73 壊れた茶碗――まったく私的な話です。 (2012年04月01日 掲載)
4月1日です。馬鹿げた嘘の話をしていい日のようですが、以下は嘘ではありません。でも、これはまったく私的な話でありますので、お忙しい方などはぜひ飛ばしてください。世の中のことには何の関係がありませんので......。
胃の調子が悪い ホスピスはどこにする? ここ一月ほど、どうも胃の調子がよくありません。食欲はあるのですが、しかし食事
の途中に胃が痛み出したり、吐き気がしたりすることがあります。また、逆流性食道炎もたびたび出てきて、ひどく辛い目に遭うようにもなっています。4月の半ばには、定期的な胃カメラの検査も予定されているのですが、どうもそれまで待たずに医師に相談した方がいいかと考え、2週間ほど前に、ずっと胃を診てくださっている病院の医師のところへ行きました。すると、胃痛や吐き気は、必ずしも胃とは限らないからと、肝臓、膵臓、腸など、あちこちの腹部の造影CT検査を受けることになりました。CT検査とはX線とコンピュータを使用して、体内の深部を観察するものです。その際、より詳しい画像情報を得るためにヨード造影剤の静脈内投与もありました。この写真を診ていますと、医師は、どうも膵臓の部分に3cmぐらいの大きさで、腫瘍のように見えるのが気になるな、というのです(左の写真)。これはさらに詳しく調べて診ないとと、血液検査なども受けました。結果は1週間後に知らせるから、とこの日はそれで終わりました。
ご承知と思いますが、すい臓ガンは、進行が早く、きわめて予後が悪いもので、いろいろあるガンの中でも最悪のものの一つだといわれています。5年生存率は20%前後、治療次第では7%にまで落ちるという調査報告もあります。日本すい臓がん学会の調査によると、2cm以下のすい臓がんの5年生存率は、31.7%となっていますが、2.1〜4.0cmですと生存率は12.9%だそうです。私の写真にありそうな腫瘍の大きさは3cmというわけですから、もしもガンだということになると、どうもよろしくありません。結論は1週間先なのですが、それまでの間、やはり、なんだかんだ
と考えました。弟妹には伝えませんでしたが、ごく親しい友人には3人だけに伝えました。電話の最初の一人は、「それはヤバイや!」と嘆いていました。2人目は、私の家まで来ましたが、老人ホームどこじゃないな、ホスピスは都会の中の方がいいか、それとも近郊の森の中の方がいいか、などどいう相談さえ言ってくるのです!
壊れた茶碗 その翌日、茶飲み用の好きだった茶碗を机から落として割ってしまいました(右の写真)。これは、今年の初めのファイルで書いたばかりの、有田(古伊万里)の六代目 佐藤走波の「赤玉」文様の茶碗でした。「あ、やっぱりネ」と思ったのでした。私は、昔から「ゲンをかつぐ」ほうなのです。落ち込んでいる
のではないのですけれど、「やっぱりネ」となると、まず、3千冊ほどある本をどう処分したらいいかとか、ベ平連のデータのサイトの管理は、誰かに頼める人がいるだろうか、と
か、新しく翻訳したいと思っていた本も、1年近くはかかる仕事だろうからこれは無理だな、などと、この1週間はいろいろ考えました。OSがVista のパソコンのデスクトップのが古くなって、どうにも遅くなっており、新しいウィンドウ7のデスクトップを買って届いてばかりいたのですが、これを組み立てるのもストップして、大きな段ボールの箱が床においたままで
した。
先輩の鶴見良行さんが亡くなられたのは1994年の暮れでしたから、もう18年にもなるのですが、お元気な頃、よく話に出ていたのは、自分の寿命が分からないのが困るのだよね、ということでした。いつまで生きているのかさえ分かっていれば、仕事の予定だけではなく、貯金の使い方、温泉に出かける頻度まで、この世にいる間にうまく生きてゆかれるのだが、そこがまったく分からずに困るのだ、という話です。実際、それが分からないものですから、生きている間に貯金が全くなくなる危険性だってあります。母は99歳ですが、私がそれまで生きていたら、生活保護を頼む以外になさそうです。ですから、スーパーで食材を買うのも時間を考えます。魚の切り身も、閉館近くに行って半額になってから買ってきます。鯛は好きですが、一切れ500円などは買わず、250円でアラが出ていたら買ってきます。実際、アラのほうがうまいので、鯛飯や潮汁をアラでよくつくります。すい臓ガンとなれば、その分からない寿命がかなり具体的にわかりそうで、温泉行きの計画も今より多い頻度にゆけることにもなるな、などとも考えました。
すい臓ガンが消えて、鰻重をご馳走される さて、1週間たって、先週の水曜日に
また病院へ出かけました。待合室で2時間以上も待たされましたが、医師の診断は、血液検査その他の結果として、まずすい臓のほうは問題はないと判断したということでした。
「ま、逆流性食道炎のほうは、出ないような薬を処方しときましょう」、で終わりです! ホスピスの相談をしていた友人に電話で結果を伝えましたら、すぐ病院へ飛んできて、近くの鰻屋へ出かけ、とりあえずのお祝いだ、と鰻重をご馳走され、その後、ビター・コーヒーを飲みに喫茶店のルノワールに連れてまでくれました。
翌日の夜は、この市の田無警察署などが主催する春の運転講習会にまで出かけました。つい先日、3年間までの運転免許証を延長してきたのですが、やはりあと3年ぐらいは車に乗るのもできそうだと思うと、しばらくは行っていない講習会にまで出かけたのです。
一昨日は、市民の意見30の会・東京の事務局で、『市民の意見』の発送作業で、少し疲れましたが、ニュースの封筒入れの作業に参加しました。そして今日からはウィンドウ7の扱いに取り組み、翻訳も少しずつ取り組み始めました。「いい気」なもんですね。あと、なんとか、「赤玉」文様の茶碗を入手したいな、と探しています。しかし、また寿命が分からなくなったわけで、貯金の残額の計算の当てが分かるなくなってしまいました。(4月1日深夜記)
(追加) なんと、たった今、和歌山県の陶器店から、六代目の佐藤走破の「赤玉」文様の茶碗が入手できることになりました、という電話が入ったのです! どうして、こうまでうまく時期が重なったりするのですかね。以前よりもいい値段で、1万5千円だそうですが、注文することにしました。やはり「ゲンを担ぐ」のはしようがないのだと思っています。貯金の残額は考えないことにしました。(4月2日朝に)