実録・内田校長と全校生徒との話し合い
1998年1月13日(火)
Web管理者記:
この資料は[1998年1月13日(火)]に行われた「内田校長と全校生徒との
話し合い」をテープ起しされた方の許可を得て掲載しました。
┌─ 1998.1.13 ────────────────┐
│ 実録・内田校長と全校生徒との話し合い │
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生徒:(あいさつ)
司会:(話し合いの流れの説明)はじめに校長先生と生徒がそれぞれの「卒業記念祭」
をどう行いたいか意見を述べてもらい、柱になる4つの質問に対し校長先生に
答えをいただく。次に全体から質問を取りたい。時間と人数によっては発言を
控えてもらうことがある。最後に話し合いを通したうえで一番良いと思われる
「3年生を送る会」の方法を校長先生、生徒代表で述べたいと思う。
■ 校長・生徒側の基本的な考え
司会: では、校長先生から「卒業記念祭」に対する考え方を述べてもらいます。
校長: みなさんおはようございます。昨日とうってかわって天気が良くなりました
ので、そんなに心配はして無いんですけれども、今朝ホームルームの時に先生
から話があったと思いますが、一年中で一番寒い時ですし、外も雪が降って非
常に気温が低くなっております。体調の悪い人、風邪気味の人等は教室で、暖
かいところで待機をするというふうにお願いしたいと思います。あんまり心配
したんで温度計も持ってきてあります。今相当寒いですね。じゃあ座っていき
ます。
司会: 校長先生、続きをお願いします。
校長: それでは、前の終業式でお話ししましたけれども、改めて私の考えを申し述
べます。今、先生方の指導のもとに生徒が中心になって「卒業記念祭」が進め
られています。これには最終的な卒業認定の場であると考えられる卒業証書授
与が入っておりません。私は体育館でですね、ここで皆さんが計画している
「卒業記念祭」の前に、卒業証書を授与する「卒業式」をやりたいと、こうい
うふうに考えております。
いわゆる「卒業式」で、厳粛な清新な体験をして、その後、皆でお互いにお
祝いをしたいと、こういうふうに考えております。こういう厳粛さを体験する
ことは、これからの社会生活をしていくうえで非常に役立ちますし、大切なこ
とだと思っています。所高生の自主・自立、それからこの厳粛さを体験すると、
こういう2つのことが身につけば、これからの社会生活をしていくうえで非常
に役立つことだと思います。
今回の「卒業式」をやりたくないという理由をですね、「入学式」のように
混乱したくないと、こういうふうに、私に言わせれば所高生らしからぬことを
理由にあげておりますけれど、私はやりたくない理由は、卒業式において「国
旗・国歌」を実施することがいやだと、反対であると、こういうことにあると
思います。皆さん、そう考えていると思います。
さて、皆さんも承知していると思いますが、先生方、我々は生徒を指導する
ときに、「学習指導要領」ってものが、基準になっております。その中に「入
学式」や「卒業式」等では、国旗を掲揚し国歌を斉唱することを指導するもの
とすると、こういうことで示されており、実施することが義務づけられている
と、こういうふうになっております。この「学習指導要領]は、法的拘束力が
あると、こういう最高裁の判断もありまして、私達はこれを守らなければなり
ません。反対の中にですね、思想信条の自由が奪われると、こういうようなこ
とを考える人がおりますけれど、これは教育指導上の問題であって、国民とし
ての基本的なマナーであると、こういうふうに考えておりまして、いわゆる思
想、良心を制約するものではありません。
また、反対の理由として、国旗も国歌も先の戦争に関わったからだめ、こう
いうような考えがありますけれども、事実国の旗として、あるいは国の歌とし
て利用されました。しかし、現在の憲法の前文にありますように「私たち日本
国民は、恒久の平和を念願し、国際社会において名誉ある地位を築きたい」、
こういうふうに誓っているわけでありまして、同じ国旗と国歌を使って戦争を
2度と起こさないということで世界に向けて誓っているわけであります。これ
は、始業式でも言いましたけれども、世界で9カ国、第2次大戦後、いわゆる
国家権力の発動によって戦争をしていない国がある、その中の一つが日本であ
りますから、国旗・国歌は平和のシンボルであると、こういうふうに考えて間
違いのないことであります。
さて、あの卒業式はやらなきゃならないということは、どこにも書いてあり
ません。行うということは前提になっております。一番重要な学校行事の一つ
であるとされております。従来の卒業式、門出式に代わって「卒業を祝う会」、
「卒業記念祭」に変わっておりますけれども名称が。これを実施することが決
まったときに、私はいろんなことを心配いたしました。
現在、本校の校長をしておりますが、一市民として外の立場で考えたときに、
やはり所沢高校で卒業式や入学式をやらないと、こういうことになったら、ど
ういうふうに私は考えるかなあというようなことを、外の立場に自分を置きま
していろいろ心配をいたしました。あるいは今度は、大学側の立場で高校生を
受け入れるということで、その立場で考えて見ました。本校もいろいろ指定校
になっておりますが、受け入れる時にですね、所沢高校が卒業式や入学式をや
らないということが耳に入った時にですね、どういうふうに考えるだろうと。
ともかく校長としてはですね、いろんな心配をいたしました。全国6000有
余の高校がありますけれども、卒業式をやらない、入学式をやらないという学
校は私は聞いたことがありません。おそらく無いんではないかというふうに思
います。まあ、校長になるとですね、いろんなことを心配すると、皆さんも心
配してますけど、私もいろんなことを心配すると、こういうことでございます。
これから、いろんな質問あるいはご意見を伺うこの会でございますが、私の
ほうからもいろいろ質問、意見を述べさせていただいて、この会が有意義にな
ればというふうに思っております。よろしくお願いします。
司会: ありがとうございました。皆さん、もう少し静かにしてください。では、生
徒の「卒業記念祭」に関する考えをお願いします。
生徒: 校長先生は、終業式で「卒業式」を行いたいとおっしゃったが、私達の提案
してきた「卒業記念祭」というものは、卒業式と門出式に代わるものです。こ
れが承認されたということは、同時に卒業式はもう行わないと言っているよう
なものです。これが、生徒総会と職員会議で決まったときに、校長先生はずっ
と黙っておられました。それなのに、終業式のころになって、いきなり卒業式
