大久保賢一弁護士(土地所有者代理人)


○当山会長代理

 それでは時間ですので、求釈明及び釈明を続けていきたいと思います。

 始める前に、お詫びとお断りがございます。会長、4〜5日ほど前から体調を崩して、昨日まで休んでいるところを、今日は無理に出てきたものですから、先ほど気分がすぐれなくて、どうしても立っていることもできない状態ということで、ただいまお帰りいただきました。そこで、やむなく会長代理が仕事をさせていただきます。何せ不慣れなもの、まさに初めて司会を担当しますので、ご協力のほど、よろしくお願いします。

 それと、引き続きお願いなんですが、今日の今続けているのは求釈明、要するに何なのかを明らかにするという点。それから、施設局のほうでそれを釈明する、それに答えるという作業でございまして、地主の皆さんの意見というのは、その後、述べる機会はございますので、先ほどまでですと、どうやら意見のほうが7割方占めているという感じがしますので、できるだけ進行にご協力いただきたいというふうに考えております。

 それでは、続いて求釈明される方、よろしくお願いします。

○土地所有者代理人(弁護士 大久保賢一)

 地主代理人、弁護士の大久保賢一です。まず、会長のほうのお体、ぜひ早く回復していただきたいと思います。

 私が防衛施設局に対して釈明したいのは、次の項目であります。

 まず、先回陳述された理由の要旨、これによりますと、最もこの申請にこだわる理由、このようにまとめられております。つまり、本件裁決申請に関わる土地及び物件について、今後とも円滑かつ長期にわたり、安定的使用の確保を図る必要があると。そのためにこの裁決を申請したということであります。そして、この理由づけとして、同じく申請理由要旨説明の中で、次の論点が指摘されております。

 一つは、日米両国ともこの安全保障条約を終了させることは全く考えておらない。したがって、駐留軍の駐留は今後相当期間にわたると考えられる。その活動の基盤である施設及び区域も、今後相当期間にわたり使用されると考える。

 これが一つ目の理由とされております。ここにあるのは、日米両国政府が今変えようと思っていないから、今後とも相当期間この状態が続くということを理由にしているわけであります。

 もう1点は、その後で、この日米安保条約は日米両国政府が締結した条約であるから、憲法98条2項によって、遵守しなければならない。このことを理由としております。しかしながら、私が明らかにしてもらいたいと思っているのは、なぜ現在の日米両国政府がこの条約を長期にわたって継続したいか。このように考えることが、そのまま10年後も実現するのか、このことについてであります。

 そもそも政府の政策選択というのは、国民の意思、とりわけ立法府、どの程度の立法府がどのような政策判断をする人たちによって形成されているか。そして、その多数派によって政府、内閣は本来形成されるはずであります。そうしますと、その国会を形成するのは国民の代表者であり、その代表者を選ぶのは国民であるはずであります。10年後にわたって国民の意思が変わらない。このようなことは、そもそも国民主権国家にとっては論証不可能なことであります。なぜ、この論証不可能なことを防衛施設局はこの申請の理由とすることができるのか、そのことを、まず第1点目に明らかにしていただきたいと思います。

 そして、帯2点目、条約上の義務の履行、このことを言っております。しかしながら、安保条約第10条2項はこのようになっております。この条約が10年間効力を存続した後は、いずれの締約国も他方の締約国に対し、この条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行われた後1年で終了する。このようになっております。ここからは長期的、安定的に利用させなければいけないという条約上の義務は論理的には導き出せません。

 なぜ、防衛施設局は条約上の義務を遵守する、そのことから長期にわたって安定的使用、これを導き出すことができるのか。それが第2点目であります。

 以上、2点について釈明を求めます。

○当山会長代理

 では、起業者側、お願いします。

○起業者代理人(那覇防衛施設局施設部長 阪本憲一)

 引き続き、職名、氏名を省略させていただきます。

 今後、相当期間にわたり使用されると考えられるのでとあるが、このように考えられるのは政府なのか、国民なのか。仮に政府だというのであっても、政府の政策選択はその時代の国民の意思によって決定されるのであり、国民の意思が今後相当長期間にわたり変化しないとは、だれも予測できないはずだ。そうだとすれば、この主張は論理的に証明不可能であると考えるが、どうか。日本国は米国に対し、今後相当長期間にわたり安定的使用を図らなければならないとする条約上の義務があるのか。あれば、この義務は安保条約のどの条文に明示されているか、との事項について回答いたします。

