東海村臨界事故、MOX燃料利用計画などの見直し
通産省・科学技術庁交渉の報告
1.日時 12月22日12:30〜
2.場所 参議院議員会館第2会議室
9月30日に起こったJCOの臨界事故は、国民に大きな衝撃を与えました。しかし、政府はこの事件を、JCOだけの事故であり、身内の事故調査委員会を立ち上げ、事故を過少評価しようとしています。今後の対策も、原子力防災新法の成立をはかることで、この事故の幕を下ろそうとしています。
しかし、この事故を契機に新潟では、プルサーマル計画が延期されましたが、高浜原発や福島原発においては、依然としてMOX燃料の利用が計画されています。このような状況のなか原水禁国民会議と原発・原子力施設立地県全国連絡会の主催による省庁交渉がもたれました。申し入れなどについては別紙の通りです。
1999年12月22日
内閣総理大臣 小渕 恵三 殿
原子力安全委員会委員長 佐藤 一男 殿
原子力委員会委員長 中曾根 弘文 殿
通商産業大臣 深谷 隆司 殿
科学技術庁長官 中曾根 弘文 殿
プルサーマル計画の全面中止を求める申し入れ
12月17日の新聞報道で、英国核燃料公社(BNFL)検査データの一部にねつ造があったことが発表されました。当初11月に関西電力に送られてきた高浜4号機の燃料には「ねつ造はない」と最終報告を発表していただけに、電力会社の検査態勢と安全性に対する姿勢が大いに疑われるとともに、それを発見できず、鵜呑みにして追認してきた原子力安全委員会や通産省などの国の責任は、電力会社以上に大きなものがあります。事故や不正が起きるたびに事業者や行政庁は多くの反省を唱えますが、いっこうにその効果がみえません。
今回のデータねつ造の発覚で、関西電力は年明けにも予定していた同炉へのMOX燃料装荷・プルサーマル実施を延期することを決めました。また、東京電力分のMOX燃料も見直しを決めました。計画が実施され取り返しのつかない事態を招く前に延期されたことは歓迎しますが、これを機会に、プルサーマル計画の全面的に見直しと、安全性や経済性などプルサーマルを取り巻く様々な問題について徹底した議論をすることを要求します。国民的合意もないまま進められようとしているプルサーマル計画の強行は断じてすべきではありません。
先の東海村でのJCO臨界事故を見るまでもなく、いまや国民は原子力の安全性そのものを大きく疑いだしています。原子力安全委員会や通産省においても、自力で安全性や品質管理も十分出来ず、チェックの甘さを指摘されるようでは、国民の安全をまかせるわけにはいきません。経済性が安全性に優先されるような今回の事態は、東海臨界事故と同じ質の問題を抱えています。
私たちは、プルサーマルは何の必要性もなく、安全性や経済性そして核拡散防止の観点からもプルサーマル計画は中止されるべきものと考えます。少なくともは、全てのプルサーマル計画を全面的に凍結し、全てのデータを公開し、原点にもどって、国民的な議論を起こすべきです。そのことを強く要望すると同時に、以下の件を申し入れるものです。
1 高浜原発・福島原発でのMOX燃料の使用延期をではなく中止をすること。
2 東電・関電用のMOXデータの詳細な情報を公開すること。
3 データねつ造のあったBNFLと品質管理上問題のあるといわれるBN(ベルゴニュークリア社)のMOX製造契約を全て破棄させること。
4 現在の安全審査体制を抜本的に見直し、権限のもった独立機関として位置づけること。
5 プルサーマル計画の国民的議論を起こすこと。
6 全てのプルトニウム利用路線から撤退することと同時に、原子力政策の根本的転換をすること。
原発・原子力施設立地件全国連絡会
代表 遠藤 義裕
1999年12月22日
大内さんの死を悼み原子力政策の根本的転換を求める声明
12月21日午後11時21分、シェー・シー・オー東海事業所の臨界事故で約18シーベルトもの放射線を浴びた大内久さんが収容先の東京大学医学部付属病院で多臓器不全で亡くなられた。原水爆禁止日本国民会議として、ここに心から哀悼の意を表します。
大内さんは、日本初の原子力事故による犠牲者となりました。彼の死は、広島、長崎、ビキニに続く、第四のヒバクによる犠牲者です。ビキニの核実験で被爆した久保山愛吉さんは、「被爆者は自分を最後にして欲しい」との願いを残して亡くなられました。しかし今回の大内さんの死は、その願いを踏みにじってしまいました。
もともと原子力産業は、多くの被曝労働がなければ成り立たないものです。しかもその中心は下請け労働者であるという差別的構造の上に成り立っています。いかに「平和利用」と名を冠しても、その下では常に被曝者が作り出されています。
今回の臨界事故で従業員だけでなく周辺住民にも多大な被害を及ぼしました。原子力の「安全神話」は完全に崩壊し、もはやいつ大規模な原子力事故はいつ起きても不思議ではないことを明らかにしました。
私たちは、取り返しのつかない原子力災害を起こす前に、原子力政策の根本的転換を求めます。第二、第三の大内さんを作り出す前に原子力からの離脱を求めます。そのことが、大内さんの死を無駄にしない唯一の道であると考えます。
私たち原水爆禁止日本国民会議としては、以下のことを指摘し、今後の対策を強く求めます。
1 事業者および政府関係者の責任の徹底的究明をすること
大内さんの死の責任は、JCOだけでなく、科学技術庁、原子力安全委員会にも大きな責任がある。一義的な責任はJCOにあるとしても、「想定外の事故」、「あってはならない事故」などと済ますわけにはいきません。それを許可してきた原子力安全委員会や管理監督責任のある科学技術庁の責任は重大であり、事故の徹底究明を求めます。
2 すべての被曝者に徹底した補償と救済措置を政府の責任で行うこと。
被曝者への補償と長期に渡る健康調査と補償の実施を国の責任で徹底させること。
3 プルサーマル計画の凍結とプルトニウム利用及び原子力政策の見直しをすること。
今回の事故は「常陽」の燃料をつくる過程でおきたものです。全てのプルサーマル計画を凍結し、データを公開し、全国的な議論を起こし、プルトニウム利用政策および原子力政策の根本的見直しをはかるべきです。
原水爆禁止日本国民会議
議長 岩松繁俊
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