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沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック
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『一坪反戦通信』
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 第158号(2004年7月28日発行)
前編) 

関東ブロック連続学習会

  「米軍再編成と沖縄の米軍基地」(後編)

(2004年6月4日 中野商工会館)

講師 梅林 宏道さん (NPO法人ピースデポ代表)


 現在進行していること…

 現在、どういうことが進行しているかということについて国防省は一切公式のアナウンスはしていません。非公式な情報として、メディアが掴んで流しているというのが現状です。そのレベルでご紹介すると、まずワシントンポストが、ドイツの米軍は半減をするという方向で動いていると報道しています。アジアからは15,000人の削減が計画されている。

 それから、いろいろなメディアが書いていることは、恒久的な基地の新設が行われようとしているのが、東ヨーロッパのポーランド、ブルガリア、ルーマニア、交渉が行われているという報道が頻繁に行われています。でも、その結論がどうなのか、例えばポーランドではかなりの市民の反対運動が発生しています。政府レベルではどうなっているのかはよくわからない。
中央アジアでキルギスとウズベキスタンにアフガンの戦争のときに許可を得て短期的に使用していて、現在も使用している基地を恒久基地にする交渉が行われている。これもいろいろな報道があります。ウズベキスタンは、外務省の談話として肯定的な談話をしている。キルギスは恒久基地にすることは反対しているというような報道です。
 
 韓国に関しては、3,600人のイラクへの派遣というのは非公式だと言いつつ、国防省が記者にそのことについて日本政府と韓国政府に納得をしてもらうための話を持ち出しているというところまで公的に話をしています。まちがいないことだと思います。最近更に12,000人在韓米陸軍を削減をするという報道もでてきました。12,000人というのは3分の1が減るということです。この12,000人というのは極めて微妙な数でありまして、先ほど言ったように15,000人アジアから減らせるというワシントンポストの報道があって、沖縄から3,000人がイラクに行っていてイラクから帰ってこないという報道があるわけですね、そのまま削減になるだろうと。この二つを合わせると15,000人になってしまう、意味のある数字なのかどうかはまったくわかりません。
韓国に関しては、はっきししているもう一つのことは、ソウルのど真ん中にある龍山(ヨンサン)という基地は全面返還されて南に移る。司令部を含めて全部なくして南に移るというわけです。その時に相当な兵力が削減されるだろう。これも真偽はわからないのですが、太平洋陸軍というものが新しく作られると。今まで太平洋陸軍司令部というものはなかったのですが、そういう司令部が作られて日本に置かれる、その部隊のもとに在韓米陸軍もつく、そういう編成が考えられているという報道もあります。

 沖縄に関してはご存知のことと思いますけれども、イラクに派遣された部隊の代替部隊はおそらくはこない。イラクで仕事が終わったときに米国本土に帰るという報道があります。多分そうではないかと私も思っています。

 アジア太平洋ではグァムの海軍が強化されています。3隻の原子力潜水艦が母港とされるというのは確実で、去年2隻がきて、今年もう1隻がきて。もう1隻トマホークミサイル発射のために改造されたオハイオ級原子力潜水艦という巨大な、これまで日本に寄港したことがない、寄港することが基本的に禁じられていた核兵器発射潜水艦を改造したものが、多分グァムに配備される。

 それから爆撃機が前進配備されるということがあります。オーストラリアに米豪共同訓練場、そこを拡充して訓練施設として充実させる。それからシンガポール、タイは緊急使用に関する新協定を作ろうとする。フィリピンに米軍基地を復活することは強く否定されているのですが、フィリピンとの軍事協力を新しく強化するというレベルでいろいろ報道されています。このようなことが現在進行していることです。