をやりたいとおっしゃいました。私達はこういう所高の話し合いのスタイルを
ずっと守って活動を進めてきました。だけど校長先生は、こういう所高の話し
合いのスタイルを根本からひっくりかえすようなことをしています。私達の決
めた意見を、この全校の意見を校長先生たった一人の意見でつぶそうとしてい
るのです。それに校長先生は、一部で「卒業式」をやって二部で「卒業記念祭」
をやればいいとおっしゃっていますが、もしそういうふうにしたら、卒業式の
あとの「卒業記念祭」にどういう影響があるか考えていらっしゃいますか。私
達が望んでもいない厳粛な卒業式を「卒業記念祭」の前にやるということは、
その後の「卒業記念祭」に悪影響が出ることは本当にもう目に見えています。
私達は、3年生を暖かく送り出すために「卒業記念祭」を成功させるという目
標を最後まで貫き通します。
そして全校の皆さん。今せっかくこういう校長先生と話し合う機会があるの
ですから、自分で校長先生に対して思ったことがあったら、絶対に発言しましょ
う。私達生徒の意見を校長先生にちゃんと口にだして伝えなければ、こういう
事態は少しも変わらないと思います。卒業記念祭の当日に、記念祭が終わった
後で、「ああ本当にいい卒業記念祭ができて、本当に良かったなあ。」と思え
るように、今この場から頑張って行きましょう。以上です。
■ 校長への四つの質問
司会: ありがとうございました。では、プリントの4つの質問に移りたいと思いま
す。各質問の下の空欄はメモとして使ってください。
生徒: 卒業記念祭は生徒総会や職員会議で決めたということはご存じですよね。今
頃になって、決まったこととは全く違う内容の葉書をどういうつもりで出した
のですか。
校長: 厳粛で清新な卒業式をやりたい、法令等に則ってやりたいということを保護
者にも伝えたかったと、こういうことです。
生徒: わかりました。あと校長先生という公式の名前を使って葉書をだされたが、
職員会議などに通す必要があったのではないか。
校長: 議長さん。こういうふうにやっていくんですか。こうやって一問一答で繰り
返していくんですか。
司会: はい。
校長: ちょっと打ち合わせとちがいますね。
司会: 校長先生、ちょっといいですか。
校長: はい。
司会: まず最初にですね。先ほど流れのときにも言ったと思うんですが、4つの質
問だけは一問一答みたいにやってく予定なんですが。
校長: ああそうですか。はい。所沢高校校長として保護者の皆さんに手紙を出しま
した。
生徒: それでしたら、なぜ職員会議には通さないで独断で出されたんですか。
校長: 私の考えはですね、いろんな場所で申し上げておりまして、今回の考えは、
急に終業式で話をしたり、急に手紙を保護者に出したとこういうふうに言われ
ておりますけれども、そんなことはないんで、前からですね、この考えはいろ
んな機会に私は話をしてきました。ですから私の校長っていう立場で手紙を出
しても、これは特別のことをやっているわけではありませんので、私の判断で
やりました。
司会: 次の質問ですか。どうぞお願いします。
生徒: 校長先生は、一部二部という方法で卒業式をやると葉書にかいておられまし
たが、それはどういうことなのでしょうか。それに加えて、校長先生の考えて
いらっしゃる卒業式の構想を教えてください。
校長: 「卒業を祝う会」「卒業記念祭」というものは、卒業する皆さんを皆で祝福
をして、本校から送り出していこうと、こういうような主旨で行われることだ
と思います。ただこれは、さっき私に与えられた時間の中でお話をしましたけ
れども、卒業証書授与ということが、そこにないわけでありまして、卒業証書
は校長が授与して、卒業をして、それでお祝いと。これは終業式のときもお話
ししましたけれども、儀式をしてその後お祝いの会というのは、これは世間一
般いろんな場合そうでありまして、やはり最初に儀式という厳粛な式を行って、
そこで卒業証書を授与して、それからそれに対しての「記念祭」「祝う会」を
するというのが一番いいというふうに私は思ったからであります。従いまして、
第一部第二部っていうふうに名前をつけましたけれども、最初に卒業をして、
その後記念祭とこういう言い方でもいいわけでありますが、最初の第一部の卒
業式では開式の言葉、国歌斉唱、卒業証書授与、まあこのあと校長の式辞はあっ
てもなくても、まああとの記念祭のところで私のあいさつがありますから、そ
こに入れてもいいんですけれども、まあ仮に校長式辞と、それでその他のもの
は全部なしにして閉式の言葉ということですから、非常に短時間で終わると思
いますが、短時間であっても厳粛な卒業式をやりたいということでございます。
以上です。
司会: 校長先生、回答のときはもう少し手短にはっきり答えてください。時間も少
し押しているのでお願いします。
生徒: 聞く限りによると、去年の卒業式と門出式というような感じともとれますが、
それとは全く違うんですか。
校長: 去年の状況は聞いているだけで分かりませんけれども、卒業式はですね、今
話し声が聞こえますけれども、そういう話し声の無い、やっぱりきちっとした
いわゆる儀式として行う。終わったら今度は「記念祭」「祝う会」ですから、
また違ったイメージで行われるということについては、まあ去年はそういうふ
うにやることになっててそうでなくなったんだったか、どうだか分かりません
が、私の考えている卒業式、記念祭は以上のような内容です。
生徒: それでは従来とは全然違うということなんですね。
校長: それはわかりません。卒業式を行なって、そのあと門出式ですか? だから
卒業式っていうのは厳粛なものであるっていうふうに私は考えておりますから、
そうでないとか、うーん、よくわかりません、そのへんは。
司会: では、次の質問に行って下さい。
生徒: 今回の校長先生のとられた行動は、私たち生徒のやろうとしていることを全
く無視していらっしゃいます。校長先生は本当に生徒のやることややろうとす
ることを理解していらっしゃるんですか。
校長: ええと、どういうことを言っているのか大体わかるんですけれども、もう少
し説明してもらえますか。
生徒: 「卒業記念祭」は生徒総会、職員会議で決めたことですよね。ご存じですよ
ね、そこらへんは。それにもかかわらず、校長先生はそれを全く無視して、こ
のような葉書を出したりしてるではないですか。だから校長先生は、本当に生
徒のやろうとしていることを理解してらっしゃるんですか。
校長: さっき私の申し上げた中にも言った通りでありまして、今回「記念祭」を行
なうということについては、生徒会活動として在校生がですね、卒業生の卒業
を祝い暖かく送り出してやりたい、こういうふうに考えて「記念祭」を行なう
ことと理解しております。で、いろいろ生徒の方で一学期の終わり頃から卒業
