仲山忠克弁護士(土地所有者代理人)


○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)

 地主代理人の仲山です。先ほど、新垣代理人のほうから話がありましたように、私たちは求釈明は争点を明確にし、実質的な審理を行うために必要だという観点からやっているわけです。いたずらに求釈明をしているわけではございません。そのことが、本件審理を開始するにあたって、会長のほうから実質審理を行いたいという旨の発言がありましたが、まさにそのために求釈明をしているわけであります。しかも、求釈明している事項は、施設局が申請理由に書いたことであります。自ら書いたことについて、私たちはしているわけです。そういう意味で、誠実にお答えをしていただきたい。そうすることが、本件審理を実質的あらしめる最低の前提になりますので、そういう前提で質問をさせていただきたいと思います。

 私は、この申請理由書の中に、こういうくだりがあります。「賃貸借契約に基づく使用権原が得られる見込みのない土地は、それぞれ施設及び区域の運用上、他の土地と有機的一体として機能しており、必要欠くべからざるものである」という記載があります。実はこれは、3ページとさらに11ページにも同じものが出てきております。いわば、施設局は、本件契約拒否地主を強制使用するその理由として、施設及び区域の……施設及び区域というのは基地のことです。基地の運用上、他の土地と有機的一体として機能している。これが強制使用するための根拠としているわけであります。これを逆に言いますと、有機的一体性を欠けば、強制使用の必要はないということを意味するのであります。

 さらに、そのことは本件審理にあたって重要な意味を有します。すなわち、昨年8月28日に、いわゆる代理署名裁判の最高裁判決が言い渡しされましたが、その最高裁判決によって、内閣総理大臣の使用認定に重大かつ明白な瑕疵がある場合には、駐留軍用地特措法3条の所定の要件を欠くということで、これは無効であるということを最高裁判決は述べております。そして、それが無効であれば、署名等の代行命令であれ、公告縦覧の代行命令であれ、いずれも許されないということを判示をいたしました。

 このことは、準司法機関である本件収用委員会においても、そのまま妥当するものであります。すなわち、使用認定に重大かつ明白な瑕疵があれば、それだけで収用委員会は土地収用法47条に基づいて、本件申請を却下すべきものであります。それとの関係で、最高裁が申し述べたのが、重大かつ明白な瑕疵があるかどうかの一つの認定基準として出したのが、有機的一体性であります。

 最高裁の判決によれば、使用認定の対象となっている個別の土地を判断の対象として、当該土地が駐留軍用地として提供されるに至った経緯及びその具体的使用状況を踏まえた上で判断をし、その結果、当該土地が駐留軍施設内の他の多くの土地と一体となって、有機的に機能していることが、当該土地に係る使用認定について重大かつ明白な瑕疵が存在しないことの重要な理由とされたのであります。

 すなわち、有機的一体性を欠けば、使用認定にそれを無効とする重大かつ明白な瑕疵があることを意味しているのであります。

 そういう前提を踏まえて、この使用裁決申請書にも有機的一体性の問題が出てきたのであります。そこで、そういう意味ではこの有機的一体性の存否については、本件強制使用裁決にあたって、却下すべきかどうかに関わる重大なキーワードということができると思うんです。

 そこで、施設局にお尋ねをいたします。皆さんの主張する有機的一体性とはどういうことを意味するのか、具体的に明らかにしていただきたいと思います。

 どうぞ、部長。

○当山会長代理 

 仲山先生、3点ほどあるんじゃないでしょうか。

○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)

 できたら、それはその後にやりたいんです。

○当山会長代理

 できたら、続けてお願いしたいんですが。

○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)

 分かりました。じゃ、その有機的一体性の提起をしていただいて、その次に、本件各土地が使用できないことによって、各施設や区域の運用上、どのような不都合が生ずるのか、具体的に明らかにしていただきたいと思います。そして、ここで言う各施設や区域の運用上というのは、先ほど申し上げたように、基地の運用上でありますが、その運用というのはどういうことかと申しますと、あえて求釈明事項に入れませんでしたが、施設局も当然ご存じのとおり、アニーパイル事件の強制使用手続きにおいて、こういうふうに東京地方裁判所は、昭和29年1月20日の判決の中で、日本国に対する武力攻撃を阻止するために必要な施設かどうかという基準を設けております。したがって、基地の運用上というのは、日本国に対する武力攻撃を阻止するに足りるかどうかという観点から考えた運用上であります。

 そういうことを前提にして、軍事的な本件強制使用の裁決申請の対象となっている土地が、使用できないことによって軍事基地の機能に具体的にどのような支障が生ずるのかを答えていただくということであります。

 それとの関係で、キャンプ瑞慶覧には教会用地が強制使用の対象となっております。はたして、教会用地が軍事基地の機能といかなる関係を有するのか。その教会用地を強制使用ができないことによって、軍事基地の機能に具体的にどういう支障が生ずるのか、そのことも明らかにしていただきたい。

 実は、教会用地ということは代表的なことを申し上げましたが、厚生施設であるとか、学校用地であるとか、住宅用地であるとか、いわば軍事機能とは直撞関係のない使用のために強制使用の対象になっている土地も多々あります。その代表として、今、教会用地というふうに一例を挙げた次第であります。そういう意味で、具体的に答えていただきたいと思います。

○当山会長代理

 はい、それでは施設局、よろしくお願いします。

○起業者代理人(那覇防衛施設局施設部長 阪本憲一)

 1点目でございますが、それぞれ施設及び区域の運用上、他の土地と有機的一体として必要欠くべからざるものであるとあるが、有機的一体とはそもそもどのような場隊(注:状態)を言うのかとの事項について、回答いたします。

 駐留軍用地が本件各土地と隣接する他の土地とともに、施設全体と一体となって有機的に機能し、施設及び区域の形態をなし、駐留する米軍はその任務及び役割を果たすため、維持及び運用されていることをいいます。

 2点目、本件各土地が使用できないことによって、各施設や区域の運用上どのような不都合が生ずるのか、具体的に明らかにされたいとの事項について、回答いたします。

 本件各土地は、各施設において駐留軍が使用する施設及び区域として、施設全体と一体となって機能しており、その任務の迅速かつ円滑な遂行、また、施設機能の維持、保全、運用並びに機密の保全を図り、有事における即応体制を保持するため、使用不可欠であります。

 3点目、キャンプ瑞慶覧の教会用地が、いかなる意味において施設及び区域の運用上、他の土地と有機的一体として機能していると言えるのかとの事項について、回答いたします。

 キャンプ瑞慶覧にある教会は、日米安全保障条約の効果的運用のため、米軍の駐留を円滑ならしめることを目的とし建設されたものであり、米軍人、軍族及びその家族の日常生活に必要不可欠な施設であります。本件土地は、この施設の一部として使用され、施設全体と有機的一体として機能しております。

○土地所有者代理人(弁護士 仲山忠克)

 有機的一体とは何かという質問について、有機的一体だという同じような回答をされて、全く回答にはなっていないと思います。

 しかし、今の回答を踏まえて、私たちは今後、意見の中で具体的に反論をさせていただきたいと思います。それをもって、私の求釈明を終わります。

○当山会長代理

 ありがとうございました。

 では、次の求釈明の担当者、よろしくお願いします。


 出典:沖縄県収用委員会 公開審理議事録
    OCRによるテキスト化は仲田さん(XC8H-NKD@j.asahi-net.or.jp)
沖縄県収用委員会・公開審理][沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック