23 北朝鮮のミサイル発射について (2006/07/06掲載)
7月5日早朝の北朝鮮によるミサイル発射の報道とともに、大騒ぎの報道が続いています。当面、日本の防衛力強化、自衛隊の増強を求め、日米軍事同盟の必要性、日米安保条約ヘのいっそうの依存、憲法9条(とくに第2項)の廃止あるいは変更やむなし、といった意見が、世論一般の中に強まってくるでしょう。改憲阻止、日本の絶対非武装を主張する市民運動にとっては、しばらくは、ありがたくない不利な状況が続くものと予想されます。
今必要なことは、冷静な議論と、それをするうえで必要な正確な状況や実態の把握だと思います。ただ、現在、私は締め切りに追われた運動上の仕事をかかえてしまっており、この問題についてまとめる余裕がありません。昨日、「核とミサイル防衛にNO!キャンペーン」は、この問題について緊急声明を発表し、それは「転載歓迎」とされています。私は、基本的にこの声明に賛成ですので、以下にそれを転載しておきます。
【緊急声明】[転送・転載歓迎]
●北朝鮮と米国によるミサイル実験強行に抗議します
〜軍拡促進のミサイル防衛でなく、東北アジアのミサイル軍縮を!〜
7月5日、北朝鮮は複数のミサイル発射実験を行った。事前通告すらない今回の実験強行は、周辺海域の漁民などを危険にさらすと同時に、日本を含む東北アジアの軍事的緊張を高めるものであり、到底許されない。私たちは北朝鮮政府に対して、発射実験の即時中止と全ての情報公開を求め、真摯な謝罪とミサイル開発自体の断念を強く要求する。武力による威嚇は信頼や平和を決してもたらさない。
現在、テレビを中心とするマスメディアには、「ミサイルの脅威」を過度に強調し、ミサイル防衛(MD)をはじめとする対抗的な軍備強化を煽動する恣意的な報道が溢れている。そこにあるのは、自らは無垢な被害者であり、相手は「何をするかわからない」無法者という単純な構図だ。
しかし、その構図の誤りこそが今回の「危機」の一因でもあることを強調したい。そこには、公平なものさしが決定的に欠けている。だから、よって立つべき原則は明確だ。
私たちは、いかなる国家、勢力、企業などによる、いかなるミサイル(兵器)の研究・開発・生産・保有・配備・実験・使用・売買・供与も決して認めない。
今回のミサイル実験強行が示した教訓は、ミサイル防衛や先制攻撃力の保有といった軍拡の必要では決してない。発射準備の動きが出て以降、米国と日本は迎撃態勢宣言も含めて、MD配備を加速させることで応じた。
「MDはミサイル発射を断念させる抑止力」とのMD推進派の論理は、挑発的とも見えるミサイル実験強行により早々に破綻した。
「抑止」どころか、MDは冷戦終結後の新軍拡競争の引き金となっている。中国は既に何度も多弾頭ミサイルの発射実験を行い、ロシアは地下移動式の多弾頭ICBM(大陸間弾道弾)の配備や、新型弾道ミサイル開発を表明している。これらは米国のMD網突破を大義名分に行われている。今回の北朝鮮による「ミサイル危機」は、MDを不可欠とする極めて攻撃的な米国の覇権戦略=先制攻撃戦略が引き起こしているグローバルな核・ミサイル軍拡競争の、東北アジアにおける表れの一つに過ぎない。
東北アジアに公平なものさしを当てると、米国の圧倒的な軍事力が鮮明に浮かび上がる。その最大拠点こそ日本列島だ。横須賀の米軍艦は500基を超えるトマホーク巡航ミサイルの垂直発射管を装備し、その約半数をピンポイント爆撃可能な発射準備態勢に置いている。MDが北朝鮮や中国への先制攻撃態勢を補助することは明白だ。
6月22日に海上自衛隊も参加して米海軍が強行したハワイ沖でのMD迎撃実験や、6・7月と連続して行われている米国による大軍事演習(「バリアント・シールド」、「リムパック」)は、先制攻撃力強化を示す軍事的威嚇であり、今回の実験同様許されない。
軍拡の応酬は緊張の永続化をもたらしこそすれ、地域の民衆の安全は決して保障しない。喜ぶのは軍需産業と国防族のみであり、軍産複合体の高笑いが聞こえてくる。
私たちは、軍拡を誘導する恐るべき情報のシャワーに抗して、はっきりと主張する。今必要なのは、ミサイル実験やミサイル防衛ではなく、東北アジア地域の核・ミサイル軍縮交渉の公正なテーブルを作ることだ。そこには、北朝鮮や中国などが開発・保有するミサイルだけではなく、MDミサイルをはじめ米軍のトマホークや自衛隊が保有を始めたGPS精密誘導爆弾「JDAM」などが削減対象として挙げられなければならない。
私たちの真の安全は、始動した「軍拡スパイラル」から脱け出すことによってしか達成されない。自らが相手に与えている脅威=保有兵器の削減を前提とした、言葉によって信頼を築く粘り強い外交交渉に、今こそ出番が与えられなければならない。
東北アジアの持続可能な平和のために、私たちは改めて以下の通り当事者に要求する。
北朝鮮政府は、
ミサイル発射実験と核・ミサイル開発の一切を断念せよ。
保有する全てのミサイルの削減・撤去を行え。
米国政府は、
ミサイル防衛配備を中止し、トマホークをはじめとする先制攻撃兵器を撤去せよ。
先制攻撃戦略を放棄し、大量に保有する核・ミサイル兵器を削減・廃 絶せよ。
「米軍再編」を中止し、東北アジアから米軍を本国に撤収させ、縮小せよ。
日本政府は、
先制攻撃と海外派兵を狙う新防衛大綱を破棄し、自衛隊の米軍への一体化を中止せよ。
ミサイル防衛導入をやめ、JDAMなど攻撃兵器を撤去せよ。
日米安保条約を破棄し、自衛隊を縮小・廃止せよ。
三者は、
韓国、中国、ロシアなどとともに、東北アジアの核・ミサイル軍縮交渉テーブルを設定するための外交努力を行え。
2006年7月5日 核とミサイル防衛にNO!キャンペーン
[連絡先](TEL・FAX) 03-5711-6478
(E-mail) kojis@agate.plala.or.jp
東京都大田区西蒲田6-5-15原田荘7号
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