沖縄県収用委員会審理記録
仲山忠克弁護士(土地所有者代理人)
○当山会長代理
それでは、後半の部を始めたいと思いますので、ご着席お願いします。
では、まず後半といいますか、引き続きまして求釈明事項、前回の積み残し分でございますが、仲山忠克さん、よろしくお願いします。
○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)
地主代理人の仲山です。私のほうからはキャンプ瑞慶覧についての求釈明をさせていただきます。この間の求釈明に対して、坂本部長のほうは悪戦苦闘されているようですが、私の求釈明は実にいたって簡単なことでして、すぐにお答えできると思いますので、どうぞ悪戦苦闘されずに、素直にお答えいただきたいと思っております。
まず、キャンプ瑞慶覧に存在する排水施設の敷地についての求釈明をさせていただきます。
防衛施設局から提出されております使用の裁決の申請理由説明書、これの9ページ、それの中に、宜野湾市に所在するキャンプ瑞慶覧用地について、使用方法として排水路敷地というものがございます。それに関する求釈明でございます。
皆さんご存じのように、今年になってキャンプ瑞慶覧の排水施設からPCBの汚染が発覚されました。実に基準値の700倍にも及ぶ汚染の状況であったわけであります。これを見ますと、排水路施設は汚染物質のたれ流し施設として利用されているんじゃないかという疑念をもつものであります。
ところで、強制使用された土地が返還される場合、原状回復の問題が出てきます。地位協定によれば、米軍はこの原状回復を負わないということになっております。したがって、当然これは日本政府が原状回復を負うことになるわけでありますが、その際に、この汚染物質が完全に除去されるかどうか、そういう不安が尽きないのであります。しかも、原状回復というのは、沖縄においては米軍用地として使用される以前の状況に戻すことを当然言うわけであります。
そこで、施設局にお尋ねをいたします。キャンプ瑞慶覧にある排水施設敷地として使用されている土地の地目は何であるのか。
その地目というのは、強制使用される、米軍に使われる当時のおそらく地目にそのままなっていると思いますが、その地目は何なのか、原状回復との関係で必要になってくるわけであります。
さらに、その土地は、返還するに際し、原状回復が可能な状態となっているのかどうか、そのことをお答えいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○当山会長代理
はい、施設局、よろしくお願いします。
○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)
キャンプ瑞慶覧の排水施設敷地として使用されている土地の地目は何か、その土地は返還する際に原状回復は可能な状態になっているのかとの事項について、回答いたします。
地目は田であります。本件土地は、引き続き駐留軍用地として主要な土地として裁決申請をお願いしているところであります。
なお、一般論として申し上げれば、駐留軍用地特措法に基づき使用した土地を返還する場合には、当然法令の定めるところに適切な対処をすることになります。
○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)
今、法令の定めについて適切な対処をされるというご説明がありました。そして、排水路敷地は田であると。田んぼですね。ということであったわけですが、そうであれば、原状回復にあたっては、当然田んぼに回復してお返しになるということで理解してよろしいでしょうか。
○当山会長代理
施設局、どうぞ。
○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)
返還の際に地主の方とご相談いたしまして、そのままの状態でよければそのままでよろしいでしょうし、返すんであれば、また別途補償するということになります。
○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)
原状回復というのは補償じゃないはずなんです。今、補償されるというお話だったんですが、その補償というのは金銭補償のことだと思うんです。
基本的に、地主が現状のままではだめだと、現状というのは現在の返還される元の状態に復してほしいと、田んぼに戻してほしいと言えば、田んぼに戻すという趣旨で理解してよろしいですね。いかがでしょうか。
○当山会長代理
質問の継続ですか。
○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)
いや、いかがでしょうか。坂本部長。
○当山会長代理
施設局、どうぞ。
○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)
状況によりますので、私ども施設局でやっている慣習で言いますと、もともとは田であつたところが現状宅地近くになっている場合もございます。そういう場合には、地主の方とご相談いたしまして、その宅地の状態のままでやるのか、あるいは昔の田に戻すのか、ご相談いたしまして、その中で、基本的にはもし田ということであれば、金銭的な補償でやっております。
○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)
私が今お聞きしているのは、田んぼに戻してほしいといったときに、田んぼに戻すかどうかを聞いているんです。金銭補償するかどうかを聞いているわけではないんです。率直にお答えいただきたいんですが。時間はあんまりありませんので、急いでいただきたいんですが。
