東京平和運動センター33-1

TKOPEACENEWS 　1面　NO.33／02.12.1発行

「人間の安全保障」を指針に多文化共生社会へ
憲法理念の実現をめざす第39回護憲大会

・2002年11月３日～５日
・新潟市体育館他

　第39回護憲大会をとりまく情勢について

（１）新潟市は、いうまでもなく新潟県の県庁所在地で人口53万人の日本海側最大の都市です。今年の新潟はサッカーのワールドカップの開催県、東京電力の刈羽原子力発電所における事故隠しの発覚そして拉致問題と話題の多い県でもありました。そうした中、新潟県平和運動センターは護憲フォーラム新潟、原水禁新潟、戦争を許さない女性の会、新潟県生活協同組合、新潟県人権・同和センター、社民党新潟などと実行委員会を結成して、参加者3,500人を結集させ大会を大成功に導きました。
　　なお、東京からは22団体、単産、個人会員77人が参加しました。

（２）米ブッシユ政権は、今も、アフガンに対して報復攻撃として無差別の殺戮の空爆を続けています。この空爆により女性、老人、子どもなど民間人の犠牲者は5,000人をこえていると報道されています。このアフガン攻撃につづいて、イラクに対しては国連の査察や決議すら軽視して、攻撃をしようとしています。その兵力は、トルコ、クウェート、バーレーンなどの湾岸諸国の空軍基地から出撃するＢ２ステルス爆撃機による攻撃とリンカーンやコンステレーションなどの空母４隻からの攻撃、陸上などその兵力は20万人から25万人が動員されるという。

（３）日本の小泉政権は、アフガン攻撃に対してはアメリカに全面的に協力して「テロ特措法」を制定してインド洋の出撃基地に補給艦など軍艦を派遣してアフガン戦争に参戦しています。憲法が禁じていた自衛隊の海外派兵や集団的自衛権に踏み込み事実上の憲法停止状態になっています。インド洋への出撃については11月19日さらに半年延長を閣議で決定するなど米国に従属した危険な内閣として多くの国民から批判されています。
　　さらに、小泉政権は、イラク攻撃に専念したい米国の負担減をはかるため燃料の給油を米英軍からドイツ、フランス、カナダ艦船に拡大、Ｐ３Ｃ哨戒機やイージス艦の派遣なども検討しているといわれています。
　　イラク攻撃に対しても与党議員の81％が賛成しているアンケートの結果が明らかになっていることもあり、米軍に積極的に協力しようとしています。

（４）米軍のイラク攻撃がはじまれば限定的な空爆にとどまらず、地上軍も展開してフセイン政権崩壊まで戦う本格的な先頭に発展する可能性もある。そうなればアフガン攻撃以上に多くの市民が巻き添えになる。この戦争は「終わりなき戦争」となることがいわれています。だからこそ国連はイラクに対して大量破壊兵器査察・破棄決議案を全会一致で採択するなど戦争回避の努力を継続しています。

（５）今、米軍によるイラク攻撃に反対する人々はアメリカ、イギリス、イタリアなどに数千人から数万人に拡大し戦争反対は世界的なものとなりつつあります。その声はあのベトナム戦争反対に匹敵しています。日本においてもＮＧＯ、市民団体、労働組合など80団体が参加した集会が毎月開催されその都度約4,000人が参加し、国会要請や市民に訴えるデモが実施されています。

（６）国民の自由や基本的人権を侵害することが明確な「有事法制」が開会中の臨時国会で審議が開催されています。先の国会に上程されたときは国民の大反対の行動と地方自治体からの反対の意見書などが国会に上げられ継続審議になっていたものであり、その真意は「廃案」を求めていたのにもかかわらず小泉政権は戦争のできる国家をめざしていることははっきりしています。有事法制と平和憲法は相入れないものである「廃案」まで粘り強く闘いたいと思います。

第39回大会の基調（提案の要旨）
戦争を拡大する危険生むアメリカの単独主義と日本の国家主義

１．ブッシュ政権のもとで強まるアメリカの単独主義
　ブッシュ政権が誕生して以来、アメリカは一挙に単独主義への傾斜を強めています。地球温暖化問題での京都議定書からの離脱、人種差別撤廃のダーバン会議退席、核軍縮の流れに逆行した「核態勢の見直し」の発表。そして、昨年秋の同時多発テロに対する報復とテロ撲滅を称して開始したアフガン戦争につづいて、イラク、イラン、北朝鮮の３国を「悪の枢軸」と名指しし、イラクに対しては国連の査察や決議すら軽視して、攻撃を開始しようとしています。そして、小型核兵器の使用する動きすら見せています。