 4つの原則
 
 −歓迎されないところには配備しない−

 次に書いてあることは、非常に大事なことで強調したいと思っていることなのですが、3月25日にラムズフェルド国防長官が新聞記者との会見の中で明らかにしたことです。世界的配置について記者の関心が強いので、いろいろ質問がでるわけですね。一切公的になにも決まっていないという話しかしないのですが、国防省の中でどこにどのように基地を置きたいかというテンプレートはできあがっていると言ったわけです。しかし、それぞれが関係する国と交渉しないとできないことなので、何もいえないという言い方をしていますが、国防省の青写真ができているということです。それからもう一つ言ったことは、どこに置くかということについて「4つの原則」を考えてやってきたという言い方をしました。その「4つの原則」というのは海外配備は必要である、彼らにしてみれば当然で、すべての軍隊を米国内に置くということは不都合である。2番目は、これは非常にいいことなんですけれども、歓迎されないところには配備しない、いやがられるところにはいたくない、これを第2の原則といっているんですね。そのときの言葉を訳してありますけれども、「第2の原則は我々は本当にわが軍が望まれているところに置きたい、ということであった。そんなに歓迎されないところには行きたくないのである。」これはラムズフェルドが以前からしょっちゅう言っていた言葉で、新聞でときどき書かれることなんですけれども、この第2の原則は我々が使えることだと思います。

 3番目は部隊展開の柔軟性が確保されていなければならない、これも我々が使えることだと思います。その文を訳してあるのですけれども、「我々は次のように部隊を配置しなければならない。つまり次の紛争がどこに起こるかわからない以上移動しなければならないところへは、どこへでも移動できように柔軟性のある取り決めができていなければならない。」ということなんですね。どこかに基地を置いたときに、そこの国の政府との取り決めでそこの基地から何をしてもいい、そこからどこに展開してもいいという柔軟性が確保できていないといけないと言っているわけです。4つ目は関係国との合意。これも繰り返し言っていて、関係国がウンといわなければやらない。この「4つの原則」というのを言っているわけです。

 第3番目の原則がなぜ重要かというと、これは日米安保条約があるかぎり在日米軍基地はそのようには使えないはずなんです。第5条と第6条に拘束されているはずです。それは日本の有事と、それから極東の安全と平和に貢献するために米軍がおり、米軍基地があるという取り決めになっているわけです。それが空文化して現にイラクに行ったりしているわけで、空文化している現実はあるのですが、本当にこうやって開き直って新しい基地配備をしたときに、日本政府がそれをOKする、しないという議論のときには、必ず第3原則の部分で日本政府がどういっているかという法律論が浮上するはずです。

 そういう意味ではこの三つ目の原則というのが沖縄の基地を追い出す、あるいは他の在日米軍基地を、なんのための基地なんだということをもう一度クローズアップさせるために、非常に重要なポイントを示していると思っています。ですから先ほど言ったように、私は直訴するときの論理というのは相手がちゃんと作ってくれていると思っています。日本政府はこれをたぶん言わない。国会がきっちり機能してくれれば、非常に議論になり得る話だと思うのですが、日本政府はとにかく先ほどのテロとの戦争でどうするんですかというところでも、アメリカの言うとおりにすると、大きなところの論理はそうなっているわけですから、今の政権は頼りにならない、だめですね。

 そうするとやはり直訴というか、自治体である沖縄は歓迎していない、歓迎されないところにあなたたちはいるんだということと、日本からは直接出撃はできない、これはあなたたちは合法的にやってはいけないということだということを直に言って、それは大問題になるという話をすることができる。できるだけハイレベルの米軍の議論の中に地元の声を入れていくということは、非常に大事な仕事になっていると思います。そういう意味では直訴というのは大事な仕事になっていると思っています。

 新しい部隊編成

 海兵隊が「Force Transformation」という軍転換の中でどんなふうに変わろうとしているかについて、少しわかっていることをお話ししておきます。まず第一に海兵隊というのはある意味では「Force Transformation」の影響を受けにくい部隊だということです。なぜかというと、海兵隊そのものが新しい戦争に対応できる部隊として作られてきた。すごく小回りが利いてどんなふうにも変形できるように部隊が編成されている。現在の編成がそうなっている。空地任務部隊というのですが、実際には陸軍の役割と空軍、ヘリコプター、飛行機をもっていますよね。そういった三軍が海から上陸するための軍隊ですから、海軍がもっているんだけど海兵隊が活動する船というものがあるわけです。陸海空全部をあわせもった部隊として、海兵隊そのものが作られてきているわけです。そういう意味では先取りしていろいろな機能を果たす部隊です。ですから彼らは自分たちはお手本であるという言い方をしているわけです。それが一つです。