○当山会長代理
施設局。
ちょっと今、かみ合ってないような感じがするんですが。
○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)
そうですか。
○当山会長代理
いやいや、答えが。
○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)
そうですね。
○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)
現在までの返還事例から言いますと、われわれのほうで田に戻した事例はございません。そのまま、田ということで金銭補償しております。
○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)
今、これまでの過去の例を聞いているわけではないんです。おそらく過去の例では、地主が金銭補償でいいですよと言ったときにやっていると思うんです。私が聞いているのは、地主が現在のままの状態でもだめだと、金銭補償もだめだと、もとの田んぼに戻してほしいと言ったときにどうするかを聞いているんです。
簡単でしょう。どうぞお答えください。
○当山会長代理
どうぞ。
○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)
もしそういう要望があれば、こちらで検討したいと思います。
○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)
はい、分かりました。その検討というのは田んぼに戻すと、これが法律の当然ですから、原状回復というのは。そういうふうに理解をいたします。
では、次にキャンプ瑞慶覧の教会用地について、求釈明をさせていただきます。
先ほど申し上げました、申請理由説明要旨の同じ9ページですが、今度は北谷町にある土地について、その使用方法の中に教会用地というものがございます。それに関する求釈明であります。
その前に、まずお断りしておきたいんですが、おそらく教会用地というのはキリスト教関係の宗教のことだろうと思います。私は、特定の宗教をもっておりませんので、別にキリスト教教会のことについて悪意をもっている趣旨は全くございませんので、その前提で釈明をお聞き願いたいと思っております。
前回の求釈明の中で、私は申し上げましたが、また先ほど河内代理人からもお話がありましたけれども、東京地裁のアニーパイル劇場事件の判決では、強制使用がなし得るのは日本国に対する武力攻撃を阻止するために必要な施設に限るというような判決がございます。
そういうことから言えば、教会が武力攻撃を阻止するために必要な施設かどうかについては、非常に疑問のあるところであり、そのことだけでも申請そのものの違法性が明らかだろうと思うんですが、というのは、これは強制使用の本拠となっています駐留軍用地特指法そのものに違反するということでありますが、私は今、ここで申し上げたいのは、その特措法に違反するどころか、憲法そのものに違反するんでないかという疑いをもっているからであります。
ご存じのように、憲法は20条において、いかなる宗教団体も国から特権を受けてはならないというふうに記載されております。さらに、憲法89条では、公金は宗教上の組織もしくは団体の使用、便益、もしくは維持のためにこれを支出し、またはその利用に供してはならないというふうに記載されております。
ご存じのように、強制使用は国民の財産を日本国政府が強制的に奪って、その補償として、損失補償というお金を払うんです。いわば、公金の支出にあたるわけです。そういうことから言いますと、教会用地のための強制使用というのは、この憲法20条及び憲法89条に違反するのではないかという疑問をもつわけであります。疑問どころか、むしろ明白と言わざるを得ないかもしれません。
そこで、施設局にお尋ねをいたします。このキャンプ瑞慶覧にあります教会は、だれが使用し……まずその管理ですね。その教会の施設管理権はどこに属しているのか。
そして2番目に、教会はだれが使用しているのか。軍人のみなのか、軍属も含むのか、さらに一般市民も含むのかどうか。
3番目に、特定宗教の施設のために土地を提供することが、私が先ほど言いましたように、憲法の保障する政教分離の原則に反することは明白だと思うんですが、施設局自体はどういうふうなお考えなのか、そのあたりをお聞かせ願いたいと思います。ひとつよろしくお願いいたします。
○当山会長代理
施設局、どうぞ。
○産業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)
キャンプ瑞慶覧にある教会用地として使用されている土地について、その教会の施設管理権はどこに所属しているのか、また教会はだれが使用しているのか。軍人のみの使用か、さらに特定宗教の施設のために土地を提供することは政教分離の原則に反すると考えるがどうかとの事項について回答します。
本件土地は、駐留軍が使用しているキャンプ瑞慶覧の一部であり、同施設はキャンプバトラー基地指令部が管理していると承知しております。キャンプ瑞慶覧にある教会は、日米安全保障条約の効果的運用のため、米軍の駐留を円滑ならしめることを目的とし、建設されたものであり、米軍人、米軍属及びその家族の日常生活に必要不可欠な施設であります。本件土地は、この施設の一部として使用され、施設全体と有機一体として機能しております。
○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)
政教分離について、お答えいただいてないんですが。
○当山会長代理
施設局、どうぞ。
