沖縄県収用委員 第4回会審理記録


当山尚幸会長代理

 みなさんこんにちは。えー、お天気の悪い中、たいへんごくろうさまです。

 第4回公開審理をこれより始めたいと思います。えー、本日は兼城会長がまだ病気療養中でありますために、私会長代理の当山が審理の進行を務めさせて頂きたいと思いますので、どうぞご協力のほどをよろしくお願いいたします。

 ではまず、収用委員の紹介を行います。わたしの左側から、高良有政委員、比嘉堅委員、右側に移ります。西賢祐委員、大城宏子委員、渡久地政實委員の6委員でございます。

(拍手)

 ありがとうございます。

 えー、審理進行のご協力をお願いいたします。意見陳述をされる方は、わたしから指名いたしますので、指名された方のみ意見を述べてください。勝手に意見を述べないようにお願いいたします。審理記録を作成しておりますので、意見陳述者はマイクを使用して、起業者側・那覇防衛施設局の方は、職名および氏名を、土地所有者の方は、自己の権利にかかる施設名、および氏名を述べて陳述してください。なお、起業者の方で、一人で意見陳述を担当なさる場合は、最初の意見陳述の時のみに、職名氏名をおっしゃっていただいて、その後は省略していただきますようお願いいたします。

 今日の審理がスムーズに進行できて、多くの方が意見陳述できるよう、審理に参加しているみなさんのご協力をお願い申し上げます。

 えー、本日の審理の進め方を申し上げます。まず第一に、前回、第3回公開審理におきまして、未了となっている求釈明がございますので、それをやっていただきたいと思います。それから、第3回公開審理におきまして、施設局が回答を保留といいますか、約束した事項がございましたので、その釈明をやっていただきたいと思います。それから3番目に楚辺通信所に関する個別具体的な意見陳述が、ずっと先送りになってきておりますので、ぜひ今日はやっていただきたいと思います。それから、あとその他の事項がございますが、その4点を予定しております。

 で、方法といたしましては、求釈明を前回の積み残しをやっていただきたいと思いますが、えー、地権者の方からその前に述べたい意見があるという申し入れがございます。えー、それで、名前がこちらに出ておりますので、できるだけ、意見としてですね、述べていただければ。えーっと、有銘さんですかね。ご意見があるようですので、先ずおうかがいしてからしたいと思います。

(拍手)


有銘政夫(反戦地主:違憲共闘会議議長)

有銘政夫

 嘉手納に土地をもつ有銘政夫です。今日4回目の公開審理を迎えたわけですけれども、先月の17日に、こともあろうに審理途中にルールを変えるという暴挙が国会で行われたました。このことは、この審理と無関係ではありませんので、ぜひ、意見を述べさせてほしいということで、今日ここに立っております。

 さっそく意見を申し上げます。

 橋本総理大臣は、4月の2日に屋良朝苗元沖縄県知事の県民葬に参加をし、その中で、平和で活力ある県土の実現という屋良先生の希望した沖縄の実現に向け、政府として全力を尽くすと、もっともらしいことを発言したにも関わらず、その晩、東京に帰って、同日県民葬に同席をしておった小沢新進党党首と会談をし、その中で、米軍用地強制使用手続きへの権限を県収用委から国へ移すと、そういった基本的な確認をした上で、この特措法改悪を全面的に協力をするというこんな暴挙をやっているわけです。ほんとに舌の根も乾かないうちに、よくもぬけぬけとこういった政治的駆け引きをしたもんだと、ほんとにあきれかえっております。まさに、小沢党首の政治的野望がこの窮地に立った内閣の側に立つという形で、一挙にこの暴挙をなしたわけです。

 ですから、自民党と新進党ががっちり手を組んで、法の改悪を押し通そうとするわけですから、これは審議をする前から、方向性は見えていると。こういう風に私たちにも全国民にも映ったというふうに思います。このことをもとにして、4月の3日、閣議決定。ただちに衆議院に送付をし、4月11日、まさにこの短期間にですね、ほとんど論議らしい論議もせずに、賛成9割という形で、衆議院を通しています。

 そして、参議院に送られた議案は、4月の17日、これも超スピードの国会の中で、強行可決されました。これも8割が賛成していますから、圧倒的多数で通したんだからという考え方になっているというふうに思います。

 しかも、17日には、まさかと思いながらわたしたちは沖縄からも代表団が上京し、参議院を傍聴しました。委員会における審理中だという考え方で行ったんですけれども、まさに参議院の本会議にようやく間にあったという時間的なものでした。

 その参議院ですけれども、傍聴に入ってですね、傍聴券が渡されて、この傍聴券の控えはとってありますけれども、裏に書いてあります注意事項を良く読んでおくようにという注意がありましたので、一読しましたけれども、徹底した身体検査をして中に入れるという状況でしたけれども、まさに中に入ってみるとですね、あの審議たるや、ほんとにまじめに、この特措法は問題だと、問題提起している時にもですね、議場はもう、騒然として、ヤジが飛び、笑いが飛び、まあいわゆるせせら笑いながらですね、それこそ、これが国会かなと思う、自分の目を疑う状況でした。

