です。
 山家 そうです。私はかねがね、この国の経済学者や専門家の言っていることに違和感を抱いてきましたが、近年、違和感は広がる一方です。
 経済(学)とは本来、人びとの生活をよくするためにどうすればよいかを考えるべきなのに、逆になっている。生活を犠牲にしても、景気を良くし企業の競争力を高めるべきだと問題を立てる。本末転倒も甚だしい。
 小寺山 ここ数年、ハーバード大学などアメリカ帰りの学者がマスコミにもてはやされ威張っている(笑)。彼ら彼女らの言っていることは、患者は死んでしまったのに、身体中切り刻みガンをとり払ったと威張るようなものだ。
 山家 我々が学生だった40年ほど前の「あるべき社会」像は、小寺山さんのような社会主義派も無視できないほどいたけれども(笑)、多数派は少なくとも福祉国家=修正資本主義派だった。
 ところが今や修正資本主義どころか、弱肉強食の資本主義であって何が悪い、という居直り派が一番多い(笑)。

社会主義の崩壊が歯止めをなくした

 小寺山 そうした風潮が大手を振って罷り通るようになったのは、ソ連邦解体に始まる社会主義の崩壊が大きい。
 山家 そう。なんといっても社会主義の崩壊が大きい。社会主義者でない私でも、そう思う(笑)。
 社会主義の平等主義が経済をダメにしたと、平等主義への攻撃が堂々とおこなわれるようになった。
 もっと格差を、もっと差別を、もっと貧しい人を痛めつけろと広言しているに等しい小泉さんの支持率が異常に高かったんですからね。
 小寺山 十数年前は実態以上に評価され、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」ともてはやされた。それがバブルがはじけた今ではアメリカに使用人のように扱われ、他方では中国などアジア諸国から追いあげられている。
 なまじっか幻想を抱いていた反動で、国民にフラストレーションがたまっている。小泉はフラストレーションのはけ口を自民党の体質や官僚、不良債権などに向け、「構造改革」というキャッチコピーに巧みにまとめた。
 山家 小泉人気は、1つはこれまでの自民党の大物政治家とくらべてクリーンなイメージがあること。いま1つは銀行や特殊法人などを悪者にし、それを改革することで長引く不況から脱出できるという幻想をつくりあげたこと。
 小泉さんは問題を単純化する能力にすぐれ、悪者を見つけて、それにすべての責任をかぶせるのが非常に上手だ。ヒトラーと似ている。
 小寺山 小泉の「構造改革」は、ナチスのワイマール体制攻撃ほど体系的でもなければスケールも大きくない。また今回の宗男騒動でとたんに政権基盤が揺らぐほど脆弱だ。ただ、ぼくらは小泉的政治に対して思想的・文化的に負けている。負けていることをもっと自覚することが大事だ。

  [以下2面へつづく]→本紙をご参照下さい

[ご案内]                                                               
ACT関西「市民・労働者講座」
 「構造改革」という幻想
  講師:山家悠紀夫
                  詳細はこちら


いずみ

 山家の研究室は六甲山麓に階段状にせりあがる校舎の中でも最上段にある。学生時代なら何でもなかったのにと、息を切らしてたどり着いた。
 「あと2年だから」と、最小限の本しか置いていない殺風景な書棚にあって、『資本論』がやけに目立つのが、何ともうれしい。「お茶を出す設備もなくて」と、『午後の紅茶』のペットボトルを買い置いてくれたのもうれしい。
 ぼくは自治会、山家は新聞会で、部屋は占領軍払い下げのカマボコ型プレハブ兵舎の隣同士だったが、森起佐太のように寝食をともにするほどの間柄だったわけではない。
 ぼくは入学前から自治会室に入りびたり、共産党に入党し、入学を待ちかねて即自治会執行委員になったほどの、当時でも突出した政治的人間だった。授業は体育以外出席しないのが自慢だった。
 対して山家は、銀行に就職したくらいだから、よく勉強したに違いない。ドストエフスキを原書で読もうと思ったくらい文学にも造詣深く、それでいて学生運動も人並み以上に熱心だった。にもかかわらず、共産党はむろん、ぼくらが共産党より人間的で、戦闘的な党に入ったときでも、頑として入らなかった。当時でも、ふつうのアンチ組織の人間だった。
 ぼくのような人間は、ひと様のお役に立っているかどうかはさておいて、若い頃の志を持続することはさほど難しいことではない。持続できなければ野垂れ死にするか、さっさと転向すればよい。
 対して山家のような人間が若いころの志を持続することは至難のことである。「覚悟さえきめれば、前に進める」と、あっさり言ってのける人生を歩んだ山家はすごい。
 通勤に1時間半もかかる所に住んでいながら山家は地域活動も熱心にやってきた。出勤する前に朝ビラ撒いて、帰宅してから次のビラを作る。新聞会の後輩にあたるつれあいは、都の非常勤職員を解雇されて、組合を結成して闘っているという。
 40年来の友人森起佐太を亡くしたばかりだが、40年ぶりに山家悠紀夫と再会することができた。人生流転。悲しくも楽しい。

                                                     小寺山康雄 


ECOひいき

アンプリュウド (東京)
 *自然食で心も体も健康に*

 アンプリュウドはオーガニックの農産物&食品、フェアトレードの雑貨やナチュラル化粧品などを取り扱っている自然食品店です。
 どの商品もスタッフがこだわり厳選したものばかり。
 たとえば農作物は完全無農薬・無化学肥料栽培のみを扱っております。それが私たちの健康はもちろん、土の健康を守り地球を守ることにもつながっていくと思います。
 一年程前、店内の奥のスペースを改装してカフェレストラン「和いわい」をオープン。玄米ご飯の定食やオーガニックのお酒&ドリンクも召し上がれます。
 当店を利用して下さっている方は若い学生さんからお年寄りの方まで老若男女、世代もいろいろ。店内でゆっくり読書に耽る人もいれば、スタッフとのおしゃべりを楽しみに来て下さる方もいて目的もいろいろです。
 レストランの空間ではお食事の他に、自然食のクッキング教室(随時募集!)や自然療法のお手当て教室、お食事会etc……楽しいイベントもあります。
 ここへ来れば自然と心も体も健康になること間違いなし! 食べ物が変わると、気持ちにも体にも変化がでてくること、そして食べ物を選ぶことが地球を守ることにつながることを感じてみて下さい。
 みなさまのご来店心よりお待ちしております!

鑓田 彩

【連絡先】東京都世田谷区梅丘1−16−5
       TEL 03-3420-7289(FAX兼)
【行き方】小田急線梅ヶ丘駅南口下車徒歩2分


店・モノ・活動を‘ECOひいき’!!

 ACTの名物コーナー「ECOひいき」に登場してくださるみなさんを募集しています。「ECO」なお店、会社、グッズ、運動、などを是非、ACTで紹介させてください。自薦・他薦は問いません。紹介文は、本紙だけでなく、ACTのウェブサイドにも掲載させていただきます。
 @お店・グループ名 Aお店の紹介や商品説明、活動案内(500字以内) B連絡先(お店などの場合、「行き方」も) C執筆者氏名 D掲載紙送付先・原稿に関する問い合わせ先 ―を明記し、EメールかFAX、もしくは郵便でACT編集部[act@jca.apc.org]までお送りください。地図・写真などを添付していただければ、それも一緒に掲載いたします。(編集部)


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