2002.11.30
「女性と年金検討会」第8回・第9回についてのコメント
山谷 真名
 

◇日興リサーチセンター副理事長 中田 正 委員のレポート

アメリカの年金制度、2分2乗法、属性別保険料、3号被保険者が負担、女性の労働力化と年金財政への影響、離婚時の年金分割
 
1983年にアメリカは大改正。その際に女性の年金について、被扶養配偶者に対する年金支給はおかしいという議論があったが、結局1983年の改正には盛り込まれなかった。(堀委員)
・アメリカで配偶者に対する年金支給が問題にならない理由
日本の厚生年金の平均が男子20.5万円、女子11.1万円だが、アメリカは男子 860ドル、女子 662ドル。その理由は、アメリカの場合は、所得が低い場合、年金に反映する割合が高く、所得が高くなっていくと年金に反映する部分が小さくなっている。(最初の531ドルまでは90%、その次の段階は32%、さらにその上は15%の給付率をかけて年金額を算出している。)しかし、日本では、報酬比例部分は低所得者であろうが高所得者だろうが0.00715 。さらに日本の場合は年間 130万円までは保険料ゼロだが、アメリカの場合、年間約24万円。(永瀬委員)
 
◇上智大学法学部教授 堀 勝洋 委員のレポート
社会扶助方式(税方式)よりも、社会保険方式が優れているのではないかというのが堀氏の結論
<理由>
@     税方式にしても、共働きや単身の女性などの負担によって、専業主婦の基礎年金の費用が賄われるという構図に変化は生じない。
A     税方式は、国家が国民の生活を丸抱え。自助努力という経済界の基本哲学に反する。
B     社会保険方式は、保険収支のバランスをとる必要があるため、コスト意識が高まる。
C     税方式にすると、事業主の保険料負担は大幅に減る。
D     保険料の拠出は将来の給付に結びつくが、消費税を納めても何ら将来の給付の保証にはならないので、国民は消費税の増税に合意しない。
E     消費税だけで賄おうとすると、27%にしなければならない。
これに対しては委員から意見が出ていないが・・・
私は、@以外は、反論でき、社会保険方式の方が優れているとは言えない、と考えている。
 
どちらが優れているかではなく、「どのような年金制度を目指すのか」(国民皆年金か、否か)によって、社会保険方式にするか、税方式にするか決めるべき。
 
◇女性と年金に関する諸外国の年金制度について
 
アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン

パート労働者に対する適用の基準>

各国とも相当低い水準まで適用している←各国とも社会保険方式なので、適用の基準を低くして、より多くの者をカバーしようという考え方

配偶者に対する年金

アメリカ・イギリス:被保険者である夫婦の一方の保険料納付を要件として、もう一方についても、給付が保障されるという仕組み。ただ、日本のように被扶養配偶者ではなく、保険料を納めている配偶者に対しても適用。その場合、自分の給付と配偶者給付については一定の調整が行われている。

無収入の者に対して強制的に保険料負担を求めている制度はない。

<遺族年金>

子どもを養育する残された配偶者に対する給付については、どの国でも存在をしている。逆に子どもを養育しない若年の残された配偶者に対する給付については、ないor有期

or減額。高齢の遺族配偶者に対しては、スウェーデンを除いて、遺族年金か配偶者年金。

<育児期間の取り扱い>

ドイツはポイントを加算する、フランスは年数を加える、イギリスは保険料納付が必要な年数を短縮する、スウェーデンは子どもの出生年の前年の所得or全加入者の平均の75%or現実の所得に一定の額を上乗せした額の3つのうちの一番有利な額を年金制度上の所得とする。

<年金分割>

年金分割を採用している国:ドイツ、イギリス、カナダ

年金分割以外の措置:アメリカ(配偶者年金)スウェーデン(夫婦間で年金権を移転)

 

○参考:カナダの制度

 1階部分:インカム・テスト付き基礎年金 国内居住要件を満たす者

      (高所得が理由で減額となっている者は年金受給者の約5%のみ)

      世帯単位でインカム・テストつきの補足年金給付

インカム・テストつき配偶者手当(60〜64歳対象)

2階部分:社会保険方式 

     保険料賦課対象賃金の下限は、3500ドル(約29万円強)、

上限は、3万8300ドル(約320万円)

      給与所得者:労使折半、自営業者:労使負担の合計額

      2003年には、保険料9.9%

 年金分割:所得比例年金が対象。所得比例年金に加入できない専業主婦の保護のため。1年以上婚姻している夫婦が離婚の届け出をした場合、自動的に婚姻期間中に獲得した年金権が等分に分割される。婚姻が継続していても、夫婦両方が60歳以上に達していれば年金権を等分できる。