学習会のご報告  (99/11/28掲載)

 市の合併問題について、第1回目の学習会は、11月28日(日)午後2時から、市役所東分庁舎地下会議室で、与野市市会議員 高柳俊哉さん (「小さな与野」事務局長、与野市で住民投票を求める運動の中心の一人だった人)を講師に開催され、40名ほどの市民が参加しました。以下、ごく簡単にその後報告をします。

 高柳さんのお話は、たくさんの資料とともに、興味あるエピソードを交えながら、大変具体的なもので、あっというまに時間が過ぎてしまいました。また、あとの質疑応答でも、参加者の中からつぎつぎと具体的、実践的な質問が出され、活発な会となりました。

 高柳さんは、配布したレジュメをもとに、今、埼玉県南での浦和、大宮、与野、そして上尾、伊奈の4市1町をからめて問題になっている合併が、どういう経過で進行してきたか、今、どんな状況になっているかをまず話され、ついで、市民組織、「小さな与野」と、そのあとに結成された「合併のぜひは市民の声で!住民投票を求める与野市民連絡会」の結成、および直接請求の署名運動の計画、活動経過、などを話されました。

 また質問に答えては、活動の財政・資金問題、受任者あつめの問題点、宣伝材料、署名の集め方、中心スタッフの仕事、事務所の設置の必要性など、実際に直接請求の運動を進めてゆく上での貴重なノウハウも、具体的に話してくださいました。

 埼玉県南各都市の合併問題は、いま、浦和・大宮・与野の三市の間では、すでに合併推進協議会が成立しており(97年12月)、多くの分科会も設けられて、たびたび審議が続いているが、しかし、浦和と大宮の間では、上尾と伊奈を含めての合併をめぐってかなり大きな意見の対立があり、また、新しい市名、新市庁舎の位置、さらにはポスターの図柄までをめぐって、ことごとに問題となり、市民不在のままに延々と議論は続いているが、一向に先がまだ見えていない状況だという。

 こうした中で、与野市では、98年9月に、「合併に賛成の人も反対の人もふくめて」上記「住民投票を求める与野市民連絡会」が結成され、同年11月14日から12月14日までの1ヶ月間、直接請求の署名活動が行なわれた。 (マンガは、与野市民連絡会が作った「市民情報Q & A」より)

 受任者は600名、集まった署名は 9,618人(かなり厳密に、運動側でチェックはしたのだが、それでも市の選挙管理委員会が審査して確定したのは、9,143人だった。つまりその差は無効の署名。) 署名数は有権者の50分の1をはるかに超え、法定数の7倍にもなっているので、臨時議会にかけられた(99年2月2日)が、条例案は賛成 4、反対 21 で否決された。しかし、その直後に行なわれた統一地方選挙では、合併に反対する市長候補、市議候補も出て、合併に慎重派の市議は2名が当選するという結果も生んだ。

 浦和、大宮はそれぞれ人口47万〜48万の大都市で、合併問題の規模は、保谷・田無の場合とはずいぶん違うが、しかしその両市に挟まれた与野市は、人口 81,011人、 面積 8.29平方キロ、歳出 545億円で、人口や所帯数などはほぼ保谷市と同規模といえる。

 そこでの直接請求の経験は、私たち保谷の活動にとっても、大いに参考になる。以下、高柳さんが話された与野市での具体的な経験や示唆などを、列挙してみると(順不同)、

1. 資金は、個人、団体などからの大口、小口のカンパでまかなった。約110万円。一人で10万、5万と寄附をした人もいれば、500円、1000円のカンパも多かった。

2. 受任者は多ければ多いほどよい。中には、家族のものだけを集めるから、という受任者もかなりいた。一番多く署名を集めた人は、500人以上集めたという人(高柳さん)や、300人、100人という人もいたが、それは受任者の中では少ない方で、多くは、もっと少ない10人〜30人という数だった。

3. 生年月日を記入したり、印をおすなど、かなり面倒な署名なので、注意しても無効票が出てくる。受任者の教育活動が重要で、与野では、市内の各公民館ごとに受任者に集まってもらって説明会を催し、また「署名活動Q & A」というパンフレットを作って受任者全員に渡した。

4. 運動の側の進展の状況を、市民にきちんと伝えて行くことが大事で、シンポジウム、ステッカー・ゼッケン・バッジなどのグッズの作成など、いろいろな形の工夫をした。(実物をたくさん見せてもらいましたが、いずれも見事なデザイン、カラフルなものでしたが、ほとんど手作りということでした。)

5. 地域に署名に入る前に、宣伝カーを回して、明日、あるいは今日の午後から、署名をいただきに参ります、と事前の通告をしたが、これは効果がある。待っていてくれる人もいた。また、終わった後、ご協力ありがとうございますのアナウンスをして回った。

6. 戸別訪問の署名は、会って話が出来さえすれば、7〜8割の人が署名をしてくれた。合併に賛成にせよ、反対にせよ、それは市民自身の直接の意見で決めるべきだ、という主張に、正面きって反対できる意見はまずない。

7. 家が留守でも、署名のために訪問したというビラを入れた。痕跡を残すことは、大切。訪問販売や外交員のノウハウに学ぶべきだ。

8. 駅頭での通勤客への街頭署名集め、ビラ配りは有効。それも1日だけでなく、4〜5人で、数日間は続けると、前の日は通過した人でも、翌日はビラを受け取り、その次には署名をしてくれるというようにもなる。必ず、同じ時間帯に毎日連続してやることが大事。

9. 会社の寮などは、そこに住んではいても、住民票は別の市に置いたまま、という人もかなり多いので、注意が必要。

10. 署名期間中に、中間集約日を設けた。また、神戸から経験者を招いて学習活動もした。中間集約は必要。また、署名内容のチェックは、期間中、毎日やった。

11. 危ないのは、受任者になった日と、その人が集めた署名の日付とが、前後逆になってしまう場合で、これは無効となる。最初から受任者になっている人はいいのだが、署名期間中はいくらでも受任者を新しく増やせるので、途中から受任者になった人には、こういうことが起りうる。注意しないといけない。

12. 最初は、複数の受任者で一緒に戸別訪問などをして、慣れていない人に経験をつんでもらい、次にはその人が新しい人と一緒に回るなどのこともやるべきだ。初めての人でも、一度経験すると、なんだ、わりと署名は賛成がもらえるのだ、と自信がつくようになる。

13. 選挙管理委員会とは、くどいほど、十分に事前にうちあわせをすべきだ。選管には、署名のチェックをするためのマニュアルなどもあり、どういう点に注意すべきか、などは聞いておいた方がいい。

14. お金はかかるが、運動の事務所は必要だろう。署名開始の直前には、大量の署名簿に、代表者の印を一挙に押す仕事があり、それ以後は毎日のチェック、打ち合わせ、経験交流などの作業があって、その都度公民館をかりるなどしていては仕事にならないだろう。表通りの、人が入りやすい場所がベスト。選挙事務所と思ったらいい。

15.受任者は600人だったが、中心になって活動した人は30人くらいだったろうか。

 等々でした。

 学習会は、4時10分、拍手のうちに終了しました。