日本政府は、大田知事と県議会、市町村議会をはじめ多くの市民・民主団体・労働団体など広範な沖縄民衆の強い反対を押し切って、米軍用地収用特措法の改悪案を国会に提出しました。
改悪案は、土地の不法占拠を避けるための一部改定とは名ばかりで、実質はかって例を見ない、強権むき出しの「土地強奪法」であります。これは、楚辺通信所の不法占拠をうやむやにし、収用委員会が持つ審理と裁決の権限を奪い、総理大臣の使用認定だけで「暫定使用」の名のもとに事実上、無期限に土地を強制使用できる「特別立法」にほかなりません。国民の財産権を保障した憲法二十九条、適正手続きの保障をうたった同三十一条に違反することは明白であります。
こうした憲法違反の悪法がまかり通るなら、日本は法治国家でも民主国家でもありません。橋本首相が口にする「基地整理縮小への努力」「沖縄の痛みを全国で分けあう」などの言葉を、もはや沖縄県民はまったく信用しません。改悪案が成立したことにより、在沖米軍基地が、なお長期にわたって固定化されることは疑いないからであります。日本政府によるこのファッショ的法改悪は、占領下で米軍が「布令・布告」を連発し、銃剣とブルドーザーで行った土地強奪と何一つ変わりません。多くの沖縄県民は今、この法改悪を「あらたな琉球処分」「さらなる沖縄差別」と受け止め、怒りと屈辱に震えています。
しかし、この米軍用地収用特措法改悪は、ひとり沖縄だけにかかっているものではありません。民主国家・法治国家の仮面をかなぐり捨てた日本政府は、すでに昨年四月の「日米安保共同宣言」によってアメリカのアジア・太平洋戦略、さらには世界戦略への一層の加担を鮮明にしています。日米防衛協力をより緊密化させている日本政府が、いま米軍用地収用特措法を改悪することは、米軍基地の本土への無制眼な拡大に道を開くことにつながります。
私たち沖縄県民は、人間としての尊厳と誇りをかけて、この米軍用地収用特措法改悪を断じて容認はしません。改悪を阻止し、米軍と日本政府によって五十年以上奪われ続けてきた私たちの土地を取り戻すことが、日本国憲法と民主主義を守り、基地のない平和な沖縄を自らの手でつくりだす第一歩だと信じるからであります。
幸いに、本土でもいま多くの心ある人々が改悪反対の声をあげ、行動に立ち上がりはじめています。私たちはこれら本土の心ある人々と手を結び、自らの尊厳と権利、日本の民主主義を守るため、全力を挙げて闘い抜くことを決意します。同時に、本集会の名において日本政府のファッショ的改悪を糾弾するとともに、政府に対し米軍用地収用特措法改悪案を撤回し、五月十四日で使用期限切れとなる軍用地を速やかに返還するよう強く要求します。
一九九七年四月十七日