2000年は東北の地では、全国的な集会や大会が3件も集中しました。合成洗剤追放全国集会(9/29〜9/30青森市)、第37回護憲大会(11/1〜11/3福島市)そして食と水を守る全国集会は前日から全国の仲間を歓迎するかのように、宮沢賢治の出身地花巻市は15センチの雪で真っ白に化粧をしていました。本会議場は1,300人の代表でびっしりの満員ということで開会されました。
〈丸山中央実行委員長あいさつ〉
この全国集会において、「第一に、食とみどり・水といった農林水産業や食生活、環境などにかかわる問題を解決するために、全国各地で多用な運動を展開してきた団体・個人が集い、運動の経験を交流するとともに21世紀に向けて何をすべきか」を意思統一し、労働組合・NGO運動の発展を期する」、第二に、経済・社会のシステム改革が進められている中において、グローバルな視点から個々の課題を分析し果敢に挑戦していかなければならない」とし、労働者や農民が将来への不安を高めている現状において農林水産業が経済・社会・文化の総合的な役割をにない、人が生きるために不可欠な産業である事を確認し、弱肉強食の国づくりから公正・公平で活力ある福祉経済社会となる運動を進めていこう。
記念講演
─ 循環社会と地球環境 ─
東京大学新領域創成科学研究科 石 弘之 氏
「欲望の爆発の世紀」
20世紀は人類500万年の歴史の中でもっとも激しいく変化した100年間で会った。科学技術の加速度的発達による大衆社会の物質的自由の謳歌は「人類の偉大な一歩」であった。しかしその結果として「人口の爆発」「食糧不足」「エネルギー不足」「環境破壊」を引き起こし、今や「環境と資源の制約という巨大な壁にぶつかっている。
「心配される食糧供給」
昨年60億人に達した世界人口は、2020年ごろまでに70億人に達する見込みである。急激に増加する人口を、果たして地球は養っていけるのだろうか。増大する人口を支える食糧と農地・水資源などの確保が大きな課題となっている。
「循環社会」の創設を
世界経済が大競争時代を迎えた今、勝ち残りを賭けての資源の奪い合いは環境への負荷の増大をもたらす。常に発展することを義務づけられた現代文明をどう地球と共存できるように転換できるか、人類史上最大の難問である。循環社会の創造こそが日本の選択すべき道である。
●全国集会の概要
「大地とともに、自然と友にイーハートーブの地から21世紀へ発信」をスローガンに、12月6日〜7日に岩手県花巻市で開催し、全都道府県から約1,300人が参加しました。(うち岩手県内参加者500人)
本集会は、平和フォーラムが消費者・市民団体や農民団体に呼びかけて集会実行委員会をつくり開催する初めての集会でしたが、平和フォーラムが提起している「人間の安全保障」の取り組みを国内外の運動と連帯していくことを重視しながら、人間の生存の根源である食・緑・水の重要性を改めて見直し、運動の発展をめざして開かれました。とりわけ、循環型社会の形成、食の安全・安定、森林の保全ときれいな水の確保など、当面する課題について情勢の共有と運動のあり方を検討するとともに、各地の運動の経験交流を深める集会として、地域に根ざした討議がおこなわれました。
初日の全体集会では、丸山健藏集会実行委員長(国公総連委員長)の主催者あいさつ(前記参照)や、基調報告では、21世紀の課題として「環境・食料・エネルギー」が地球的課題であること、環境や食・みどり・水問題をトータルにとらえることや、NGO・市民運動の役割の重要性、農林水産業がもつ多面的機能に対する評価と運動、などが重要になっていることが強調されました。また、連帯あいさつに立った林道寛・連合国民運動局長、来賓の増田寛也岩手県知事からも同趣旨のあいさつをうけました。
記念講演は、「循環社会と地球環境」と題し、東京大学大学院教授・元朝日新聞編集委員の石弘之さんが、前記のように国内外の環境をめぐる状況や循環型社会への転換をどう図るかについて、スライドも交えて話されました。さらに特別報告では、山形県高畠町で有機農業をいとなむ星寛治さんが「消費提携が活路をひらく」と題し、食の安全や環境を守る具体的な実践について報告されました。ともに、集会の基調をさらに補完していただくものとなりました。
2日目は
@最近の食環境問題と環境ホルモン・ダイオキシン問題の「課題別入門講座」
A生ごみの堆肥化と有機農業を結んだ資源環境の取組みを中心とした「資源循環型社会づくりにむけて」
B有機農業や地場型学校給食と食・農教育を中心とした「生産と消費を結んだ食の安全にむけて」
C食料自給率の向上、中山間地域の課題、WTO交渉などの「食の安定と地域活性化にむけて」
D循環型森林づくり、林業基本法改正、新たな水政策などの「森林と水ー環境サイクルの回復にむけて」
E救援米運動や平和・人権・環境運動と農林業・農山村問題の一体化を課題に「労農市民の提携運動を広げるために」
F岩手県農業研究センター、花巻農業振興公社を視察する「フィールドワーク」の7つの分科会が開かれ、参加者から活発な意見がだされました。
2日目の午後に総括集会が開かれ、分科会報告に続いて、集会のまとめ提起と3名の運動功労者の表彰に続いて、最後に「21世紀を環境の年、安全で安心して暮らせる社会とするために、平和・人権・環境を確率し、地球的視野で考え、地域から行動する」事を訴えた集会アピールを採択し終了しました。
評価点
@これまでの「食とみどり、水を守る中央労農市民会議」主催から、「平和フォーラム」が中心となって開催することで、参加者の層に幅をもつことができた。
A全都道府県からの参加者を確保することができた。
B食や環境の安全と「人間の安全保障」との関連づけながら議論することができ、21世紀に向け、共生と持続可能な経済・社会への転換について共通の認識に立つことができた。
C記念講演、特別報告ともに、循環型社会への転換の必要性と、その実践報告という形で集会基調を豊富化するものとなった。
D分科会の活発な論議を通じ、食や環境、農林業が危機に瀕していることの共通認識が図られた。
E地元実行委員会の受入れ態勢が整っており、スムーズに運営が図られた。
今後の課題
@農林業の多面的な役割と、その維持をどのように図るかについて、さらに検討を重ねる必要がある。
A食文化の維持や食料自給率向上をどう図っていくか、学校給食のあり方も含めて地域でさらに議論を深める必要がある。
B環境・食・農林業に関わる今後の法・制度の体系のあり方について、議論を深めていく必要がある。
C分科会を、研究者などの助言と地域の実践とをつきあわせる場として、さらに内容の改善を図る必要がある。
D女性の参加が少ない点の改善や、消費者・市民、生産者など広範な参加者を増やしていく取り組みが必要である。
★以上は「平和フォーラム」第4回常任幹事会で提案され決定された内容に基づいて、報告しましたのでご了承下さい。
★集会アピールも参照ください。
第32回食とみどり、水を守る全国集会アピール
20世紀 ─ それは、人類の長い歴史のなかでも、もっとも激しく変化した世紀でした。科学技術の急速な発達は、私たちに物質的な豊かさをもたらしましたが、その反面、世界規模での戦争、工業化とそれにともなう資源の大量消費、地球環境の急速な悪化を招きました。いまや、地球温暖化やオゾン層の破壊、生態系の破壊、埋蔵資源の枯渇、増え続けるゴミ、そして環境ホルモン問題など新たな化学物質の恐怖と食の安全、環境問題は年々深刻化し、人類の生存をも危うくしています。
世界では8億の人々が日々の食料不足に苦しみ、日本の森林面積の半分に相当する森が毎年消滅しています。一方、日本は「物の豊かさ」を追い求め、急激な経済成長を遂げながら、食料や木材などを世界中から買いあさり、地球資源の多くを使い捨ててきました。そして、全国的な環境破壊、食料や木材の自給率の急速な低下、過疎と過密の格差拡大などを一段と進めてきました。
間もなく21世紀を迎えようとしている今、私たちは、これまで以上に地球市民的な視点に立って、人類全体の生存が可能な共生社会をめざして大きく転換を図らなければなりません。平和と共存、地球環境と調和した社会づくり、「人間の安全保障」の確立に向けて歩みをはじめるときです。宮沢賢治が「イーハトーヴ」と呼んだ、その理想を実現しましょう。
第32回食とみどり、水を守る全国集会は、その宮沢賢治が生涯を過ごした花巻市で開催し、全国から1,300人が集い、地球環境を守る視点から、食・みどり・水の運動の発展をめざし、循環型社会の形成、食の安全・安定、森林の保全ときれいな水の確保など、たくさんの課題について語り合いました。
そして、人間の生存にとって欠かせない食・みどり・水の重要性を改めて確認しながら、それをつくりだす農林業は失ってはならない社会的基盤であることを再認識し、運動の輪を広げ、連帯を強めることを確認し合うことができました。
新たな21世紀を環境の世紀とし、次の世代を担う子どもたちが安全で安心して暮らせる社会とするために、「平和」「人権」「環境」を確立し、地球的視野で考え、地域から行動するときです。「大地と共に、自然と友に、イーハトーヴの地から21世紀へ発信」しましょう!
2000年12月7日
第32回食とみどり、水を守る全国集会
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