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日本政府は、2020年10月11日に発出された「エンドツーエンド暗号化及び公共
の安全に関するインターナショナル・ステートメント」(以下「ステートメント」と呼ぶ)に、英国、米国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、インドとともに署名しました。私たちは以下の理由から、このステートメントに反対します。
(1) 憲法21条で定められた「通信の秘密」条項に明確に違反します。
(2) ステートメントは、暗号化の意義を強調する一方で、例外的に法執行機関などが読取・利用できるように暗号化を弱体化させる技術の導入をIT業界に要求するという矛盾した内容になっています。私たちは、暗号化に例外を設けることに反対します。
(3) ステートメントは、暗号化への規制は「社会の非常に脆弱なメンバー」の保護に欠かせないと主張していますが、人権活動家、ジャーナリストなどによる広範な支援や当事者のプライバシーもまた暗号化によって保護され、暗号規制は「脆弱な人びと」をより脆弱にしてしまうという側面を軽視しています。
(4)ステートメントは、その表向きの理由とは裏腹に、法執行機関が私たちの通信の秘密に対して特権的な権限を行使できるような通信インフラを構築し、監視国家化を促すものです。「脆弱な人びと」含む全ての人びとのコミュニケーションの権利と基本的人権の侵害を招くことになります。
以上の理由から、私たちは、「エンドツーエンド暗号化及び公共の安全に関するインターナショナル・ステートメント」に反対し、日本政府がこのステーメントから撤退することを求めます。
2021年3月
JCA-NET理事会
(注)エンド・ツー・エンド暗号化とは、送信者と受信者の間の通信の秘密を保持する暗号化の仕組みで「サービスを提供する企業を含め、第三者が通信にアクセスすることはできない。暗号化はまた、コンピュータ、携帯電話、その他のデジタル機器に保存されている情報を保護し、機器が紛失したり盗まれたりしても、機器の情報を確実に保護するのに役立つ」。(グローバル暗号化連合の声明より)
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ステートメントの背景説明(*)
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(1)経緯
今回のステートメントの締結に関与した政府の関連部局は、外務省、法務省、警察庁、総務省、個人情報保護委員会である。このステートメントの取り纏めの担当は外務省の国際安全治安対策協力室である。国際安全治安対策協力室は「テロ対策に関する国際協力に関する外交政策の企画・立案及び総括、国際的な組織犯罪に関する外交政策」を業務内容としている。ステートメントでは具体的な課題として「性的搾取を受けた児童のように社会の脆弱性の高い人々」への対策がうたわれている。もしそうであるなら、なぜ国際安全治安対策協力室なのか、という疑問が残る。外務省には人権人道課など「社会の脆弱性の高い人々」への国際的な取り組みで適切な部署がある。ステートメントにあるこの点から、「社会の脆弱性の高い人々」への対策は、額面通りに受け取るべきではなく、ステートメントの性格は、治安対策が主要目的であると判断できる。
関係省庁のうち、外務省、個人情報保護委員会、法務省に問い合わせを行ない以下のような回答を得ている。(2021年2月 以下の電話回答の内容は、JCA-NETによる要約であり、先方に再度内容の確認は行っていない)
●外務省(電話)
ステートメントの性格については拘束力のあるものではない。
米国など英語圏諸国は大臣の署名があるが日本とインドは国名の「Japan」があるだけで、署名者個人名がない。この理由についての明確な返答はなく、外交文書としての位置付けがどのようなものなのか、明確な回答を得られなかった。
声明のなかに「法執行機関が読取可能かつ利用可能な形式のコンテンツにアクセスできるようにすること」などの文言が盛り込まれており、こうした措置をとることを約束する体裁になっていることについて、10月の署名以降の日本政府の取り組みについて問い合わせたが、外務省としてはとくに何も取り組んでいないが、法務省、警察庁の動向は不明とのこと。つまり、国内での法整備などは外務省の管轄ではないということかもしれない。
●法務省(メールでの回答)
法務省への問い合わせに対して以下のような回答をメールで得た。
- このステートメントについて法務省のどこの部局が担当になるのでしょう
か。
回答:具体的なご質問の内容に応じてご質問に対応する部門を決めることになります。
- このステートメントにあるエンドツーエンド暗号化に関して、法務省が管轄する国内法との関連では、どのような法規等が関係しますか。
回答:刑事事件の証拠収集実務の運用に関連し得るものとして、刑事訴訟法等が考えられます。
- このステートメントの署名にいたるまで法務省内部での検討の経緯。
回答:内部での検討経緯については回答いたしかねます。 - このステートメントの署名後、現在にいたるまで、とくにエンドツーエンド暗号化に関連する事柄についてどのようなことを法務省で検討されているか。
