金城睦さん(那覇市代理人)

 わたしは、――さきほど親泊康清那覇市長が意見を述べられましたけれども――、那覇市の代理人として、若干補足的に意見を申し上げたいと思います。冒頭で、起業者のほうから、裁決申請の理由について述べられていましたけれども、初めて聞いたわけですから、――かなり前回とだぶっているのかなという感じもしますが――、その中身に対して逐一詳細に、次回以降、起業者に対して求釈明を行い、不明の部分を明らかにしまして、那覇市としての意見を改めてのべたいと思います。このことを最初に起業者のほうにも、そして収用委員にも申し上げておきたいと思います。

 言うまでもなく、財産権の補償されている今日の世の中で、この強制使用というものは、公共の立場でなければ絶対に許されないものです。したがってこの事案については、国の言う「安保条約にもとづく云々」という公共性が、日本国憲法のもとにおいて、財産権を制約するものとして認められるかどうか、絶対に認められるものではないと言うことを、冒頭に申し上げたいと思います。

 そのためには慎重な審理が当然要求されます。市長も指摘していましたけれども、前回と収用委員の構成は違っていますけど、沖縄での収用委員会における公開審理のなかで、地権者の一人である那覇市はまったく意見を述べる機会が与えられなかったのであります。まずは、できるだけ、あらゆる面での民主主義を守りたい。おなじ地権者だけれども、一般市民を、土地所有者・地主のみなさんを優先的にして、そのあとで那覇市としての意見を述べたい。こういう立場で、収用委員会に事前に通告しておりましたけれど、当時の収用委員会は無惨にも那覇市の立場を否定し去ったのであります。これは、市長だけでなく、代理人である私も、30万市民にかわって、民主主義の名において、糾弾せざるを得ないし、今回の収用委員会においてはその反省を含めて、しっかりと、那覇市だけでなく全関係者の意見をじっくりとお聞きいただきたい。このことを改めて強く主張したいと思います。

 日本国憲法の理念が、去る第二次世界大戦の悲惨な結末の反省のうえにたってできていることはお互いによく認識しているところであります。しかし、今日、憲法の中身がいろんな意味で反故にされています。
 昭和のはじめ、大正から昭和のはじめまでは、当時の日本だってあのような残酷な戦争のなかに突き進むものではないというような雰囲気があった。その時どきにおいて、やるべきことをやる人がきちっとやらない。そういうなかで、ファシズムの横暴が過ぎ、悲劇となりました。われわれはこの最高法規である日本国憲法にとって、――最高裁にいる「最低」の裁判官もおりますけれども――、われわれは文字どおりこの最高法規を歴史の教訓とともに大事にして、それぞれの委員のみなさんは収用委員としての立場を、その任務をしっかりふまえて、そして、収用委員会がその地域毎につくられているという沖縄のおける収用委員会であることもふまえて、そしてさらに現在に生きる人間として、後世に責任をもつ人間として、任務を遂行していただきたいと思います。「こうせい」というのは、「親泊康清(こうせい)」ではありません。(会場、笑)われわれの将来、子孫、未来に対する責任であります。

 しかし、このままですとあと4年後に21世紀を迎え、世紀の大転換にあたって、平和のもとで人権を確立し、民主主義を奉祝するこの平和な日本のなかで、わたしたちがこういう問題の解決にあたって、命を大切にする人間の魂を、その誠実さをもって、平和と、正義の理念である法規に沿って、収用委員会のみなさんに、この審理に臨んでいただきたい。

 沖縄はこの50年間、基地があるが故の桎梏があります。その時々に、かつては米軍の絶対的な権力にあって、基地に縛り付けられました。復帰後も、法の名において、日本政府の施策において、縛り続けられておりました。いま思えばこのことが政治にかなうかどうかをこの収用委員会のなかであきらかにしていきたいと思います。
 その意味で、50年間の基地による桎梏からの沖縄県民の解放、これを通じて、日本が、みだれにみだれた日本が、全体として平和の方向に向かう。そのことが、世界の諸国民とともに、この地球を平和にするものである。そのような、全国的、全世界的なつながりのなかにおいて、今日からのこの公開審理が始められるわけであります。

 歴史に残る1997年2月21日であります。ぜひとも冒頭での大雑把な意見ではありますが、わたくしの意見も市長の意見も、先ほど述べられた意見も、これから述べられる意見も、収用委員のみなさん、謙虚にお聞きいただきたい。
 この現代に生きる人間としての、一人一人の役目をしっかりお果たしくださいますよう、こころからお願い致しまして補足意見としたいと思います。


 出典:第一回公開審理の録音から(文書おこしは比嘉、編集は丸山
沖縄県収用委員会・公開審理][沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック