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沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック
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第141号(2002年11月28日発行)


【報告】
特措法違憲訴訟控訴審判決

 「原告らの控訴を棄却する」。主文が読みあげられると、原告席の反戦地主たちは一瞬あぜんとした表情を浮かべ、渡辺等裁判長をにらみつけた。傍聴席で見守った私たち支援者から「国には逆らえないのか」「恥ずかしくないか」と怒号が飛び、法廷は騒然とする。裁判所玄関前では、「不当判決」の垂れ幕が強風に揺れた。

 十月三十一日午後一時十分、福岡高裁那覇支部で、米軍用地特措法違憲訴訟の控訴審が始判決が下された。

 判決前には裁判所前の公園で集会を開き、原告の反戦地主と弁護団のそれぞれが決意を明らかにしていた。支援者からは、私たち関東ブロックから上原代表が発言した。上原代表は原告と弁護団に体を向け、「(原告の)みなさんご苦労様です。ヤマトからわざわざ来ていただいた弁護団のみなさん、本当にご苦労さんです。基地がある限り私どもは闘い続けて、水が逆さまに流れているのを元に戻すという、そのことをヤマトにいる者も応援しますので、みなさんがんばってください」と端的にエールを送った。みな、いかなる判決が出ようとたたかい続けるという決意でのぞんだが、ほぼ国側の主張通りの地裁判決よりさらに後退したひどい内容に、反戦地主の顔がこわばっているように見えた。しかし反戦地主は闘いに誇りを持ち、むしろ、政府・司法を追いつめるこの闘いをこれからも続けることを口々にしていた(発言別掲)。

 関東ブロックからは運営委員四名が参加したが、全体としては支援の参加者が少なかったことは残念である。数の問題ではもちろんないが、私たち関東ブロックとしても運動を強化して、今後の動きに会員のみなさんの注目と参加を求めたい。    
 判決文の詳細は通信の前号から続く付録資料として掲載しています。関東ブロックではこの判決に対する学習会(十二月十二日)を予定しています(裏表紙参照)。多くの皆さんの参加を期待しています。 
(I)  


■弁護士と原告の声

  ――記者会見から――

●新垣勉弁護士
 (知花昌一さんについては)国の不法占拠を認めた上で、お金さえ提供しておけば不法行為をすることができるということ。(強制使用手続の途中で改悪した特措法による暫定使用の違憲性については)粗雑な論理で合憲だという判断をしている。今の司法の現状を考えますと予測された憲法判断ではありますけれども、私どもは県民の良心にかけてこの判決に対して上告をする。あらためて場所を最高裁の法廷に移して、沖縄の現実を、米軍用地特措法が持っている憲法との歪みをぜひ全国民のみなさんや最高裁裁判官に理解をしてもらって、違憲判断をかちとれるよう今後ともがんばっていく。

 憲法判断として際立っていたのは、過去の事実をもとに暫定使用制度を適用しても何ら違憲の問題は生じないということで、一般論として原告らの請求を退けている。すでに強制使用手続が開始をされ、公開審理で手続がおこなわれている最中に、米軍用地特措法が改悪をされて、いわゆるルールを途中でねじ曲げて暫定使用制度を創設したわけですから、このような具体的な細かい現実に立脚すれば、控訴審判決のような大ざっぱな論理は出てこないはずだ。

●知花昌一さん(原告)
 国が不法占拠したときに、僕らは弁護士の先生方も含めて、持てるすべての手段を尽くして自分の権利の回復をやったわけです。それも穏便にというか、正当な形でやったわけです。立ち入りを要求し、それも断られ、みんなで行って家族だけ入ってもいいよと言ってもそれも断られ、機動隊が守り入れない。そして裁判所に訴えて仮(処分)裁判で国側とやり合いをしながら、裁判所は立ち入りを認めていく。自分の権利の回復をやろうと一生懸命やったわけです。

 しかし、そのような中身にもかかわらず、損害賠償も認めない、違法な不法占拠を警察権力によって守っていく。裁判をしてちゃんと権利を回復しようとしても裁判費用も認めない。国民が、私たち地主が、じゃぁ、自分の権利をどういうふうに回復するかということです。法を守るかということです。今の法律の中では精一杯やってきたわけです。何も横やりはしていないわけです。国が横やりをしたことに対して、損害賠償も認めない、警備も過剰ではない、裁判を起こしてもあなたたちはダメですよと。何が私たちの権利回復の道があるのか。そういうものがいっさい今の判決では認めなかったということです。

 そういうことになると、私たちには法に基づいた権利回復の道がなくなっている。何か、法律以外にも別の形の自分の権利の主張、たたかいで権利を回復する運動をしなくちゃいけないという、そういうことが含まれているのではないか。場合によっては裁判官はそうでしかないよ、と言っているのじゃないかというふうにさえ思うのです。

 そうじゃないはずです。法というのは、裁判所というのは、そういう権利を守るということが基本的にはあるはずです。こんな形じゃもう嫌だ。別の方法を含めてまた考えなくてはいけないのじゃないか、ということも思います。

