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『一坪反戦通信』
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 第148号(2003年7月28日発行)

イラク特措法全文(前半)


第一章 総則

 (目的)
 第一条 この法律は、イラク特別事態(国際連合安全保障理事会決議第六七八号、第六八七号および第一四四一号ならびにこれらに関連する同理事会決議に基づき国際連合加盟国によりイラクに対して行われた武力行使ならびにこれに引き続く事態をいう。以下同じ)を受けて、国家の速やかな再建を図るためにイラクにおいて行われている国民生活の安定と向上、民主的な手段による統治組織の設立等に向けたイラクの国民による自主的な努力を支援し、および促進しようとする国際社会の取り組みに関し、わが国がこれに主体的かつ積極的に寄与するため、国際連合安全保障理事会決議第一四八三号を踏まえ、人道復興支援活動および安全確保支援活動を行うこととし、もってイラクの国家の再建を通じてわが国を含む国際社会の平和および安全の確保に資することを目的とする。

 (基本原則)
 第二条 政府は、この法律に基づく人道復興支援活動または安全確保支援活動(以下「対応措置」という)を適切かつ迅速に実施することにより、前条に規定する国際社会の取り組みにわが国として主体的かつ積極的に寄与し、もってイラクの国家の再建を通じてわが国を含む国際社会の平和および安全の確保に努めるものとする。

 2 対応措置の実施は、武力による威嚇または武力の行使に当たるものであってはならない。

 3 対応措置については、わが国領域および現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷しまたは物を破壊する行為をいう。以下同じ)が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる次に掲げる地域において実施するものとする。

 一 外国の領域(当該対応措置が行われることについて当該外国の同意がある場合に限る。ただし、イラクにあっては、国際連合安全保障理事会決議第一四八三号その他の政令で定める国際連合の総会または安全保障理事会の決議に従ってイラクにおいて施政を行う機関の同意によることができる)
 二 公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。第八条第五項および第一四条第一項において同じ)およびその上空

 4 内閣総理大臣は、対応措置の実施に当たり、第四条第一項に規定する基本計画に基づいて、内閣を代表して行政各部を指揮監督する。

 5 関係行政機関の長は、前条の目的を達成するため、対応措置の実施に関し、内閣総理大臣および防衛庁長官に協力するものとする。

 (定義等)
 第三条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 一 人道復興支援活動 イラクの国民に対して医療その他の人道上の支援を行いもしくはイラクの復興を支援することを国際連合加盟国に対して要請する国際連合安全保障理事会決議第一四八三号またはこれに関連する政令で定める国際連合の総会もしくは安全保障理事会の決議に基づき、人道的精神に基づいてイラク特別事態によって被害を受けもしくは受けるおそれがあるイラクの住民その他の者(以下「被災民」という)を救援しもしくはイラク特別事態によって生じた被害を復旧するため、またはイラクの復興を支援するためにわが国が実施する措置をいう。
 二 安全確保支援活動 イラクの国内における安全および安定を回復するために貢献することを国際連合加盟国に対して要請する国際連合安全保障理事会決議第一四八三号またはこれに関連する政令で定める国際連合の総会もしくは安全保障理事会の決議に基づき、国際連合加盟国が行うイラクの国内における安全および安定を回復する活動を支援するためにわが国が実施する措置をいう。
 三 関係行政機関 次に掲げる機関で政令で定めるものをいう。

 イ 内閣府ならびに内閣府設置法第四九条第一項および第二項に規定する機関ならびに国家行政組織法第三条第二項に規定する機関
 ロ 内閣府設置法第四○条および第五六条ならびに国家行政組織法第八条の三に規定する特別の機関
 四 人道復興関係国際機関 国際連合難民高等弁務官事務所その他国際連合の総会もしくは安全保障理事会によって設立された機関もしくは国際連合の専門機関またはわが国が締結した条約その他の国際約束により設立された国際機関であって人道復興支援活動に関するものとして政令で定める国際機関をいう。

 2 人道復興支援活動として実施される業務は、次に掲げるもの(これらの業務にそれぞれ付帯する業務を含む)とする。
 一 医療
 二 被災民の帰還の援助、被災民に対する食糧、衣料、医薬品その他の生活関連物資の配布または被災民の収容施設の設置
 三 被災民の生活もしくはイラクの復興を支援する上で必要な施設もしくは設備の復旧もしくは整備またはイラク特別事態によって汚染その他の被害を受けた自然環境の復旧
 四 行政事務に関する助言または指導
 五 前各号に掲げるもののほか、人道的精神に基づいて被災民を救援しもしくはイラク特別事態によって生じた被害を復旧するため、またはイラクの復興を支援するためにわが国が実施する輸送、保管(備蓄を含む)、通信、建設、修理もしくは整備、補給または消毒

 3 安全確保支援活動として実施される業務は、国際連合加盟国が行うイラクの国内における安全および安定を回復する活動を支援するためにわが国が実施する医療、輸送、保管(備蓄を含む)、通信、建設、修理もしくは整備、補給または消毒(これらの業務にそれぞれ付帯する業務を含む)とする。

 第二章 対応措置等

 (基本計画)
 第四条 内閣総理大臣は、対応措置のいずれかを実施することが必要であると認めるときは、当該対応措置を実施することおよび当該対応措置に関する基本計画(以下「基本計画」という)の案につき閣議の決定を求めなければならない。

 2 基本計画に定める事項は次の通りとする。
 一 対応措置に関する基本方針
 二 対応措置を実施する場合における次に掲げる事項

 イ 当該対応措置に係る基本的事項
 ロ 当該対応措置の種類および内容
 ハ 当該対応措置を実施する区域の範囲および当該区域の指定に関する事項
 ニ 当該対応措置を自衛隊が外国の領域で実施する場合には、当該対応措置を外国の領域で実施する自衛隊の部隊等(自衛隊法第八条に規定する部隊等をいう。以下同じ)の規模および構成ならびに装備ならびに派遣期間
 ホ 国際連合、人道復興関係国際機関または国際連合加盟国(第一八条において「国際連合等」という)に無償または時価よりも低い対価で譲渡するために関係行政機関がその事務または事業の用に供しまたは供していた物品以外の物品を調達する場合には、その実施に係る重要事項
 ヘ その他当該対応措置の実施に関する重要事項

 三 対応措置の実施のための関係行政機関の連絡調整に関する事項

 3 第一項の規定は、基本計画の変更について準用する。

 4 対応措置を外国の領域で実施する場合には、当該外国(イラクにあっては、第二条第三項第一号の政令で定める国際連合の総会または安全保障理事会の決議に従ってイラクにおいて施政を行う機関を含む)および人道復興関係国際機関その他の関係機関と協議して、実施する区域の範囲を定めるものとする。

 (国会への報告)
 第五条 内閣総理大臣は、次に掲げる事項を、遅滞なく、国会に報告しなければならない。
 一 基本計画の決定または変更があったときは、その内容
 二 基本計画に定める対応措置が終了したときは、その結果

 (国会の承認)
 第六条 内閣総理大臣は、基本計画に定められた自衛隊の部隊等が実施する対応措置については、当該対応措置を開始した日(防衛庁長官が第八条第二項の規定により当該対応措置の実施を自衛隊の部隊等に命じた日をいう)から二十日以内に国会に付議して、当該対応措置の実施につき国会の承認を求めなければならない。ただし、国会が閉会中の場合または衆議院が解散されている場合には、その後最初に召集される国会において、速やかに、その承認を求めなければならない。

 2 政府は、前項の場合において不承認の議決があったときは、速やかに、当該対応措置を終了させなければならない。

 (本府による対応措置の実施)
 第七条 内閣総理大臣またはその委任を受けた者は、基本計画に従い、対応措置として実施される業務としての物品の提供(次条第一項に規定する物品の提供を除く)を行うものとする。

 2 内閣総理大臣は、基本計画に従い、対応措置として実施される業務としての役務の提供(次条第二項に規定する役務の提供を除く)を行うものとする。この場合において、内閣総理大臣は、イラク復興支援職員(一般職に属する国家公務員のうち対応措置に従事する内閣府本府=以下「本府」という=の職員をいう。以下同じ)にその実施を命ずるものとする。

 3 前二項に定めるもののほか、本府による対応措置の実施に関し必要な事項は、政令で定める。

 (自衛隊による対応措置の実施)
 第八条 内閣総理大臣またはその委任を受けた者は、基本計画に従い、対応措置として実施される業務としての物品の提供(自衛隊に属する物品の提供に限る)を行うものとする。

 2 防衛庁長官は、基本計画に従い、対応措置として実施される業務としての役務の提供(自衛隊による役務の提供に限る)について実施要項を定め、これについて内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊等にその実施を命ずるものとする。

 3 防衛庁長官は、前項の実施要項において、対応措置を実施する区域(以下この条において「実施区域」という)を指定するものとする。

 4 防衛庁長官は、実施区域の全部または一部がこの法律または基本計画に定められた要件を満たさないものとなった場合には、速やかに、その指定を変更し、またはそこで実施されている活動の中断を命じなければならない。

 5 対応措置のうち公海もしくはその上空または外国の領域における活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の長またはその指定する者は、当該活動を実施している場所の近傍において、戦闘行為が行われるに至った場合または付近の状況等に照らして戦闘行為が行われることが予測される場合には、当該活動の実施を一時休止しまたは避難するなどして当該戦闘行為による危険を回避しつつ、前項の規定による措置を待つものとする。

 6 自衛隊の部隊等が対応措置として実施する業務には、次に掲げるものを含まないものとする。
 一 武器(弾薬を含む。第一八条において同じ)の提供
 二 戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油および整備

 7 自衛隊の部隊等は、外国の領域において対応措置を実施するに当たり、外務大臣の指定する在外公館と密接に連絡を保つものとする。

 8 外務大臣の指定する在外公館長は、外務大臣の命を受け、自衛隊による対応措置の実施のため必要な協力を行うものとする。

 9 第二項の規定は、同項の実施要項の変更(第四項の規定により実施区域を縮小する変更を除く)について準用する。

後半