２．グローバリズムと外国人排除の動き
　アメリカの政府や多国籍化した大企業の影響力を強く受けた国際機関（ＩＭＦ、世界銀行、ＷＴＯなど）のもとに各種経済的障壁が低められています。一方で、自分の利益とならないと判断された場合には、国際機関を無視したり脱退するというのがアメリカの単独主義です。そのなかで、これまで国際社会が打ち立ててきた人権や人道にかかわる国際法のルールや安全基準をも否定したり、参加しないという動きが現れています。結果としてグローバル化は環境破壊や金融の危機、世界の貧富の格差の広がり、地球の温暖化など深刻な状況をもたらしています。
　人々は、豊かな北へと仕事を求めて南の国々からやってきた移住労働者に対する民族排外主義的な動きも増大しています。

３．小泉内閣の対応と東アジア
　小泉首相は、Ａ級戦犯を合祀した靖国神社への公式参拝、戦争美化の歴史教科書を認めるなど偏狭なナショナリズムを助長しています。また、この危険な内閣は、対米従属を強め「テロ対策特別措置法」の強行成立と、戦後初めて自衛隊の海外派兵につづいて、国会に「武力攻撃事態法」など上程し戦争のできる国にしようとしています。

「人間の安全保障」の確立に向けてー多文化共生社会への道を

１．私たちの基本的立場
　戦争放棄と非武装・平和主義・基本的人権の尊重、主権在民を３大原則とした日本国憲法を誕生させたこの憲法は、世界平和を積極的に進めることにあります。
　日本は、植民地支配と侵略戦争の歴史を積み重ねいまだ「過去の清算」など負の遺産を克服していません。アジア・太平洋の近隣の人々との隔たりのない政治・経済・文化・人的交流の実現に向けて取組をいっそう進めていく必要があります。

２．人間の安全保障の広がりと、世界と日本の問題点
　冷戦時代までの従来の国家間安全保障では人々の生活の安全は守れない、すべての国々の平和的な国際強調をいっそう高めると共に、もっと市民が、人間中心に世界共通となった問題に対して、国境を越えた総合依存関係を踏まえて、早期に予防し、恐怖と欠乏からの自由を保障することが重要になっています。
　政府自民党は、国内外の差別撤廃や人権保障の欠落させ大きな問題をのこしています。国際人権諸条約の完全批准をはじめ、内外をとわない人権保障の制度を確立することが重要です。

３．多文化・多民族共生社会へ向けた取組み
　人種差別撤廃条約など多くの人権条約が効力を発し、「人権教育のための国連10年」の取組みが全世界規模ですすめられているなかで強調・重視されているのが、多文化・多民族共生です。日本でも、被差別部落の解放運動や、在日韓国・朝鮮人をはじめとした定住外国人に対する指紋押捺や国籍条項の撤廃運動、アイヌ民族、障害者、女性、移住労働者など様々な差別撤廃運動の成果として、不十分な点はありながらも政府・地方自治体による取組みが広がっています。
　しかし、政府・国会の対応は権利がほしければ日本人に帰化しろ、公の教育は日本人を教育するものといった固定観念や偏見、偏狭なナショナリズムのなかで参政権などは実現していません。

４．拉致問題の真相究明を含め一刻も早い日朝国交正常化を
　９月17日に日朝首脳による歴史的な会談が突然のように実現し、その成果として「日朝平壌宣言」を発表しました。宣言では、「日朝間の不幸な過去を精算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなるとの共通の認識を確認」したうえで国交正常化交渉の再開、植民地支配に対する謝罪、拉致問題の解決、ミサイル発射の凍結などが合意されています。

「にんげんの安全保障」を21世紀の指針に憲法理念の実現を
有事法制の問題点

１．憲法調査会をめぐる動きと問題点
　2000年初頭から５年を目途として開始された憲法調査会は、11月には中間報告書をまとめています。
　私たちは、差別と人権抑圧に利用されている第10条の国民要件の問題をどうするか、憲法に規定にない環境権の問題をどうするかなどがあります。これから論議すべきは人権や民主主義の国際的な確立を世界の到達点とともにすることであり、憲法尊重義務にもとづいて、憲法の理念、規範に沿って生かされているかを検証することです。その意味でも、憲法前文・第９条や10章「最高法規」は憲法の理念の神髄の部分であり、その変更は、私たちは認めることはできません。

２．有事法制と憲法
　現在、国会においては憲法第９条をはじめ多くの条項に抵触するどころか憲法そのものを停止状態に追いやりかねない有事関連３法案が継続審議中です。具体的には９条（戦争の放棄）、11条（基本的人権の享有）、18条（苦役からの自由）、19条（思想および良心の自由）、21条（表現の自由）、22条（職業選択の自由）、92条（地方自治の基本的原則）など、数多くの条項に反しています。

