豊島の感想


[背景]
 
Mが経営する豊島観光は廃棄物処分場の建設を島民に反対され、「みみずの養殖」と名目を変え、香川県庁ぐるみで廃棄物を不法投棄した(13年間118回に及ぶ立ち入り検査を行っていた事からも明らか)。その内容は、車のシュレッダーダスト、有害物を含む廃油、汚泥などであった。野焼きも行われ、夕方〜明け方までの間行われた。まさに無法地帯である。こうした状態が13年間続いた。廃棄物の中には数百本にのぼるドクロマークのシールが貼られたドラム缶の群れがあった。イタリア北部に在る有名な科学会社の有害廃棄物である。
 Mはシュレッダーダストを有価物と称してトン辺り300円で購入し、運搬費2000円(差し引きトン辺り1700円)で取り引きをしていた。シュレッダーダストを有価物として扱った事例は何処にも無く厚生省もびっくりしたという。香川県担当職員であるIはからくりを十分承知していた。有価物であれば産廃で無い為、産廃処理業の許可はいらない。また、Mの産廃ダンピングは西日本の産廃価格を下げるほどの状態だった。
 共同作業をおこなっていた香川県がMを摘発できるわけも無く、兵庫県警が廃棄物法違反容疑で摘発をおこなった。香川県にとっては不名誉極まる事態だった。
 香川県の調査によると集水池、場内溜水などの水質調査ではBOD(生物化学的酸素要求量)が排出基準の100倍、COD(化学的酸素要求量)が50倍m油分が95倍となっていた。産業廃棄物、土壌などの溶出試験ではトリクロロエチレンは有害判定基準の6.7倍、PCBは11.7倍という数値を示していた。
 国が3億6千万掛けて超音波で調査をした所、51万トンもの廃棄が不法投棄されている事が判明した。これらの産廃を撤去するには数百億円オーダーが必要だと言う。結局外に出ていたドラム缶だけ処理し、中に埋まったものは処理されていない。あらゆる産廃の上にただ土を被せただけである。


参考書:[書名]ゴミ処分[著者]津川敬[出版]三一書房



[感想]
 
 豊島出身の友人がいるので、彼に案内してもらおうと思っていたのだが、消息がわからない(笑)。肝心の本も忘れていて、あまりに用意不足で不安だが、行ってしまえばなんとかなるだろうと楽天的(性格は非常に楽天的)な考えで豊島に向かった。途中のフェリーの中で、後ろの座席に座った人に訊ねてみると産廃不法投棄場所から廃液が流れており、香川県はただ土をかぶせただけでなにもしない状況であるという説明を受けた。彼らから現地で頑張っておられる方の名前を聴いたので訊ねてみる事にする。
 豊島家浦港に着いたので、早速運動している方の職場を訪ねるが、正月休みに入っていて連絡が取れなかった(残念)。そこで処分場の場所を教えてもらったので行ってみる。道中は舗装されていない細い道路(山道そのもの)で、ここをダンプが通っていたとは想像もつかない道路である。観光案内地図を片手に現地に向かうと10分ほどで、朽ち果てた「私有地につき立ち入り禁止 M」という看板にたどり着く。更に奥に進むと廃金属・廃タイヤと共に廃虚となった家が建っていた。ここで車を降りて、歩いてみる。現地は海のすぐ側であり、周りにみえる直島、井島などの島々が美しい瀬戸内の風景を見せている。

 
            黒い廃棄土の山                 その横の穴

 その地は荒涼たる大地(学校の運動場5つ分位だろうか)が一面に広がっており、廃棄物が確認できない。水溜まりを見ると水が緑がかっており不気味な感じを漂わせている。少し歩くと黒い廃棄土の1mほどの山が我々を出迎える。「なんだろう」と近づいてみると隣りに2m程の穴が掘られている。おそるおそる、覗き込んでみると2m程の黒い土の層と黒い水、0.3mほどの普通の土の層が見て取れる。穴に近づくと油系の嫌な匂いがツンと鼻につく、大谷総業のドラム缶城の時も嗅いだ嫌な匂いだ。ドラム缶ごと棄てた缶が在ると言う話を耳にした事がある、腐敗して中身が出ているのだろう。穴の側面からはビニール系のゴミ・金属片・ゴムホースなどが顔を出している。「この穴と廃棄物の山の組み合わせはな〜に?」一瞬理解出来なかった・・・「廃棄物の上に土を被せただけ」フェリーの中で聞いた言葉が頭の中を駆け巡る・・・・何という事だ、今立っているこの大地の下が全て廃棄物の山なのだ!!いったいどれほどの産廃が、どれほどの深さまで、この下に埋まっているのだろうか・・・想像もつかない。ただ、取り返しの付かない事が行われてしまっ たという事実は確かな事である。この平地地帯にには、他に何個所か塩ビ管が地中に差してある。中の産廃はいまだ反応をしており、そのガス抜きようだと言う。
 少し歩くと黒い段々畑があるので近づくと、ここも産廃の山だった。ここは土で埋めてないらしいく、自動車のシュレッダーダストらしき残骸がゴロゴロしている。平地地帯でさえ産廃の山の上なので、段々の高さ分のゴミが埋められている。これだけの産廃をこの後どう処分するつもりだろう。それ以前に処分出来るのかな。随分気が重くなってしまった。

 
産廃の山から海を見る。海と産廃山との間は5m程しかなく、帯状の水溜まりが2本ある。一つは緑っぽい水溜まり、もう一方は黒緑の気味の悪い水が溜まっている。写真でお分かり頂けるでしょうか。フェリーの中で聞いた「産廃不法投棄場所から廃液が流れいる」はこの事だろう。廃液は確実に海に流れて魚介類を汚染している。一刻も早い撤去を望む。









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現地を訪ねて