 にもかかわらず、途中で傍聴席における声を出したということでですね、守衛がいわゆる強権的に引っぱり出そうとした。これに対して暴力をやめろという当然の声がでましたけれども、そう言う風にですね、何名かを排除しているわけです。当然その傍聴券にも書いてあるように、4番目に、傍聴規則に違反した時は退場させることがありますと書いてあります。しかし、あの状況の中で、あんないいかげんな国会の審理を見ていたら、地権者である私たちは、怒りを禁じ得ません。当然抗議の声がでて当たり前でしょう。と思うわけですけれども、その、中からですね、何名かが、場外に出された。ま、傍聴券にも書いてあるように退場させたんだろうと思っていたらですね、審理が終わってみたら、隣の部屋に監禁している、こういうことになって私たちは、2時間ぐらいそこで抗議をしたんですけれども、そのまま3時間半後にですね、現行犯逮捕ということで、警察に引き渡された。こんな暴挙をやっているんですね。

 その様子を見るときにですね、私たちはこういう風に感じました。さすがに後ろめたいことをしているんで、自分達の城に入ってきたものに、文句をいわせないという体制をですね、最初から取っていたんだなと。待ちかまえたように、傍聴席から排除していく。こともあろうにですね、今日こちらにきておりますけれども、反戦地主会の会長の照屋さん、そして象のオリの地権者である知花さん、ふたりも逮捕していくということでしてね。ほんとに盗人猛々しいとか、ウチナーグチでは、「ヌスドゥヌクビヌ タカアガイ」といいますけれども、ほんとにあんな傍若無人なですね、やり方に対して、一体、国会は国民の人権をほんとにどう考えているのか、なにをやってもいいというのが国会であれば、もはや国会の存在価値もないし、法治国家とも言えないというふうに憤りを禁じ得ませんでした。

 そして、この法案に対してですね、賛成という立場の発言は、必要最低限のやむを得ざる措置なんてことをいっています。そして、最も許しがたい事は、個人の権利よりも国益が優先するんだと、言葉かえれば、憲法よりも安保条約のほうが優先するんだと、こういった論法であります。当然反対をする立場は、憲法に違反する。土地収用法の禁じている軍隊と皇室に関わる強制使用は出来ないはずだと。そういう立場から米軍用地の強制使用というものは、まさに憲法に反するということを力説している中ですね、一向に憲法という発想をしないまま、論議を尽くさないまま、強行採決したのが実態なんです。

 そして、政府はこのことを正当化する理由としてですね、要約すると3つくらい挙げているように思えます。ほとんどの地主が契約している、拒否地主は一部だ、こういうことなんです。しかも過去3回の強制使用手続きにおいては、当時の県知事の同意、県収用委員会の審理を経た法的には瑕疵はないのだ、とこういうようなことです。そして、必要最小限の処置ということを繰り返しています。

 果たしてこの3つ。その通りでしょうか。

 昨日、たまたま軍用地裁判がありまして、読谷村の山内村長が、証言をなさっていましたけれども、最後に国の代理人のほうから、こういった趣旨の質問がありました。「証人は多くの地主が契約に応じているということを承知ですね。」と。山内村長はそれに応えてですね、「みなさんはほんとに沖縄県民が喜んで軍事基地に土地を提供したと言いたいのか、もしそうならそれは間違いだ。わたしは総理大臣にもはっきり自分の口で申し上げた。もしほんとに安保が必要、軍隊が必要、あの都市型ゲリラ訓練など、(まあ、あれは恩納村から撤去されましたけれども、現在沖縄にあるわけです。)もしそう言ったものがほんとに必要だというならば、霞ヶ関のあのビル街でやったらどうか。こういうことをはっきりいったんだ」と、いうことを、答えていました。それを聞いた国側の弁護人は「終わります。」と、まあ、3分くらいで質問を終わっています。

 まさに、なぜ沖縄なのか、なぜ海兵隊が沖縄に必要なのか。こういったことを言うときに、国の側は、しかも賛成をする立場の人たちは、安保が必要、平和を守る、なんていう言葉を吐きます。そして大事なことはですね、確かに過去3回の県の収用委員会の態度は、国からあざけり笑われても仕方のない、状況であったという風にわたしも思う。言うだけはいいなさい。なにかこちらから、防衛施設局に対する質問についてですね、質問はこの場でやり取りすることはできない。答える必要はない。こういう形でありました。で、期日がせまり、タイムリミットが来ると、審理を打ち切って一方的に裁決をしてしまった訳ですから、わたしたちは意見を言い放し。その時から重要な問題はたくさん指摘されています。にも関わらず一つもまじめに審理をしてかった結果、このような状態で、復帰後25年間も、この強制使用が続き、そして、むちゃくちゃに、勝手に米軍用地として使用された。

 だから問題がないと、こういう風に言い切っているのが、国の姿勢です。このことはやっぱり、過去の収用委員会の審理のあり方や、沖縄県知事のとった態度なども批判されなくてはならないことは当然だという風に思いました。