３．「平和・人権・環境」の取組みの正念場
　私たちは、21世紀の担い手となる子供や若い世代に20世紀の負の遺産や動きをそのまま残したり、つづけさせるわけにはいきません。戦争放棄と非武装・平和主義、基本的人権の尊重、主権在民を３大原則とした日本国憲法の理念を発展させ「人間の安全保障」を指針に、差別や排外主義を克服した多文化共生社会の実現に向けなければなりません。そのために国内外の運動・ＮＧＯとの連帯が改めて求められています。

「全国基地ネットワーク学習交流集会」
・11月４日（月）
・総合生協本部会議室
　39護憲大会の関連企画として毎回実施している基地ネットの全国交流集会は、キャッチピース代表の田巻一彦さん、衆議院議員今川正美さんから問題提起をうけ、全国の反基地闘争を闘っているなかまから次のような報告をうけました。

◆大分県平和運動センター
　11月９日から日出生台演習場において、米軍海兵隊850人と陸上自衛隊750人による日米合同軍事演習がおこなわれるため、現地においてこの軍事演習はアメリカによるイラク攻撃を想定しの演習であることは明らかであることから、アフガン戦争、イラク攻撃反対して抗議行動を予定している。また、温泉の町・湯布院町も反対を掲げニュヨークタイムス紙に反対の意見広告をのせてアメリカ市民に直接訴えています。

◆北海道平和運動フォーラム
　北海道においては、米軍の民間空港、港湾などがこれまで以上に頻繁に強制的に利用されている。自衛隊も空中での爆発訓練、山岳戦闘を想定しての敵との応戦訓練、海岸線においての上陸訓練、落下傘部隊の降下訓練、攻撃ヘリからの上陸訓練などが激しく行われている。
　これらの軍事演習に対しては20年間つづけている浜大樹揚陸訓練反対行動など各地で粘り強い行動が展開されている。
　また、自治体においても、苫小牧市などは非核平和都市条例により危険物を搭載した船舶の港の利用をお断りするなど「神戸方式」を導入して米軍の艦艇の入港を阻止している。この方法は東京港、横浜港、名古屋港、博多港、長崎港、那覇港などでも採用されいる。

◆青森県平和推進労働組合会議
　100万人を目標にした「六か所再処理工場の稼働中止を求める署名」活動は全国の皆さんからの協力で現在85万人の署名を集約することができました。この署名は、10月25日青森県知事と内閣総理大臣に提出し再処理工場の稼働をするなと要請してきました。年内いっぱい活動は継続して100万人の目標を達成したいさらにご協力をお願いしたい。
　青森県は、冷戦時代ソ連（現ロシア）が北海道に上陸し、その後は津軽海峡をこえて本土に侵入する事を想定して、現在も自衛隊の３軍と三沢市には米軍基地があります。
　この米軍は、これまで中東やベトナム戦争、湾岸戦争などに出撃し今も、イラクにおいての飛行監視と攻撃に出撃しています。米軍はこの地域での訓練においてＦ15戦闘機の５機が訓練中に落下する事故が発生していますが、六ヶ所村の核燃施設は訓練地域にあるため市民は大変な不安をもっている。米軍基地の撤去とイラク攻撃出撃反対などで11月９日は2,000人規模の抗議集会を予定しています。

◆山口県平和運動フォーラム
　米海兵隊基地が岩国市にあり、攻撃ヘリ部隊を中心とした訓練が24時間続けられている、これまで米兵の暴力事件や、毒クモの発生や、戦闘機からの落下物など事故事件がしきりなしに発生している。９・11事件後は基地の警戒と米軍人の家族3,400人にガスマスクを配備するなど非常事態の態勢に入っている。岩国基地は現在海側１キ沖に２本目の滑走路を建設中である。また、空母の入港可能な港も建設中であり益々基地の拡大と強化がはかられている。

◆神奈川平和運動センター
　米第７艦隊の母港として29年、来年は30年になるので怒りの抗議行動を計画している。この基地からアメリカの戦争に世界に出撃している。そのため米軍厚木基地での夜間飛行訓練など全国に被害が拡大している。この元を排除するため母港化を撤去させるまで闘う事としている。
　2008年現在の空母キティーホークが退役したなら、原子力空母が配置されることになるのでなんとしても阻止したい。こうした問題を明らかにした抗議集会を12月５日に予定している。

