【特集】
反原発の闘い
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チェルノブイリ原発事故、もんじゅナトリウム漏れ火災事故、JCO東海臨界事故や、東京電力を始めとした原発の事故隠しなど私たちの不安は益々増大するばかりです。被曝58周年原水爆禁止世界大会でも核兵器の廃絶と日本の原子力政策の転換を求める闘いは、当面の重要課題として取り組むことが決定されています。
脱原発の闘いをより強化するために、原子力資料情報室の協力をいただき「原発の闘い」を特集することに致しました。原発について徹底的に理解をしていただくために、皆さんのお役に立てば幸いです。
《原子力資料情報室》
西 尾 漠
原発とは?
原発とは、原子力発電所の略語です。その名のとおり原子力で発電をおこないます。原子の中心にある原子核を分裂させ、そのときに出る熱でお湯をわかし水蒸気をつくってタービンを回し発電機を回す、というのが原子力発電のしくみです。
1999年9月30日に茨城県東海村のジェー・シー・オー(JCO)核燃料加工工場で起きた臨界事故では、わずか1000分の1グラムほどのウランの原子核の核分裂が大きな被害をもたらしました。原子力発電所では、1日当たり、その200万倍の2キログラムくらいのウランの原子核が核分裂をしています。
ウランには「燃えるウラン(核分裂しやすいウラン)」とウラン(核分裂しにくいウラン)」があり、燃えるウランであるウランー235に中性子をぶっけてやると、核分裂をして熱をだします。燃えると言っていますが、一般に物が火を出して燃えるのとは違って、核分裂をして熱を出すことを燃えると言っているわけです。
核分裂をしたウランは核分裂生成物、いわゆる死の灰に変わります。これも燃えて灰になるのとは違って、二つに割れたウランがそれぞれ別の元素になったのを「死の灰」と呼んでいるのです。
核分裂を起こす中性子は、自然界では宇宙線の中性子として生まれますが、原子炉では中性子源という、中性子を出す物質を炉心に入れて中性子を発生させます。その中性子がぶつかって核分裂をすると、原子核から中性子が2、3個飛び出します。この中性子が別のウランー235に当たると、また、核分裂を起こします。飛び出してくる中性子が皆、次々とネズミ算式に核分裂を起こしていくのが、原爆です。原子炉の中では、一つの核分裂で飛び出した中性子のうち、一つだけが次の核分裂につかわれるようにコントロールします。
これが、原子炉での臨界と呼ばれる状態です。臨界をこえる状態がつづくと暴走して爆発し、臨界未満だと原子の火はきえてしまいます。
原発は必要悪なのか?
原子力発電には巨大な放射能災害をもたらす潜在的な危険性があり、また、核兵器の製造に道を開く可能性を否定できません。さらに、多種多様でやっかいな放射性廃棄物を後の世代への「負の遺産」として残します。これらの点は、原子力発電を推進する考えか反対の考えかを問わず、誰しも認めることでしょう。そして、原子力発電が抱える問題はその3点に尽きるわけでは、もちろんありません。日常的な労働者の被曝や環境の汚染など、たちまち10指を越えます。
それでも、原子力発電は必要なのだと、政府や電力会社は言います。原子力発電は、国内総発電量の三分の一以上を供給している。と。2001年度の実績で言えば、52基の原発の発電量の合計は3,196億キロワット時で、自家発電を除いた総発電量の34.7%となります。
しかし、この数字は、実は原子力発電の別の問題点を示しているとも言えます。原子力発電所は小回りがきかず、フル出力で動かすか運転を止めるかのどちらかしかできません。電気の需要は刻一刻と変化しますが、それに合わせて出力を上げたり下げたりできないという大きな弱点があるのです。
原子力発電が多くの電力を供給しているのは、他の発電設備に能力がないからではなく、原子力発電を優先的にフル出力で動かすしかないからです。
原発が優先的に動かされるために他の発電設備は、電気をつくらせてもらえず、遊んでいるのです。しかも遊んでいる他の発電設備がなければ、電気の需要の変化に合わせた調整ができません。原子力発電所は、自立できない不便な発電設備と言えます。
おまけに、2002年度の一年間に、原発の事故停止は8件に及びました。そのたびに大きな出力が失われるのですから、原子力発電の不安定さがよくわかります。それどころか、2002年8月29日に発覚した東京電力のトラブル隠しがもとで、同電力のすべての原発が止まってしまうことまで起きました。そうしたときには、遊んでいる他の発電設備がすぐに出力を上げて助けてくれるのです。やはり自立からはほど遠いと言えます。
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