 平成8年4月17日に、日米首脳会談後の共同記者会見におきまして、橋本総理とクリントン大統領から日米両国民へのメッセージ及び日米安全保障共同宣言の2文書が合意され、発表されております。

 前者は、両国が共有する民主主義や、自由などの価値の重要性を指摘し、このような価値に基づく幅広い日米関係について述べたものであり、また、後者の共同宣言は、安全保障について日米間で緊密に行われた対話の成果を踏まえ、日米安全保障体制の重要な役割を改めて確認し、21世紀に向けた日米同盟のあり方を内外に宣明するものであります。

 この共同宣言では、まず日米安全保障条約を基盤とする日米同盟関係が、21世紀に向けて、アジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であり続けることを再確認した上で、日本の防衛のための最も効果的な枠組みは、自衛隊の適切な防衛能力と、日米安全保障体制の組み合わせに基づくものであり、日米安全保障条約に基づいた米国の抑止力は、引き続き日本の安全保障のよりどころであること、日本が日米安全保障条約に基づく施設及び区域の提供等を通じ、適切な使用を継続すること等について改めて確認し

ているところであります。

 このことからも、駐留軍の活動の基盤である施設及び区域について、今後相当長期間にわたり使用されると考えられますので、その安定的使用を図る必要があることがご理解いただけると考えております。

○土地所有者代理人(弁護士 大久保賢一)

 まず、今の答えには全く理解することができません。もちろん、クリントン大統領と橋本首相がそのような合意を行ったということについては、われわれも承知しているところであります。しかしながら、クリントン大統領があと10年後にアメリカの大統領をやっている、これはあり得ない話であります。さらに、橋本首相につきましては、多分もっと短命に、彼は政権の座からおりることになるでしょう。

 私が今申し上げたのは、そのような現在の日米の政府間に合意がある、それは承知している。けれども、長期にわたってそれが続くということを論証できるのかということを聞いたわけであります。今の答えの中には「論証できる」このことは全く出ておりません。これは仮に論証できる、そういう答えをするとするならば、これは将来の国民の意思決定、これを愚弄することになるわけであります。

 そういう論証不可能なことを根拠にして、本件裁決申請を行っている、私はこのことについては、いずれていねいな議論をすることがあるだろうと思いますけれども、きょうの時点ではこれ以上追及することは止めておきます。

 ただ、第2点目、日米安保条約上のどこに明文の根拠があるのか、このことについてはまだ答えてないようですので、その点、会長代理、求めていただきたいと思います。

○当山会長代理

 これは回答されてなかったでしょうか。施設局の方、回答はしてあったのか、なかったのか。

○土地所有者代理人(弁護士 大久保賢一)

 いや、まだなかったようです。

○起業者代理人(那覇防衛施設局施設部長 阪本憲一)

 先ほど回答したとおりでございます。

○土地所有者代理人(弁護士 大久保賢一)

 先ほど回答があったのは、日米共同宣言についてだけでありまして、安保条約上のどの条文にそれが導き出されるのか、このことについての答えはまだありません。

○当山会長代理

 恐らく防衛施設局のほうは、それ回答、みんなで検討して準備したものを読み上げていると思うんです。ですから、恐らくこれ以上質問されても出てこないとは思うんです。もし何でしたら、これはまだ釈明されてないというような求釈明の補充等を後でされたらいかがでしょう、もしそうであったら。

○土地所有者代理人(弁護士 大久保賢一)

 分かりました。ただ、いずれにしても会長代理、この問題はこの裁決申請の正当性の根幹に関わる問題でありますので、ぜひとも収用委員会としても、丁寧な審理をお願いしたいと思います。

○当山会長代理

 収用委員会は、後日、検討いたします。

○土地所有者代理人(弁護士 大久保賢一)

 はい、ありがとうございました。

○当山会長代理

 では、次の方よろしくお願いします。


 出典:沖縄県収用委員会 公開審理議事録
    OCRによるテキスト化は仲田さん(XC8H-NKD@j.asahi-net.or.jp)
沖縄県収用委員会・公開審理][沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック