第17回口頭審理
意見陳述
請求人主任代理人桜井和人
2000年12月13日(水)
(Web管理者記)
この意見陳述は、請求人の主任代理人である桜井和人弁護士が、第17回口頭審理
の場で述べられたものです。
代理人の意見陳述
桜井和人
1、今から11年前の1989年11月20日、国連総会で「子どもの権利条約」が
満場一致で採択された。その日の午後、世界75カ国のこどもたち数百人が集って
子どもたちの記念祝賀会が開かれ、デクエアル国連事務総長があいさつをしたり、
ユニセフの親善大使として活躍した女優のオドリー・ヘップバーンがこの条約の精
神と内容のまとめた文章を朗読するなどしたあと、各国の子どもたちの発言や全員
が手をとりあっての合唱があって、この祝賀会は終わった。
2、私は、かつて高校の教員として青少年の教育にたずさわったことがあるが、その
間長い間生徒会の顧問をしていた。
思い出されるのは、市内の三つの高校の生徒たちが「三校特活研究会」を計画、
組織し、三校の教職員生徒全員が参加して討論、スポーツ、フォークダンスなどで
楽しい一日を過ごしたこと、また、これも生徒たち発案による全校生徒参加のキャ
ンプファイヤーの行事などである。
3、所沢高校では、この条約成立の7年前の1982年に教職員と生徒との「協議会」
の設置、この条約の成立の年である1989年に所高祭、体育祭の改革、翌199
0年に「日の丸・君が代」の強制に反対する生徒会決議文および生徒会権利章典の
作成、そして1998年に卒業記念祭、入学を祝う会の実施および教職員と生徒の
連絡会の設置、といった具合に民主的な学校づくりが進められた。
所沢高校で、長年にわたり、生徒から生徒へ、教職員から教職員へ、脈々と受け
継がれてきた学校づくりの成果は、わたしにとって極めて新鮮な驚きであり、深い
感動を覚えるものであった。
所沢高校におけるこうした試みは、「子どもの権利条約」が保障する意見表明権、
そしてまたこれと一体をなしその重要な内容をなすところの参加権の実現であって
高く評価される。
4、請求人は、生徒会顧問として1998年の卒業記念祭、入学を祝う会に積極的に
関わった。この二つの学校行事は生徒を主体とし、教職員がこれを指導援助し、そ
してPTAが全面的に支援した。この二つの学校行事は「自主・自立」という所沢
高校の学校運営、校風の新しい大いなる発展として性交した。
「教育の危機」が叫ばれ、教育基本法の「見直し」が議論される昨今であるが、
所沢高校におけるこうした実戦例明日の日本の教育への道を照らし出すものである。
請求人の入学許可候補者説明会における本件発言は、良心的な教師として所沢高
校の校風に沿ったものであり、説明会に出席した子どもや保護者に対しいわば「所
高精神」というものを理解してもらいたいという一念から出たものである。
5、請求人に対する本件処分は、内田校長を免罪するものであり、請求人をその一員
とする所沢高校の教職員のみならず、所沢高校の学校づくりに参加してきた在校生、
OB、そしてこれを支援してきた保護者たちに対する重大な挑戦である。
処分者は、請求人に対する本件処分により教育現場における文部省、教育委員会、
校長の管理体制を強化し、民主的学校づくりに励む教職員、生徒を萎縮させること
を企図した。しかし、それは時代に逆行するものであり、「学校が楽しい」(甲第
151号証)という生徒たちの明るい声を消すことはできない。
県人事委員会におかれては、全世界の子どもたちのマグナ・カルタといわれる
「子どもの権利条約」の精神に即した判定をなされるよう求める次第である。
(Web管理者記)
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