沖縄県収用委員 第4回会審理記録
芳澤弘明(土地所有者代理人)
○土地所有者代理人(弁護士 芳澤弘明)
私も嘉手納基地の中に土地をもっているものの1人です。私に対しても交渉はしたのかしなかったのか、お会いしたことがないので新崎先生と同じようなことを最初に申し上げておきます。
次に、海兵隊についての再求釈明、海兵隊が日本、沖縄に駐留する根拠等について釈明を求めます。
前回、伊志嶺善三代理人の質問に答えて起業者側は、「海兵隊は陸、海、空軍に並ぶ軍隊の一部であると承知している」と釈明されました。ということは、海兵隊は陸軍の一部でもない、海軍の一部でもない、空軍の一部でもないということだと理解します。現に在沖米軍についても海兵隊司令官のグエン・イー・ローリング少将が、他の3軍の指令官を差しおいて4軍調整官に任じられております。海兵隊が他の3軍と肩を並べる独立の軍種となったのは、1952年6月制定のパブリック・ロー416号によるものであります。ちなみに、この法律は海兵隊出身のポール・H・ダグラスとマイク・マンスフィールド、両上院議員によって提案されたものであります。
ところで、1951年9月8日調印、1952年4月28日に発効し、そして1960年6月23日に失効したのが旧安保条約です。1960年1月19日調印、6月23日に発効したのが現行の安保条約です。この安保条約第1条には、日本に駐留する米軍は陸、海、空の3軍であると明記されております。海兵隊の文字はどこにもありません。
在日米軍の大半を占める海兵隊が沖縄に常駐する条約上の根拠は何であるか、ここで重ねて釈明を求めます。
いかがですか。
○当山会長代理
どうぞ、施設局。
○土地所有者代理人(弁護士 芳澤弘明)
前回のあなた方の答えに基づいて聞いています。
○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)
第2回公開審理への回答につきまして補足いたしますと、海兵隊はアメリカの軍の組織の上で、米海軍省に所属しておりまして、海兵隊の現役の人員は我が国の領海にある間におきましては合衆国軍隊の構成員として日米安保条約及び地位協定の適用を受けることになると称しておりまして、これに見られるとおりでございます。
○土地所有者代理人(弁護士 芳澤弘明)
海軍省の所轄に属することは承知しております。しかし、法律の上で独立した軍種(軍隊)になったのは1952年6月です。現行安保条約が発効したのは1960年です。その時点で独立の軍種(軍隊)になっているものを条約上明記しなかったということは、どういうことであるか答えられますか。
○当山会長代理
答えられますか。
○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)
これにつきましては、われわれの所管するべきことではありません。
○土地所有者代理人(弁護士 芳澤)
時間の節約のために、次に進みます。ここに「アメリカ海兵隊」という本があります。専門家が書かれた本であります。これからの孫引きですがね、「モンテツマの宮殿、トリポリの岸辺まで、我が祖国のためにいざ闘わん。海に空に陸に真っ先に闘う誇り高きその名はアメリカ海兵隊。夜明けから日没までところを問わず銃を手に、はるか北の雪の中、日照り続ける灼熱の地、いざ戦わん、アメリカ海兵隊」これは、アメリカ海兵隊讃歌の一節です。
トリポリというのは地中海に面したレバノンの港のことです。はるか北の太平洋、北方洋から灼熱のアフリカまで、中東、ペルシャ湾、地中海まで、昼も夜も真っ先に出かけていくのが海兵隊だと言うのです。事実1995年の国防報告には、世界のどこかで地域紛争が起こった場合には真っ先に海兵隊を投入すること、必要な場合には強行侵入作戦を行うと書いてあります。海兵隊は文字どおりの殴り込み部隊です。
このような海兵隊は日本を守るために日本にいるのではない。チェイニー国防長官が1992年3月に明言しました。またペリー国防長官はアジア・太平洋に10万人、日本に4万7,000人の米国軍隊のプレゼンスは必要、日本が在日米軍の経費の70%以上を提供していることは、米国の国家的利益に奉仕している。日本のためじゃないんです。アメリカの国家的利益のためにプレゼンスさせているということです。
そして、ご承知の一昨年のナイ・レポート、ナイ国防次官補は「ソ連が崩壊した結果、この地域、すなわち日本に対する軍事的脅威が減少したにもかかわらず、日本におけるわれわれのプレゼンスは、以前としてわれわれの地球的規模の前進展開体制にとって死活的に重要な側面である」と言っています。日本のためじゃない、そして2度にわたる湾岸戦争では、沖縄人を母にもつフランク・チヨーエイ・アハレン伍長が、こともあろうに米軍の爆弾によってあたら若い命を落としました。石坂真砂、美砂というシャンソン歌手がこのことを歌にして歌っております。恩納岳であのブート岳を撃ち続けてきた実弾砲撃演習、今度は富士山、北から東からこれを打たせるという、北海道の矢臼別、宮城県の王城寺原、そして大分県の日出生台にこれをもっていってそこで撃たせるという、これは本土の沖縄化であって、ますます許せない、このSACO報告。こういう海兵隊です。
極東はおろか、地中海、中東ペルシャ湾まで出かけて行って強行侵入するアメリカ海兵隊は、先ほど新崎教授も言われたとおりのことですが、日米安保条約第6条に真正面から衝突する、抵触する。この6条に違反するものと思いますが、いかがですか。これが第2点です。
○当山会長代理
どうですか、施設局、どうぞ。
○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)
本件につきましては、起業者としてお答えする立場にございませんし、本審理にもなじまないと思います。
○土地所有者代理人(弁護士 芳澤弘明)
収用委員会に伺います。まさに沖縄駐留の米軍基地、その米軍の大半は海兵隊なんですよ。その海兵隊の用に供する土地の問題が今審理の対象になっているんですよ。それがなぜなじまないのか、釈明を求めてください。
○当山会長代理
施設局、どうぞ。
○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)
起業者として、そこまで答える立場にございません。
○土地所有者代理人(弁護士 芳澤弘明)
防衛施設局は、つまり本件の起業者は国の立場に立って申請をしているのではありませんか、国の立場に立っているから本件申請をしているんじゃありませんか。その立場にないとはどういうことでしょうか。いかがでしょう。
防衛施設庁長官は、その立場で特措法の改正をすると、国会でも答弁をしておりましたよ。その末端の出先機関が本件の起業者ではありませんか。答えてください。
○当山会長代理
なぜ関係ないのかという趣旨だと思いますけどね。
○土地所有者代理人(弁護士 芳澤弘明)
そうです、なぜその立場にないのか。
○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)
先ほどお答えしたとおりでございます。
○土地所有者代理人(弁護士 芳澤弘明)
当山会長代理、このことは記録にとどめておいてください。私が理を尽くして釈明を求めたことに対して、今のような答えしか出なかったということは記録にとどめておいてください。
終わります。
○当山会長代理
大変ご苦労様でした。
多少、予定時間を食い込んでおりますけど、ほぼ予定どおり審理は進行して
おります。これから15分ほど、40分ごろまで休憩を入れまして、その後、楚辺通信施設についてのご意見を聞きたいと思います。それでは休憩に入ります。