回答:検討しているか否かも含めて回答いたしかねます。
法務省
(コメント)法務省は、ステートメントに関する経緯などを明かにする意思をもっていない。とはいえ、刑事事件の証拠収集実務の運用あるいは刑事訴訟法に言及しており、これらの法律や関連規則などを改正し、エンド・ツー・エンド暗号化を法制度上も弱体化させる可能性を否定していないと思われる。これまでの盗聴法や共謀罪などの法制化の前例をみるまでもなく、法務省は憲法の通信の秘密や市民的自由の権利よりも捜査機関の権限の拡大を優先させる政策をとりつづけていることから、法務省の動向には注視が必要である。
●個人情報保護委員会(電話)
電話での問い合わせに対しておおよそ以下のような回答を得ている。
- この声明は各国の共通認識を示したものにすぎないので行動をとることは念頭にない。
- エンド・ツー・エンド暗号化を骨抜きにするものではない。
- 声明の最後に「参加国は、テクノロジー企業と政府が公衆とそのプライバシーを保護し、サイバー・セキュリティーと人権を擁護し、技術革新を支援することを可能にする合理的な方策を立案するため、企業と共に取り組むことを約束することを表明」とあり、プライバシーは保護されると認識している。
しかし、私たちの反対声明で指摘しているように、法執行機関がコンテンツにアクセスできるような技術は、エンド・ツー・エンド暗号化の骨抜きでしかなく、ステートメントにあるプライバシー保護などの文言を文字通りに受けとることはできない。この点で、個人情報保護委員会は、このステートメントに対して明確に反対の立場をとるべきである。
(2)日本国憲法21条について。
憲法21条の条文は以下のとおり。
「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」
ステートメンでは、暗号化によって保護されている通信に対して、捜査機関が暗号を解読できるようにテクノロジー企業に求めている。これは、憲法が明記している通信の秘密の権利を政府が率先して侵害する政策をとることを意味している。日本政府は、外交であっても憲法に反する行為を行なうことはできない。また、実際にエンド・ツー・エンド暗号化に対して捜査機関によるアクセス可能な仕組み(一般に「バックドア」と呼ばれている)を設けることを「業界に強く要求する」ということは、公権力による事実上の民間企業への圧力、指導であり、憲法の規範を明らかに逸脱している。
(3)「性的に搾取された子どものような社会の非常に脆弱なメンバー」の保護という理由について
暗号化に対する規制は、インターネットの草創期から繰り返し政府が要求してきたものであり、今回が初めてではない。(初期の頃の暗号をめぐる政府と暗号コミュニティとの闘いについては、シムソン・ガーフィンケル『PGP : 暗号メールと電子署名 Encryption for everyone』、ユニテック訳、オライリー・ジャパン、参照) 暗号規制は、政府の捜査機関が一般的に通信を傍受、監視する力を確保することを意図して繰り返し主張され、その都度、暗号規制はプライバシー団体やインターネットにおける市民的自由を擁護する人びとの運動によって阻まれてきた。捜査機関が暗号解読のための特権的な顕現を持ちたいという動機は、当時から現在に至るまで変るところはない。この特権を正当化するために、様々な尤もらしい理由が持ち出されているに過ぎない。通信の秘密や思想信条の自由など基本的人権は、捜査機関の権限への制約を課すことで保護されている権利であることを強調しておきたい。
一般に、「社会における脆弱な人びと」は、社会の支配的な集団から迫害、差別、搾取の対象になっている場合がほとんどである。こうした「脆弱な人びと」にとって、たとえば、支援者たちとの通信、ジャーナリストや人権団体、外部(国外)との通信など安全なコミュニケーション環境を確保する上で、暗号化は唯一の手段である。どこの国においても捜査機関がこうした「脆弱な人びと」の権利を防衛する立場に立つとは限らないことを私たちは繰り返し経験している。この点で捜査機関に暗号解読の特権を与えるような技術の導入は、むしろ「脆弱な人びと」の安全をより一層脅かすことになりかねない。
(4)国際的な動向について
暗号規制の動きは米国を中心とする英語圏諸国とEUにおいて活発に展開されており、これが他の諸国にも波及する傾向にある。今回のステートメントもこうした国際的な動向の一貫として理解する必要がある。暗号規制の理由は、地域によってまちまちであり、いずれの地域でも、世論の同意が得られそうな課題を前面に押し出して暗号規制を法制化し、技術として実装させようとしている点では共通している。
なお、今回のステートメントに関しては、国際的な暗号規制に反対している団体、Global Encryption Coalitionからはいちはやく反対の声明が出されている。(JCA-NETもGlobal Encryption Coalitionのメンバー団体である)
https://www.globalencryption.org/2020/10/cdt-gpd-and-internet-society-reject-time-worn-argument-for-encryption-backdoors/
(日本語訳:https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/hankanshi-info/knowledge-base/cdt-gpd-and-internet-society-reject-time-worn-argument-for-encryption-backdoors/>)
以下時系列でここ数年の暗号化をめぐる各国政府などの主な動きをリストアップしておく。2019年の大阪G20の首脳声明は、暗号化の文言はないものの事実上暗号規制に踏み出す政府間の合意を生み出すきっかけを作ったものとして重要なのでやや長く引用した。
- 2019 大阪サミット「テロ及びテロに通じる暴力的過激主義(VECT)によるインターネットの悪用の防止に関するG20大阪首脳声明」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/g20/osaka19/jp/documents/final_g20_statement_on_preventing_terrorist_and_vect.html
「我々は、オンラインプラットフォームに対し、テロリストやVECTのコンテンツがインターネット中継され、アップロードされ、又は再アップロードされることを防ぐ取組の野心や速度を高めるよう、強く促す。我々は、テロリストやVECTのコンテンツを検出し、これが自らのプラットフォームに現れるのを防ぐために、サービス利用規約を設け、実施し、強制するための共同の取組を強く奨励する。その他の手段の中でも、これは技術を開発することによって達成されるかもしれない。テロリストのコンテンツがアップロード又は配信される場合、我々は、オンラインプラットフォームが、文書の証拠が保存されるよう確保しつつ、拡散を防ぐため適時にこれに対処する重要性を強調する。我々は、自らの方針や手続に設けられているとおり、定期的かつ透明性をもって公に報告するとのオンラインプラットフォームのコミットメントを歓迎する。」
- 2019年7月 Five country ministerial 2019 Emerging Threats London 2019: Joint Meeting of FCM and Quintet of Attorneys-General https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/822818/Joint_Meeting_of_FCM_and_Quintet_of_Attorneys_FINAL.pdf
- 20209月 Politico紙がEUj理事会の「エンド・ツー・エンド暗号化通信における子どもの性的虐待を把握する技術的解決」という内部文書を公表https://www.politico.eu/wp-content/uploads/2020/09/SKM_C45820090717470-1_new.pdf
- 2020年10月 (米司法省国際声明)エンド・ツー・エンドの暗号化と公共の安全(本ステートメント)
- 2020年12月、欧州連合(EU)理事会は、欧州でのエンドツーエンド暗号化の使用を管理するための新しいルールの決議案
- 2020年12月、米国、財務省の金融犯罪執行ネットワーク(FinCEN)マネーサービス事業者(例えば、暗号通貨取引所を含む)に、自己ホスト型の暗号通貨ウォレットや外国の取引所を利用して顧客と取引する人々の身元データの収集を義務付ける規制案を発表
https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/hankanshi-info/knowledge-base/eff_us_cryptcurrency_regulation/
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資料
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(資料1)外務省、ホームページ
https://www.mofa.go.jp/mofaj/la_c/sa/co/page22_003432.html
エンドツーエンド暗号化及び公共の安全に関するインターナショナル・ステートメント
令和2年10月12日
10月11日、英国を始めとする関係国による暗号化に関するインターナショナル・ステートメントが発出され、我が国もこれに参加しました。同ステートメントの概要以下のとおりです(参加国:英国、米国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、インド及び日本)。
ステートメント参加国は、個人情報、プライバシー、知的財産、企業秘密、サイバー・セキュリティー、報道関係者や人権擁護者の保護において中心的な役割を果たす強固な暗号化を支持。しかし、暗号化技術は性的搾取を受けた児童のように社会の脆弱性の高い人々を含む公共の安全に対し、重大な挑戦にもなると指摘。
このため、参加国はテクノロジー企業に対し、政府と協力し、合理的かつ技術的に実行可能な方法に焦点を当て、以下の行動をとるよう呼びかけ。
(1)システム設計に公共の安全を取り入れることにより、企業が違法なコンテンツや活動に対し、安全性を損なうことなく効果的に行動できるようにしつつ、違法行為の捜査や訴追を円滑化し、脆弱な人々を保護することができるようにすること。
(2)令状等が合法的に発行され、必要かつ衡平であり、厳格な手続と審査に服している場合に、法執行機関が読取可能かつ利用可能な形式のコンテンツにアクセスできるようにすること。
(3)合法的なアクセスを促進するための政府や他の利害関係者との協議に、実質的かつ設計の決定に実際に影響を及ぼす形で取り組むこと。
参加国は、テクノロジー企業と政府が公衆とそのプライバシーを保護し、サイバー・セキュリティーと人権を擁護し、技術革新を支援することを可能にする合理的な方策を立案するため、企業と共に取り組むことを約束することを表明。
(資料2)ステートメント全文
米国司法省
広報室
即時リリース
2020年10月11日(日)
国際ステートメント。エンド・ツー・エンドの暗号化と公共の安全
我々は、個人情報、プライバシー、知的財産、企業秘密、サイバーセキュリティを保護する上で重要な役割を果たす強力な暗号化を支持する。 また、国連人権理事会の2017年決議[1]で述べられているように、暗号化は、ジャーナリストや人権擁護者、その他の脆弱な人々を保護するために、抑圧国家においても重要な役割を果たしている。 暗号化は、デジタル世界における信頼の実存的なアンカーであり、我々は、セキュリティシステムを実質的に弱めたり制限したりするような、逆効果で危険なアプローチを支持しない。
しかし、特に暗号化技術の実装は、性的に搾取された子どものような社会の非常に脆弱なメンバーを含め、公共の安全に重大な課題をもたらす。我々は、暗号化がコンテンツへのいかなる法的アクセスも完全に排除する方法で適用される場合についての我々の深刻な懸念に対処するよう業界に強く要求する。 我々は、合理的で、技術的に実現可能な解決策に焦点を当てた以下のステップを取るためにテクノロジー企業が政府と協力することを要求する。
●[テクノロジー企業は]システム設計に公衆の安全性を組み込むことにより、企業が安全性を低下させることなく違法なコンテンツや活動に対して効果的に行動できるようにし、犯罪捜査や起訴を容易にし、脆弱な人々を保護することを可能にすること。
●合法的に発付され、必要かつ適切であり、強力な保護措置と監視の下にある場合に、[テクノロジー企業は]法執行機関が解読、利用することができる形式でコンテンツにアクセスできるようにすること。
●[テクノロジー企業は]政府その他の利害関係者との協議に参加し、設計決定に実質的かつ真に影響を与える方法で法的アクセスを促進する。
公共の安全への影響
法執行機関には、犯罪を調査・起訴し、弱者を保護することで市民を保護する責任がある。テクノロジー企業にも責任があり、市民を保護するように行動する権限が与えられていることを利用規約で明記している。 いかなる状況下でも通信内容への合法的なアクセスを妨げるエンドツーエンドの暗号化は、これの責任に直接影響を与え、以下の2つの方法で公共の安全に深刻なリスクを
生み出す。すなわち、
- 利用規約違反を特定して対応する企業自身の能力を著しく損なう。これには、児童の性的搾取や虐待、暴力犯罪、テロリストのプロパガンダ、攻撃計画など、プラットフォーム上の最も深刻な違法コンテンツや活動への対応が含まれ、また、
- 重大な犯罪を捜査し、国家の安全を守るために必要かつ適切な場合に、法執行機関が限られた状況下でコンテンツにアクセスする能力を排除することで、こうしたことを行う合法的な権限がある場合に、法執行機関がコンテンツにアクセスすることができなくなる。
これらのリスクに対する懸念は、主要なメッセージングサービスがエンドツーエンドの暗号化を採用するという提案がなされたことによって、より明確に焦点が当てられるようになった。ユニセフは、インターネットユーザーの 3 人に 1 人が子どもであると推定している。 WePROTECTグローバル・アライアンス(98カ国、グローバル・テクノロジー業界の大企業39社、市民社会の主要組織41社からなる連合体)は、2019年の世界脅威評価において、アクセスできない暗号化サービスがオンライン上の子どもたちにもたらすリスクの深刻さを明確に打ち出している。「公開されたアクセス可能なソーシャルメディアや通信プラットフォームは、オンラインで子どもたちと出会い、警戒心を解く最も一般的な方法であることに変わりはない。2018年には、Facebook Messengerは、CSAM[米国国立行方不明・搾取児童センター(NCMEC)に対する児童性的虐待資料]の世界報告1840万件のうち、1200万件近くを占めていた。エンドツーエンド暗号がデフォルトで実装された場合、CSAM[児童性的虐待の資料]を検出するために使用されている現在のツールは、エンドツーエンド暗号化された環境では機能しないため、これらの報告がなくなるリスクがある」[2] 2019年10月3日、NCMECはこの問題に関する声明を発表し、次のように述べている。「子どもたちを保護するためのソリューションを導入せずにエンドツーエンド暗号化が実施された場合、NCMECは、サイバーティプリンCyberTipline(訳注1参照)の報告の半分以上が消滅すると予測している」 [3] そして2019年12月11日、米国と欧州連合(EU)は共同声明を発表し、サイバーセキュリティとプライバシーを保護するために暗号化が重要である一方で、次のように明確にしている。「テロリストやその他の犯罪者(オンラインで児童の性的搾取に従事する者を含む)がwarrant-proof暗号化(訳注2参照)を使用することは、法執行機関が被害者や一般市民を保護する能力を危うくする」[4]。
レスポンス
これらの脅威に照らして、政府や国際機関の間では、行動を起こさなければならないというコンセンサスが高まっている。すなわち、暗号化は不可欠であり、プライバシーとサイバーセキュリティは保護されならないが、このことが、法執行機関やテクノロジー業界自体が、オンライン上の最も深刻な違法コンテンツや活動に対して全く対処できないという代償を伴うべきではない。
2019年7月、英国、米国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダの政府はコミュニケを発表し、次のように結論づけている。「テクノロジー企業は、暗号化された製品やサービスの設計に、政府が適切な法的権限を持って行動し、読み取り可能で使用可能な形式でデータにアクセスできるメカニズムを含めるべきである。これらの企業はまた、ユーザーの安全性をシステム設計に組み込むべきであり、違法なコンテンツに対して行動を起こせるようにすべきである」[5] 2019年10月8日、EU理事会は児童の性的虐待との闘いに関する結論書を採択し、次のように述べている。「同理事会は、暗号化を禁止または弱体化することなく、適用法と整合性のあるプライバシーと公正な裁判の保証を完全に尊重した上で、暗号化または海外にあるITサーバーでホストされている場合を含め、法執行機関やその他の管轄当局がデジタル証拠への合法的なアクセスを確保することを業界に強く求める」[6]。
WePROTECT Global Alliance、NCMEC、そして世界中の100以上の子ども保護団体と専門家からなる連合は、エンドツーエンド暗号化を含むプライバシー向上の措置が子どもの安全を犠牲にしてはならないことを確実にするための行動を呼びかけている[7]。
結論
我々は、テクノロジー企業や政府が国民とそのプライバシーを保護し、サイバーセキュリティと人権を守り、技術革新を支援することを可能にする合理的な提案を開発するために、産業界と協力することにコミットしている。 この声明では、エンドツーエンドの暗号化がもたらす課題に焦点を当てているが、このコミットメントは、デバイス暗号化、カスタム暗号化アプリケーション、統合プラットフォーム全体の暗号化など、利用可能な暗号化サービスの範囲にも適用される。 我々は、データ保護、プライバシーの尊重、技術の変化やグローバルなインターネット標準の開発に伴う暗号化の重要性が、各州の法的枠組みの最前線にあることを再確認している。 しかし、我々は、プライバシーやサイバーセキュリティを犠牲にすることなく公共の安全を保護することはできないという主張に異議を唱える。 我々は、これらの重要な価値観それぞれを保護するアプローチが可能であると強く信じており、産業界と協力して、相互に
合意可能な解決策について協力するよう努力している。
署名
Rt Hon Priti Patel MP, 英国内務省国務長官
児童のオンライン搾取に関する国の集中報告システムウィリアム・P・バーWilliam P. Barr 司法長官
ピーター・ダットンPeter Dutton 国会議員、オーストラリア内務大臣
アンドリュー・リトル Andrew Little 法務大臣、GCSB担当大臣、NZSIS担当大臣
ビル・ブレア Bill Blair 公安・緊急事態対策大臣
インド
日本
2020年10月11日
[1]
https://documents-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/LTD/G17/073/06/PDF/G1707306.p…
[2] WePROTECT Global Alliance, 2019 Global Threat Assessment,
available at
online. https://static1.squarespace.com/static/5630f48de4b00a75476ecf0a/t/5deec…,
[3]
http://www.missingkids.org/blog/2019/post-update/end-to-end-encryption
[4]
https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2019/12/11/join…
(日本語訳)
[5]
https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uplo…
[6]
https://data.consilium.europa.eu/doc/document/ST-12862-2019-INIT/en/pdf
[7]
http://www2.paconsulting.com/rs/526-HZE-833/images/WePROTECT%202019%20G…,
http://www.missingkids.org/blog/2019/post-update/end-to-end-encryption,
https://www.nspcc.org.uk/globalassets/documents/policy/letter-to-mark-z…
出典:
https://www.justice.gov/opa/pr/international-statement-end-end-encrypti…
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100102096.pdf
訳注1:NCMECによる児童のオンライン搾取を市民やプロバイダーが報告でき
るシステム。https://www.missingkids.org/gethelpnow/cybertipline
訳注2:以下の解説は訳者の立場とは異なるが、warrant-proofの説明としてわ
かりやすいので引用します。「warrant-proof 法執行機関は、warrant-proof
暗号化により、ますます課題に直面している。サービスプロバイダー、デバイスメーカー、アプリケーション開発者は、エンドユーザーや顧客のみが復号できる暗号化を採用した製品やサービスを開発している。warrant-proof 暗号化のため、政府は、令状や裁判所の命令があっても、公共の安全や国家安全に対する脅威を調査し起訴するために必要な電子的証拠や情報を得ることができないことが多い。これは、犯罪者やテロリスト、その他の悪質な行為者が悪用することができる「無法空間」を提供している。」
https://internetsafety101.org/Warrant-proof-encryption
(小倉利丸訳)
(3) 参考:暗号規制に対する国際的な動向と批判
CDT、GPD、インターネット・ソサイエティは、時代遅れの暗号化バックドアの主張を認めない
https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/hankanshi-info/knowledge-base/cdt-gpd-and-internet-society-reject-time-worn-argument-for-encryption-backdoors/
(Tutanota)どんな暗号バックドアも、良いことよりも悪いことの方が多い。
BlueLeaksがその証拠だ
https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/hankanshi-info/knowledge-base/any_encryption_backdoor_would_do_more_harm_than_good/
(EFF)次期バイデン政権幹部は暗号化について方針転換すべき
https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/hankanshi-info/knowledge-base/incoming-biden-administration-officials-should-change-course-encryption_jp/
暗号化論争の潮流: 機密情報収集からオンライン危害への取り組みまで
https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/hankanshi-info/knowledge-base/trends-in-the-encryption-debate_jp/
(共同声明)暗号化対策の提案によってEU市民の権利が脅かされている
https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/hankanshi-info/knowledge-base/joint-statement-eu-encryption_jp/
(Tutanota)EARN IT法案は暗号化の破壊を狙っている。私たちは今すぐ行動を
起こさなければならない。
https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/hankanshi-info/knowledge-base/https-tutanota-com-blog-posts-earn-it-barr-encryption/
(Tutanota)もうひとつのテロ攻撃、もうひとつの監視法案が提案されている。政治家は、暗号化を破壊することは、良いことよりも害をもたらすことを学ぶだろうか?
https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/hankanshi-info/knowledge-base/eu-backdoor-surveillance/
公開書簡。犯罪行為を防止しつつプライバシーを守るための市民社会の見解
https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/hankanshi-info/knowledge-base/20201027_openletter_cdri/
(*)背景説明の文責:小倉利丸(JCA-NET理事)
