沖縄県収用委員 第4回会審理記録

新崎盛暉(一坪反戦地主会・代表世話人)


新崎盛暉:えっとあの、嘉手納の座布団地主兼普天間のハンカチ地主ですけれども、の、新崎ですが、今の城間さんの求釈明の続き、関連ですけれども、ちょっと聞いておきたいと思います。

 わたしのところには、一度も来た経験がありません。つまり、わたしのところには、わたしと家内とふたり、座布団地主兼ハンカチ地主がいますけれども、ふたりとも常に留守にしているわけではありません。それからこれまで防衛施設局が前回および前々回の強制使用のときに、例えば損失補償金の支払い等で、わたしの自宅とか学校とか、何回も来ています。わたしがどこにいるかというのは、大体分かっているはずですよね。電話連絡先も防衛施設局には教えてあります。わたしの自宅も大学の連絡先も教えてあります。しかし、まったく……、連絡しましたか。どうですか。坂本さん。わたしのところに会いたいという連絡しましたか。

 わたしは新聞でそれを見たので、わたしのほうから、会いに来いと督促をしようと思ったんだけれども、忙しくて忘れましたが、あなた方は、わたしの自宅も、勤め先も、電話も知っているはずです。わたしの家にほんとにきたんですか。どうですか。ほんとにきましたか。一度でも。一度でもきましたか。それは答えてください。

当山会長代理:それは求釈明でよろしいですか。

新崎盛暉:はい、求釈明です。それは、あの、城間くんの担当の部分。

当山会長代理:ああ、そうですか。えー、どうですか、施設局。

坂本施設部長:えー、800人の方の自宅の方にうかがいましたので、後で調べておきます。

新崎盛暉:はい、それでは次回答えてもらえば結構です。次回ぜひきちんと答えてください。

 では、わたしの、今日、求釈明を行いたい点は、2点あります。それは3月24日に再求釈明申立書の中で、述べてあります。

 で、一つの点は、どういうことかというと、第二回の求釈明の時に問題にしたアジア太平洋地域と極東の問題に関するものです。あの時にそのどこが違うのかという質問に対して、「審理になじまない」という回答がありました。なぜ、再釈明要求をしているのかというと、わたしはそのときも説明を申し上げましたけれど、これまで、沖縄で米軍用地を強制使用するための特措法の発動というのが4回ありました。で、それぞれ裁決申請の理由というのが述べられております。

 ところがそのなかで、90年11月でしたかね。前回と今回にかぎって、従来と違うアジア・太平洋地域、「日米安全保障体制は、我が国を含むアジア・太平洋地域の平和と安定にとって不可欠な枠組みとして機能しており」という文言を、前回と今回にかぎって加えたのはなぜか。つまり申請理由を変更したのはなぜか。ということをうかがっているわけです。このことについてお答えをいただきたい。

当山会長代理:施設局どうぞ。

坂本施設部長:えー、前回お答えしましたが、この釈明については「本審理になじまない」ということであります。

(会場:爆笑、怒号)

新崎盛暉:あの、最終的には、収用委員会が判断するもので、本審理になじむかなじまないかは。わたしが聞いているのは、安保がなんとかかんとかという話ではありません。なぜ、申請理由をあなたたちは変えたのですか、ということです。申請理由に基づいて公開審理は行われているんです。ですから、その申請理由を変えた理由を聞くのがなぜ審理になじまないというのか。そのことをお答えいただきたい。

当山会長代理:施設局どうぞ。

坂本施設部長:特に変えた理由はございません。

新崎盛暉:特に変えた理由はない。あの、特に変えた理由はないと……。つまり、こういう重要な、人の土地を強制使用するという申請理由を変えておいて、特に変えた理由はない。これが回答でしょうか。理由もなくて、申請理由を変えるんですか。申請理由を変えるからには、変えた理由があって、国際情勢の変化とかなんとかかんとかがあって、申請理由が変わってくるはずです。それをなぜかと聞いているのに、特に理由はないけど変えた。それが回答でしょうか。それは今はっきりと答えていただきたい。

当山会長代理:再釈明、求釈明ですね。では、施設局どうぞ。

坂本施設部長:ただいま回答した通りです。

(「だから、土地泥棒だと言うんだよ」と会場から)

新崎盛暉:こういうでたらめでいいですか。

当山会長代理:あと、あのー、今の求釈明と釈明という点では、これ以上前に進まないと思うのですが。収用委員会でもあとで検討させてください。今の内容について。

新崎盛暉:それではですね。このことについてちょっと補足をしておきますが、実はこの点については、5年前の公開審理の時にも取り上げた所であります。そのときにやはり「なじまない」という回答がありました。で、そのときなじまないという言い方をしたのは、実は収用委員会です。で、それだったら、なじまないことがなぜ申請理由になるのか、というところで、なじまないものだったらそういうところを削除させろと言う風に収用委員会に要求しました。そしたら、収用委員会は、あの、その指示は起業者にしなかったけれども、自主的にそこを削除していただけませんかとお願いをしています。しかし、その必要はないといって起業者が蹴飛ばした部分です。で、その時からの、ある意味ではその積み残しです。ぜひ、きちんとした実質的なご判断をお願いいたします。

 じゃ、次の点に移ります。

 これまで、国側は強制使用の理由の中で、こういうことをいっています。「安保条約第6条に基づく駐留軍の駐留は、我が国の生存と安全の維持という国益を確保する上で重要であり、高度の公共性を有する。 」と強調してきました。そして「高度の公共性を有するが故に、強制使用をすべきである。 」と力説してきたわけですが、今回の申請理由からは、今度は「高度の公共性を有する」という言葉が消えてなくなりました。もう、公共性を有しないと、起業者側が判断しているのかどうなのか、つまり少なくとも、日米の軍事力の強化とか東西冷戦の終焉とかいうことがあったために、駐留軍の駐留はわが国の生存と安全の維持という国益を確保するために重要であり高度の公共性を有するということはなくなった、という認識のもとにこれを削除したのかどうか。それをお答えいただきたい。

当山会長代理:施設局、どうぞ。

新崎盛暉:あ、それから、これは前回、次に答えると約束してあった部分です。

坂本施設部長:裁決申請書の中で、「わが国への、駐留軍の駐留はわが国の安全ならびに極東における平和および安全の維持に今後とも寄与するものである。」と述べており、わが国の安全ならびに極東における平和および安全の維持に今後とも寄与するということが、実質的に、高度の公共性を有するということと同じ意味を示しているものと思います。

新崎盛暉:いや、同じ意味を有するから表現を変えたんですか。同じ意味を有するから、「高度の公共性」という言葉を削除したんですか。そこだけ聞かせてください。なぜ、「高度の公共性」という言葉を削除したかです。

坂本施設部長:同じ意味でございます。

新崎盛暉:えーと、あのー、先に進めるのと関連されますけれどね。同じことを繰り返すのもがばかばかしいので。

 この高度の公共性というのは、公共の福祉と財産権の侵害とのバランスを取るために、憲法29条を踏まえて出されていたはずなんです。それを今、公共性という言葉を削除してきた、ということに根拠がなくて、ただ、他のところの表現が実質的に同じ意味だからということで通るのですか。あなた達の解釈では。

 で、そのことと関連させて先へ進めておきますけれども、もう一つ、そのことが消えたかわりに、あなた方の申請理由の中で、初めて日本国憲法が登場してきます。あなた方は高度の公共性という言葉を外した代わりに、「日本国憲法第98条第二項は、“日本国が締結した条約および国際法規はこれを誠実に遵守することを必要とする。”と規定している。」という言葉を引用して、つまり憲法を引用して、いわば条約の優先権を言いたいのでしょうね。なにか、こういうことを言ってきている。なぜ、高度の公共性を外して、憲法第98条第2項を持ち出してきたのか。その関連を説明してください。

当山会長代理:施設局どうぞ。

坂本施設部長:ただいまの質問について、今回の裁決申請書の中に、これまでの申請理由には存在しなかった憲法98条の事項が引用されているのはなぜかということですが、えー、裁決申請理由では、施設および区域を駐留軍に提供することはわが国の日米安保条約上の義務であり、またわが国がその締結した条約を誠実に遵守するべきことは、憲法第98条第2項に規定から明らかであるので説明したわけです。

新崎盛暉:そうであれば、前回もあるべきでしょ。なぜ、今回、登場してきたかを聞いているんです。高度の公共性をはずして、なぜ、今回、第98条第2項をもってきたかと聞いているんです。つまり、変えているのはなぜか、と聞いているんです。

当山会長代理:あの、できるだけ議論、釈明をかみ合わせていただけないでしょうかね。質問とかみ合っていないような気がしますけど。

坂本施設部長:前回と同じ意味でございます。

新崎盛暉:前回となにが同じなんですか。なにが同じなんですか。高度の公共性と、憲法98条は同じなんですか。

(施設局返答なし)

新崎盛暉:質問を継続します。あの、つまり意図的にですね、bb収用委員がお聞きになっておわかりのようにbb、わたしの質問に答えてないんですね。なぜ、高度の公共性を外して第98条第2項を持ってきたのか。同じですというのは、98条第2項と高度の公共性が同じと言う意味なのかなんなのか、よく分かりません。

当山会長代理:あのー、こちらも意味がわかりませんね。

(笑いと拍手)

当山会長代理:あの、答えにくいかもわかりませんが、どういうことでしょうか。

坂本施設部長:……。

当山会長代理:同じというのが、前回答えたのと同じという意味なのか、今言ったように、その意味が同じ、ということなのか。どういう意味で同じなのか。

坂本施設部長:全体な意味あいが同じでございます。

新崎盛暉:全体的な意味あい? なにとなにが同じなのか。

坂本施設部長:……。

新崎盛暉:私は極めて具体的に申請理由の文言を引用し、その中で引用している憲法の条文を具体的に読み上げながら、その異同について、質問をしているわけです。それで、全体的として同じだとか、全体的に同じでないとかいわれても、なにが同じでなにが同じでないのか、さっぱりわからない。

当山会長代理:あの、次の意見をおっしゃる前提で求釈明をされていると思いますけど。

新崎盛暉:はい。

当山会長代理:今、言ったような回答を前提にして、意見を……。

新崎盛暉:いや、収用委員会はお分かりになったんでしょうか。わたしがなにを明らかにしたいかと考えているかを。

当山会長代理:分からない点もあります。あ、なにをいっているのか分かりませんということはありませんが。

新崎盛暉:わたしの求釈明は分かりますよね。

当山会長代理:求釈明は分かります。

新崎盛暉:わかりますよね。じゃあ、あの、こういうかたちでいたずらに時間を引き延ばす作戦はやめた方がいいと思いますけどね。

 で、これはあの、例えば次回の時に、収用委員会は、きちんと起業者側との打ち合わせの中で、次回に明快に答えてもらうことではっきりさせるということで……。収用委員会も分からないはずの問題ですから。今、確認しましょうよ。収用委員会、わたしの求釈明は、理解できるんだけれども、答えは理解できないということですから。

 で、最後にほんと付け足しだけしておきたい思います。その、引用されている憲法98条第2項、というのは、「日本国が締結した条約および確立された国際法規は、」と書いてあります。ただなぜか、憲法98条第2項を引用しながら、「確立された」という文言だけを、またこれ、起業者側は外しています。なにか特別な意味を持っているかんですか。確立された国際法規とそうでない国際法規ってあるんですか。なんのために全文引用しているように見せつけられた98条から、「確立された」という5文字を削除されたのか、どういう深謀遠慮があったのか。

当山会長代理:施設局、どうぞ。

坂本施設部長:えー、確立された国際法規が引用されなかった理由でございますが、えー、憲法98条第2項の規定からも明らかだということで説明しております。

新崎盛暉:それ、答えになってる? 98条をあなた方、全文きちんと引用してないわけでしょ。そこだけ意図的に外してあるから、外しているのは、どういう、bbなんていうかなbb、深謀遠慮があるんですか、と聞いているんです。また、98条は、外しても外さなくても同じですか。

 確立された国際法規、非常に簡単でしょ、確立された国際法規というのは憲法の文言です。そこからなぜか、ほとんど憲法を全文的に引用しているように見せながら意図的に、「確立された」という5文字だけを削除している、あなた方は。

当山会長代理:施設局どうぞ。

坂本施設部長:特に意図はございません。

新崎盛暉:こういう風に禅問答をやっているのは、こっちはいやになりますけどね。

 特に意図はないけれども、都合によって外したり外さなかったり、あなた達はそんないいかげんな申請理由書の作成をやっているわけですね。

もう、終えますか。収用委員会。

当山会長代理:次の質問に……。

新崎盛暉:そうですか。先ほどの件はきちんと確認しておいてください。

当山会長代理:あの、さきほどの件は、例えば、高度の公共性を有するというのを省いたのはどうしてかということ、それから、条項の中で、特に引用している部分とそうでない部分があるのはどうしてかと、こういうことですね。

新崎盛暉:はい。

当山会長代理:あのー、ただ、無闇に抜かしたわけではないと思うんですね。なにか、理由があるんですね。一応、ここでは即答しかねるかも知れませんけれども、その重要な法律の条文あるいは解釈の問題もあるかと思います。可能なかぎり真摯な答えはしていただきたいと思います。

(拍手)

当山会長代理:では続きまして、芳沢弁護士。


  出典:第4回公開審理の録音から(テープおこしは比嘉

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