news-button.gif (992 バイト) 24 最近の憂うべき情勢についての市民の意見30の会の声明 2006/07/24掲載)

   私がもっぱら活動の場としている反戦市民運動グループ、「市民の意見30の会・東京」では、憂慮すべき問題が続々発生している現状について、以下のような緊急の声明を発表しました。 私も賛同しています。長文ですが、ぜひお読みくださり、ご意見などお聞かせ下さい。

 

戦火が広がり、ミサイル軍拡が加速する、あまりに憂慮すべき世界のありようを前にしての私たちの訴え


                        2006年7月21日          市民の意見30の会・東京
     

 無惨な「戦争の世紀」であった20世紀が終わり、21世紀が訪れたとき、新しい世紀が「平和の世紀」であってほしいと誰もが望んだと思います。しかし現状はどうでしょう。中東では戦火が拡大し、東アジアでは軍事的な緊張が高まっています。この余りに憂慮すべき世界のありようを前に私たちは以下のように考えます。

私たちは、イスラエル政府に対しパレスチナ・ガザ地区とレバノンへの侵略をただちにやめることを要求します
 侵略戦争が「自衛」の名においておこなわれることを、私たちはまたもや目の当たりにしています。いうまでもなく、イスラエル政府がパレスチナ・ガザ地区とレバノンに対して強行し拡大している侵略のことです。圧倒的に優勢な武力によって大勢の無辜の民が殺傷され、交通網を含む生活基盤が破壊されています。その暴虐・非道なありさまは、イスラエル政府がパレスチナやレバノンの人びとすべてをこの地上から抹殺しようとしているのではないかとさえ思わせます。米ブッシュ政権がまたもや拒否権を行使して国連安全保障理事会に提出されたイスラエル非難決議を葬り去ったことにも私たちは深い憤りをおぼえます。私たちは、イスラエル政府がただちに攻撃を停止し撤兵することを強く要求します。

日本政府はアフガン・イラク侵略戦争への荷担をやめるべきです
 小泉首相は6月20日、イラクから陸上自衛隊を撤退させることを発表しました。そしてイラク南部・サマーワに駐留していた全部隊が7月17日までにイラクから撤退しました。しかし陸上自衛隊の撤退は、航空自衛隊がクウェートを拠点に米軍を直に支援する輸送作戦をイラクで大幅に拡大することとあくまでセットの決定でした。航空自衛隊の輸送機C130は今後、バグダッドにも米軍兵士や米軍需物資を運びますが、バグダッド空港では昨年1月、英軍の同型機が離陸直後に撃墜されています。そのバグダッド、連日多くの人が殺されているイラクの首都を麻生外相は「非戦闘地域」と強弁しています。
 それだけではありません。2001年10月に成立したテロ対策特措法に基づいてインド洋・アラビア海に派遣された海上自衛隊の艦隊は、アフガニスタンで「不朽の自由作戦」を継続する米軍を支援するため、今も米軍艦艇への洋上給油作戦を続けています。アフガン情勢はいよいよ混迷の度を深めており、NATO(北大西洋条約機構)軍はISAF(国際治安支援部隊)を増派します。それによってISAFは7月末には約15千人に達します。
 私たちは日本のアフガン・イラク侵略戦争への一層の荷担に反対し、クウェート―イラクから航空自衛隊を、インド洋・アラビア海から海上自衛隊の艦隊をただちに撤退させることを強く要求します。

