58 ひどい秋の政治でしたが、紅葉は変わらず…… (2010年12月7日  掲載)   

 この秋、東北アジアの政治状況は、実にひどいものでしたね。熱い戦争さえ始まる危険の可能性があった、いや、まだも続いているという状況です。12月1日発行の『市民の意見』で、私は以下のような文を載せていました。

 ……この間、この国は尖閣列島の問題で大騒ぎが続いています。…… ■マスメディアには、この事件にはあれこれ多数の意見が出されているのですが、驚いたことには、この中に、日本の平和憲法の精神を根本に置いた論が一つもないということです。憲法という言葉自体がまったく出てこないのです。■「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」(憲法前文)以上、対中国にせよ、対ロシアにせよ、他の国ぐにに、この崇高な理想に納得させるような、日本の姿勢を見せることが必要なはずです。「領土など存在していない」などと主張しても、「諸国民の公正と信義に信頼」することはできません。■現在では漁船衝突記録ビデオの流出問題が大騒ぎになっています。一般の世論では、この流出問題を支持する意見が多いようです。問題は、情報公開問題の範囲ではなく、この流出行動支持の背景に、中国への非難や、日本への感情的ナショナリズムの拡大があるのではないか、という危険です。……

 そして、この文を書いた直後に、北朝鮮の対韓国砲撃でした。とにかく、1950年代はじめの朝鮮戦争以後で、朝鮮半島の中で実弾の砲撃が行なわれ、多数の兵士・民衆までが殺害されるということは初めてのことなのですから、これは驚きました。世界の中で、一家の三代もが国の指導者に続くなどという国は北朝鮮一つしかないのでしょうが、しかしそれは北朝鮮の民衆自身が定めることです。しかし、今回のような極めて危険な軍事挑発は直ちに停止すべきだと、北朝鮮に強く主張すべきです。この事態によって、日本の政治状況も実に危ういものに進みつつあります。NHKは、世論調査で、日米安保条約を必要とする意見は7割以上になっていると報道しています。大規模な日米軍事訓練には、初めて韓国軍の観戦参加が行なわれましたし、民主党政権は自民党もなかなか進めなかった「武器輸出三原則」見直しを通そうとしています。北朝鮮の軍事挑発行動は、こうした日米韓の軍事強化をさらに進めさせる機会を与えたのだと、北朝鮮は認識すべきでしょう。さきの文で述べた日本憲法への危険性は、さらに強まったのです。私が参加している反戦市民グループ、「市民の意見30の会・東京」「市民意見広告運動」は、来年の5月3日の憲法記念日に、これまでと同じように、全国紙新聞への反改憲の民衆意見広告の運動を開始していますが、今度はこれまで以上に重要な役割をもつことになりますので、ぜひ、ご賛同してほしいと希望しています。
 そろそろ、来年のための賀状の準備をしなければと思っていますが、その中にも、この意見広告への賛同依頼の文も含めるつもりでいます。

 というわけで、この秋の状況は実にひどいものでしたが、でも、自然の中の紅葉は毎年と同じようにきれいになりました。いや、今年は気候もひどく、夏から冬が直結して、秋がないような思いさえしたのですが、でも、植物はちゃんと秋を受け止め、私の家の窓の外のモミジも銀杏もきれいな色を見せてくれました(右上の写真)。私の部屋の窓の外のケヤキと銀杏の模様の移りを、11月7日から今日までのちょうど一ヵ月間、下にご紹介します。12月3〜4日の強い風で、葉は一挙に散ったのでした。