■[トピック] |
◆辛口レビュー アフガンで起きている本当のこと
中村哲さん(医師/ペシャワール会現地代表)
◆CATCH UP ◆いずみ(編集長コラム)
◆JCO事故2年・追悼行動と集会
◆米国テロ・各国緑の党の反応 清水耕介(関西外国語大学教員)
◆末端私論「テロと報復」
◆パレスチナ問題からみた米国テロ 岡田剛士(『派兵チェック』編集委員)
◆追悼・今野求さん
種を実らせずに君は逝った 前田裕晤(協同センター・労働情報)
今の時代こそ必要な人だった 石森健(ACT経営委員)
◆神戸市長選に臨む・苦闘する市民派(中)
◆映画情報 『梅香里(メヒャンニ)』
◆川崎市長選インタビュー 市民派候補・おくつ茂樹さんに聞く
私も応援シマス 猪股美恵(川崎市議)
◆市民派議員リレートーク(35) 足立満智子(千葉県成田市議)
◆BOOK Review 島崎吉信・清水直子『がんばれ美術館ボランティア』
畑山敏夫・平井一臣/編『実践の政治学』
◆ひとときの光(7) 明日を照らす光を信じて
◆Hot Issue in the World(4) 労働者の連帯呼びかける米国の労働組合
◆広告(3面) 『軍縮』11月号……宇都宮軍縮研究所
『創』11月号ほか……創出版
『記録』11月号
シンポジウム・社会主義の可能性を考える……11月シンポジウム実行委員会
アフガンで起きている本当のこと
中村 哲さん
(医師/ペシャワール会現地代表)
飢餓で瀕死の人に
とどめを刺すのか
一般民衆はテロ行為に反感
なかむら てつ 1946年、福岡市生まれ。九州大学医学部卒業。専門は神経内科(現地では内科、外科もこなす)。ペシャワール会現地代表、PMS(ペシャワール会・医療サービス)院長。国内の診療所勤務を経て、84年4月パキスタン北西辺境州の州都ペシャワールに赴任。以来17年にわたりハンセン病のコントロール計画を柱にした貧困層の診療に携わる。98年には基地病院をペシャワールに建設、86年からはアフガン難民のためのプロジェクトを立ち上げ、現在アフガニスタン無医地区山岳部に3診療所を設立してアフガン人の無料診療に携わり、辺境山岳部へも定期的に移動診療を行っている(現地スタッフ220名、日本人ワーカー5名、年間診療者数約20万人)。2001年3月、アフガニスタン首都カブールに緊急診療所5か所設立。著書に「ペシャワールにて」「ダラエ・ヌールへの道」「医は国境を越えて」「医者井戸を掘る アフガン旱魃との闘い」(石風社
TEL092-714-4838)、「アフガニスタンの診療所から」(筑摩書房)。
《ペシャワール会》
会員:四千人
http://www1.mesh.ne.jp/~peshawar/
福岡市中央区大名1-10-25上村第二ビル307号
TEL092-731-2372 FAX092-731-2373 peshawar@mxb.mesh.ne.jp
郵便口座振替番号:福岡01790−7−6559、口座名義:ペシャワール会 【構成 清水直子】
同時テロの報復として、アメリカは、容疑者が匿われているというアフガニスタンへ武力報復を始めようとしている。それはどんな結果をもたらすのか。医師の中村哲さんは、パキスタンやアフガニスタンの国境地域を中心に17年間診療を続けた経験を9月26日、社民党の阿部知子さんが企画した衆議院議員会館での報告会で語った。一体、アフガニスタンの何が伝えられ、何が伝えられていないのだろうか。(中村さんの了承を得て9月26日の報告をもとに構成しました)
そこから逃れられない貧困層のための活動
我々は、84年、ハンセン病治療から始まってさまざまな医療活動をしているのですが、一見医療とは関係ないことにも力を注いできました。その1つに、ほぼ100%がイスラム教徒で、日本とはまったく異なる文化を持つ人びとを理解する、ということです。
私たちが対象とする患者さんは圧倒的多数を占める貧困層の人たちで、その地域社会から逃れたくても逃れるお金もない、あるいは、地域社会に安住している人たちなのです。この人たちが地域のなかで、より幸せな気持ちで暮らしていけるかを考えないと本当の医療はできません。
ここに我々と外国からくる諸団体との違いがあります。例えば、欧米のNGOには女性にかぶり物をさせる習慣を許すべからざる人権侵害であると、現地でトラブルを起こす人がいます。追放されて、彼らが自分の国に送還されると、ロンドンやニューヨークで凱旋将軍のように迎えられヒーローになります。しかし、医師の立場からは、ではこの人たちを連れて行ってください、最後まで面倒をみてください、と言いたいのです。
ペシャワール会からもこの十数年の間にのべ20名前後の女性ワーカーが現地に赴きました。もちろん現地社会は女性にとってはヤワなものではない。しかし、11年もいる強者もおりまして、彼女らの存在によって、それまでの想像もできないような女性に対する診療の質の悪さが随分改善されました。これは我々がした仕事のうちで一番いい仕事の1つではなかったかと思っています。
世紀の大干ばつ100万人が飢餓で瀕死
昨年、世紀の大干ばつがユーラシア大陸を襲い、中央アジア全体、周辺諸国を合わせると約6000万人が被災しました。内戦の傷も癒えないアフガニスタンの被害が最も激烈で、昨年5月、WHO(世界保健機構)は、アフガニスタン国内で1200百万人が被災、飢餓に瀕する者が約400万人、飢餓寸前の者が100万人と発表しました。
これは決して誇張された数字ではない。飢餓といってもお腹が空いてバタッと倒れるのではなく、末期は色々な病気にかかったり、下痢をして栄養失調で亡くなるのです。
しかし、欧米諸国にはアフガニスタンに対するネガティブなイメージがあるようで、我々は国際団体が押し掛けてきたら引き揚げようと思っているのですが、なかなか来ないんですね。それどころか国連制裁によって物資も途切れがちなところへ、ものすごい干ばつが襲い、診療所周辺でも村が消えていきました。農村でも飲み水さえ無くなり、家畜も売らざるを得なくなっています。家畜を売るというのは農民としての最後です。飢餓難民となった人々が農村から町におりてきてました。
私たちの診療所にもたくさんの人が詰めかけました。犠牲者の大半は子どもで……子どもを抱いた……母親が、外来で待っている間に体の冷えていく我が子を抱いている姿もたくさんありました。
病気どころではない。病気は生きていれば後で治せる。村に健康な状態で留まれるようにするために、診療所周辺から飲料水確保の計画を始めました。現在、約600数十カ所の作業地があり、うち500数十カ所で水を出しました。その結果、村に留まることができ流民化しなくてすんだ人が25万人以上はいます。
水路の復旧にも着手し、その結果、今年の2月にはダラエ・ヌール渓谷の砂漠地帯が、緑の麦の原っぱになるという奇跡的なこともおこり、干ばつで村を捨てた難民10000数千人が帰ってきました。
このような水源確保の作業地を年内に1000ヵ所に増やそうとしていたところにニューヨークのテロ事件が発生し、やむなく日本人だけは一旦退去しました(中村さんは10月1日に再び現地へ向かった)。しかし、現地の人は、潰れるまでやると、現在も作業を続行しています。診療所も平静に運営しています。
何をなすべきかという観念的議論より情報を
アフガニスタンの民衆が最も信頼を寄せているニュースソースはラジオのBBC放送です。パシュトゥー語という現地語、アフガニスタンの国語であるペルシャ語、パキスタンの国語であるウルドゥ語の3つに訳されています。
ニューヨークのテロ事件にさいして、私が見聞きしたアフガニスタンの民衆レベルの反応は、むしろテロの犠牲者を悼む声の方が強かった。彼らは二十年以上の内戦で血なまぐさいことに疲れ切っているんです。また騒ぎを起こして、人が死んで、かわいそうに、と。自分たちも肉親を亡くしていますからそれがよく分かるんですね。
ところが、米国の報復が自分たちに向けられるということを知ってから、伝統的な反英感情が反米感情に転化して、「鬼畜米英」という声がタリバンの抑えを越えて、民衆レベルで沸き上がってきつつあるというのが現状です。
今、日本は何をなすべきいかという観念的な議論が多く、現地の情報がないままに状況が進んでいます。日本は報道管制でもされているのではないかと思うほどです。
政治的なことは言いたくありませんが、とにかくアフガニスタンの正確な情報を知ってください。政治家の方たちは、それから判断してください。日本は、アメリカに追随して、この不況のなか、たくさんお金を使って、もともと親日的なアフガニスタンの民衆に被害を及ぼすような武力行使の支援をするより、今は何をなさざるべきかということを冷静に考えてみることも必要ではないでしょうか。
干ばつによって農業生産力の9割が打撃を受けているところへ報復攻撃が始まれば、100万人単位の人が死に、衆人環視の下でホロコーストと同じ状態を生むことは間違いありません。
一握りのお金持ちは外国へ逃げていきましたが、今、首都のカブールに集まっているのは飢餓難民。空爆があったときに死ぬのは国外へ逃れることさえできない貧しい人たちです。後で実状が分かったときに、報復攻撃をした人は必ず夢見の悪い思いをするでしょう。
前号で「この国のマスコミは(自爆テロ事件について)米側の情報を一方的にたれ流している」と書いた。現在はもっと一方的になっているばかりか、日本政府のタブーなき憲法無視行為に対しても、まったくの無批判であることに終始している。この問題については、わたしたちは日米両国家によって情報操作されていることを、よほど心してかからねばならない。
ビンラディンからテロリストへの指示命令書なるものがスクープとしてアメリカのマスコミが発表した。リークしたのは、米政府関係機関である。それには、決行にあたって靴が脱げないように注意せよとか、まるで子どもに対する遠足注意のごときことが書かれている。
このようなものを文書で示したり、それを決行まで処分せず持っていたりする「高度に訓練された」テロリストなど、子ども向けの劇画でも登場しないだろう。90%の国民が報復に熱狂しているアメリカでは、かかる子ども騙しでも通用するのかもしれないが、この国でも大のおとながテレビで真剣かつ専門的に、得々と論じているのである。
テロ事件のあった先月11日の毎日テレビを見た人は気づいただろうが、JNN元中東特派員が番組が始まって30分くらいしたら突如、画面から消えてしまった。べつにテロリズムを称揚したわけではない。全員がアメリカべったりの感情的議論に終始する中で、パレスチナやムスリムから見ればこういう問題もあると指摘しただけだ。以降、この程度の良識も、この国のマスコミ、とりわけテレビからは消えてしまった。
こうした中で勇気ある市民が、米下院でたった一人戦争に反対し、息子をテロで殺された父親が反戦運動に立ち上がっている。ヨーロッパでも、日本でも、テロリズムを批判しながら、アメリカとそれに同調する各国政府の報復戦争に反対する希望ある市民の行動が始まっている。
テロリズムは絶望の所産である。絶望の虚妄なるを批判するにはテロリストを根絶することで可能なのではない。確かな希望が存在することを示すことだ。
小寺山康雄
ACTの名物コーナー「ECOひいき」に登場してくださるみなさんを募集しています。「ECO」なお店、会社、グッズ、運動、などを是非、ACTで紹介させてください。自薦・他薦は問いません。紹介文は、本紙だけでなく、ACTのウェブサイドにも掲載させていただきます。
@お店・グループ名 Aお店の紹介や商品説明、活動案内(500字以内) B連絡先(お店などの場合、「行き方」も) C執筆者氏名 D掲載紙送付先・原稿に関する問い合わせ先 ―を明記し、EメールかFAX、もしくは郵便でACT編集部[act@jca.apc.org]までお送りください。地図・写真などを添付していただければ、それも一緒に掲載いたします。(編集部)
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