緊急レポート
サンゴ礁を破壊!
那覇防衛施設局がスパット台船(ボーリング用足場)設置強行
土田武信(ジュゴンネットワーク沖縄)
サンゴ礁を破壊したボーリング用足場(スパット台船)が設置されたのは、11月20日(土)の午前。設置か所はリーフの外側で、平島側にある掘削ポイント3/13(防衛施設庁「地質調査位置図」)。
報道によると、〈スパット台船は、大浦湾内の作業船から同日午前7時ごろ、クレーンで海上に降ろされ、タグボートで辺野古海域へと移動。午前8時40分ごろに掘削地点に到着、設置作業に入った。その後、台船は4本の足で安定的に固定され、同10時半ごろまでに、台の部分が海面から約3メートルの高さに持ち上がった状態となった。〉(琉球新報20日夕刊)
〈台船の周りは、タグボートや海上保安庁の警備艇、漁民らが乗り込んだ警戒・作業船など十隻前後が取り囲んで巡回、抗議船がスパット台船に近づくと、警笛を鳴らし、「台船から離れなさい」と警告するなど、物々しい雰囲気に包まれた。〉(沖縄タイムス20日夕刊)。
目撃者や、その翌日21日と23日に潜って撮影したダイバーの話によると、次のとおり、「乱暴な」ものだった。
- ダイバーを潜水させ、そのダイバーからの指示を受けるなどして台船の設置場所を微調整させるような段取りはなかった。
- 台船が現在地に固定される前に、現在地から十数メートル離れた地点に、いったん固定させようとしたが、その地点は不安定だったようで、
- 現在地に移動させた形跡がある。
- 台船から天高く突き出た4脚を海底に着地させるとき、その4脚を徐々にではなく、「すぱっと」下げた。
- (1)台船を一度設置させたとき、(2)そこから移動させたとき、(3)現在地に設置させてとき、の三度にわたって、サンゴ礁を破壊させたと思われる。
このサンゴ礁破壊問題で、環境保護系、反戦平和系市民団体による反撃はすばやかった。23日辺野古現地でアピール、24日、26日と連続して、県や那覇防衛施設局に対し、ボーリング中止を求める等の要請行動が取り組まれ、また、県内メディアや本土TV局も動き、このサンゴ礁破壊問題を伝えた。
西正典那覇防衛施設局長は25日、〈「サンゴが死滅して岩となったさんご礁と生きているサンゴは別だ。足場設置でさんご礁が削られたのは確かだが、われわれが作業上で細心の注意を払っているのはサンゴを守ることだ」と述べた。
その上で「サンゴの被度5%未満の場所に足場を設置し、被害を避ける工夫をしている。ボーリング地点ではサンゴを避けるが、(影響を)すべて排除できない。環境への負荷を必要最小限に抑えるが、ゼロにはできない」と述べ、一部でサンゴへの影響が出る可能性を指摘した〉(琉球新報11月26日朝刊)。
つまり、このような作業は、通常の作業結果だというわけだ。もっとも、那覇施設局側は26日、基地の県内移設に反対する県民会議代表に対し、「きょうから海中に入り、破壊場所を調べている。結果は県に報告し、公表する」、しかし、肝心のボーリング中止要請に対しては、建設企画課長は「ここでは判断できないので、西正典局長に伝える」と述べるにとどまった。
いま、辺野古沖では、スパット台船やボーリング用足場(単管足場)設置が完了したところで、掘削作業が今日明日にも、開始されるのではないか、と危惧され、この掘削をさせない闘いが、「カヌー隊」を中心に取り組まれている。
国際世論は、「ジュゴン生息海域における軍民共用空港建設計画に関する環境アセスメントでは、 ゼロ・オプションを含む複数の代替案を検討すること。また、ボーリング調査、弾性波探査などの事前調査も環境アセスメントの対象にすること」(11月25日、IUCN第3回世界自然保護会議が採択した日本政府に対する勧告決議)というものなのであるが、明日29日提出予定の、アセス方法書に対する知事意見が注目される。
(5Pに決議文を掲載 編集部)
以下、2点追記させてください。
まず、11月24日、沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団が県知事に対し、「那覇防衛施設局に対し、ボーリング調査の即時中止を求め、『公共用財産使用協議』への同意取り消し等を求める要請」を行なったときの要請事項は次のとおり。
- 那覇防衛施設局に、ボーリング調査の即時中止を申し入れること
- その間、担当の職員を現地に早急に派遣して、実情を把握させること
- 那覇防衛施設局に、スパット台船設置箇所の詳細な環境調査報告を至急出 させること
- 貴職が同意した「公共用財産使用協議」の同意を取り消すこと
(次項に要請文を掲載 編集部)
次に、サンゴが大切に保護されていることの一例を指摘させてください。沖縄県漁業調整規則33条2項は、「造礁さんご類」について、「かめ類が放産した卵及び造礁さんご類(腔腸動物のうち石さんご目、ひどろさんご目、やぎ目、くださんご目をいう。)は、これを採捕してはならない」と定め、その違反者には、「6月以下の懲役若しくは10万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」(同規則50条)。(この規則は、問題のサンゴ礁破壊状況をビデオカメラに収めた譜久里茂氏とともにダイビングし、スティール写真を撮影した棚原盛秀氏から教示を受けた。)
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