式のことについていろいろ進めてきているってのは承知しておりますが、その
中でですね、生徒を直接指導するのは先生方でありまして、私がいちいちすべ
てについて生徒に対して指導するってことはないわけでありまして、その中で
生徒会本部をはじめ四者会議等については、先生方に御指導いただいてお願い
をしてきているわけでございます。その中である時期に生徒総会が行なわれる
ということについて、生徒総会の議案書等の中に卒業式をやらない、入学式を
やらないと、こういうようなことが書いてありまして、私の考えをさらに詳し
く職員会議等でお話をしてきているわけでございます。
生徒諸君については、そういう機会を設けるようにお話をしたこともあった
んですが、なかなかそういう機会がいろいろ忙しくてできなくて、終業式の時
に私の方からお話をしたわけでありまして、一方的に突然にというふうに言わ
れるかも知れませんが、私なりには順を追ってですね、私の考えは今日まで述
べてきてるつもりであります。
生徒: 私たちは3年生を暖かく送り出したいという1,2年の気持ちと、気持ちよ
く卒業したいという3年生の気持ちをもとに、この「卒業記念祭」の企画を進
めてきました。しかし、校長先生の行動は、このような「卒業記念祭」を根底
からくつがえすようなことです。いったい校長先生は何を優先させて卒業式を
やりたいと思ってらっしゃるんですか。
校長: 所沢高校の生徒諸君に厳粛で清新な卒業式を体験させて卒業してもらいたい
と、こういうことであります。
生徒: それでは、このまま校長先生がおっしゃるような形で卒業式をやってしまう
と、混乱するのは目に見えていますが、それでも卒業式をやるつもりなのでしょ
うか。
校長: さっき言いましたように、卒業式はですね、混乱するってのはそれは誰も望
んでいることではありません。そういうふうにならないように、こういうふう
にして今話し合いっていいますか、意見交換っていいますか、をしてるわけで
して、是非ですね、私の意のあるところを理解してもらいたい。こういうこと
であります。
生徒: それでは混乱しても卒業式をやるということですね。まあ、仮にですけど。
校長: 混乱しても、何ですか?
生徒: 卒業式をそういうふうに「卒業記念祭」の前にやるということですね。
校長: 混乱しても卒業式をやるかどうかってことですか。
生徒: はい。
校長: だから混乱しないように、皆さん協力してやりましょうよ、ねえ。
司会: ここで、さっきも言ったんですが、校長先生、もう少し要点をまとめて早め
にしゃべって下さい。それから皆さん。今回校長先生がせっかくこのような話
し合いを開いてくれたんですから、もう少し静かに校長先生のお話を聞いて下
さい。全校で集まってできるのは、おそらく今日が最後になるので、そのこと
も考えてもう少し静かにして、お願いします。
■ 質疑応答
司会: では、次の全体からの意見の方に移りたいと思います。ここでちょっとあら
かじめ言っておきたいのですが、皆さんからの質問や意見を人数や時間によっ
て多少控えていただく可能性があるので、それは御了承願います。だいたい、
12時10分ぐらいをめどに考えているので、それもお願いします。では校長
先生へ質問や意見のある方は、中央の発言台の方へお願いします。
生徒3男: 校長先生は、厳粛な行事の中で日の丸・君が代に敬意を表わすという学
習指導要領にある道徳教育を行ないたいわけですよね。それはどうなんですか。
学習指導要領にある日の丸や君が代に敬意を示すという道徳教育を僕たちに行
ないたいわけですよね。
校長: 国旗を掲揚して国歌を斉唱することを指導するものとする、となっているん
ですよね。
生徒3男: はい。
校長: ですから、今回卒業式についてやっているわけですから、卒業式ではそうい
うように、私の方では指導したいと考えているわけですし、これは私だけでな
くて、我々教員はそういうふうにやるべきことであります。
生徒3男: 意見を言いたいんですが、今校長先生のやりたい道徳の内容や指導を取
り上げて論議しても時間の無駄づかいになりそうなので、僕は校長先生のやろ
うとしている道徳教育の方法について意見を述べたい。校長先生はちっとも道
徳教育にふさわしくない、押しつけの教育をしようとしていると思うんですが、
そしてその中で道徳教育をやるために、もっとも大切な思想や良心の自由とか
自主性というものを踏みつぶしているという最大の矛盾がある。道徳教育をや
ろうとして反道徳的な行動で道徳教育をしている。道徳は人格の形成にそのま
ま関わるので、とても重要な問題。慎重な問題。それを1人で強行してやろう
としているが、校長には重大な責任がある。それなのに校長は道徳教育を行な
う立場にあるのに、押しつけや強行で自主性とか人権とかを踏みにじった。例
えば、僕たちが自主的に「卒業記念祭」を行なおうとしているにもかかわらず、
校長は自主性を踏みにじる行為をしている。道徳教育をするにあたって反道徳
的な自主性を踏みにじる行為は矛盾があると思う。
校長: これは終業式の時の最後のところでですね、こういうふうに皆さんに言いま
した。人間は本来自由であり平等でなければならない。しかしそのことは人間
が自らの意志で定めた規律に従う、自律のもとに。規則ですね、法律などです
ね。自らの意志で定めた規律に従う自律のもとに我が身を置くことと何ら矛盾
するものではないと。国民が自由であることと、法律で国民を支配することと
が互いに両立することが民主主義の本質であると私は考えます。ですから、国
歌や国旗を学習指導要領に則って実施しても、所沢高校の自主、自立、自由が
奪われるわけではない。そこのところをよく考えていただきたい。これで全て
だと私は思っております。
生徒3男: その学習指導要領自体、社会的にもまだ論争が起こっていて、市町村や
議会でもその学習指導要領の撤回を求める意見書とかがしっかりと採択されて
いるわけですよね。そういう大人の社会でまだ問題になっていることを、この
教育の場において、なぜ僕たちは強制されなければならないのですか? そう
いう僕たちの自由が奪われ、抑圧された状態の中で、偽の道徳が押しつけられ
てウソの道徳が美化されるほど人間にとって悲劇はないし、そしてそれは教育
の破綻だと言わざるを得ないと思うんですね。で、そのような道徳教育をした
場合、最大の犠牲者は僕たち子どもです。どうでしょう。
校長: 人間いろいろな考えがありましてね。確かに学習指導要領は、これはけしか
らんというような意見の方もいると思います。しかしですね、学習指導要領と
いうのは、これは法令の一種であると、まぁ告示というような形で出されてお
りますけれども、法令の一種であるというふうに法的には考えられている。現
在考えられているんです。で、学習指導要領がこれは憲法にも合わないとかね、
いろんな意見もありますけれども、これはそうではないという最高裁の判断も
あるわけです。ですから、今現在どこの学校でもですね、学習指導要領に則っ
た教育が行なわれているわけです。もしこれがダメだっていうことであれば、
そりゃないわけですからね。 で、人それぞれいろんな考えがあると思います
けれどもね、たくさんの人が人間社会を形成しているわけですけれども、やは
り日本は法治国家であるわけですから、その法律にですね、法令等に従って、
やはり社会生活を行なうというのが正しいことだというふうに思っているわけ
です。ですから、小中高、高等学校においては、学習指導要領に則って卒業式
をやるということになっているわけですから、それをお願いしているわけです。
生徒3男: はい。それはわかりましたから。まぁ僕の主張はさっき言ったようなこ
とで、一応頭に入れて欲しいと思います。最後に校長先生に言っておきたいの
ですが、まぁいろいろな立場があるとは思いますが、僕たちの主張をしっかり
と聞いて、一個人の立場に立ち帰って、もう一度考えてくれることをお願いし
ます。
生徒2男: 校長先生は、厳粛、厳粛とおっしゃっていますが、日の丸・君が代をと
にかく揚げたいという意見ですね。私はボーイスカウトに所属しているので、
セレモニーでは日の丸・君が代を掲揚します。今回所沢高校が進めている「卒
業記念祭」は「厳粛」と対極にあるポップな気持ち、要はみんなを楽しく送り
出そうという意向でやっていると思う。だからわざわざ日の丸・君が代という
古めかしい気持ちじゃなくて、もっと明るく生徒がみんな協力して進めている
んだと思う。校長先生は日の丸・君が代が卒業式だと言っているが、みんなが
進めているのも卒業式だ。校長先生は日の丸・君が代を揚げない限りは絶対厳
粛な卒業式にはなり得ない、又は楽しい卒業式はあってはならないとお考えな
のですか。
校長: このへんのことはですね、前にもお話したことがあると思いますが、ま、ど
この国にも国旗や国歌があると。これはやはりその国の国民としての誇り、あ
るいはその国の印として、どこの国にもあるわけです。で、自分の国のそうい
う国旗や国歌に対して敬意を払い、これが私たちの旗であり、私たちの歌であ
るということを認識してするということはですね、日本の国だけでは生きてい
けないわけですから、外国はあるわけですから、相手の国の国旗や国歌に対し
ても、同じように敬意を払って相対さなければならないわけですから。自分の
国の国旗や国歌に対してそういう気持ちをもたないで、相手の国の国旗国歌に
対して敬意をもつということは・・・・。
生徒2男: 私が聞いているのは、厳粛な卒業式でなければいけない、要は楽しい卒
業式、又は軽快な気持ちで卒業式をあげてはならないというところが、僕は聞
きたいところなんで、慣習法に関しては今たずねても、はっきり言ってこんな
のはもう、憲法の話なんて法律家に任せればいいんです。そこだけ聞きたい。
校長: ですから、これから始まるわけです。本論にね。そういうようなことをです
ね、生徒諸君に理解してもらい、こちらから指導していくというような機会は
いろんな学校の教育活動の中であるけれども、入学式や卒業式が中止になって
ですね、そういうような時期にその儀式の趣旨からして一番適当な時期ではな
いかということで行なうことになっているわけです。
入学式や卒業式がにぎやかにワイワイやるというような入学式や卒業式は、
私は考えておりませんし、そういうような指導を生徒諸君にするということは、
これは入学式や卒業式の意義を理解していないということで、私どもから諸君
にお話ししていかなければいけないところなんです。
生徒2男: 先生のお考えはわかりました。つまり厳粛でなければその社会の節目に
は絶対になり得ないというふうなわけですね。でも私たち所高生は、自分たち
で自分の意志を尊重して、こういうふうにしたらみんながもっと良くなれるの
ではないかという気持ちでやっているわけですよ。そりゃ従来までは、厳粛で
やったほうが社会人になったときに、というのはあったかも知れませんけど、
でも今所高生は楽しく明るく、もっとこういう不況の世の中なんですから、はっ
きり言ってもっと厳粛、厳粛なんて言ったら、どんどん暗くなっちゃうじゃな
いですか。だから卒業式ぐらいはみんなで明るくやっていこうということで、
日の丸・君が代っていうのは別になくてもいいんじゃないか。これをやらない
だけで、もう将来お先まっ暗とか、もう日本なんて絶対いやなんて気持ちにな
るなんて思えないんです。先生には、そこを理解してもらいたい。
生徒3女: 校長先生は卒業式を行なう目的として、「厳粛」をみんなに知ってもら
いたい、「厳粛」を知らせるためとおっしゃったが、私たちは義務教育、小・
中の中で十分「厳粛」というものを知っていると思うし、高校生になるにもそ
ういう世間一般の常識的なことを知らないで高校生になっているような人はい
ないと思います。
また、先生は卒業式を行なわないことについて、外の立場で心配していると
おっしゃったが、大学や就職、進学とかそういうことの心配をなさっているよ
うですが、結局そういうのは最終的に個人の価値で決められるものであって、
学校の器で決められるものではないと思います。先生はそこらへんをどうお考
えですか。
校長: これもさっき言いましたけれども、校長としていろいろ心配をしているとい
うことです。みんなの進路もありますし、これからの所沢高校のこともあるし、
そういうことも心配をしましたということです。今も心配しています。
生徒3女: 先生の今の返答からすると、先生は所沢高校ってものだけを考えていて、
所高の生徒一人ひとりのことを考えていないように思うんですけれども、そこ
らへんはどうですか。
校長: 一人ひとりのことを考えていますよ。一人ひとりがですね、厳粛な卒業式を
体験して、卒業式をそういう場にいてですね、そうして社会に出ていけば、さっ
きの方も話がありましたけれども、所高の自主、自立、自由というものと両輪
になってですね、両方の車になって幸せな社会生活をやっていけると、私は思っ
ているわけです。
生徒3女: だから私たちは、義務教育の中でもすでに「厳粛」さというものを十分
に知ってると思うんですけれども、別に高校でやったとかやらないとかは、た
いして問題ではないと思うんですが、どうですか。
校長: 小学校や中学校と比べて高校生になると、いろんな社会体験を含めて、いろ
んな経験、本を読んだりね、人の話を聞いたり、いろんな経験が積み重なるこ
とは間違いないことでありまして、そういう中でですね、さらに高校生の立場
で、高校生になった時点で、改めて入学式や卒業式のことについてよく考えて
いただきたい。そういう意味も込めて私は考えております。
生徒3女: だから高校生になって卒業式や入学式についてよく考えたいから、こう
いう問題が起こって話し合いをしていると思うんですけど。先生はそういうの
をけっこううやむやになっているので、皆さんは意見を述べてもらいたいと思
う。これで終わります。
生徒2男: 前からこういう話し合いみたいのが行なわれてて、全然進んでいないと
思うんですよ。内容的に。どちらも譲る気がないというか、自分はこうだから、
これは譲れないで、自分の意見があるから、相手の意見には全然譲れないとい
うふうになっている。このままいくと、どちらかを無視して卒業関係の行事を
行なうことになる。自分はここまでこうするから、相手にもこうして下さいと
いうような譲歩もこれから必要になる。そうしないと、本当に混乱した卒業に
なってしまうので考えてみてください。
生徒3女: 私は、校長先生が法令等に則った式をやれっていうのはおかしいと思い
ます。なぜならば、教育の目的は自立を促すことで、つまり生徒の自立を妨げ
ないことだと思います。どうして私が校長先生が自立を妨げていると思うかと
いうと、学習指導要領、法令というのはマニュアルであって、義務ではないと
思うからです。つまり、マニュアルは手段であって決して目的ではないと思い
ます。それなのに、校長先生はこのマニュアルを押しつけます。それで管理統
制がマニュアルによって行き渡ると、画一化した人間っていうか、そういう人
ばっかりになっちゃうし、マニュアルに頼っていると、行動だけでなく精神も
型にはまってしまうと思います。そうすると、みんなと違う人を排除する傾向
が強くなり、これが「いじめ」の問題などへと発展するのではないかと思いま
す。
ですから、教育の多様性を認めるという意味で、生徒が自分たちで考えて行
動するのは、時に危なっかしかったり、だらしなかったりするけれども、うま
くやれるのを信じて見守ってくれませんか。校長先生は、確かにこの学校の最
高責任者ですが、ただやみくもに権力を行使するのではなく、生徒が自分たち
で考えて行動するのを見守っていてくれませんか。(拍手)
生徒3女: 先生は、一部・二部と、はじめに厳粛な式を行なって二部で「祝う会」
をやるとおっしゃいました。世間一般のやり方で、この今の状況で必ずしも世
間一般のやり方通りにやるということが必要だとは思いません。それは、生徒
がコツコツと入学式以来計画して承認してきたことを踏みにじってまで、世間
一般のやり方でやるっていうのは、自主自立を妨げているし、さっきも言った
んですが、自主自立を妨げているっていうのは、所高の精神を妨げているとい
うことで、所高の校長先生としては一番やってはいけないことだと思います。
それに、生徒が考えている「卒業記念祭」は、別に何度も言っているんです
が、ふざけたものではないし、厳粛な感じも味わえるようにちゃんとそういう
ところも考えて、静粛な中にも所高生らしい雰囲気を出すように工夫して作ら
れているので、「卒業記念祭」をやることを希望します。
生徒3女: さきほど卒業式における厳粛な式っていうのを校長先生はやりたいとおっ
しゃいました。そこについてなんですけども、私たちは決して厳粛な式をやり
たくないと言ってるわけではなくて、私たちは自主的な厳粛な式というのを求
めているわけで、感動的な式っていうのをやりたいんです。で、感動的な式っ
ていうのをやることは、すなわち厳粛になるんです。と、私は思っています。
なので、私たちが自主的に感動的な式を作ろうと思っているこの「記念祭」で、
厳粛にきっと私はなると思います。なので、校長先生が厳粛な式をやりたいと
おっしゃいましたが、その厳粛な式っていうのは、私たちが考えている「記念
祭」でもきっとできると思います。以上です。
生徒3男: 校長先生は学習指導要領を言ってるんですけども、文部省側は学習指導
要領は出しているけれども、それを行なうか行なわないかは各学校に任せると
いうふうに言っている。だから今、所沢高校で自主的に「記念祭」っていうの
を考えてやろうとしていることについて、それで先生がこの学習指導要領の目
的に従わないようなことをすることについて、ちょっと僕はどうかと思います。
生徒3男: 校長先生がはじめに述べた意見についてなんですが、日の丸・君が代な
どをやって、のちのち社会に役立つとかおっしゃいましたが、それに対してま
たあくまでやるのが前提とおっしゃいましたが、のちのち社会に役立つとは思
えません。
今求められているのは、やっぱりそういった前提を受け入れる態度ではなく
て、そういったことに問題点を見出して、そこから新しい何かを創造していく
力だと思います。それで僕らが新しい形態としての「卒業記念祭」というのを
作ったわけですけれども、それでまた社会一般から言えば、所沢高校というの
は特異な存在だと思います。それで、自分が教育一般についてどうのこうの言
うのは気が引けるが、そういう教育の立場でそういった特異な存在というのを
排除していく態度っていうのは、排除されたものはグレちゃったり、そういう
ことがあると思うんで、そういった特異な存在を認めていく態度というのも欲
しいと思います。
それで具体的に言えば、僕からみれば、校長先生は「記念祭」をつぶして、
校長先生言うところの厳粛な卒業式というのをやりたいとおっしゃっているよ
うにしか思えません。ですから、もし本気で「記念祭」をつぶそうと考えてい
らっしゃるのなら、僕たちは全力でその行動を阻止したいと思います。
生徒3男: さきほど、このままでは「記念祭」も卒業式もだめになってしまうので
はないかという意見が出て、ある程度譲歩したほうがいいんじゃないかという
意見があったが、よく考えて下さい。卒業式についてなんですけど、去年の卒
業式+門出式、みなさん覚えてますか。一年生はわからないと思うんですけど、
去年の形態と今年の「記念祭」+卒業式という形態は、全く違うものになって
きます。去年の卒業式+門出式っていうのは、職員会議で承認されて、先生た
ちと僕たちで一緒に作ってったものです。でも、今年の卒業式+「記念祭」っ
てものは、僕たちが各ホームルームを通して、その後に生徒総会を通して、み
んなで作りあげてきたもの、それに校長先生が、僕たちが先生方と作りあげて
きたものではない卒業式、先生の言う厳粛な卒業式ですね、それを付け加えよ
うとしているだけのことなんですね。
ですから、そこには卒業式ってのは何なのか、先生たちと僕たちが作ってき
たものに、わざわざ校長先生がくっつけたい卒業式ってのは、つまり日の丸・
君が代をやって厳粛な式という言葉で言ってますけども、つまり先生がやりた
いことは、そういうとこに持ってかれちゃうわけですね。ってことは、僕たち
が作ってきた「記念祭」というものがほとんど意味を為さないんですね。入学
式の時点で、あれだけの混乱を招いて、それだから新しく「記念祭」という形
を作って混乱を招かないようにしようと僕たちがやってきた「記念祭」が、全
く意味のないものになってしまって、そこに卒業式をつけ加えることは僕たち
がやってきたことを全く否定することになってしまうんです。ですから、校長
先生が一人でそういうことをやろうとしていることに対して、僕たちは正しい
方法で、ホームルーム委員会を通して、生徒総会を通して、先生にちゃんと自
分たちの意見を表明できるシステムがあるこの所高で、ちゃんとした手順にのっ
とってやってきたにもかかわらず、先生は終業式に突然「私は卒業式をやりま
す」と。その卒業式はどういうものなのかっていったら、厳粛な式で、日の丸・
君が代をやるんではないかと。それはあまりにもひどいと思いませんか。
そこに譲歩する余地があるか。これはあくまで僕の意見になってしまいます
けど、極端だって考える人もいるかも知れませんが、校長先生は卒業式+「記
念祭」なんだからいいじゃないかと言う人もいますが、これは譲歩でもなんで
もなくて、僕たちが作りあげてきたものに勝手に押し込んでるだけなんですね。
だから僕たちがしっかりした態度で臨んでいかないと、結局このままさっき言っ
た人みたいに、このままどっちかを無視する形になっちゃうんじゃないかって。
無視した形っていうのは、結局校長先生の言ってる卒業式ができてしまう形な
んですよ。その形に持ってってしまっては、僕たちがやってきたことが水の泡
です。しかも所高のシステム自体が崩壊してしまいます。自治とか自由とか、
今まで先輩たちがずぅっと培ってきたものが全部なくなっちゃうんですね。だ
から、これから僕たちがやらなくちゃいけないことは、特に3年生はいろいろ
忙しいかも知れませんけど、この問題に対して真剣に取り組んで行かなきゃい
けないんじゃないかと思います。(拍手)
司会: この時間で、質問や意見を言う方の並ぶ方はしめ切りたいと思います。
生徒1男: 校長先生は、校長先生のおっしゃる卒業式にしても、僕ら生徒の言って
いる「記念祭」にしても、いったい何のために、誰のためにやるものだとお考
えですか。
校長: 卒業式は卒業生ですよね。卒業生のために学校行事として行なうわけです。
生徒1男: 僕らも同じ考えで「記念祭」を進めているわけですが、校長先生のおっ
しゃるとおりの卒業式はやらないつもりですが、卒業式にしても「記念祭」に
しても、やるのは3年生のためだと僕も思います。でしたら、やっぱり3年生
のためにやるのなら、学習指導要領よりも、校長先生がさっきおっしゃった厳
粛で清新な式を行なわせたいという校長先生の意志よりも、やっぱり一番大切
なのは3年生の気持ちだと思うんですけど、そうは思いませんか。
校長: 卒業式を行なってね、3年生のためでもいいし、他の生徒のためでもあるわ
けですけれども、そのために卒業式をやるわけですよ、きちっと。ということ
です。書いてあるからやるってこともありますけどね。なぜ学習指導要領にこ
うするものとすると書いてあるかっていうと、それは卒業生が、在校生も含め
てね、そういう経験をして社会に出ていってもらいたい、そういう願いもこめ
て、そういう学習指導要領などで決められているわけです。だから学習指導要
領で決められているからやるとか、生徒のことを思っていないんじゃないかと
か、それ別々に考えてますけど、同じことなんですよ。生徒のために学習指導
要領があって、それで学習指導要領に則って卒業式をきちっとやると、こうい
うことなんです。
生徒1男: 学習指導要領が卒業生のためにもなるとおっしゃいましたが、でもそれ
が卒業生の果たして本当にためになるのかならないのかを考えるのは、校長先
生ではなくてやっぱり卒業していく側が感じることだと思うんで、学習指導要
領にそって卒業式をやることが本当に卒業生のためになるのかならないのかを
考えるのも、卒業生の意志が大切なんじゃないかと思いませんか。
校長: 3年生のですね、生徒諸君の考えというのはですね、いろんな機会に聞かな
きゃいけないわけですけれども、我々教員はですね、生徒を指導していくと、
いろんなことを教えていくという立場にあるわけですから、それのもとであり
ますからね。それに則って私たちは指導していかなきゃならないわけです。又
そうあるべきなんです。だから決められてるわけです。
生徒1男: 卒業生の意志を裏切ってでもですか。
校長: マイクがね、最初に比べて小さくなってますね。後ろの方、聞こえないかな。
途中でいじったような感じですね。大きい声にならない。放送室、見てきて下
さい。
生徒1男: ですから、校長先生の言った学習指導要領に沿うべきだというのは、卒
業生の意志を裏切ってでもそうするべきだと考えているんですか。
校長: 裏切るって言葉がね、適当な言葉かどうかわかりませんけれども、私たちは
ですね、そういうような指導を生徒にしてかなきゃならない立場にあるわけで
す。ですから、こういうような機会を含めてですね、私は話をしますし、先生
方もそういうものであると、学習指導要領に則って高校教育は行なわれるもの
であるんだということで、生徒に話をしていかなければならないわけです。そ
ういう立場にあるわけです。
生徒1男: じゃあ最後に意見だけ。僕は卒業していくのは3年生だから、卒業とい
う行事をどんな形態にしていくかっていうのを選択するのは3年生だと思うし、
学習指導要領に沿うことがそんなに大切だとは思わないので、生徒総会で3年
生のいる中で決まった卒業式をやらずに「記念祭」をやるっていのが一番いい
ことだと思うし、生徒がそうBestだと決めたことに対し、校長先生が生徒の意
見を尊重せずに学習指導要領に沿うということだけで決めるというのは矛盾し
ていると思います。
生徒1男: 校長先生は、人間が自ら決めた法律に従うことは自由と平等を奪われる
ことにはならない、つまり法律に則ってさえいれば、自由を奪うことにはなら
ないという意見でした。それを日本は法治国家だからという理由で述べました
が、法治国家っていうのは法が私たちの権利を守るためにあるという考えで、
つまり法律が私たちの自由や権利を奪うものでないかどうかというのは、たえ
ず目を光らせていないといけない。つまり法律が私たちの自由や権利を奪うも
のであれば、私たちはそれに従わなくてもいいという考え方なんですよ。
で、私たちの中の大勢が学習指導要領、「日の君」の強制を私たちの権利を
奪うものとして、私たちの中の大勢の人がとらえているんです。で、それに対
して、ただ法で決まっているからという理由だけで反対するのは、あまりにも
おかしいと思うんですけど、どうでしょうか?
校長: 法律っていうのはね、何々しちゃいけない、何々しちゃいけないっていうん
じゃなくてね、今言ったように私たちを守るために法律ってのはあるっていう
ふうに私も思いますよ。ですから、今回のこういう話し合いの中で出てきてい
る学習指導要領についてもですね、みなさんを守るっていうことでできている
わけですから、そういうふうに考えます。で、法治国家であるということで、
君の意見を今うかがいましたけれども、やはり法治国家であればですよ、法治
国家であれば法律を守らないっていう場合には、やはりまずいわけですよね。
だからその法律が国民を守っていないということになれば、その法律を変え
ていくっていうことになるわけですよね。そのもとが憲法なわけでしょうけれ
ども。憲法に則っていろんな法律、条例等ができてるわけで、それが憲法に従っ
ていない、違反しているということであれば、そういう法律はなくなっている
わけでしてね。現存している法律は、それはそれなりの働きをしていると、こ
ういうふうに私は考えます。それからもう一つ、君は「日の君」と言いました
よね。「日の君」というのは何のことですか。
生徒1男: 君が代の斉唱、日の丸の掲揚の強制です。
校長: そのことを「日の君」と言うんですか?
生徒1男: すいません。略しました。
校長: やっぱり、日の丸・君が代は日本の国旗・国歌なんですからね。「日の君」
なんていうそういう言い方は、私はやるべきでないとこういうふうに考えます。
生徒1男: 校長先生は、学習指導要領は私たちの権利を奪うものではないという考
えだと言いましたけど、校長先生一人の考えです。私たちの多くは、いやそう
ではなくて学習指導要領は私たちの権利を奪うものだという考えなんです。そ
れは同じ「考え」として、すべての「考え」が尊重されるべきであって、校長
先生一人が決めることではないと思います。
生徒3男: 最近僕はニュースで、型にはまった人間が多くなって、自分では考えら
れない人間が多くなっているっていう記事を見ました。それで型にはまってい
る人間っていうのは、やっぱり型にはまっていることを押しつけられてきた人
間が型にはまってきたんだと思います。そういう頭の固い人間ばっかりだと、
たぶんこの日本は滅びると思います。それで、僕はやっぱりそういう型にはまっ
た人間にはなりたくないと思ってこの学校に来たわけで、ま、こういう格好を
してたりするわけなんですけれども、先生はそういう型にはまった人間をたく
さん日本のこれからの社会に送り込みたいんですか? そのへんをちょっと聞
きたいです。
校長: 入学式や卒業式でね、国旗・国歌を実施し、その場にいたからといって型に
はまった人間ができあがるとは、私は思っておりません。広く社会に飛び立っ
て活躍している所高生がたくさんいるわけですけれども、
〔テープ入れ替え〕……になるというようなことではないんです。これはね、
社会生活をしていく中で、……
司会: 校長先生、もう少し手短かにお願いします。
校長: ちょっと待って下さい。大事なとこだから。社会生活をしていく中でね、基
本的なことなんですよ。さっき、あるいは始業式でいったようにマナーなんで
す。これは人とつき合っていく、外国の人とつき合っていく、〔約20秒間、
未録音〕……していく21世紀の君たちの時代にですね、やっぱりそういうも
のは必要であるということなんですよ。型にはまる人間ていうのは、またそれ
は別問題。これを実施して型にはまった人間ができあがるとは、私は考えてお
りません。
生徒3男: 校長先生は、儀式だからやるとか、何とかだからやるっていうふうに言っ
てるんですけれども、その「何とかだからやる」っていうのが、それがもうす
でに型にはまってるんですよ。そういう「何とかだからやる」っていうのを、
「なんでやらなくっちゃいけないんだ」ってところをまず考えないと。そうい
うところから自由な発想というのが生まれてくるんだと僕は考えてます。どう
ですか。(拍手)
校長: 自由な発想、そりゃ大いに結構だと思います。だけどね、みなさんの年代ぐ
らいまではですね。やはり厳粛な卒業式を体験してね、社会に出ていってもらっ
て、その後またよく考えてもらえばいいことなんでありまして、だから小中高
ではやはり基本っていいますかね、基礎っていいますか、そういうものをみな
さんに教育していくことになっているわけなんです。
生徒3男: ですから、別に厳粛なのを受けなくても、世の中すごい世界の分野で活
躍している人とかいると思うんですよ。さっき先生が厳粛なのを受けたからと
いって、世界で活躍してないわけではないとか、そういうことを言ったんです
けれども、別にただ厳粛な式を受けなくても世界の分野で活躍している人とか
はたくさんいるわけで、そういう、まず自由な発想をつぶしてることなんじゃ
ないですか、先生が。そういう押しつけていることは。その自由な発想をつぶ
してしまえば、もうほんとに固い役人ばっかりでどうしようもない事態がおき
ると思いますけれども。以上です。(拍手)
校長: これも終業式の時に話しましたけどね。数学や国語の時間を何時間どういう
ふうにやるかというようなことがね、学習指導要領に決められているわけです
よ。別に国旗・国歌のことだけ学習指導要領に書いてあるわけじゃないんです。
で、毎日の高校生活っていうのは、その基本になっているのは学習指導要領の
中にある授業のこととか、生徒会活動とか部活動とか、いろんなことが書いて
あるわけです。それに則って、いろんな学校で教育活動が営まれているわけな
んです。
生徒1男: 校長先生、これからの質問は簡単なので、「はい」か「いいえ」で答え
て下さい。校長先生は、この日本という国の憲法で民主主義が保障されている
のをもちろんご存じですよね。
校長: はい。
生徒1男: もちろん、憲法は守るべきですよね。
校長: はい。
生徒1男: で、国会で決まったことを総理大臣などがくつがえさないのは、民主主
義に則っているからですよね。
校長: それはむずかしい質問です。むずかしい質問ですから、すぐには答えられま
せん。
生徒1男: それでは、所高の議決機関である総会と職員会議で決まった「記念祭」
というものを校長がくつがえすということを間違っているとは思いませんか。
校長: それについては、さっきいつか質問がありましたけども、あるいはさっき答
えましたけども、「記念祭」……
生徒1男: 「はい」か「いいえ」で答えて下さい。お願いします。
校長: それはちょっと君、おかしいんじゃないか。むずかしい質問を、「はい」
「いいえ」だけで答える……。私なりにちゃんと答えますよ、議長さんどうで
