昨年12月2日のSACO(沖縄に関する特別行動委員会)最終報告の中で、普天間飛行場の全面返還が日米両国間で合意されて以来、政府は、その前提となる同飛行場の代替ヘリポートの沖縄県内における建設のため、検討作業を進めてきました。
この施設については、必要性がなくなった際に撤去が可能であるとともに、安全、騒音、自然環境などでの沖縄県民の生活の質に配慮する必要があること等から、沖縄本島東海岸沖の水域での海上施設の建設を追求することとし、本年5月以降、キャンプ・シュワプ沖水域において、この水域が海上ヘリポートの建設場所として適地か否かについて調査を行ってきました。
今般、これまで実施してきた現地調査の結果及び米軍運用所要についての概略的な調整結果を踏まえて、建設される海上ヘリポートの概要及ぴ海上ヘリポートの設置・運用により市民生活に与える影響(安全性や騒音等)・自然環境に与える影響等について検討を行い、キャンプ・シュワプ沖水域は建設適地であるとの結論を得ました。
政府としては、この結論を踏まえ、今般、海上ヘリポート基本案を作成し、地元の皆様に対してご提示し、ご理解をお願いするものであります。
なお、今回提示する海上ヘリポート基本案については、地元の皆様の建設受入れに係るご理解が得られた後、更に、海上ヘリポート建設の細部にわたる所要の作業を行い、地元の皆様のご意見も踏まえながら、工法や建設場所等の決定を行うこととしております。
1 現地調査の拮果について
今回の海上ヘリポートの建設に係る調査については、平成9年4月、名護市等から調査を受け入れる旨の表明がなされたのを受け、現地状況を十分把握し、キャンプ・シュワブ沖水域が海上ヘリポートの建設場所として適地か否かを判断するため、所要の調査を行いました。
主な調査項目及びその結果については、概ね以下のとおりであります。
1 サンゴ・海藻草類分布調査(図1:35k)
(1)サンゴの分布
ア リーフ内については、ほぼ全域が砂または砂礫質で構成され、サンゴの基盤となる岩盤や岩が少なく、サンゴの分布ははとんど確認されなかった。
イ リーフ外のうち、辺野古崎北側水域については、大浦湾のほぼ中央に位置する中干瀬の岩盤ではサンゴが分布している箇所も見られるものの、その他の水域は主に砂質土からなり、サンゴの基盤となる岩盤や岩が見られず、サンゴの分布はほとんど確認されなかった。
ウ ー方、リーフ外のうち、辺野古崎南側水域については、リーフから沖合に向かって海底地形が急に落ち込み、干出するリーフ上ではサンゴは少ないものの、リーフ斜面(沖合側)の岩盤上には水深30〜60m付近までサンゴが分布していることが確認された。
エ なお、確認されたサンゴの種類は、ミドリイシサンゴ等沖縄近海に広く生息しているものであり、石垣島近傍の白保海域で確認されたような、貴重性の高い巨大コロニーの形成等は確認されなかった。
ア リーフ内の辺野吉崎南側沿岸部にアマモ等(海草)が藻場を形成していることが確認されたものの、リーフ外については、藻場の形成は確認されなかった。
イ なお、確認された海藻草類の種類は、リュウキュウスガモやリュウキュウアマモ等沖縄近海に広く分布しているものであった。
2 魚業・運行空域等調査
(l)調査水域を通航している船舶は、主に地元の辺野古漁港及ぴ汀間魚港を利用している漁船(名護漁業共同組合所属)であり、この水域には観光船等の定期航路は存在しないことを碓認した。
(2)また、調査水域周辺の既存空域のうち、海上ヘリポートの設置、運用による影響が考えられるものとしては嘉手納飛行場の進入経路があるが、適切な管制を行うことにより運用可能との結果を得た。
3 地形測量・地質調査
(l)リーフ内の水深は0〜3mであり、リーフ外の水深は10〜70mであった。
(2)地質については、上位から、砂または砂礫質、琉球石灰岩、基盤の千枚岩あるいは砂岩から構成されていることが碓認された。
4 現地現況調査
碓認された調査水域内の海生生物(魚類、プランクトン等)の種は沖縄近海に広く生息しているものであった。
なお、調査の際、調査水域外の海域において、遊泳中のジュゴン1頭を目視した。
出典:『海上へリポート基本案について』
(平成9年11月)普天間飛行場移設対策本部