 にもかかわらず変わりつつあることの一つの例をご紹介したいと思うのですが、遠征打撃団これは一度沖縄を通りましたから、沖縄の新聞にも大きく報道されたということがあったと思うのですが、新しい部隊編成というものを、大きく言えば海軍の部隊編成なのですが、海兵隊と一体となった部隊が作られました。これは去年作られた本当に新しい実験的部隊です。今まで水陸両用打撃団という部隊編成をしてきた。これもご存知でない方には少し面倒な話なんですが、沖縄にいちばん頻繁に使われる部隊で31MEU(the 31st Marine Expeditionary Unit第31海外遠征部隊)と呼ばれている部隊があります。この31MEU、2000人から3000人くらいの規模の海兵隊を乗せる軍艦が佐世保にあるわけです。佐世保にある4隻の軍艦と沖縄にいる31MEUというのがその軍艦に乗り込んで、水陸両用打撃団というひとつの海兵隊の部隊が編成されているわけです。
それを21世紀の脅威、軍転換の考え方を取り入れて、更に能力を付け加えました。どういう能力を付け加えたかというとトマホークを発射できる部隊を一緒に連れて行ける。対地攻撃ができる。水陸両用打撃団というのは、これも海兵隊の殴りこみ部隊というイメージなんですけれども、それに陸地奥深く攻撃できる。それから敵の戦闘機、あるいは敵のミサイルを迎撃できるような能力を連れて行く。これは同じ船で対地攻撃と対空攻撃ができるミサイル軍用艦、ミサイル駆逐艦を連れて行くということになります。それから潜水艦をやっつける能力を連れて行く。これはフリゲート艦、あるいは攻撃型潜水艦を連れて行くということになります。それから更に特殊部隊を運搬する能力を持つ。それはもちろんヘリコプターがそういう機能を持つという部分と、攻撃型潜水艦といいましたけれども、潜水艦が特殊部隊を連れて潜って、陸地近くで潜水道具をまとった兵隊を海の中に放って、上陸させるという特殊作戦をする能力を潜水艦に新しく持たせているわけですけれども、そういうふうにして遠征打撃団という形を作るというわけです。

 ですからこの海兵隊を乗せた、沖縄の31MEUを乗せた新しい部隊というのは、今イラクに行っているような内地深く攻撃をしたり、あるいは特殊部隊を送り込んだりということを臨機応変にできるようないろいろな部隊を携えて、新しいESG(Expeditionary Strike Group 海外遠征打撃団)を編成してその中で働いている。そういう意味で海兵隊の働き方としては新しい働き方をするということが進行しています。

 今の話は直に基地編成にはかからないんですけれども、米軍がなにを考えているか、沖縄に居続けるとすれば海兵隊というのはどういう運用をされようとしているのか、ということを考えるときに役に立つのではないかと思ってお話をさせていただきました。そんなところが沖縄の基地再編に関わる今の米軍の動きになります。あとはご質問にお答えする形で。いまお手元に核兵器核実験モニターという1ヶ月に2回だしている情報誌なのですけれども一番新しい号がいま話をしたようなことがだいたい網羅されていますので、お役に立てればと思います。もし関心があれば購読していただければと思います。


 質疑

Q:
 沖縄の米軍基地に関して少し具体的な質問をさせていただきます。今問題となっている普天間基地の返還に伴う名護の新基地建設ですけれども、それを見直すかどうかという話になっていますが、アメリカとしても名護のキャンプシュワブがあり、辺野古弾薬庫があるその中で一体化されたものとして造られるのは理想的で、欲しいことは欲しいと思っていると思います。しかし現在の状況の中でなかなか進展しない。それを今の再編の中で、どうしようかと考えていると思います。そこらへんをどうとらえるべきなのか。見直しとか言いつつ米軍は普天間の名護新基地建設が現在作られていない中で、兵力再編の中で維持するか、もたせようとしているのか、わかる範囲でお聞かせください。
A:
 わかることはほとんどなくて、私がいろいろな情報の中でどう考えているかというと、米軍はもうやめたいと思っていると思います。海上基地は、必要ないと思っていると思います。もっとすんなりできるならともかく、今のようにずるずるとやられるようでは、もう困るとそう思っていると思います。

 日本政府は一所懸命維持しようとしているわけですね。でもその半分は面子じゃないかなと。それを崩すと歯止めがなくなるというか、そういう感じがしています。
軍の必要性の論理というのは本当に幅が広いです。軍事的必要性というのは非常にとおりのいい言い方だからそのように言います。実際にその軍事的な必要性というのを詰めていくと、あればそれにこしたことはないというレベルのことのほうがずっと多いですね。

Q:
 嘉手納統合とか下地島とか、それは政治的意味合いがあるのかもしれませんが、それはどういう意味としてとらえていますか。
A:
 米軍がどういう代替を持っているかというのは情報がないからわからないのですが、整理統合という、米軍の考え方はどこかと統合するという考え方だと思いますけれども、それは機能的ということだけを考えれば充分嘉手納で間に合うと思います。もっと政治的な議論のほうが、政治的という中には経済的が入ると思いますが、同じものをどこかに作ろうという発想はお金がかかるということはもちろん考えてないと思います。それで代替施設を日本政府が払ってくれるんだったら、できればどこでも歓迎だと。それも間違いないと思いますが、いまみたいに進行しない、見通しがたたない状況というのはアメリカのペースに合わないから、すっきりした形に早くしてほしいというのがアメリカの本音だと思います。

Q:
 先ほどの質問とからんでいるのですが、軍事同盟重視で使用基地のハブ化というのは、民間空港のハブ空港のようなものをイメージすればよいのでしょうか。それとの関連で、嘉手納とか三沢というのは充分中東展開もやっているし、そういう意味では基地のハブ化というのは現状をどのように変えようとしているのか、そこが名護の問題とからんで嘉手納統合案が、そのへんの全部を併せて梅林さんがどのようにお考えか、ハブ化という概念を説明していただいてからお考えをお聞かせください。
A:
 ハブ化という概念そのものについては厳密な説明というのはありません。しかし日本はすでにハブ化されているという言い方ができるわけですよね。だけどこの軍転換の中で言われているハブ化というのは、私はもっと質的な中身を意味していて兵力供給基地というだけではなくて、ハブ化というのはもともと兵力供給基地なんですね、そこに蓄えの部隊がいて、そこから新たな戦闘地域に相当な部隊を供給する部隊供給基地という感じなんですけれども、そういう意味では沖縄の海兵隊基地というのはすでにハブ化されていて、そういう機能を果たしていると思います。
そういうことプラス今いわれている主要基地はハブ化するという意味は、相当同盟国が米軍とさきほど言った世界戦略的に一体化した同意のもとに置かれる基地、だからそこからどこに行ってもいいんだよという合意が成立している基地という意味合いがすごく大事になってくるわけです。日米安保条約下でハブ化というのは本当はできないはずなんですけれども、アメリカはもうそこまで含めた日米交渉を実質的にやっているにちがいないと私は思っています。

 日本政府は、日米安保条約を改定するという話をだすと根本的な議論をやらないといけない。でもやらなければいけない時期なんですよね。日米安保条約というのはもう本当に形骸化していてそれと関係ないようにアメリカはふるまっているわけですから、あんな条約をおいて置くというのは法治国家としてはおかしな話なんですけれども、それをやりきる政治力が今の政府にはない。国会が混乱するということで手をつけられないでいる。

 ただこの世界再編の中ででてきているハブ基地というのは、そういう意味の新しい米軍再編の中で米軍がそこからどういうふうにふるまってもいいような中継基地という意味だと思いますね。

Q:
 それは実態としてなのか、軍事条約としてもそこに明文化されているようなものなのでしょうか。
A:
 そこは可能な限りそうするということだと思います。

Q:
 そうすると今の実態として、在日在沖米軍基地はハブ化しているのではないですか。
A:
 そうですね。そういうふうにいえると思いますね。ただ日本政府にいっていることはそこの確約なんじゃないですかね。まだ弱いというか、集団的自衛権みたいなものをはっきりさせれば今よりもよくなるというようなことかもしれないですね。

Q:
 これは有事法制だとか多国籍軍への自衛隊の参加だとか改憲だとか、これと一体として在日在沖米軍基地をもっと完成させるということでいいですか。
A:
 日米同盟のもとにおける基地というもののフリーハンドを、米軍世界戦略のなかでもっと自由に使えるようにするということです。いまでも実態的にそうだというのは本当にそのとおりなんです。それでもやっぱりまだ国会で議論されるし、法律的にはいろいろ問題がでてくるわけです。

 どこまでやるかというのは本当に政治の段階だと思います。日本政府がいまの現状がせいいっぱいだと思えば今のままでやるということになるだろうし、少しでも形を整えることができればできるところまでやるという考え方だと思いますね。

Q:
 フィリピンの基地がなくなって、でも一方では沖縄からミンダナオ島に米軍がいってフィリピン軍のかわりに海外で戦っていると言われています。アメリカはフィリピンをあのまま基地なしですますつもりなのか、本当は造りたいけど造りきれないのか、そのへんをどういうふうにお考えになっていますか。
A:
 造りたいといえば造りたいんだと思いますけど、政治的に非常にむずかしいと考えていると思います。もう一度基地が戻ってきそうだということは、今でもものすごく反発があるわけです。予防線を張るような、国内的な議論というものがすごく強いわけですね。

 フィリピン基地がなくなって全部ひきあげる直前まで、アメリカは欠くことのできない基地だといい続けていたわけです。戦略的に絶対代替ができない不可欠な基地であるといい続けていたんですけれども、結局フィリピン上院が条約の延長に賛成しなくて、協定の期限がきれたわけです。

 その時点ではもうころっと言い方が変わります。米軍の現在の部隊を急送する力、急送する物量の力を考えると、フィリピン基地がなくても全然かまわないということを、これによって米軍は全然弱くなっていませんよということを一所懸命言うわけです。米軍の必然性というのは本当に政治的なもののなかで組み立てられているわけです。いまの政治の中では、繰り返し繰り返し基地が復活することはないと言っていますね。

 一方で、しかしそのフィリピン軍と米軍の関係は対等の軍隊として関係を深めている。新しいアクサに相当するものもできあがりましたし、日数は限られるけれども、限られた間はきっちりとした地位協定をもってフィリピン内でふるまえる。恒久基地はないというだけで関係は深まっています。

Q:
 それはやはりフィリピンの民衆がその意思を貫いていると言えるんでしょうか。
A:
 そうです。基本的には世論です。これはやはり世論と政府の関係ですね。フィリピンの場合はピープルズパワーで政府を倒すということが現にあったし、いまでも選挙になったときには、高揚した機運になりますよね。いい候補がでてくれば政権がひっくり返るわけですよ。

 それからフィリピンの中には独立のナショナリズムのヒーローがいまでも健在ですから、独立を戦ったヒーローがいるということは、逆にいうと米軍に対する従属というのはアンチテーゼとしていまでも生きているわけです。スペインと戦ったときのヒーローというのが、アメリカの支配に反対するときのヒーローとしても役立っているわけですから、やはり民衆の力と政府を変える力みたいなものが、圧倒的に日本は弱いんですよね。残念だけど。

 韓国の場合もやはりそうですよね。韓国から撤退するという大きな力は世論です。ラムズフェルドが去年の11月にソウルの上をヘリコプターで飛んだときに、地元の新聞にも書かれましたけれども、これはニューヨークのセントラルパークに外国軍が駐留しているようなものですねと言ったということです。女子中学生が米軍にひき殺されたときにもものすごいデモが起きるとか、そういうことを含めた世論がいちばん大きな力になっていると思います。

 そういう意味でも沖縄もあると思います。基本的にあると思うんですね。ただ人口の1%ということで日本政府を動かす力にならないという問題は本当に悲しい限りなんですけれども。でも沖縄として米国に対して発言権があると思います。沖縄の存在というものは、これはやはり沖縄の運動の成果だと思うのですけれども、だんだんと認識されるようになっていると思います。いまのところは日本政府が悪い働きをしてるから米軍は聞かないふりをしていられるわけです。

Q:
 日本の経済力も政治力もフィリピンや韓国に比べると圧倒的に強いと思って、ある程度アメリカにも発言権があるはずと思っています。先ほどのお話の中の歓迎されないところには配備をしないという場合に、沖縄では歓迎されていないのですが、考えようによっては沖縄は日本の中のひとつの県ですから、日本の1%である沖縄の人間が歓迎しなくても、日本の大多数が歓迎しているから、アメリカにとっては日本政府が歓迎しているんだという考えているのか、歓迎されていないところに沖縄は含まれていない、むしろ歓迎されているところだとアメリカ側が認識しているのではないでしょうか。1%の沖縄といいますが、その中の多くが無神経になってしまって反対していないわけです。本土の人間の10%でもいいから反対してくれればいいと思うのですが、そのへんの方法はないでしょうか。
A:
 アメリカはご都合主義で考えていると思うのですが、日本政府がOKしているし、むしろ歓迎しているから、沖縄は無視をするというようにも考えていると思いますし、一方で沖縄の世論がすごく高まって、国際的に注目されるようなところになると、やはり歓迎されないところにはいかないという含みもこの中にはあると思います。これは基本的にはアメリカのプライドを表明していると思います。彼ら流のプライドでアメリカは民主主義の国だよという言い方の反面で、こういうことをいっていると思います。

 だから日本政府がうんと言っていればというご都合主義で生かすこともあるし、本当に地元が反対していることが世論になれば、それに従わなければいけないという論理にもなるように思います。沖縄の声を日本の声にするということは本当にどうすればいいのか。地元の新聞と日本の新聞の落差というものをどうやって埋めるかということが、いちばん大事なてがかりではないかと思います。非常に難しいですよね。地元の新聞のトップで大きく書かれることが、ほとんど東京の新聞には載っていないですからね。

Q:
 座間の件なのですが、第1軍団の司令部を座間にもってくると、在韓米軍を廃止して司令部機能を座間に集中して、陸軍大将を司令官にして在韓米軍という組織は解体するというような報道が二、三でています。海兵隊は今沖縄から2個大隊がイラクに行っているけれど、帰ってこないという話もあったりして沖縄からもしかすると減るのかなという期待は、むしろ逆に、先ほどのフィリピンの話でもフィリピンからだされた米軍がどこに行ったかというと在日米軍の増強という形で現れたんですね。沖縄の海兵隊が出て佐世保の強襲上陸艦の増強は、あれはフィリピンを追い出されて日本にきたんですね。

 90年代は在日米軍は強化の方向にあったんですね。これからも思いやり予算とか、他の国ではいてほしくないという声が大きいけれど、小泉政権はアメリカべったりですから。そうすると日本がますます米軍の中枢組織になっていく。アジア全域での減少が日本の拡大につながるというのは、フィリピンの場合がそうだったわけですけれども、在韓米軍とのからみでますます機能強化のほうへ行くのではないでしょうか。私は断片的に新聞で伝えられているくらいの情報しか持っていないのですが、座間の件をどういう背景で考えたらいいのでしょうか。

