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第121号(2001年2月28日発行)

司法制度改悪

 昨年一一月に発表された「司法制度改革審議会」中間報告には、「弁護士費用の敗訴者負担制度の導入」が盛り込まれた。この制度が導入されると、一般市民が行政や大企業を相手に裁判を起こすことはほとんど不可能になる(下記参照)。日本の司法制度が公平だと考える人はもはやいまい。論理や事実だけでは勝てない。公害・環境訴訟を見よ。反戦地主の訴訟を見よ。累々たる敗訴の屍を乗り越え、一縷の望みにすがって行政訴訟を提訴している。

 地方分権法しかり、土地収用法しかり。改革の名の下に、市民の権利は剥奪されてきた。例によってマスコミの報道は一面的だ。

 しかし、今年に入って、ようやく市民の反撃が始まった。土地収用法改悪の動き(前号参照)とともに注目していく必要がある。詳細は次号

国民の皆さんへの訴え ー弁護士費用の敗訴者負担についてー

 1999年に内閣に設置された「司法制度改革審議会」は、これまで裁判を利用する国民の立場からわが国の司法のあり方を検討してきており、昨年11月に中間報告を発表しました。「国民の司法参加」「国民と司法をつなぐ人的基盤の拡充」「国民にわかりやすく利用しやすい司法制度の整備」を三本柱とする抜本的改革をめざす内容になっています。

 ところが、残念なことに、中間報告には弁護士費用の敗訴者負担制度の導入が盛り込まれており、この点は従来日弁連が反対してきたものであって、到底認めることができません。

 1 弁護士費用の敗訴者負担制度とは、現行制度では、民事裁判における弁護士費用は、それぞれの当事者が自分の依頼した弁護士の費用を負担しています。他方、弁護士費用の敗訴者負担制度とは、裁判で負けた者が相手方の弁護士費用を支払わなければならないという制度です。
 2 日本弁護士連合会は、弁護士費用の一般的な敗訴者負担制度には反対です。この制度は、裁判に勝った者からすれば合理的な制度のようですが、わが国の民事司法の条件下でこの制度を導入するとさまざまな弊害が生じてくることが危惧され、日弁連は、一般的な敗訴者負担制度には、以下の理由から強く反対しています。

 (1)わが国においては、当初から勝敗がはっきりしている事件は多くなく、むしろ勝敗がはっきりしない事件が多いのが実情です。一般的な敗訴者負担制度が導入されれば、二重の弁護士報酬の負担に耐えるだけの経済力のない市民や企業を裁判から遠ざけ、訴訟提起を躊躇、萎縮させるという効果をもたらすことになります。

 (2)また、消費者の権利確立に関する訴訟、公害訴訟、国・地方自治体の責任を問う訴訟等いわゆる「政策形成訴訟」ともよばれる分野において、幾多の敗訴判決を重ねた末にようやく勝訴を勝ち取り、法令の改正や政策の変更がなされるに至っていることが多くあります。一般的な敗訴者負担制度のもとでは、このような訴訟を提起することができなくなってしまいます。

 (3)訴訟提起前の交渉においては、敗訴の場合の相手方の弁護士報酬負担への懸念から、本来可能な主張もすることなく、不当な請求に屈して示談に応じてしまうおそれがあります。訴訟提起後においても、敗訴の場合のペナルティが大きくなるため、意に反する和解を受け入れざるを得なくなるおそれがあります。

 (4)訴訟を提起する場合だけでなく、応訴する場合においても、正当に争えば勝訴(請求棄却)の見込みがあっても、争って負けたときは相手の弁護士報酬も負担しなければならないということでは、応訴することをためらい、相手の請求を受け入れてしまうことになりかねません。

 (5)基本的には、日本社会の法化や契約の書面化が一般的となり証拠が得やすく、証拠開示制度の実現、証拠収集制度の拡充・拡大や立証責任分配の適正化等の民事訴訟の改革が進展し、全体として、裁判の利用が普及した段階になればともかく、現時点では、原則的に弁護士報酬は各当事者が支払うという制度が日本の実情に適しています。国民の皆さまにおかれては、裁判を利用する立場から、弁護士費用の一般的な敗訴者負担制度が導入されることにより、どのような影響が生じるかを十分ご理解いただき、ともにこの制度の導入に反対いただきますよう訴えます。

          平成13年2月15日    日本弁護士連合会会長 久保井一匡