◆長崎県平和運動センター
　テロ特措法にもとづいて佐世保基地からこれまで６回海上自衛隊の艦艇がインド洋に出撃している。米軍は、弾薬庫、兵舎の新築、娯楽施設の建設など機能の強化が行われている。佐世保の弾薬庫から日出生台演習場まで弾薬が陸上搬送されている。
　８月にアフガン戦争に出撃している空母リンカーンが寄港したが海上に17隻の抗議船をだすなど４日間抗議行動を続けた。

s沖縄平和運動センター
　９・11事件のときは、本土から5,000人の機動隊により警備があり、沖縄は危ないという世論により沖縄経済に大打撃を与えた。現在も米軍沖縄基地は、原子力潜水艦の母港化や野戦病院機能の強化などあらたな基地の機能強化がはかられている。

「人間の安全保障」を指針に多文化共生社会へ…憲法理念の実現をめざす第39回護憲大会
大会日程　2002年11月３日（日）～５日（火）
場　　所　新潟市体育館他

●開会総会：11月３日（日）13：30～14：30【新潟市体育館】
●メイン企画：11月３日（日）14：30～17：00【新潟市体育館】
●分　科　会：11月４日（月） 9：30～13：00【新潟市内】
（1）非核・平和・安全保障…………………………【新潟ユニゾンプラザ】
（2）歴史教育と戦後補償……………………………【総合生協本部会館】
（3）人権確立…………………………………………【新教組会館】
（4）地球環境…………………………………………【トラック総合会館】
（5）民主政治・地方自治……………………………【自治労会館】
●フィールド・ワーク：11月４日（月）　8：30～16：30
（1）柏崎刈羽原発
（2）新潟水俣病
●ひ　ろ　ば：11月４日（月）14：00～16：00
（1）新潟から問う、２１世紀東アジアの「平和」
　　　～＜共生＞の条件を求めて～………………【新教組会館】
（2）「取り戻そう！司法を市民の手に」…………【トラック会館】
●女性交流集会：11月４日（月）14：00～16：00
　平和なくして平等なし……………………………【自治労会館】
　～憲法９条を守り、憲法24条の理念を確立するために～
●関連企画：11月４日（月）14：00～16：00
　全国基地問題ネットワーク学習交流会…………【総合生協本部会館】
●閉会総会：11月５日（火）　9：30～11：00 【芸術文化会館】

【メイン企画　シンポジューム】
11月３日（日）14：30～17：00
新潟市体育館
■テーマ
「『人間の安全保障』を指針に、多文化共生社会へ」

　偏狭なナショナリズムの根強い日本。軍拡・有事法制や重大な人権侵害の制度が作られようとする一方で、地域・自治体での多文化共生に向けた取り組みや努力も進められています。これらについて報告・討議するパネルディスカッションでの運営となります。

司会　川村　一之
　　（非核自治体全国草の根ネット・戦争被害調査会法を実現する市民会議）

＜パネリスト＞
　　多文化・人権＝尹　　健次
　　　　　　　　　（神奈川大学教授）
　　非核平和自治体＝田巻　一彦
　　　　　　　　　（キャッチピース）
　　歴史・教育＝上杉　　聰
　　　　　　　　　（関西大学講師）
　　環境・経済＝櫛渕　万里
　　　　　　　　　（ピースボート共同代表）

【分科会　11月４日（月）9：30～13：00　新潟市内各会場】
総テーマ「『人間の安全保障』を指針に多文化共生社会へ
　　　　　　　―衆参両院憲法調査会の問題点とともに」

（1）非核・平和・安全保障（ユニゾンプラザ）
　「有事法制」「集団的自衛権」「日朝国交正常化」問題など
　＜問題提起・助言者＞
　　田巻　一彦（キャッチピース）、石坂　浩一（立教大学講師）、桑原　　豊（衆議院議員・民主党）、
　　今川　正美（衆議院議員・社民党）
（2）歴史教育と戦後補償（総合生協本部会館）
　「靖国」「戦後補償」「教科書」問題など
　＜問題提起・助言者＞
　　山田　　朗（明治大学教授）、長谷川　孝（教育評論家）、清水　澄子（前参議院議員）
（3）人権確立（新教組会館）
　「人権擁護法案」「個人情報保護法案」、住基ネット導入など人権抑圧をもたらす課題と「人権救済制度」確立など
　＜問題提起・助言者＞
　　海渡　雄一（弁護士）、山崎　公士（新潟大学教授）、石毛　�?;R!J=05D1!5D0w!&L1 （4）地球環境（トラック総合会館）
　地球温暖化京都議定書問題などグローバル化と地域運動
　＜問題提起・助言者＞
　　田中　徹二（ATTAC・JAPAN）、平田　仁子（気候ネット）
（5）民主政治・地方自治（自治労会館）
　地域分権・住民投票。参政権、民族学校など定住外国人の地域参加保障など
　＜問題提起・助言者＞
　　近藤　　敦（九州産業大学教授）、鳴海　正泰（関東学院大学教授）

●タイトル頁に戻る　●目次頁に戻る　●機関紙頁に戻る　●2頁に進む