●有銘政夫さん(原告、違憲共闘会議議長)
 私たちの訴えは、明らかに憲法に基づいた権利を主張しているわけです。その中で憲法判断をすべて回避をしている。これは司法の自殺行為です。裁判所あってなきのごとしと言いたい。

 例えば、この判決の中でも安保条約優先ということが明らかです。そうするならば、いったい日本の司法制度、裁判所は日米安保条約に基づいて、いわゆる市民の側の、地権者の側の権利がいったいどこに保障されているのか。どこを見てもどこをめくってみてもないはずなんです。だから最終的には僕たちが要求したことを、安保条約を誠実に実践しなくてはならないから、そして高度な公共性があるからと言う。、私たちとは全然無縁な金網で隔てられた完全に私たちの生活を分断していながら、そこが優先権を持つということであれば、市民の側の権利はまったく顧みられない。このことが裁判の名において言い渡された。

 これにもうがまんできません。しかし、やっぱり私たちは日米安保の本質をこの裁判を通して一定暴き出せたと思う。じゃあ、これからどうするか。これでいいのか。この判決は、私たちがどんな手を尽くしても、やりたい放題の行政がおこなわれても文句を言うな、といういい見本だと思います。これで、全国の主権者が黙っていられるはずがない。こういうことをやっぱり内外にアピールした意義は非常に大きいと思います。

 だから、また二審の判決を受けて、より強力な決意で、これはもっともっと全体な訴えをしながら新たな闘いを始めなければならないという、逆に私たちの闘志を高めた結果にもなると考えます。

●照屋秀傳さん(反戦地主会会長)
 この類いの裁判を見るにつけ考えさせられるのは、何をやっても不法ではない、違憲ではない(ということです)。僕は特措法自体が違法であるし、不法であると考えている。この不法の下におこなわれる裁判も不法である。それでは法とは何なのか、ということを自分に問うてみました。これは私たち地主の良心だなぁと。この良心こそ誰からも傷つけられない真の法だと思うのです。この法に基づいて私たちは最後まで闘いぬいていく。そのことを県民にも訴えながら、県民の支援もいただきながら最後まで全国のみなさんとともにがんばっていきたいと思います。


 ――集約集会から――

●島袋善祐さん(原告)
 私は土地を取り上げられるときからこの沖縄に生きていました。一九四五年四月一日から今日まで、子どもといっしょに計算してみましたが、二万千三十三日、土地を取り上げてまだ返ってきていないわけですね。しかしそれからマイナス四をしてください。不法占拠のとき、みんなで闘って四日間は取り返すことができたわけだからね。だから八十(才)になる人が何歳生きるかということを計算してみたら、二万九千日くらいですからね。それからすると、たくさんの人たちが軍事基地に土地を取られて、一歩でも軍事基地に入れないことを考えると、苦しく思います。

 これはあんまり見せびらかすものじゃないけれども、当時米軍によって奪われたときの収用宣告書です。英語も書いているし、日本語も書いているし、多くの人たちはこれを知らないで印鑑を押した人もいっぱいいました。それからすると闘いというのは、どこでもいつでも朽ちなくあるんですよね。だからいっぺん負けたからもうギブアップするのじゃなくして、今勝たずんばいつの日か栄えある歴史を、沖縄県民は必ず勝たなくてはいかんですから。平和の歯車をみんなで回す。かつて祖国復帰運動をしたようにそうすれば基地は必ず返ると私は思っています。

●大城保英さん(原告)
 有事法制下、戦時体制下の判決というような感じを受けます。まさにそれの先取りなのです。戦後五十七年間、沖縄の基地は朝鮮戦争から湾岸戦争まで世界のいたるところの戦争に使われました。多くの人々が亡くなりました。まずこれを止めさせるという意義が一つあると思います。

 二つ目には憲法の上に安保がある。国の最高法規である憲法が軽視され殺されている状況。今日の判決もまさにそれだと思います。憲法をあくまでも最高法規として、国民の生命と暮らしを守る砦として、生き返らせる意味があると思います。これはやはり世論が非常に大きな力になると思いますし、このような裁判所のていたらく、これを全国民に知らせる必要があり、最高裁まで、やはり憲法が生き返るまでいっしょにがんばっていきたいと思います。

●真栄城玄徳さん(原告)
 この間、政府は何回も米軍特措法を改定して私たちの土地を奪ってきました。とくに改定特措法の段階では、ある意味ではああいう状況に政府を追いこんだというのは、私たち自身の一つの闘いの成果であったのかなぁと思ったりするわけです。追いつめられた政府はやはり牙をむき出しにして私たちに襲いかかってきた。私たちはそのことに対する有効な闘いをどの程度組めたか、今私自身も反省をしているわけですけれども。最高裁への上告で、さらに広範な国民に沖縄の現状を訴えていくことがとても大事だろうと思います。

 沖縄の地ではまさに憲法の上に安保条約あるというふうな、きわめて矛盾した実態があるわけです。じゃぁ、そこに住んでいる私たちの生命はどうなるのか、ということが国民の中でなかなか論議をされないという実態があるのだろうと思います。最高裁の裁判がどういうものかよくわからないですが、やはり世論に訴えていく中で政府を追いつめていくという闘いをみんなといっしょにつくりあげていきたいと思います。