2001年7月4日
小泉純一郎内閣総理大臣様
名護ヘリポート基地に反対する会
幾たび人の心が踏みにじられても、政治は変わらなかったし、変えようとすらされてこなかった。事件は繰り返し起こり、遺憾の意や抗議の声も、繰り返し上げられてきた。「二度と起きてはならない事件」が、なぜ度々起きるのか。地球より重いとすら言われる個人の命が、なぜこれほどまでに軽視され続けているのか。すぐ目の前にある傷ついた命が、なぜないがしろにされ続けているのか。その答えの本質を、なぜ政府は探ろうともしないのか。
2日に北谷町で起きた強姦事件について、政府は異例の迅速対応を見せたと報じられている。しかしその中身からは、政府のていたらくがよくわかる。「対応を誤れば、せっかくの首脳会談の成果が色あせかねない」(外務省幹部)。「首脳会談が暴行事件でかすむのではないか」(首相周辺)。政府の対応には、優しさのかけらも含まれていないのである。
軍隊が命を傷つけ、人の心を激しく打ちのめす存在でしかないことは、沖縄においてその悲しみの歴史が示している通り、揺るぎない事実である。その事実を前にして、何の躊躇があって、基地撤去が視野にも入らないのだろうか。
基地を米軍に提供している日本政府の責任が、なぜ厳しく問われないのか不思議でならない。人が怯えて暮らさなければならない日常を、政治的に許している極めつけの確信犯こそ、政府であるというのに。基地の存在を認めていることの必然的結果として、今回の強姦事件が引き起こされているというのに。
血の通わない政治が求心力を失い、やがて崩れ落ちることを、将来の歴史は証するに違いない。命は輝くためにこそあり、闇に沈められるためにあるのではない。全ての命が堂々と光を放つことのできる真に自由な社会が絶対に訪れると信じることを、恥じるべきではない。
基地は撤去されなければならない。人が当たり前に暮らすために。命の尊厳が何によっても脅かされることのない当たり前の社会が、生み出されるために。
軍隊はその手から剣を捨てなければならない。傷ついた隣人の心の痛みを分かち合うために。そしていつの日か手と手を握り合って真の平和をつくり出していく友となるために。
基地の撤去を視野に入れた協議を始めることは、21世紀を生きる私たちに求められている緊急かつ、人類的な課題である。「首脳会談の成果が色あせる」などということがどれほど小さな問題であろうか。政府の認識はあらためられなければならない。政府の最高責任者としての小泉首相に、過ちを過ちとして認め、真の平和を求める勇気が与えられるよう、私たちは切に願っている。
以下のことを強く求める。
1. 北谷町の強姦事件の被害者とその家族及び周囲の人々に対し、日本政府として正式に謝罪すること
2. 沖縄、そして日本における全ての基地の撤去、全ての軍隊の撤退を視野に入れた政治協議を直ちに始めること