7. 「反戦映画クラブ」2000年10月〜11月のご案内 (2000/09/30掲載)
戦争の異常な残虐さ、そしてそれは次世代に伝えられるか?
『4時間で消された村――ベトナム・ミライ』 イギリス、ヨークシャー・テレビ 1989年制作
【10月14日(土)午後2時より】
以前、海外ドキュメンタリ・テレビの審査委員を委嘱されて多くの作品を見ていた鶴見和子さんから、イギリスの地方テレビ局がつくった衝撃的なベトナム戦争のドキュメンタリがある、と聞いたことがある。それが、英ヨークシャー・テレビによるこの作品だった。
「4時間で消された村」とは、ベトナム中部クァンナム州の海岸沿いにある小さな半農半漁の村落である。ベトナム戦争が激化を続けていた1968年3月16日、この村で、米軍による村民500人以上の虐殺事件が起こされた。当時、日本では「ソンミ事件」として広く知られた事件である。このドキュメンタリは、事件にかかわったチャーリー中隊の元兵士たちや、その場にいた民間のカメラマン、かろうじて虐殺をまぬかれた生き残りの村人たちなど多くのインタービューを含め、事件の跡をたどる。
幼子を抱えた母親、年端もゆかぬ少女、乳幼児を含め、四時間のうちに村人を500人以上も殺戮し、一つの村を抹殺してしまう。それに参加したある黒人兵は自分は20人以上の村民を殺したとカメラの前で告白する。
同じような虐殺事件は、最近でもコソボ、東チモールなど、各地から報じられている。いったい、そんな恐ろしいことがどうして起るのか。普通の人間にそんなことができるのか。このフィルムは、参加した兵士や、居合わせたカメラマンなどへのインタービューで、そこのところに深く分け入ってゆく。そして、兵士一人一人のやった行為が、その後の人生にどんな深刻な影響を与え、今どんな心境にあるかも明らかにしてゆく。
相次ぐ虐殺事件を考える上で、これは貴重な記録で、必見といえる。上映時間45分なので、ほかに関連のフィルムも併映される予定。
『八月のメモワール』(原タイトル=The War
)1994年 アメリカ劇映画 126分
【11月11日(土)午後2時より】
監督=製作:ジョン・アブネット。出演=ケヴィン・コスナー、イライジャ・ウッドメア・ウィニンガム、レキシー・ランドール
9月の韓国劇映画も、10月のドキュメンタリも戦争の残虐さを突き詰めようとするものだったが、どちらも戦争を体験したものに残した心の傷の深さを伝え、重いよどみが心に残る。
11月のクラブでは、同じく戦争体験によるトラウマに苦しめられる人物を扱いながら、そうした体験が、どのようにして次世代に伝えられるかというテーマを扱って、見るものの心をなごませ、一つの「救い」を与えてくれる。
主人公の父子は、どちらも恰好がよすぎ、ストーリーも甘すぎるのでは、という批判は当然あろう。しかし、この映画は、「メモワール」という邦題の理由にもなっている思い出の記を書く12歳の少女の「人間が戦争を理解することはあっても――戦争は人間を理解しません」という言葉など、考えさせられる多くのメッセージも発している。
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「市民の意見30の会・東京」の読者、会員の方は参加無料です。多くの方がいらっしゃるよう、お待ちしています。毎月第2土曜午後2時から、代々木の事務局で行なわれます。参加ご希望の方は、前日金曜日の夜8時以降、事務局にお電話でご連絡ください。(03-3423-0185) それ以外の方でも、スペースに余裕があれば参加可能ですので、ご希望の方はメールでご連絡ください。お待ちしています。