すか。
司会: では、かなり手短かにお願いします。
校長: 「記念祭」についてですね、やめてくださいなんて、私一切言ってませんよ。
生徒1男: あの「記念祭」というのは、卒業式をなくしてそれの代わりとして「記
念祭」を行なうということで、卒業式を出してくるというのは、決まったこと
をくつがえすということになるのだと思います。
校長: それは今日も最初に言いました。「記念祭」を卒業式に変えることはできな
いんですよ。なぜかって言うと、卒業証書授与式、卒業証書授与がないんです。
それを卒業式というふうに私は考えているんです。卒業式を「記念祭」、卒業
式と門出式ですか、それを「記念祭」に置き換えることはできないんです。イ
コールじゃない。なぜかっていうと、卒業証書授与がないんですよ。それを
「記念祭」の前にやりたいっていうんです。やらなきゃならない。こういうこ
となんです。
生徒1男: ありがとうございました。
生徒3女: 私は意見だけ言わせてもらいます。私は中学生のころ、所高の卒業式が
他の学校では味わえない卒業式だと聞いて、すごくそれに憧れて所高に行って
みたいという思いを強くしました。今まで二年間、その卒業式に出席しました
が、その内容は厳粛ではなかったかも知れないけど、私の期待通りでとても素
晴らしいものでした。だから本当は、今まで通りの式を望んでいます。でもそ
れでは混乱するので、今の形になったんだと思います。この式は従来の式とは
違いますが、でも今度は私たち自身で作りあげた、より素晴らしい式になると
思います。だから、それを壊したり、傷つけたりするようなことはしないで下
さい。おわります。
司会: もういませんね。では次に行きたいと思います。では今日の話し合いの中の
話を通して、校長先生の考えをもう一度述べてもらいたいと思います。校長先
生、お願いします。
■ 校長、生徒のまとめの意見
校長: 時間もだいぶ押してるわけですが、私に質問するということであるから、私
の考えと同じだという生徒諸君も「FREE」とかなんか見ますとね、いると
思うんですけれども、そういうような人たちの意見っていうか、全然出ないで、
私に対してだけの質問できたわけですけれど、所高の自由っていうのを考える
とですね、やっぱりそういうような意見ももしあるんだったらね、こういうと
ころで出してもらいたいなあと私は思います。じゃあ、まとめて3分というよ
うな約束ですので、おさめたいと思います。
卒業式を法令等に則り国旗・国歌を実施し、それを体験することは、所沢高
校の生徒にとって私は意義があることだと思います。これからの21世紀の国際
社会で活躍する日本人として身に付けなければならない大切な基礎・基本だと
思います。自分の国を誇りに思い、相手の国に対して敬意を払うこと、これは
当然なことであると思います。これらのマナーを身に付けるのは学校の教育活
動の中で、特にこういう卒業式や入学式などでマナーを身に付けることは必要
であります。
さて、人間が自由であることと、社会のルールを守るということは、私は両
立することであり、これが民主主義であるというふうにも思います。社会のルー
ルは守られなければならない。ルールからはずれたものは、私は正さなければ
ならない。しかしこれで自由が奪われるとは言えない。法令に則って卒業式を
やっても、所高の自由、生徒の自主性がなくなったわけではない。これからは、
こういうような将来に向かってですね、所高の自由も伝統として引き継がれて
いくことだと思います。
最初に厳粛な卒業式、そのあと「記念祭」を行ない、卒業式で卒業証書を授
与し、それをもらった喜びを感じながら第二部、後の方の違った雰囲気の中で
「祝う会」「記念祭」を行なえば、卒業の喜びもひとしおであると私は思いま
す。以上。
司会: ありがとうございました。では、生徒の方からの考えをお願いします。
生徒: 長くなっているので、手短かにまとめて言います。まずはっきりさせておく
ことを一つ言います。「記念祭」は、従来の卒業式と門出式を今まで合わせて
いたのを、その二つの代わりとして作られたものです。ですから絶対に、校長
先生のおっしゃる卒業式と並行させて行なうことは、絶対に不可能なことです。
さらに言うまでもなく、そのことによって生徒の意志である「記念祭」をつぶ
すことは、学校の生徒、先生をまとめる校長先生としては、絶対にしてはいけ
ないことだと思います。
今日のこの会で、私がすごいなと思ったので、そのことだけまとめて言いま
す。今日の会でみんなすごく意見言ってくれたし、いいこととか言ってる人た
くさんいて、ワタシ的に感動しました。それに校長先生もこういう会を開いて
くれて、よい話し合いになったと思います。で、私たちは今までこの「記念祭」
というものを何もない状態で、ゼロの段階で、まず卒業式をやるかやらないか
から話し合って、みんな生徒にプリントを配ったりして、みんなで話し合って
きて、一から決めてきました。こういう新しいことを試みるっていうことは、
今いろいろな高校でもないことだと思うし、すごく私たちが自信を持っていい
ことだと思います。所高生は、確かに普段だらしないところとかもあるけれど、
今日みたいな場でこんなにみんなが意見を言って、校長先生に私たちの考えを
伝えられたことは、すごいことだと思います。私たちは、校長先生にいろいろ
なことを言われて押されている部分もあるように思いますが、私たちがやって
いることは決して間違っていることではありません。みんながこういう気持ち
で最後の「記念祭」に臨めば、必ず私たちの手で成功させることができると思
います。この会で私たちの考えが、みんなの考えがよけい強く固まったように、
私には思えました。私たちのこの気持ちを、最後まで貫き通して「記念祭」を
みんなの手で成功させていきましょう。終わります。
生徒:(おわりの言葉)今日の会を通して、一つ思ったことを言おうと思います。こ
の問題は、みんなが生徒総会で決めて、みんなでこれから作っていこうとして
いるから話し合っていることなのに、みんながそういう態度だったら校長先生
にわかってもらおうと思っても、何も伝わらないと思いました。だから、これ
からまだわからないこととか、言いたいことがある人は、四者会議にどんどん
傍聴人として来て、どんどん話し合っていきましょう。おわりにします。お疲
れさまでした。
Web管理者記:
この700行を超える資料をお読みいただきありがとうございました。
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