申入書
沖縄市議会において、同市議会議員により、同市基地担当職員が反戦地主であり、反戦地主では、基地行政は円滑にいかない旨の議会質問がなされた。
ところが、驚くべきことに、右情報を議員に対して漏洩したのは、貴局職員であり、しかも新聞報道によると、貴局職員は施設局を訪れた右議員をわざわざ呼び止めたうえ、「あなたの沖縄市は担当課長が反戦地主。基地行政で腹をわった話はできない」という趣旨の話をしたというのである。
そもそも、いかなる思想信条をもつかは、個人の基本的人権であり、また、その事実を理由なく開示されないということも、憲法上保障された権利である。
貴局職員は、職務上知りえた、市職員が反戦地主であるとの事実を積極的に同市議員に漏洩したのみでなく、担当課長が反戦地主では基地行政で腹をわった話はできないという趣旨を伝えて、あたかも、反戦地主が基地担当職員では行政運営に支障を来すかの如き言辞を伝えているのである。
今、全県を上げて基地の撤去を求める声が広がっており、九月には基地の存否を問う県民条例に基づく県民投票も実行されようとしている。そのような状況において、貴局職員による本件の如き情報の意図的な漏洩は、憲法の保障する思想信条の自由、プライバシー権に対する侵害のみでなく、基地に反対する者に対しては、様々な圧力を加えようとするまさに反戦地主狩りとしか言えない卑劣な行為である。
本来、強制使用手続においても、各地主の職業等は申告要件にもなっていない。にもかかわらず、今回、反戦地主の一人が沖縄市職員であるとの情報を得てこれを漏洩しえたということは、他の反戦地主についても、一人一人職業等の調査を行っていることを示すものである。
一九九六年六月一七日付け産経新聞によると、防衛施設局は、一坪反戦地主の居住地域を沖縄および他府県別に調査し、その数を特定した外、名前は公表しないが、著名な知識人も含まれているとの調査までおこなっており、その事実を与党各党に報告したとの報道もなされている。
これらの事実によると、今回の沖縄市職員に対する個人情報の漏洩は、単に一職員の個人的な行動として行われたものではなく、防衛施設局の組織的調査に基づいて得た情報を意図的に漏洩したものであると言わざるを得ない。
一坪反戦地主がどの県にいるのか、当該地主が著名人なのか否か職業が何か。などということは強制使用手続きには何ら関係のないものであり、また、調査をする必要すらない事項である。そのような事実を意図的に調査していること自体、違法な個人情報の調査であって、プライパシー権の侵害にあたるというべきである。
県外在住者に一坪反戦地主がいるということと、沖縄県民が基地の苦渋からの開放を求め、基地の撤去を求めている事と何が矛盾するのであろうか。反戦地主は軍用地主のうち微々たる数しかいないというが、契約地主の多くも好き好んで契約をしているわけではない。貴殿らが、様々な圧力を加えて契約を強要した人々であって、基地に反対するという心は反戦地主と何ら変わるものではない。本件はこれまでの反戦地主に対して同様な人権侵害行為を行ってきた事を自己暴露したものでもある。
反戦地主について、沖縄とヤマトを区別するというのであれば、安保の名の下に基地の重圧と被害を沖縄県民に一方的に押しつけている「日本」をこそまず問題にすべきではいのか。
今回の貴局職員の行為は一職員の個人的行為としてなされたものではなく、貴局が組織的におこなったと思われる反戦地主に対する様々な調査結果を意図的に流し、世論を撹乱し、「特別立法」制定に向けての有利な情勢を作ろうとするものであり、一連の国会調団等の沖縄への圧力と気脈を通じるものである。
今回の行為は、漏洩行為そのものが憲法に保障する思想信条の自由および、個人秘の違法な開示であり、公務員の守秘義務に違反する極めて悪質な行為である。また、それのみならず、その前提として施設局が組織的に行った個人情報の調査は、組織ぐるみの違憲行為であるといわざるを得ず、絶対に許されざる卑劣な行為である。
我々は、貴局の憲法違反の卑劣な行為を糾弾し、以下の事項を要求する。
一九九六年七月十一日
那衛防衛施設局
局長 嶋口武彦 殿
権利と財産を守る軍用地主会
沖縄軍用地違憲訴訟支援県民共闘会議
一坪反戦地主会