news-button.gif (992 バイト) 70  戸井十月さん、肺ガンだと『毎日新聞』に元気でインタビュー 2011/06/01掲載)  

  知人で、作家の戸井十月さんが、最近の『毎日新聞』でのインタビューで、肺ガンになったと自分から言われました。私の知人や友人で、ガンになった人はかなり増えてきているのですが、最近は「いい人になった」情報などに載せたりして人に知らせないでな、という人が増えているようです。それで、本欄にも最近はほとんど、そういう情報を載せていなかったのですが、戸井さんはマスコミの上でカラッと発表され、元気でインタビューに話し、記者はホッとしている記事を載せているようです。
 以下は、『毎日新聞』2011年5月27日夕刊の「人生は夕方から楽しくなる」の面で「道、まだ果てず 男に磨きをかける ――バイクで五大陸走破した作家 戸井十月さん」というタイトルで載せられているインタビュー記事のごく一部の、ガン話題の部分です。記者は鈴木琢磨さんです。

 ……さあ、とびっきりの土産話を聞かせてくださいな、録音のスイッチを入れた、そのときだった。喧騒から外れ、いかにも昭和っぽい喫茶店で、アイスコーヒーをすすっていたおっさん作家、テレながら帽子を脱いだ。えっ? 「ハハハ、坊主にしちゃったんですよ」。あの天山山脈の寒風になびかせていたトレードマークの長髪がない。きれいさっぱり。「がんになっちゃってね。肺がん。わかったのはこの4月。12年かけた五大陸走破行が終わって、やっと本も出たって思ったら、次なるテーマが目の前に現れて」
 驚いた。そして困った。気まずい沈黙が続く。人生は夕方から楽しくなんてインタビューはできないなあ。還暦過ぎてますますエネルギッシュ、そんな見出しを浮かべていたから。カラン。グラスの氷が音を立てた。丸刈り頭をかき、ニタリと笑った。
 「でも、やるんだよ」。えっ? 「<BAJA1000>って知ってる? 11月にメキシコのバハ・カリフォルニアって半島であるオフロードレースでさ。1600`、昼夜を徹して砂漠を走る過酷なやつ。10回も出場したから、もういいかって、ここ10年はエントリーしなかった。でも、がんをもらって、自分への挑戦がしたくなったんだ」
 やっぱりこのおっさん、すごいわ。「いやいや、この年齢でがんなんていっぱいいるよ。共生して、人生を楽しまないと。健康バカでずっと好きなことばっかりやってきた戸井十月も、これで少しは人間としての重みや深みを身につけるだろうって、口の悪い古くからの友人は言ってるみたいだけど、その通りかも。これを機会に、せいぜい男に磨きをかけるとするか」。また丸刈り頭をかいた。……