8 障害者手当て支給の不合理さ――『広報』のわかりにくさ(続) (2001/10/10記入)
いい人は介護する(?)――障害者として、介護者としての雑感
(その8)
No.7で批判をしたのは、旧保谷市の広報でしたが、田無市と合併して西東京市になってからも、広報のわかりにくさ、不親切さは一向に変わりません。いや、不親切どころか、不正確、事実に反する記述さえあるのです。
左に載せたのは、『広報西東京』の今年7月1日号に載った心身障害者に対する福祉手当についての「お知らせ」です。
Netscape で見ていただく場合、ほぼ原寸大ですが、読みにくいので、下の左側に転載しなおします。横書きに変わってしまいますが、行かえなどはそのままです。(なお、『広報西東京』のバックナンバーは、西東京市のホームページで読むことが出来ます。ここで触れたページは、
http://www.city.nishitokyo.tokyo.jp/konna/siho/010701/siho2.html で「PDFファイル」〈アクロバットを使って読めるファイル〉として読めます。)
7月1日から
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さて、これを読んでくださる皆さんへのクイズです。私ども夫婦は、二人とも身体障害者です。その条件を以下に記します。私および、連れ合いは、この今年7月1日から変更になったものを基準とすると、それぞれ、月額いくらを貰えることになるでしょうか。ご自分がそういう障害者になったつもりで、左の基準に当てはめてみてください。この場合、「所得が基準額を超過している方」を対象外とする、という規定は、除外して考えてくださって結構です。 夫――身体障害者手帳4級をもつ。 70歳。 いかがですか? 連れ合いの所得が「基準額を超過している」わけではありません。左に掲げた基準だけから考えますと、私は(3)に該当し、連れ合いの方は(1)に該当すると思えます。そうとしか判断できないはずです。 ところが、私のほうには、現にそれだけの額が指定した銀行口座に市の収入役名義で払い込まれているのに、連れ合いの方には 1円も支給されていません。 それで、この『広報』を見た私は、すぐに市の障害福祉課に電話で問い合わせました。電話のやりとりではいろいろあったのですが、結論だけを書きます。 |
1. 今年の「7月1日から変わります」という記述は事実に反していたこと。たとえば、最後についている「*次の方は対象外となります」という除外例のうち、「・65歳以上で新たに対象になる方」という規定は、今年の7月1日から適用になったのではなく、すでに昨年の8月1日から適用になっていたのでした。ですから、この部分の記述は誤りだったわけですが、窓口氏は「一部それ以前の分が含まれていたという意味では、不正確だったかもしれませんね」という言い方をしました。
2. 要するに、昨年、都条例が変更になり、昨年の8月1日以降に、新たに@〜Bの対象になった者、たとえば、私の連れ合いのように、新たに身体障害者になって、手帳を取得した者で、65歳を越えている場合は、対象外とされるということになっていたのです。連れ合いは手帳の給付月日が、昨年の8月22日でした。 3週間ほど早く支給されていれば、月額1万5千500円が給付されていることになったわけですが、8月1日以降に手帳を取得したために、「対象外」になってしまったというのです。
3. 私の方は、65歳は超えていますが、「新たに対象になった」のではなく、1992年以来「対象になっていた」ため、引き続き、それ以前と同じように、今も「福祉手当」が支給されているのだそうです。
さて、『広報』の「お知らせ」を読んで、そんなことが理解できるはずはありません。この「お知らせ」が、心身障害者の立場に立って書かれたなどとは、決して思えません。「伝えるだけは伝えたゾ」という姿勢のみで、それを読んだ障害者の一人一人が、自分はこの中のどれに該当するのかが理解できるかどうか、などということは、この原稿を書いた者、校正をした者たちの念頭にまったくなかったに違いありません。
私は、この原稿を書いたと思われる西東京市の障害福祉課と、編集・校正などにあたった『広報西東京』の編集部、すなわち市の企画部広報公聴課に、猛省を促したいと思います。また、市議会議員は、当然この『広報』を読んだでしょうが、なんとも思わず、放置していたのだとしたら、そういう議員たちにも批判があります。こんなわかりにくい、あるいは不正確な情報を載せるようなことがないよう、市議会の中で努力してください。
『広報』の問題についてはこれまでにします。もっと重大な問題は、石原都政の政策です。身障者手帳4級のものが、ずっと毎月福祉手当を支給されているのに、手帳2級で、介護保険の「要介護1」の適用を受け、ヘルパーさんの派遣もしてもらっている(したがって、当然、その費用も負担している)者には、まったく手当が支給されていない、というアンバランスは、どう考えても理に合いません。
市の福祉課の電話での「解説」では、新たに対象になった人を除外しても、それはそれ以前と変わらない(つまり、何も貰えない)のだから、影響は小さいが、これまで貰っていた人の分を以後打ち切るとなると、これは影響が大きいから、それまですでに支給されている人には、引き続き支給することとし、新しく障害者になった人には適用しないことにしたのでしょう、という話でした。そうだとすれば、これもひどい話です。新しく障害者になった人は、それまでの事情など知らないし、もちろん市から経過の説明などされないのですから、苦情など出てくるはずはありません。だから、そっちは、身障者手帳の1級、2級という重度の身障者であれ、一律に打ち切ってしまう、というわけです。
8月1日以降「新たに対象となった者」という規定も、実に恣意的です。連れ合いの場合、8月22日に手帳を給付されていますが、その発給の日付は、都が決めたことです。手帳の申請をしたのはずっと以前です。連れ合いの目がほとんど見えなくなった状態で退院してきたのが昨年 6月です。その直後に医師から診断書を貰い、すぐに都に手帳の発給を申請しています。発給手続きをグズグスせずに、1ヶ月ほどで発給すれば、7月中には手帳を取得できたはずで、 2ヵ月以上も遅らせたのは、都の事務処理の問題ではないですか。
こういう矛盾、不合理に気づいたのは、たまたま私たちが夫婦でともに身障者になり、片方の手帳の発給日が2000年8月1日より以前、片方が以後だったから偶然わかったに過ぎません。すでに手当てを支給されていた人には続けて支給されているのですから、問題には気づきません。新しく身障者になった人は、それ以前の身障者にそんな手当てが出ていることを知らされないのですから、自分だけが貰えないのだという問題意識を持つはずはありません。つまり、文句が出ないようなことだけを考えて、福祉をつぎつぎと打ち切っているのです。
仮に、百歩譲って、どうしても予算がなく、障害者への福祉手当を削減しなければならないとしても、手帳取得の日付などで区切るのではなく、障害の度合いによって比較的軽度の障害者の手当ては削減するが、重度の障害者には手帳取得の日付に関わらず、全員に福祉手当を支給するというのが、当然のことでしょう。