テクノロジーの軍事化の新たな波が到来しており、それは多様な形をとっている。
主な調査結果
- データ駆動型システムが戦場を変容させている。
- ビッグテックをはじめとするテクノロジー企業は、軍事・国家安全保障関連の契約へと事業をシフトさせており、その結果、倒産できないほど巨大化している。
- 防衛技術産業は、民間契約の獲得も目指しつつ、戦争におけるイノベーションを牽引している。
- これは「技術解決主義」の極致であり、政府は財政難であっても支出を増やしている。
2025年9月12日
Elise Racine / Moon over Fields / CC-BY 4.0 ライセンス

政府は急速に社会を軍事化している。すでに軍事費を増額し、市民権の保護を損ない、社会保護プログラムを縮小し、すでに、官民パートナーシップを通じて公共サービスを民間部門に依存している。
今や政府は、次世代の戦場を構想すべくテクノロジー業界に目を向けている。この変革の核心には新技術があり、業界はそれに鋭敏に適応している。
大手テック企業は軍事化を進め、軍事契約を獲得することで監視資本主義の更なる拡大を図っている。彼らのビジネスモデルでは人々のデータを搾取してきたが、今やそのツールは政府が戦争を行う手段になっている。
比較的新しい「防衛テック」産業が台頭し、新たな戦争形態のツールを開発している。しかし、そのビジネスモデルは戦場だけではなく、国境警備、警察活動、社会プログラムへと広がりつつある。
データがこうした変化の中核をなしている。高度な技術により、人々、コミュニティ、場所に関するデータの収集と処理が自動化されている。個人データは、人口を特定し、標的とし、管理するために使用される新たなシステムに供給される。これらの技術は監視目的に転用され、私たちの日常生活に影響をを与えながら、街の公共の場でも利用されるようになる。
私たちが「テクノロジーの軍事化」について語る時、まさにこうした力学を念頭に置いている。
これが「技術の軍事化」だ
1. 技術とデータにおける武力紛争の革新
政府は軍事目的でデータ集約型システムを導入している。彼らはメタデータ(トラフィックデータ、加入者データ、位置情報を含む)、生体認証データ、ソーシャルメディアデータに至るまで、膨大な量のデータを収集する。このデータは、行動パターンや人間同士の相互作用を検知し、「規範」から逸脱した活動を監視・特定し、標的を特定するために利用することが可能だ。
具体例として、ソーシャルメディア・インテリジェンス(SOCMINT)が軍事的なデータ収集目的に利用されている事例を挙げることができる。メキシコでは軍がソーシャルメディア上の軍に対する批判を監視し、イスラエルではパレスチナ人をソーシャルメディアへの投稿を理由に逮捕し、アフガニスタンでは映像フィードを用いた位置追跡と物体識別が、誤って民間人(子どもをを含む)を標的とし殺害する「誤爆」ドローン攻撃につながった。
自動化や人工知能(AI)ツールも、軍事作戦において一般的な技術になりつつある。これらは、意思決定支援ソフトウェア、標的の特定、紛争地域におけるドローンや衛星による分析、資源需要の予測、そして致死性自律兵器による攻撃などに利用されている。一例を挙げるなら、イスラエル軍は「ラベンダー(Lavender)」というAIシステムを使用しているが、これは大量監視データを分析して「犯罪の兆候」を特定し、ハマース過激派の容疑者を特定・標的とするものだ。しかし、「ラベンダー」は、ハマース戦闘員との関連性が全くないかごく限られた関係しかもっていない人々を誤って標的としてマークし、数千人のパレスチナの民間人を殺害した。
戦争中に新たなデータ集約型システムが導入されることは、紛争の被害者だけでなく、平時の民間人にとっても深刻な懸念材料となる。人々の日常生活に関する膨大なデータ収集は、後々暴力を行使するために利用できる。こうした監視の強化は、誤った意思決定や、偏見、過度な標的化、差別といったその他のリスクにもつながる。
2. 非防衛系テック企業が防衛分野に参入している
当初は商業用や民間インフラ技術を開発していた大手テック企業やスタートアップが、防衛分野に参入している。その過程で、多くの企業が、監視や戦争関連の目的でのAI開発はしないという約束を撤回している。
例えば2025年、Googleは倫理ガイドラインを改定し、「武器、監視、および全体的な害をもたらす可能性のある技術」を追求しないという以前の約束を削除した。
別の報告によると、ガザでの暴力が続く中、MicrosoftとGoogleはともにイスラエルとの関係を深めた。Metaも2024年11月に、自社のAIを国家安全保障目的での使用を許可すると発表した。
ビッグテック企業が国家政府と連携する企業へと変貌することは、それらを防衛請負業者へと変え、そのツールを軍事技術へと変えることになる。
中小のテック企業やベンチャーキャピタル支援のスタートアップもまた、防衛セクターへと参入している。カリフォルニアを拠点とするテックスタートアップのSkydioは、多額のベンチャーキャピタル投資を受け、2018年に民生用自律型ドローン「R1」を発売した。Skydioはその後、民生市場から軍事分野へと移行した。同社は現在、米国最大のドローンメーカーであり、そのデュアルユース技術は軍事目的と民生目的の両方に向けて開発されている。(日本に子会社あり)
法執行機関向けから武力紛争状況向けへの移行でも、用途に大きな違いをもたらす。2022年、Clearview AIもまた、ウクライナ国防省に対し、自社の顔認識技術を無償で提供した。それまでは、法執行機関に販売していた。同社は報道によると、ロシアのソーシャルメディアサービス「VKontakte」から収集した20億枚以上の画像を含む顔認識技術への無料アクセスを提供し、「検問所で警戒対象となる人々をあぶりだす」ことを可能にした。ロイター通信によると、同社はこの技術が、ロシアの工作員の摘発、戦争に関連するソーシャルメディア上の虚偽投稿の暴露、誤情報の対策、死者の身元確認、難民と家族の再会にも活用できると述べた。
ビッグテックやその他の企業が収集したデータの利用は、紛争下における企業の責任と説明責任について疑問を投げかけている。また、こうしたテック企業の力を増大させ、防衛用と非防衛用の技術生産における規制の区別が曖昧になる原因ともなっている。
3. 軍が導入した技術は法執行機関や公共サービスに転用される
紛争地域は、最新の軍事・監視技術を試験する実験場として利用されており、それらの技術は他国の軍隊に販売されるだけでなく、法執行機関で使用されるツールへと転用されている。
軍事技術が法執行機関に流入する形態には、いくつかの段階がある。法執行用に軍事装備を改造・転用する、状況に応じて修正されることなしに軍事グレードの装備を法執行機関で使用する、そして法執行活動への軍による積極的な関与である。
これは、防衛産業が民間契約市場に参入し、テクノロジー企業が政府の治安・情報機関にサービスを提供し、自社製品を「実戦で実証済み」として売り込むことを意味する。イスラエルは長年にわたり、対テロや国家安全保障の名の下に、占領下のパレスチナ自治区をテスト場として利用し、国際的な投資家や顧客に披露するための新しい防衛・監視技術を試験してきた。
欧州最大の防衛請負業者であるBAEシステムズは、2022年にアルジェリア政府に対し、暗号解読やインターネット通信の傍受に使用される高度なサイバー監視システムを販売したとされる。同社はまた、モロッコ政府にも大量監視技術を販売したと報じられている。
さらに私たちが見てきたのは、ビッグデータ分析企業であり初の「防衛技術」ユニコーン企業[企業価値が10億ドル以上に達した新興企業]であるPalantirが、軍事、移民監視、予測警察活動プログラムを網羅する契約、システム、サービスを通じて、国境を越えて活動している実態だ。法執行機関以外にも、同社は人道支援団体や保健機関とも協力してきた。例えば、英国政府は、新型コロナウイルスのパンデミックへの対応として、処理と分析のためにPalantirに前例のない量のNHS患者データへのアクセスを許可した。
紛争のために開発された技術は、データを搾取し、優位性を確保するよう設計されている。こうした企業への支出や投資により、そのツールや知見が民間分野に導入されることは、そうした目的や能力が我々の社会サービスにも持ち込まれるリスクを伴う。
4. 紛争で用いられる技術が商用利用へと転用されている
紛争地域は、防衛技術の実験場としても利用され、その後、それらの技術は商用製品へと転換される。
これは、本来紛争状況で用いられる技術が、法執行目的だけでなく民間・商業目的にも転用され、その逆もまた然りであることを意味する。
2017年、軍事分野で活動する民間情報会社の子会社として設立されたケンブリッジ・アナリティカが、8000万人以上のユーザーのFacebookプロフィールから個人データを収集していたことが発覚した事例がこれにあたる。PIは以前、2017年のケニア総選挙においてケンブリッジ・アナリティカが利用されていたことを追跡していた。同社の親会社であり、現在は解散したSCLグループは、自らを「世界中の政府や軍事組織にデータ、分析、戦略を提供する」企業と位置づけ、「60カ国以上で行動変容プログラムを実施し、防衛および社会変革における活動が正式に認められている」と述べていた。その後、ケンブリッジ・アナリティカは2016年のトランプ陣営やブレグジット運動との関与が指摘された。現在、米特殊作戦司令部は、その機械学習を活用して「海外のターゲット層に影響を与える」ことや「反対意見を封じ込める」ことを模索している。
さらに2021年には、私たちはイスラエル政府が身元確認、検問所、映像監視システムに顔認識技術を活用している実態についても調査を行った。アクセス制御システムのカメラ用ソフトウェアは、自らを「実地試験済み」の企業として売り込んできたイスラエルのスタートアップ、AnyVision Interactive Technologiesによって提供されたと報じられている。同社の顔認識および監視ソフトウェアは、学校や病院で使用されており、報道によればニース市のような公共機関やG4Sのような警備会社でも利用されている。AnyVisionはOostoに社名を変更し、2025年にはAIを活用した駐車プラットフォームであるMetropolisに買収された。
結局のところ、戦争であれ平和時であれ、データや技術の活用方法に関する規制が欠如しているようだ。例えば、世界最大級の航空宇宙企業の一つであるエアバスは、「Pléiades」のような地球観測衛星を含む、軍民両用技術を生産している。エアバスの商業衛星データを含む、こうしたデータの新たな活用法の一つが、人権状況の監視である。
例えば、2024年にはミャンマーにおけるロヒンギャの村落破壊に関するヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書に、衛星データが使用された。しかし、こうしたデータは明らかに人道的ではない目的にも利用され得る。これらの衛星画像は、エアバスを通じて一般消費者もリクエストすれば入手可能だ。2024年には、ロシア政府が運営するダミー企業が定期的に「Pléiades」の衛星画像を購入し、ウクライナの重要インフラへの攻撃に利用していたことを示す報告が明るみに出た。
軍事用ツールの商業的応用は、抑圧的な技術を私たちの日常生活に浸透させ、データの非倫理的な利用を容易にする。商業用データと軍事用データの境界線が曖昧になることは、私たちのプライバシー権や社会にとって深刻な影響を及ぼす。
これがテクノロジーの軍事化の時代だ
紛争状況下でデータ集約型システムが活用されており、これはプライバシーをはじめとする多方面に深刻な影響を及ぼしている。また、人間による監視がほとんど行われないまま標的が拡大され、監視や差別のリスクが高まることにもつながる。この過程で、テクノロジー企業が防衛分野に進出し、それによって企業の権力が強化されると同時に、紛争における説明責任の問題も浮上している。
並行して、軍が展開する技術が法執行機関や公共サービスに移転されており、これにより軍が市民空間や公共インフラを支配する余地が生まれている。結局のところ、紛争で使用される技術が商業利用に転用され、その逆もまた然りであり、軍事データと商業データの境界線が曖昧になっている。
技術の軍事化の次の段階は、人々のデータを糧としてイノベーションを推進し、新たな抑圧の手段を生み出すだろう。
これが「技術の軍事化」の時代であり、私たちはこれに歯止めをかけなければならない。
https://privacyinternational.org/long-read/5668/what-militarisation-tech