 なんといっても多くの軍用地主が、契約に追い込まれた、しかたなく契約をせざる得なかったというのは正しいでしょう。しかし、圧倒的多数の人たちは契約をしているじゃないか、反対しているのは一部だと。こういう風に居丈高にいう裏には、よろこんで、積極的にという、暗にそういうことを印象づけるための方便でしかない。これははっきりしています。もっとはっきり言うならば、一部の人たちが反対しているといいながらですね、その反対している人たちに対する仕打ちは、これは一体なんですか。追いつめられて法の範疇でくくれなくなると、法を書き換えてまでも弾圧をする、こういう中で契約に追い込まれているということはですね、一体これは契約をした人たちの責任でしょうか。こういった発想であるかぎり、地権者の権利なんていうのは絶対に保障されるわけがないという風に思います。

 そして、その内容はですね、まさに、まあ、新聞でも報道されていますけれども、県の収用委員会の決済がなくても、契約による使用期限が切れても、裁決申請が不法として却下されても、この法律によって継続使用ができると言う風に、書き換えた訳ですから、これはもう、とんでもない話ですね。しかもこれを軍事基地として使うというのですから、まさに、平和憲法の範疇ではない、もう全然その範疇ではない。軍事立法だし、有事立法だし、それこそ日本を再び危険な方向に導くものだというふうに言わなければなりません。

 それで衆議院でもですね、審議の時の質問に答えて橋本総理はこういう風にいっています。「公共の目的、正当な補償の要件を満たしているので、違憲ではなく合憲だ」と。ほんとに憲法論議をするならばですね、どこがこの憲法の保障する条文に適合するのか、まさに憲法9条はもちろん、憲法99条は、総理大臣・国会議員はじめ憲法を守る義務があると明記されているはずなんです。一方で「違憲ではない、合憲だ」と、総理大臣が言えば、法律違反ではないなんていう世の中があれば、もうこれは、まったく論外だというふうに言わざるをえません。

 ま、今回の収用委員のみなさん方は、このことについて憲法を基軸にこの審理に臨んでおられる姿勢を見て、私たちは一様にその姿勢に対しては評価はしています。その結果ですね、象のオリの知花さんの土地の緊急使用は、当然その手続きにおいてですね、十分な説明がつかないわけですから却下されて当たり前です。それから、伊江島の阿波根さんの税金問題、重課税裁判では一審においてこれは憲法に違反すると言う形で、全面的に私たちの訴えが通りました。ま、これは2審で逆転はしましたけれども、司法の場でも明確に憲法違反だと言う判断がでていることは事実なんです。そして今回の公開審理の、2回目の公開審理において、石原さんに対する手続き上の重大な瑕疵による却下。これは当然なことである。本当に憲法に基づいて一人一人の権利を保障するという立場で論議をすれば、このようなことはきちっと出なくてはいけない。手続き上の誤りが指摘されても、これは聞き置きましょうということで、国防上必要だからと言う理由だけで、審理を打ち切り、裁決をしてしまうようでは、こういった事実は明るみに出ません。

 そういうことを考えるとですね、当然、審理の結果として、あるべき姿が出てきた。そうなると手のうちようがないので、法を書き換えた。こういうことを繰り返していてはですね、私たちの権利が保障されることはありません。もっというならば、安保条約の中にですね、私たちの権利を保障する項目は一項もない。安保条約がわたしたちの権利・財産を守るなんてことはですね、全然ないわけです。

 まさに憲法の精神に立って、憲法に忠実に判断をすることによって、私たちは権利を主張することができるし、そして、権利も保障される。

 そのことにおいて国が誤っていればですね、国が是正されるのが当たり前の話であって、総理大臣が言えば、なんでも正しいという、国会議員が多数で決めれば何でも正しいという、こういった世の中を放置することはできません。

 このような、法的瑕疵は、これから一つ一つ、その施設ごとに審理をするなかで、もっとたくさん明らかになるというふうに考えています。実質審理をする。実質審理をやってほしい。こういった私たちの願いは、この事実を一つ一つ明るみに出すこと、このことが重要だと思っているから申し上げているわけです。

 公開審理の冒頭で兼城会長が内外に明らかにしました実質審理の権利を、重ねて強く要請をして、この特措法改悪の持つ大変な事態と、それから、そういう状況にあっても、県の収用委員会が、私たち地権者の一人一人の権利を憲法に基づいて、正しく保障するという立場を堅持してもらうよう強く要請をして、意見を終わります。

(拍手)

当山会長代理:ちょっとお願いでございます。あの、いろいろ力がはいったせいでしょうか、時間がかなりまた過ぎておりまして、また積み残しになりそうですなので、ご協力をお願いしたいのですが、えー、できるだけ持ち時間をですね、まもって頂いて、たくさんのご意見、いろんな方から聞けるようにですね、したいという風に考えます。

 それとこの審理との関連をはっきりさせて陳述していただければ、より収用委員としてはわかりやすいな、というふうに思いますんで、ご協力をお願い申し上げます。

 じゃ、続きまして、代理人の中村弁護士。よろしくお願いいたします。


  出典:第4回公開審理の録音から(テープおこしは比嘉

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