沖縄県
知事 大田 昌秀 殿
米軍特別措置法改悪に反対する要請
貴職におかれましては、内外多難な謀題を担われて、日々、政務にご精励のことと感謝申し上げます。
さて、日本政府が神縄の軍用地強制便用のため、駐留軍用地特措法を改悪しようとしている危機的なこのとき、貴職はいよいよ重大な決断が追られていることと拝察いたします。沖縄の土地がその本来の平和的目的に反して軍事目的に使われることを拒絶している私達も、事態を深刻に受けとめています。
今回、政府が提案しようとする法改定は、憲法9条はもちろんのこと、憲法第29条の私有財産権の保障、憲法第31条の適正手続きの保障、また憲法95条の一地方に限定される特別法の制定の手続きに違反する日米安保優先の沖縄差別の立法です。
ところで、貴職は3月25日に橋本龍太郎首相とこの件について、会談される予定でいらっしやいます。報道によると、首相はその際「特措法改定について貴職の理解を得たい」と考えているとのことです。首相は、貴職の強い要求である「沖縄海兵隊の削滅」を米国との交渉のテーブルにのせることを条件に法改定の容認を求めることも考えられます。また、その他、沖縄の振興開発についてのこれまで以上の資金の提供や、「5・15メモ」の公表等を提案するかも知れません。どうかこれらの甘言に抗して、沖縄をターゲットにしたこの差別政治に徹底的に「否!」を表明し、それを貫いてください。
橋本首相は、参院予算委員会で「圧倒的な方々は契約を受けてもらっている。その重みを理解してほしい」とか、「(日米安保)条約上の責任とともに、協力していただいている99.8%の地主の人にきちんとする責任がある」と表明しています。私たちは、満腔の怒りでもってこの発言を糾弾します。違法・不当なやり方で契約に追い込んたことや、土地代に頼らざるを得ない窮状に追い込んだ責任を棚に上げて、さも、沖縄県民が軍事基地の存続を望んでいるかの如く言うことは、絶対に許すことができません。これは、沖縄を差別してきた歴史・政治への開き直りであり、日頃「沖縄県民の苦労」を口にしていることが、如何にまやかしであるかを自己曝露する以外の何ものでもありません。まさに、県民投票によって示された県民意志を無視しようとするものです。
反戦地主が、復帰後も「公用地法」「地籍明確化法」「米軍特措法」と次々に適用され、日本政府からコンマ以下の存在だと中傷されながらも頑張りえたのはなぜでしょうか。それは、沖縄戦による塗炭の苦しみと米軍による土地取り上げの歴史を決して忘れてはならないとの思いと、何よりも、この思いは契約に追い込まれている地主を含めて、圧倒的県民の思いと共通しているとの確信があるからです。
今、橋本内閣や、それを支える人々の中に、沖縄の闘いは、振興資金を引き出すための条件闘争だとの誤解がはびこっているようです。沖縄の21世紀を若者が胸を張り誇りを持っていけるようにするには、このような誤解は払拭されねばなりません。
ご承知のとおり、沖縄県政与党は、今定例議会に「駐留軍用地特別措置法の改正に反対する決議」を提案しました。与党の中には、党中央が法改悪に賛成するなら独立するとの重大な決意をするとまで言い切っている政党もあります。このような与党の皆さんと一体となって決断して下さい。
私たちも、全県下で署名運動を展開しながら、法改悪阻止に向けて、可能なあらゆる行動を取り組んでいきます。また、全国でも既に闘いが開始されています。
このような情勢を背景にしながら、何よりも沖縄の歴史と、120万県民の生存にかかわる間題として、貴職が「否!」を明言し、貫徹して下さることを心から要請いたします。
1997年3月21日
那覇市楚辺1−14−1
沖縄軍用地遠憲訴訟支援県民共闘会譲
議長 有銘 政夫
権利と財産を守る軍用地主会
会艮 照屋 秀伝
一坪反戦地主会
代表世話人 新崎 盛暉
反戦地主弁護団
伊志嶺 善三
坪反戦地主弁護団
三宅 俊司