51  今野求さん､退院して点滴生活1ヵ月　（2001/04/25掲載）　

　新宿の東京医科大学付属病院で長らく加療中だった今野求さんは、3月半ばに退院され､自宅療養をされています。食道が狭くなっており、飲食物が口からは摂れないため、夫人の宏子さんが、自宅での点滴を練習して、1日3回、輸液を入れる手当てをされてきました。いかに引用しました今野さんからの「御礼」の手紙にあるように、状態はかなりきびしいものがありますが、最近、夫人からいただいたお便りですと、点滴生活にもようやく慣れてこられたようです。

　今野さんは、まだ痛みがあり、痛み止めの薬を使っていますが、痛みが取れれば、読書、音楽鑑賞、テレビなどを楽しみ、また、朝、30分程度の「ゆっくり散歩」も日課になってきたそうです。最近では、退院時よりも少し体力が回復してきた様子とのことです。宏子さんも、少し余裕が出てきて、最近では少しの外出もできるようになったそうです。宏子さんのお便りには、「ただ、食欲があるのに飲食ができないということがつらいですね。横で食事をしている私も、この点については肩身の狭い思いをしています。でもお互いに大分慣れてきました」とありました。

　また、この情報欄でも訴えた今野さんの治療費カンパも15日に受け取られたそうで、ご協力くださった方々へのお礼をされています。とりあえずのご報告。

　なお、今野求さんからは、以下のような「御礼」という文書が、知人らに送られてきました。

　　　　　　　　　　　御　　礼


　つい先日まで、我家の周りも見事に桜が満開となっていましたが、早くも葉桜になってきました。いよいよ春も本番というところでしょうか。
　3月17日に退院致しました。入院中は多くの方々から暖かい励ましやお見舞い、カンパを戴きました。心から御礼申し上げます。退院から間もなく1ケ月になりますが、最近やっと近所散歩が出来るようになりました。
　1996年の食道癌手術から5年、5度目の入院でした。98年夏に左頸部リンパ節への転移で2度目の入院。放射線と抗癌剤による治療を受けました。3度目は昨年5月で、再度左頚部リンパ節に転移し（前回のすぐそば）、前回と同じ治療でした。これで暫くは大丈夫かなと思っていたら、10月26日に自宅で意識不明となり、救急車で運ばれて緊急入院。「脳梗塞」かな等と考えていたら、「低血糖発作」と診断されました。しかし何故起きるのかはよく分からぬまま、12月8日に退院しました。
　ところが退院直後から声が出なくなり、調べてもらったところ“左側の声帯が動いていない、放射線の治療で声帯を動かす神経が麻痺したのではないか、訓練すれば少しは回復可能だろう”という話でした。参った！と思っているところへ、12月16日に今度は食事が飲み込めないという事態になり、又緊急入院となりました。結局自宅で過ごせたのは1週間だけでした。
　検査の結果、またもや左頚部のりンパ節が腫れて食道を圧迫し、そのため食道が完全に塞がっているとの事。ともかく食事どころか唾も飲み込めないので、24時間点滴で命をつなぎながら治療するしかありません。“まず食道を圧迫しているリンパ節を何とかして、食道を広げられるようにしたい。しかし今回は、もう放射線は使えないので抗癌剤だけでやることになる”という主治医の話で、年末から新しい抗癌剤の治療が始まりました。
　そして治療が3分の1進んだところで、間もなく激しい副作用におそわれます。白血球と血小板の激減、肝機能、腎機能の低下、胆嚢炎の併発と高熱など、1月10日前後には多臓器不全の一歩手前という状況になってしまいました。
　こうなると、抗癌剤どころではなく、治療を中断して副作用対策優先になります。そしてようやく落ち着いた頃には、体がガタガタになり、体力を回復しないことには治療は再開できないという事で結局退院、自宅療養となりました。従っていずれ、体力回復後に再入院し、治療再開となるでしょう。
　退院しても24時間、点滴が命綱である事に変わりはなく、朝晩2回の輸液の交換や週2回の針や管の交換は、訪問看護の指導を受けながら妻がやっています。声が出なくて、メシが食えないんじゃ先が見えた感じだな、などと言いながら、毎日をのんびりと過ごしていますが、ともかく癌を抱えたままなので、いつどうなるかは誰にも分かりません。その時はその時になってから考えるしかありません。いずれにしても、しばらくは――いや、ずっとかも――お会いできない状況が続きそうです。
　ささやき声しか出ませんので、電話はちょっと無理ですが、お近くにお出掛けの折はどうかお立ち寄りください。
　最後になりましたが、皆様もどうか、くれぐれもご自愛下さい。大変遅くなりましたが、まずはお礼まで。有難うございました。

　　　　　　　　　　　　2001年4月
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　今野　　求