news-button.gif (992 バイト) 113.いい意見交換でした。――4月11日の討論集会(2004/04/13掲載 )

「平和公共哲学研究会」主催、グループ「はてみ」協力、公開討論会「デモとパレードとピースウォーク ――世代間対話の試み」 於 東京・荻窪地域区民センター

 拘留されている3人の日本人の今後が心配され、釈放と自衛隊撤兵を求める運動が一挙に噴出しているときに、「世代間対話」の討論などという気分になれないのでは……と心配していたのですが、その日の朝、24時間以内に解放とのニュースが伝わり、ホッとした気持ちで集会に参加できました。それでも、この日も国会や首相官邸付近での市民の行動は続けられ、そのため、出席予定の人がかなり来られなくなるということもありました。パネリストの一人、天野恵一さんも、参加はされましたが、夕刻に自分の呼びかけ、主催する行動が急遽、計画されたということで、閉会以前に中座されました。討論の途中では、司会者の岡本敦さん(雑誌『世界』編集長)から、イラクの「サラヤ・ムジャヒディン」が発表した声明が紹介され、大きな拍手がおこりました。
 討論は、国会周辺での行動に参加している人びとが間に合うようにと、予定を少し繰り延ばして、午後2時から開会され、途中、2回の休憩をはさんで、午後7時まで続きました。収容人員100人ほどの会場は、満員となり、予定していた配布資料が足らなくなって、急いで追加プリントするというようなことにもなりました。
 4人のパネリスト(天野恵一、小林一朗、小林正弥、吉川勇一)は、それぞれ、レジュメを用意し、ほかに関連文献のコピーなども多数、参加者に配布されました。主催者が私が用意したプリントは、議論のきっかけとなった私の『論座』3月号の文「デモとパレードとピースウォーク」、私が主催者側にお願いして用意してもらった文書は、吉川勇一「自由の危機」(鶴見俊輔ほか編『講座・コミュニケーション』第5巻所収 研究社)と、福富節男「共同行動と連帯の条件」(『デモと自由と好奇心と』所収 第三書館)でした。これとは別に、私は、自分で、東一邦「『左』を忌避するポピュリズム」、同「ネットワークと連帯」、黒目(関西有象無象)「『内在』する事の可能性のものものききであるのだ」、吉川勇一「.『有事法体制』下の九条的生き方」(『マスコミ市民』03年6月号所載)をプリントして配布しました。私のレジュメは、これだけでは分かりにくいとは思いますが、最後に掲載してあります。
 討論の記録は、いずれ主催者側から、何らかの形で発表されるものと思いますので、ここでは省略しますが、一言で言って、非常にいい意見交換ができた集まりだったと思います。終わったあと、私の所に寄せられた何通かのメールは、すべて好評で、「予想外に面白かった」、「期待以上の出来、ぜひとも継続して続きを」、 「小林一朗氏にはいい印象を得た」、「つぎは吉川・小林一朗対談を」などという意見でした。私も、気持ちよく討論に参加できました。ただ、気持ちよすぎたためか、いささかベトナム反戦運動の経験をしゃべりすぎ、「もう少し謙虚になってほしい」という参加者からの意見をもらったり、出席していた市民の意見30の会・東京事務局の仲間からは「 吉川さんのあのきつい言い方は、性格の問題でしょうがないんですよ」という発言が出されて笑われたりしました。「人生の賞味期限を過ぎてしまった人間です」と最初に自己紹介で言ったくせに、いっこうに年寄りらしく円満になれないのは、お恥ずかしいかぎりです。
 問題になっているのは、はたして「世代間の差」ということだけにくくっていいのか、という問題は、かなりの人から発言されましたが、いずれにせよ、運動の参加者の間に、感じ方、問題意識、運動に対する姿勢などの違いがあることは当然で、その間の対話・討論が今後も必要であり、大切だということは共通の認識になったと思います。とくに、討論の最後のほうで、意識的なものではないにせよ運動の中に「差別・排除」が生じているのではないか、ということがかなり出されたのは、重要だったと私には思えました。それを、今後、対立・分岐へとすることなく、有機的につなげる方策が、共同で模索されなければならないのだと思います。 いずれにせよ、この集会は、今後の運動の進展にプラスになると思います。
 以上、とりあえずの感想です。

04/04/11討論集会へのレジュメ

吉 川 勇 一

 

1.       手続き、経過、人選などといった形式的なことでなく、実質的な議論を。これまでの経過はいささか残念だったが、ようやく議論らしい議論が登場。今日の集まりもその努力の一つ。

2.       この集会のタイトル「世代間対話」とされているが、必ずしも、「世代間対立」あるいは「世代間の感じ方の違い」とだけでくくれない面もある。 
→ 関西の黒目「内在』する事の可能性そのものの危機であるのだ」
 しかしまた、60年〜70年代の運動経験を持った人たちと今の20〜30代の人たちとの間の違いも存在しているのでは → 東一邦「
『左』を忌避するポピュリズム」
 この間の整理は必要だろう。

3.       『論座』3月号の小論、および、昨年6月号の『現代思想』掲載の私のインタビュー「ベトナムからイラクへ」の主要点
@ 経験の継承ということ、
A 論壇で運動論が少ないということ

4.       反響が出てきたことを歓迎。しかし、誤解に基づく点もあり、また私の表現のまずさもあったと思うので、2.3の追加や訂正説明。
@知識人の参加の問題、その面も確かにあると思うが、もうひとつ、50代(全共闘世代、団塊の世代)のかなりな不参加も影響していないか 
A「優しさ」ということ 「いまの運動に議論が少ないと年配者は嘆くが、第一、どこを見ての話か。第二にはたしてそれは『優しさ』の故か。『冗談ではない』」という批判は、私の意見を取り違えた誤解。
 参考 條冬樹詩集『優しいうた』 1972年 思潮社刊

5.       『労働情報』3/15号の座談会について――経験の継承ということ

6.       実例二つ @権力の恐ろしさ → 吉川勇一「自由の危機」(鶴見俊輔ほか編『講座・コミュニケーション』5巻 研究社)
A共同行動のルール → 福富節男『デモと自由と好奇心と』(第三書館)

7.       今回、あるいは今後、議論してほしい問題点 
@ 19934月の「平和基本法」構想 → 自衛隊必要論・自衛隊合憲論 
 ……むしろ、改憲の側が「自衛隊派意見だから憲法を変えるべきだ」と「現実主義的」な変更を迫り、護憲の側が九条の理念を生かすために、「自衛隊は合憲であり、その必要はない」と応じる「逆転現象」が新たに生まれているように思う……(豊秀一「改憲論の底流にあるもの」『論座』0402月号)
 ……過渡期においては「非武装中立」ではなく、「(有)武装中立」の立場へと移行せざるをえないであろう。……非武装中立の立場は、信条倫理としては正しいものの、現実的倫理ないし結果倫理の立場からは正当化することが難しい。……(小林正弥『非戦の哲学』ちくま新書 p.146147
) 
 有事法制問題の議論の欠落、
A サンダーバードと法を考える会「ニッポン国際救助隊法案」(サンダーバードと法を考える会『きみはサンダーバードを知っているか』(日本評論社 1992年)は、面白い。(水島朝穂「自衛隊の平和憲法的解編構想」『恒久世界平和のために』勁草書房)
B 民間外交 北東アジア非核武装地帯の構想、(梅林宏道、ピースボート)→ 中国問題の重要性
B 非暴力と非暴力主義、そして無抵抗の区別について
C    
加害者論、日本の戦争責任、戦後責任について および被害意識に立脚した反戦運動の問題点
 「シナプス」第
1号(「世界は以前より安全になったと言えるだろうか」)の編集態度と03128日の「市民文化フォーラム」主催「「あくまで〈非戦〉をめざす」での小林正弥さんの問題提起(『世界』5月号の座談会では若干の修正?) 
 ……(WORLD PEACE NOWのホームページのトップに)「テロに屈するな」ではない。/「テロに国民を巻き込むな!」/平和なやり方ならテロを呼び込みません」/「日本人の命」か「ブッシュ」か/小泉総理は、自衛隊をただちに撤退させろ!! っていうのがありますよね。/火の粉がかからなければよい」/「日本を安全な場所にして、安全な場所から自衛隊ではなくボランティアを派遣してイラク復興を助ける。/そうすればイラクの人は感謝し、テロリストは日本を狙わない。」と言っているように見えるのです。……(今朝流れてきたあるメールより)
 60年代後半〜70年代の日本反戦運動が獲得してきた思想水準をどう発展させるか。
D 共通の文字によるメディアの必要性 インターネットに参加できない人の疎外感
D    
未接触の膨大な潜在的反戦勢力とどう提携するか 今年1月のイラク派兵反対意見広告(『朝日』『北海道新聞』)運動の経験から
Fかつての運動に対する一面的なイメージの修正の必要性(過激なデモスタイル、内ゲバ、リンチ殺人) 運動史のなかの「中世」のように扱っていいのか。

G歴史を知るということの大事さ。(市井三郎『思想からみた明治維新』講談社学術文庫)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

吉川の連絡先 202-0015 西東京市保谷町6-17-4
URL:
 http://www.jca.apc.org/~yyoffice E-mail: yyoffice@jcom.home.ne.jp 
旧ベ平連のURL: http://www.jca.apc.org/beheiren 
著書・編書・訳書 『市民運動の宿題――ベトナム反戦から未来へ』思想の科学社 
1991
   『反戦平和の思想と運動』社会思想社 
1995
   『いい人はガンになる』KSS出版 
1999
   トーマス・R・H・ヘイブンズ『海の向こうの火事――ベトナム戦争と日本』筑摩書房 
1990
   デイブ・でリンジャー『「アメリカ」が知らないアメリカ――反戦・非暴力のわが回想』藤原
    書店 1997
 1931
年(「満州事変」勃発の年、東京生まれ。73歳。大学(社会学科)中退。1950年の朝鮮戦争直前から反戦・平和に関心。以後、日本平和委員会、原水爆禁止日本協議会、ベトナムに平和を!市民連合(ベ平連)、日本はこれでいいのか市民連合、市民の意見30の会・東京などの運動に参加。

 職業は、予備校講師(英語)、いくつかの私立大学、専門学校などの講師、現在はほぼ無職。身障者手帳4級。老々介護の家庭。                      (以上)