『埼玉新聞』2000年12月14日

所沢高教諭処分取り消し請求
人事委審理が終了

2000年12月14日(木)


(Web管理者記)

========= 埼玉新聞 2000年12月14日 =========== ---------------------------------(1面)-------------------------------------            所沢高教諭処分取り消し請求              人事委審理が終了  「校長の行う入学式に反対する趣旨の発言をした」として一九九八年三月、県教委 に戒告処分を受けた県立所沢高校の男性教諭が処分の取り消しを求めて申し立てた県 人事委員会公開口頭審理の最終回が十三日、県庁で開かれた。教諭側、県教委側の双 方が意見陳述を行った。申し立てから二年七カ月、十七回目の審理で審査が終了した。   (19面に関連記事)  教諭側は、代理人弁護士二人、同僚の教諭一人、卒業生の保護者一人、男性教諭本 人の五人が陳述。  弁護士は、男性教諭の発言は、「事実経過を説明し、新入生や保護者の不安を解消 するもので、処分事由にあるような趣旨ではない」とし、県教委の事実認定に誤りが あると主張。また、処分を決める会議に教諭の発言を録音したテープを提出しないな ど、処分決定手続きがずさんだったと指摘した。男性教諭は、卒業式や入学式の実施 を避けなければならなかった生徒らの思いを語り、「生徒たちが(卒業記念祭や入学 を祝う会のために)やってきた取り組みを伝えるのがなぜいけないのか。最近、『情 報公開』や『開かれた学校』という言葉をよく聞くが、事実を伝えることで罰せられ るのでは実現できない」と訴えた。  県教委側は、代理人弁護士が五分程度陳述し、「本件処分は妥当」と主張。校長権 限として入学式を開くことができる、男性教諭の発言は教育公務員として認められる ものでないのは明らか―などとした上で、「入学式という重要な行事で国旗・国歌を 実施することが問われている」と結んだ。  同審理には毎回数十人から百人を超える傍聴者が訪れていたが、同日は約百五十人 に上り会場はほぼ満席。関心の高さを示した。同校が期末試験の最終日で半日だった こともあり、生徒も傍聴に訪れた。 ▲………………………………………………………………………………… 最終回となった第17回の公開口頭審理。約150人の傍聴者が訪れた =県庁第三庁舎講堂(写真割愛) …………………………………………………………………………………… ---------------------------------(19面)-----------------------------------             所沢高問題/主張のポイント          テープ調べず処分  教諭側          校長はウソつかない 県教諭側  一九九八年三月、入学説明会での発言が「公務員の信用失墜行為」にあたるとして、 県教委から戒告処分を受けた県立所沢高校男性教諭の処分撤回申し立てについて、審 査していた県人事委員会の公開口頭審理が、申し立てから二年七カ月たった十三日、 終了した。双方の主張の主なポイントをまとめた。  ■発言  県教委側は、処分した理由を、教諭の発言が「入学式を行う」とする校長の説明に 反し、保護者らを混乱させたためとしている。さらに審理の中で、入学式を行うこと は既に校長が決定し、教職員らに意思を表明していたとした。  これに対し教諭側は、当時卒業式問題で同校は大きく報道されており、発言は、新 入生や保護者の不安を解消するために必要な現状説明だったと反論。入学式について は生徒総会と職員会議で実施しないと決定しており、校長は行いたいと希望は述べた が、決定や職務命令の段階ではなく、平行線の状態だったとした。  ■処分手続き  教諭の発言があったのは同年三月十八日。県教委に保護者を名乗る苦情電話が一本 あり、その後校長が電話で報告、県教委は二十四日、校長から事故報告書を受け取り、 処分を起案。翌二十五日に決裁が下り、同日の県教育委員会会議で承認され、二十六 日に教諭に処分が通知された。  県教委は「二十、二十三日に教諭に事情聴取しようとしたが、ほかの教職員の妨害 でできなかった」と説明。教諭側は、事故報告書の収受前の事情聴取は正式な手続き ではないとし、「妨害」も否定。また「処分を決める際に発言を録音したテープを聞 かなかったのは事実確認がずさんで、重大な手続き違反」と主張。これに対し県教委 側証人は事実認定の根拠を「校長がうそをつくはずがない」と話した。  ■行事の決定  県教委側は「学校の最終責任者として校長権限で入学式を行うことや入学式の行事 内容も決定できる」「校長権限として入学式を行うと決定したことに生徒は反対でき ない」と主張。これに対し教諭側は、同校には生徒総会と職員会議で行事内容なとを 決定するシステムがあること、当時、内規で職員会議は議決機関だったことなどを挙 げて反論。校長意見の押し付けは子どもの権利条約に照らしても違反と主張している。             PTA、人事委に要請              「公正な判断を」  十三日に終了した県立所沢高校男性教諭の懲戒処分撤回人事委公開口頭審理に先立 ち、同校三年PTAが同日午前中、県人事委員会に公正な判断を求める要請書を提出 した。  今の三年生は、処分の対象になった男性教輸の発言があった入学説明会に出席した 学年に当たる。要請書では「半年後の卒業までに処分が撤回され、親子とも気持ち良 く心残りのない卒業を迎えたい」とし、人事委に公正な判断を求めている。  要請書には、今年九月の同校文化祭でPTAが生徒や保護者、卒業生らから集めた 「ひと言メッセージ」も添えられた。「入学説明会を時々思い出し、悲しい気持ちに なる。早く処分が撤回されるよう祈っている」「説明会の先生の言葉は子どもや私の 不安を必死で和らげてくれた。そんな先生が処分を受けるなんて不当なことがあって はならない」「先生がんばれ」などの言葉が寄せられている。  また、「所沢高校教輸への不当処分撤回を支援する会」は早期解決と公正な判断を 求める署名三千三百三通を人事委に提出。七月に一万八百三十五通の署名を提出済み で、合計一万四千百三十八通となった。            [処分対象教諭の発言要旨]  三週間後の四月九日に、皆さんも非常に心配されていると思うが、現在私ども教職 員も生徒も、入学を祝う会のみで行いたいというふうに考えている。ただ今日の冒頭 の学校長のあいさつで「こういう時程で入学式をやる」ということが伝えられたので、 どうなってしまうのかと(思われると)思う。《中略》実際には入学を祝う会、かな り細かい点まで詰めているが、現在学校長と意見が分かれている段階で、この場で四 月九日の時程を出すのは好ましくないと考えた。私たち教職員はこれから学校長に今 までの生徒の取り組み、教職員の考え方、一年学年団の教員の考え方をできるだけ理 解していただき、四月九日には祝う会のみでできればいいなと考えている。ただし、 最終的に折り合いがつかないこともあるかもしれない。その場合は、四月九日、皆さ んが見えて迷ったり混乱するような事態は学年団として絶対に避けたいと思う。安心 して四月九日を迎えてほしい。 【写真説明】…………………………………………………………………………………… 生徒や保護者の一言メッセージを掲載した要請書を手渡す県立所沢高校三年保護者ら =13日、県庁 ……………………………………………………………………………………………………
(Web管理者記)
前のページ(所高資料)に戻る
前のページ(経過)に戻る