声明
ところが、その一方で同日、地主知花昌一氏に対して、不法占拠をした四月一日当日分の借料相当額として「金六七六円」を持参してその受領を強要していたことが明かとなった。国は、不法占拠であっても土地を明け渡す必要がない理由の一つとして、法的「空白期間中」も地主に借料相当額を支払う。ということを理由の一つとしていたが、この「六七六円」を支払うことが、「地主に不利益を与えない」という意味であったのである。
一般民事事件では、契約解除の効力を争うに際して、賃料額を提供し、その受領が拒絶された時は供託するということが行われているが、これは、権利の存否について争いがあり、賃料を提供する側は、権利があるとの認識のもとでおこなっているものである。
ところが、今回の「金六七六円」の提供は「国が占有していることに伴う借料相当額」といっており、国は不法占拠であることを自ら認めているのである。丁度泥棒が、窃盗を見つかって、警察に引き渡されようとした時に、「金を払えばいいんだろう」とうそぶくのと、何らかわらない行為である。我々は、この行為に対して、怒りを通り越して、このような陳腐な行為をしてまで憲法を踏みにじり、財産権を侵奪する政府しか持ちえない国の国民であることに恥ずかしさすら覚えるものである。
国が負担すべきは借料ではなく、不法占拠に伴う、賃料相当の「損害金」である。従って、賃料相当損害金の算定は、国が一方的に行えるものではない。国は、「六七六円」の算出根拠すら示していない。
知花昌一氏は当然、「六七六円」の受領を拒絶したのであるが、仮に防衛施設局が右の金額を供託するとしても、その前提として防衛施設局は、今後、不法占拠が続く限り、毎日「金六七六円」を地主宅に持参しなければならない。しかし、これを受ける地主にとっては、毎日の生活の平穏を害され、不当な負担を受けることになる。契約拒否地主に対して、様々な嫌がらせを加えて契約を強要していったのと同じ手口をもって嫌がらせをしようとしているのと何ら変わらない行為である。
国は、このような陳腐な行為をただちにやめ、地主の土地への立ち入りと土地の返還をすべきである。
また、国は、日々、「金六七六円」の支払いをすれば、土地の占有使用は許され、地主への土地の返還どころか、土地への立ち入りを拒否することすら出来るとしている。
であるならば、緊急使用裁決の申立をして「直ちに、当該土地を使用すること」の許可を求める必要はないのである。国は、「金六七六円」の支払いをすれば、土地の占有使用が許されるというのであれば、直ちに緊急使用裁決申立を取り下げるべきである。
緊急使用裁決を求めるのであれぱ、現在の状況が「土地強奪状態」であることを認め、地主の立ち入りを認め、土地の返還をすべきである。
一方では、「金六七六円」の支払いをすれば、土地の占有使用は許されるとし、一方では使用権限がないので「直ちに、当該土地を使用すること」を認めろという要求はそれ自体、自己矛盾である。
那覇防衛施設局は、地主知花昌一氏に対する「金六七六円」の受領強要行為を直ちにやめ土地への立ち入りと土地の返還を行うよう求めるものである。
一九九六年四月二日
反戦地主会
違憲共闘会議
違憲共闘弁護団
=== <960403-4> news.asahi/society, -(-), 96/ 4/ 3 00:17, 19行
標題: 借料相当額に反戦地主ら反発
国による「不法占拠」が起きている米軍楚辺通信所(沖縄県読谷
村)の一部用地に対し、那覇防衛施設局が地主の知花昌一さん(4
7)宅に日参して「借料相当額」を払おうとしている問題で、沖縄
軍用地違憲訴訟支援県民共闘会議など三団体は二日、「嫌がらせと
変わらない」と反発。日払い行為の中止と土地への立ち入り、返還
を求める声明を出した。
知花さんは楚辺通信所の敷地内に二百三十六平方メートルを所有
し、国との再契約を拒否している。一日には所有地への立ち入りを
求めたが、国は米軍の管理権を理由に拒否した。
「借料相当額」は一日六百七十六円。同施設局施設部の職員は支
払いのため一、二の両日、知花さんを訪ねたが、知花さんは「算出
根拠が分からない」などとして受け取りを保留している。声明は日
払いに対し、「地主は生活の平穏を乱され、不当な負担を受ける」
などと批判している。
共闘会議議長、有銘政夫さん(64)は「法的な根拠もなしに、
理由にもならない理由を並べ立てて、国は米軍による土地占領を公
認している。クリントン大統領が近く来日するが、橋本首相との会
談で、この不法状態をどう論議するのか。安保の根幹にかかわる問
題だ」と指摘した。