私たちは、どの国のミサイル発射軍事演習にも反対です
 朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)政府は7月5日、日本海で7発のミサイルを発射する軍事演習をおこないました。
 この問題について私たちはまず、私たちの基本的な立場を表明したいと思います。私たちは、いかなる理由がつけられようと、どのような軍事演習にも反対です。軍事演習は軍事力の誇示にほかならず、それによって周辺諸国や演習する国が敵視する国に脅威を与え、軍事的な緊張を惹き起します。その意味で私たちは、今回の北朝鮮政府による軍事力の誇示に反対し、もう二度とあのような軍事的デモンストレーションをおこなわないよう求めます。
 インド政府は7月9日、東部オリッサ州で核弾頭搭載可能な長距離弾道ミサイルの発射実験をおこない、ミサイルはベンガル湾に落下しました。私たちはインドのミサ
イル発射軍事演習にも反対です。この軍事演習は明らかに中国とパキスタンを意識しておこなわれたものであり、インド政府にこのような演習を繰り返さないことを求めます。大量の核とミサイルを保有する中国、およびすでに核実験を成功させ事実上の核保有国であるインドとパキスタンが核軍拡競争をおこなっている現状は私たちを深く憂慮させます。
 そして私たちは世界最大の核保有国、1万発以上の核弾頭をもって世界を脅かしている米国政府の傲慢な姿勢に触れねばなりません。同国は未臨界核実験を続けているばかりか、新型核兵器の開発に執念を燃やし、弾道ミサイル防衛を急いでいます。北朝鮮によるミサイル発射軍事演習の一週間後(7月12日)、米国防総省は大気圏に再突入した弾道ミサイルを迎撃する戦域高高度地域防衛(THAAD)ミサイルの実験に成功したと発表しました。それは目障りな国をどこまでも軍事力の優位性をもって抑え込もうという米ブッシュ政権の意思の表われです。米国政府が核不拡散を主張するなら、まず自ら核軍縮を実践すべきです。自国の核保有を当然としいつでもその核を使用する姿勢を隠さないからこそ、核の拡散が加速されているのです。
 
世界が私たちに冷静な判断を求めています
北朝鮮によるミサイル発射演習は、その直後、日本社会全体がマインド・コントロール下にあるかのような異常な沸騰状況をもたらしました。意図的な演出による日本政府の強硬な姿勢と、それを無批判に伝え「北朝鮮の脅威」を煽りに煽るマスメディアがその事態を生み出しました。異様な高揚の中で、一時は「開戦やむなし」とか「撃ちてし止まん」的な主張さえ見られました。
 しかしそういう興奮は日を追うにつれ、徐々に静まってきました。国連安全保障理事会は7月15日(日本時間16日)、北朝鮮非難決議を全会一致で採択しましたが、決議には日本政府が強く求めた、軍事行動につながる強制措置を定めた国連憲章第7章は含まれませんでした。それは世界の多くの国々が日米と北朝鮮の間で軍事的な緊張が高まることを何とか回避してほしいと願ったからにほかなりません。憲法9条がありながら軍事的制裁措置さえ可能にする決議をしゃにむに求めたことに、強い警戒心が働いた結果でもありましょう。
 防衛庁は今回の事態を奇貨としてミサイル防衛(MD)を急ごうとしています。イージス艦4隻を改造してSM3(スタンダードミサイル3)を搭載する計画に着手し、最新鋭の地対空パトリオットミサイル3(PAC3)を日本の各地に配備する予定で、米軍は沖縄の同空軍嘉手納基地などに8月にもPAC3を24基配備します。政府は新たに配備される兵器の用途は防衛に限られると強調しますが、迎撃ミサイルのSM3や空中警戒管制機(AWACS、航空自衛隊がすでに保有)には攻撃能力もあります。周辺諸国が警戒を強めるのには根拠があるのです。
 韓国の大統領府は7月9日、北朝鮮のミサイル発射に関して声明を発表し、「日本のように未明から大騒ぎをしなければならない理由はない」と、日本政府の強硬姿勢を強く批判しました。しかし同時期に、麻生外相、額賀防衛庁長官、安倍官房長官など日本政府首脳は「北ミサイル基地先制攻撃論」をブチ上げました。それに対し韓国政府は7月11日、「危険で挑発的なもう言で朝鮮半島の危機を増幅させ、軍事大国化の名分にしようとする日本の政治指導者の傲慢には強力に対応する」と厳しく反論しました。朝鮮戦争を経験し、今もまたことあれば自国が戦場になりかねない国が憤激するのは当然のことです。米ブッシュ政権の尻馬に乗って新たな「朝鮮戦争」を挑発する小泉政権に私たちは強い怒りをこめて抗議します。
 私たちには今、政府やマスメディアによる煽動から離れて事態の意味を冷静にとらえることが求められています。その場合とりわけ大切なことは今回の事態がどうして起きたのかを振り返ることでしょう。これまでの歴史の文脈と切り離して「テポドン」を考えることは事態を打開する知恵や道を自ら閉ざすことだからです。
 
北朝鮮を包囲し脅し続けてきた日米両政府
 今回起きたことで、この国の多くの人が「北朝鮮に脅された」と感じました。そこからただただ「こわい」という受け止め方も生まれました。しかし私たちは北朝鮮が脅され続けてきたから脅し返しているという事実こそ直視すべきです。日本の植民地支配が朝鮮半島の分断をもたらし、朝鮮戦争の際、日本が米軍の出撃・兵站(へいたん)拠点となったことは揺るがぬ事実です。その後ずっと、日本の歴代保守政権は北朝鮮敵視政策を続けてきました。1976年から93年までほぼ毎年続けられた米韓合同軍事演習「チーム・スピリット」は北朝鮮への軍事的恫喝と挑発を目的としていましたが、それも在日米軍基地を拠点としておこなわれました。その後も「フォール・イーグル」など同様の演習が岩国、横須賀、佐世保、ホワイトビーチ(沖縄)などの米軍基地を出撃拠点として繰り返されています。 
 さらに重要なことは、米ブッシュ政権が「北朝鮮・イラン・イラク」を「悪の枢軸」と呼び、「ならず者国家」北朝鮮には先制攻撃も辞さないと公言していることです。現在急ピッチで進められようとしている米軍再編は自衛隊の再編を大前提とし日
米の軍事一体化を目的としていますが、その再編における戦略正面は北朝鮮と中国です。今回の北朝鮮によるミサイル発射軍事演習はこのような米日共同の軍事戦略を背景としておこなわれたのです。非常に遺憾なことですが、私たちは北朝鮮を軍事的に包囲し「脅す」側にいます。 

事態打開の道を私たちは提案します
 北朝鮮との緊張をなくす道は、日朝間に一刻も早く国交を樹立することであると私たちは考えます。拉致問題や「テポドン」をハードルにするのではなく、それらの問題を解決するためにも国交樹立を急ぐべきです。すべての問題を外交のテーブルに乗せて解決していくことが一番確実な打開策であると確信します。
 もう一つ私たちは、これまでも繰り返しそうしてきたのですが、日米安保条約を破棄して日米平和友好条約に変えることを提案します。支持率が急落しているブッシュ大統領と退任直前の小泉首相が6月29日共同発表した「新世紀の日米同盟」は、米国の世界戦略に基づき、米軍の指揮下で自衛隊が米日共同戦争を世界のどこででも展開する意思の宣言でした。私たちはそのような「世界の中の日米同盟」(小泉首相)のあり方を断じて拒否します。日米間に必要なものは軍事同盟ではなく平和友好条約です。米国政府の押しつけによって有事(戦争)法が次々に成立させられ9条改憲が進められようとしていますが、その道を突き進むことは文字通り破滅を選び取ることです。
 朝鮮学校やその生徒たちへの卑劣な攻撃は植民地を支配した国の負の遺産を示す、まことに恥ずべきことです。繰り返される小泉首相の靖国神社参拝が中国や韓国との関係を極度に悪化させていますが、このようなありようは、日本が過去の侵略戦争と植民地支配の後始末をつけていないことから生まれています。戦争責任に時効はなく、戦後補償はきちんとなされねばなりません。
 私たちは東アジアと世界の平和に重い責任を負っています。「武力で平和は創れない」と確信する私たちは、日本政府に対し、非武装・不戦を国際的に宣言した日本国憲法第9条の実現を要求し続けます。みなさん、ともに平和創造の道を切り開きま
しょう。

(以上)