 それから、先ほどから沖縄は人口の1%という話が出ておりますけれども、沖縄返還のことの資料を読んでいまして、国防総省が絶対に沖縄を返還なんかしたくない、国務省のほうが返還したほうが基地の維持につながる、このままだったら暴動とか反乱が起きてむしろ沖縄の基地の維持ができない、だから基地を維持するために沖縄返還をやるべきだと主張をした。アメリカ政府がそういう方向に向かったのは、沖縄の島ぐるみ闘争というか、屋良政権を生んだ力というか、沖縄の闘争がイコール沖縄返還という日米政府の交渉につながったと思っています。

 そういう意味ではピープルズパワーというのはまさにフィリピンの前に沖縄で実証されているのはないかと思いますが、ただそれが再現できるかというのはまた別の問題で、当時は日本本土のほうにも呼応する相当強力な勢力があったわけですけれども、今はその展望も見えてこない状態なんですが、座間の件をきっかけにして本州部分での米軍基地のリアリティというのが少し伝わってくる、本州でも現実化してくるのではないかという気がします。そこのところを含めてご意見をお聞かせください。
A:
 座間の話に関しては報道された情報くらいしかもっていないので、具体的なことは申し上げられないのですが、全体の流れからいうと人数的な意味の強化というのは私はあまりないと思っています。だけど先ほどからわりと強調したのですけれども、日米同盟の深まりという意味では、在日米軍がもっとグローバルに展開するためのフリーハンドにしたような新しい体制を目指していると思います。

 日本に極東軍司令部を置いてその傘下に在韓米軍をいれるというようなことは、今の日米安保条約からはおそらくできないと思うんですね。先ほど紹介した国防省のテンプレートの中にはそうしたいとあると思いますが、だけど日米安保条約下ではできないと思うので、それを一気にできるような政治情勢には彼らもあるとは考えていないんじゃないかと思います。新しい「Global Posture」を飲み込んだぎりぎりやれるところまでの再編をするというようなスタンスじゃないかと思っています。だから量的にはそんなに増やす必要はないような気がします。

 座間の話というのは、太平洋陸軍司令部と第一軍団の司令部を置くという話は、別の話としてあります。でも根は一つだと思います。テンプレートの中には陸軍司令部、地域司令部のようなものがあるんじゃないかと思います。それの一つランク下の話として、今第一軍団の連絡ゾーンだけしかいないんですけれども、それを司令部ごとこっちにもってくると話が報道されたわけです。

Q:
 最近都市型訓練施設が、沖縄では知事まで含めて反対しているにもかかわらず、政府が認めて造ろうとしています。もともと沖縄の場合ハブという話ですけれども、これは今の状況のイラク戦争とか朝鮮半島の情勢に合わせてのことなのかはわかりませんけれども、そこでの訓練施設の建設と考えてよろしいのでしょうか。
A:
 今の状況の中では「Force Transformation」をした後の海兵隊の訓練を考えたときに絶対必要だし、彼らは造れると思っていると思います。一度潰れた話ですよね、これは。だけど多分彼らの発想としては、何でこれができないのだ、それくらいのことはできていいと思っていると思います。沖縄でできることというのはどんどん少なくなっているわけでしょ。海兵隊の下部の司令官というのは、とにかく沖縄というのはすごく訓練ができないところだと本音をもらしていて、すごく窮屈になっているわけです。そういう中で今造っている都市型訓練施設くらいは、そういう中でも充分できるんじゃないかと米軍は考えていると思います。それで強行していると思います。

Q:
 なんで米軍はこれができないんだと思っているのでしょうか。金武村の住民が弱いからでしょうか。
A:
 面積と空間と、やることによって生ずる被害を考えて、彼らから見れば許可されると思っている。民家から300メートルと離れていない状況でも、彼らにしたら了解されると思っている。彼らの感覚だとそのようなことですね。これくらいのことはできないと困ると。

Q:
 こうなると敵は日本政府ですね。
A:
もう最初から日本政府ですよ。
(テープおこし・構成 一坪反戦通信編集部)