15 ひどすぎるこの国の政治・経済――談合や格差の数字 (2006年02月19日 午前3時 掲載)
(1)ひどすぎる日本の政治・経済――79歳にしてトランペットのレッスンを受け始めたという私の畏友Kさんは、「歌舞音曲にでも気を紛らわせなければ、憤死するよ」 と賀状に書いてこられた。実際、最近のこの国は、あまりにもひどすぎる。防衛施設庁の大幹部をはじめとする役人ども、それと組んで談合する大軍事産業や
ゼネコン・土建企業、東横インの社長や姉歯建築士、それらから政治献金を受け取る自民党国会議員――この国の政治と経済の中心にいる者たちは、「愛国心」や「公益」
「公の秩序」などを口にして民衆を威嚇しつつ、自らはただ私腹を肥やすことのみを考えているのだ。
たとえば、米軍再編の舞台となっている全国の8基地で、防衛施設庁が発注した高額工事の落札率が、なんと 平均して97パーセントを超え、それ以外の自衛隊基地の工事でも、95パーセント以上の高落札率が7割も占めているという。国の安全を守るだの、防衛だのといった話どころではない。防衛庁の幹部も、大企業も、ただただ私利私欲を満たすために、苦しむ民衆からとりたてた税金を、あらゆる手段を講じて掠め取っているのだ。内閣が即時総辞職しても一向におかしくないほどの大問題が、国会で
も、マスコミの上でもそうは扱われず、皇室典範と秋篠宮家の出産の性別の話や、ライブドアの社長からの送金の有無などの問題の影に消え去ろうとしている。
共産党の『赤旗』だけは、独自の調査も含めて、施設庁談合のひどさの実態を大きく報道し続けているが、一般商業紙は、国会の中でのこの問題の議論すらあまり報じなくなっている。たとえば、2月6日付けの『赤旗』は、米軍再編の舞台となっている三沢、横田、座間、横須賀、厚木、岩国、佐世保、沖縄の8つの米軍機基地・地域でおこなわれた施設庁発注の工事で、2001年度から04年度までに発注された工事件数は1346件で、落札総額は約2798億円。予定価格総額2870億円に対し、落札率は平均97.5%にもなっていると報じている。官製談合による税金のぶんどりが、組織的に行なわれてこない限り、こんな数字にはならないはずだ。
今日は、介護保険による週1回のヘルパーさん派遣の世話をしてくれているケア・マネージャーが訪ねてきた。この4月から介護保険の適用の仕方が大きく変わり、私が受けているような「家事援助」は、1回の時間が1時間半以内に縮小されたので、これまでのような、週1回2時間半の派遣はできなくなるという通知と、どうするかという相談のためだった。打ち切られる分を、介護保険の適用を受けず、全くの自己負担で続けるという手もあるが、それだと月に5〜6千円の負担になるという。すでに大幅の貯金取り崩し生活に入っている私としては、この負担は大きな痛手になる。もう一つの手は、今の週1回を2回にして、1日あたりの時間数は半減させるという方法もあるという。結局そうすることに決めたが、これも実に馬鹿馬鹿しい話だ。これまでと全く同じ作業をお願いするのだが、これまでは1度ですんだものを、わざわざ2日に分けてやることになるわけだ。要は、介護保険による「家事援助」を大幅に減らさせ、老人たちを福祉施設などに通所させて、そこで体力向上のトレ−ニングなどをさせ、自立を促進させるためだということらしい。加齢とともに次第に体力が落ちてゆく者たちに、バーベルをもちあげるようなことをさせて、それで自立が促進されるなどと、本気で考えているのだろうか。
一方では税金を大企業や天下り役人、政治家などの懐に流し込ませ、老人や病人、弱者などからはひたすら金を取り立ててゆく。もうすこし若ければ、毎日、防衛庁や首相官邸にデモをかけたい気持ちだ。
(2)格差社会の基礎データ――工人社が発行する『グローカル』という隔週刊紙の1月23日号に、この国の「格差社会の基礎データ」という具体的数字が掲載されている。とても考えさせられる数字なので、ここにご紹介しておきたい。昨年、連れ合いが死去して、その年金が遺族年金に変わって大幅に減額されたため、わが家の家計を計算してみたところ、所得は、まさに以下のデータの「最下層」にあたることがわかった。
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ようやく『格差社会』をめぐる議論が政治の表舞台に登場してきた。きっかけは公明党の神崎代表らが小泉改革に伴う経済的な格差拡大に懸念を表明したことによる。対して小泉は「そうは思わない」とこれを否定。さらに内閣府が『統計データから経済格差は確認できない』とウソ八百を並べて小泉を「援護」。
しかし、偽装耐震問題、ライブドア・ショックもからみ、ここに来て新自由主義的改革を見直そうという気運が一挙に高まりを見せている。それにしても小泉と内閣府の『統計データから経済格差は確認できない』はひどい。これを批判する基礎データを提供する。
(1) 日本の貧困率はOECD26ケ国で5番目に高い |
OECD諸国の貧困率 | ||
1 | メキシコ | 20.3 |
2 | アメリカ | 17 |
3 | トルコ | 15.9 |
4 | アイルランド | 15.4 |
5 | 日本 | 15.3 |
6 | ポルトガル | 13.7 |
7 | ギリシャ | 13.5 |
8 | イタリア | 12 |
9 | オーストラリア | 11.9 |
10 | スベイン | 11.5 |
11 | イギリス | 11.4 |
12 | ニュージーランド | 10.4 |
13 | カナダ | 10.3 |
14 | ドイツ | 10 |
15 | オーストリア | 9.3 |
16 | ポーランド | 8.2 |
17 | ハンガリー | 8.1 |
18 | ベルギー | 7.8 |
19 | フランス | 7 |
20 | スイス | 6.7 |
21 | フィンランド | 6.4 |
22 | ノルウェー | 6.3 |
23 | オランダ | 6 |
24 | スウェーデン | 5.3 |
25 | チェコ | 4.4 |
26 | デンマーク | 4.3 |
昨年2月に公表されたリポート「OECD諸国における所得分配と貧困」では、日本の貧困率はメキシコ(20.3%)、アメリカ(17.1%)、トルコ(15.9%)、アイルランド(15.4%)に次いで5番目の15.3%。最も貧困率の低い国はデンマークで、4.3%(表を参照)。
貧困率とは、所得の中央値の半分以下の所得で生活している人の比率。日本の中央値は02年で476万円だから、238万円以下の所得の人が15.3%いることになる。
この貧困率は、税や社会保障などによる再分配後の所得だが、当初所得での貧困率では、フランス、ドイツ、ベルギー、デンマークのほうが高い。つまり、デンマークなどは、市場での所得は日本より格差があるが、再分配によって格差がかなり縮小しているわけである。政治の役割である所得再分配が、日本ではいかにその役割を果たしていないかが示されている。
また、94年の日本の貧困率が8.4%だから、10年で2倍近く増加したことになる。
(2) 4割の世帯が300万円以下の所得!150万円以下も3割近くに |
これは再分配以前の当初所得。正確には300万円以下の所得の世帯数は39.6%、200万円以下の世帯が31.6%、150万円以下の世帯は27.6%である(02年)。
年金・医療・介護サービスなどの給付後の再分配所得でも、300万円以下の世帯は28.2%、200万円以下が15.5%、150万円以下が9.9%(1割も!)もある(02年)。
10年間で300万円以下は約3割から4割へ、150万円以下はほぼ倍増している。
(3) 最下層(20%)の所得は総所得のたった0.3%、最上層(20%)が総所得の50%も |
世帯所得を5段階に分けて、各層が総所得のうちどの程度の所得を得ているか、を数値化したものである。96年と比較すれば、最下層は1.4%から0.3%へ低下し、最上層は46.5%から50.4%に増加している。
(4) 貯蓄ゼロの世帯が五年間で23.8%へ倍増 |
貯蓄ゼロの世帯は、2000年で12.4%であるが、05年には23.8%へ倍増している(「家計の金融資産に関する世論調査」04年)。ちなみに94年は8.8%である。
また、貯蓄残高が減った世帯は、5割弱にのぼる。減った理由は、「定例的な収入が減ったので貯蓄を取り崩した」が5割を超えている。給料が減ったので貯金を下ろして補填しているわけである。
(5) 生活保護受給者が8年で1.5倍に急増。しかし補足率は10%程度。 |
生活保護受給者は1995年に60万世帯、88万人、2003年に100万世帯、135万人に急増している。
単身者の生活保護受給額は、東京の場合約14万円、地方でも約12万円、年収にして144万円から168万円。@で見たように、再分配後所得で年間150万円以下の480万世帯(9.9%)は、本来であれば生活保護を受けることの出来る世帯である。しかし実態は、100万世帯、実に貧困者の8割近くが、権利がありながら生活保護を受けられないでいる。
(6) 非正規雇用が労働者の30%以上、若者の失業率は8.6%(全体4.5%の約2倍) |
厚生労働省の調査では、非正社員は34.1%(03年)。総務省統計局「労働力調査」(04年)によれば、非正規労働者は31.5%。正社員とパートの時給の差は、男性で正社員約2000に対してパート約1000円、女性で正社員約1400円にたいしてパート900円である。
若者の失業率が高いことは知られているが、15歳から24歳の失業率(05年10月)は、男性9.4%、女性7.7%である。
ちなみに、有効求人数に占める非正社員の比率は56.7%である。
(7) 最低賃金は生活保護以下 |
生活保護給付の東京の事例は、単身者で月14万円弱、年収は168万円である。
東京の最低賃金は時給714円、月収は714×8時間×20日=11万4240円、年収は714×2000時間として約142万円。最低賃金で生活保護なみの所得を得るためには、年間2350時間。週休2日の休日を除く約250日で割ると、1日平均10時間近くも働かなければならなくなる。
最低賃金の引き上げが求められている。
(8) 国民保険を使えない世帯が30万以上 |
国民健康保険料が払えなくて滞納している人が増えている。政府は00年から滞納者の受給権を失効させるよう義務づけている。受給権を失うと全額自己負担を強いられる。
そのため04年度には、全国で30万6020世帯が保険医療を受けられなくなっている。05年度にはさらに5%増えているとされている。
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