○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)
今、三つの質問をいたしました。そのうち二つの質問には答えていただいたんですが、3番目の政教分離の原則に反するかどうかについての質問については、全くお答えしておりません。それは、お答えしないという趣旨でしょうか。
○当山会長代理
ちょっと待ってください。まだ、拒否はしてないみたいですから。
○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)
はい、どうぞ。答えていただきたいんですが。
○当山会長代理
仲山先生、難しい質問みたいですから、ちょっと待ってください。討議しているみたいですから。
○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)
米軍人、軍属及びその家族の日常生活に必要不可欠な施設だと承知しております。
○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)
ちょっと待って。必要不可欠かどうかということを、私は聞いているわけじゃありません。まじめに答えてください。憲法の原則に反するかどうかという、国の根幹に関わる憲法上の問題を聞いているんですよ。どうぞ、答えてください。
○当山会長代理
答えられないのか答えられるのか、私も聞いていて分からないんですが、どうなんですか。
○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)
立ってください。
○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)
本審理になじまないと考えております。
○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)
なじまない理由を言いなさい。教会用地として使用目的を特定して、強制しようとしているわけでしょう。なぜ、なじまないんですか。なじまない理由を言いなさい。言えないなら言えないと答えなさい。
○当山会長代理
仲山先生、少し血は降りましたか。
○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)
はい、大丈夫ですよ。
○当山会長代理
答えないところをみると、答えられない。
○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)
いや、答えられないなら、答えられないと答えさせてください。
○当山会長代理
どうですか、施設局。
○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)
先ほど申しましたように、本審理になじまないと考えております。
○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)
分かりました。なじまないというお答えですから、じゃ、こういう質問をいたしましょう。
この教会用地として提供することは、地位協定上、日米合同委員会で決められることになっているんですね。その日米合同委員会において、教会用地として提供するという提案をしたのはおそらく米軍だと思うんですが、その米軍の提案に対して施設局はどういうような応答をされたのか、対処されたのか、そのあたりだったら答えられますね。どうぞ。
○当山会長代理
どうですか。
○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)
先ほどお答えいたしましたけれども、日米安全保障条約の効果的運用のため、米軍の駐留を円滑ならしめることを目的とし建設されたものであり、米軍人、軍属及びその家族の日常生活に必要な施設として提供しているものでございます。
○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)
はい、分かりました。軍人、軍属、家族の日常生活に必要な施設と判断したということを言われましたが、判断したのは誰ですか。
日本政府ですか、アメリカ政府ですか、どちらでしょうか。それはお答えできますね。
○当山会長代理
施設局、どうぞ。
○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)
日本政府です。
○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)
はい。その際、日本政府は政教分離の原則の憲法上の要請があるということについて、どういう配慮をされたのか、お答えください。
○当山会長代理
どうぞ。
○起業者(那覇防衛施設局施設部長 坂本憲一)
先ほど来申しておりますが、軍人、軍属及びその家族の日常生活に必要不可欠な施設として提供したものでございます。
○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)
皆さんご存知のように、政教分離については何らお答えをしておりません。むしろ逃げております。こういうことは、おそらく施設局自体が憲法に違反する提供だという認識を指摘されたかどうか知りませんが、そういう認識をもつからだろうと思うんです。ここに安保条約の実態があるんですね。
憲法より安保を優先する国の姿勢がそこにあらわれているんだということを、私は指摘をし、この問題については、今後、別の機会に意見書を提出して深めたいと思っております。以上です。
○当山会長代理
はい、ご苦労さまでした。それでは、続きまして松島暁さん、お願いします。