藤本治 ふじもと・おさむ
1931−(昭和6−)
フランス文学者・社会思想史家。徳島県生まれ。東京外国語大学卒業、東京都立大学卒業。一橋大学大学院社会学研究科社会思想史専攻博士課程修了。静岡大学教授を経て、後に名誉教授。66年発行された旧制静岡高校出身の戦没者たちの遺稿集『地のさざめごと』を編集。後に講談社から新装版が発行されるが、これを編集著作権の侵害だとして裁判闘争を展開。『慰霊と反戦――「地のさざめごと」裁判闘争の記録
』(1983)は、その裁判闘争を通して、戦没学生への慰霊と反戦の意味を問う著作。日本戦没学生記念会(わだつみ会)理事、静岡天皇制問題国家賠償訴訟原告団団長、静岡日韓人民連帯会議代表などを務め、反戦・平和、日韓連帯、反差別、反天皇制の運動を担った。
【著訳書】『慰霊と反戦』(1983
田畑書店)、『民衆連帯の思想』(1991年 影書房)、ロラン・バルト『ミシュレ』(訳、2002年 みすず書房)、『詩集 ぼろぼろ倶楽部』(金龍澤と共著、2005年 影書房)
(日本図書センター『平和人物事典』より)
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以下は、『市民の意見30の会・東京ニュース』の95号に載せられた藤本さんの『詩集 ぼろぼろ倶楽部』からの2編です。
寝苦しい夜
寝苦しい夜は眠(ね)なくてよいが
生き苦しい世は生きなくてはならぬ
人として生きねばならぬ
(二〇〇三年 夏)
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サンサラーム
フアルージャの戦火遁れし韓国人牧師たち
祖国にあって祖国喪いし三・一の悲しみと怒りを憶いしならむ
済州四・三のサンサラームを首相小泉はテロリストと呼ぶか
〈われは知るテロリストの悲しき心〉を殺すのか
フアルージャを救えの叫びはるかな耳鳴りが済州サンサラー
ムを救えと木魂しておる
術なしと思えどつのる望郷の念掌(たなごころ)より落つる滴の如し黙して
われは友の目を視る
三千里寡黙のおっさんと呼びしもと学生ら
わが今の沈黙を如何に聞くらむ
(二〇〇四・四・一四 よる) |
藤本さんは、今年の5月1日に親しい知人に送られました。その中には、「食道癌の腹腔内リンパ節への転移が確認されて抗癌剤治療に取りかかる以前の、体調の良好な折りに書いたものです。ひょんなことからFad(faith
and
devotion)関東神学ゼミナール通信56号(March 2010)に掲載されました。これが活字になって公表される、たぶん最後の文章になるだろうと思います。お目にかけるのは、拙文に託したわが微意を、ぼくの知友に汲み取っていただければと念じるからです。……いま予想以上に劇しい副作用の数数に辟易しています。本や雑誌を手に取ることさえ億劫なほどです。けれども目をこすり肌を抓(つね)ると我が身はまだ生きている、たしかに生きているのです。たしかな現(うつつ)の事実です。これからも微火を燃やしつづけます。」と書かれていました。
そこに書かれてある文章――「死を待ちながら 二」という論は、全文をPDFファイルにしてあります。ぜひご覧ください。右をクリックされれば、このファイルがPDFで読めます。「死を待ちながら 二」