142回-参-予算委員会-14号

教育関係

1998年4月1日(水)



             《省略》 ○小山孝雄君 関連質疑をお許しいただきましてありがとうございます。同じく自由    民主党の小山孝雄でございます。     私は、文教関係、教育問題に関しまして質疑をさせていただきます。     今まさに、少年たちの反乱とでも言うべき現象が全国各地に起こっていると    ころでございます。深く憂慮にたえない次第でございます。     私は、きょうは学校の現場がどうなっているかということを、公立中学校の    現場で教鞭をとっておられる先生に、この場に参考人として、委員長を初め、    理事、委員の皆さんのお許しをいただいて来ていただきまして、いろいろお話    を伺いたい。そこからまず質疑へ入りたいと思います。どうぞ閣僚の皆様も委    員の皆様も、学校現場が今どうなっているかということをお聞きいただきたい    と思います。     おいでをいただきましたのは、広島県福山市立加茂中学校で社会科の先生を    していらっしゃる佐藤泰典さんでございます。     福山市は、人口三十七万人、公立小学校が六十三、中学校が二十七校ある、    極めて平均的な地方の中堅都市、こう言えると思います。     橋本総理は剣道教士五段でありますが、佐藤教諭は柔道三段でございます。    課外活動では柔道部の顧問として大変熱心に指導もしておられまして、かつて    は御指導なさった中学校が全国大会にも出場したことがあるという熱心な熱血    先生でございます。さらにまた、生徒だけに規則を押しつけてはいけないとい    うことでみずから坊主頭で教壇に立っておられる、こういう方でございます。    生活指導の面においても大変精力的に取り組んでおられるということでありま    す。     参考人にお尋ねをいたします。     今、中学校の数は全国で国公私立合わせまして一万一千二百七十五校、生徒    数は約四百四十八万、教員数は二十七万数千。この中で、総務庁長官もおいで    でございますが、直近の青少年白書では、校内暴力は全国で一千八百六十二校、    件数にして八千百六十九件、約二割の中学校でいわゆる校内暴力という事件が    表面化し、前年度に比較して四割近く増加している、こういう統計もあるわけ    でございます。こうした統計数字について、現場の教師としてどんなふうに受    けとめられますか。まずお答えを願います。 ○参考人(佐藤泰典君) お答えをさせていただく前に、参議院予算委員会の先生方、    本日はこうした機会を与えていただきまして大変ありがとうございます。ふな    れですので至らない点もあるかと存じます。しかし、公務員として公正中立な    立場で事実のみを伝えさせていただきたいと思います。     さて、御質問の件ですが、今御発表のデータには、基本的に教育委員会に報    告された数字が載っていると思われます。教育委員会に報告される校内暴力は    かなり深刻なケースです。つまり、校内暴力が発生している中学校は基本的に    荒れた学校と見ていいかと思います。ですから、全国的に見ても全体の二割が    荒れた学校ということをこの数字は示していると思われます。     これは私の住む福山市にもそのまま当てはまります。福山市には公立中学校    が二十七校ありますが、程度の差はあれ、そのうち五、六校、つまり二割の中    学校は現在荒れています。 ○小山孝雄君 福山市でも全体の二割、これは全国統計と大体合っているというわけ    でございます。     では、荒れているというのは、荒れた学校というのはどういう状態を指すん    でしょうか、参考人にひとつ具体的にお話をいただきたいと思います。 ○参考人(佐藤泰典君) 十二年間にわたる私の教員体験から申し上げますと、学校    の荒れぐあいにはおおよそ五段階あるかと思われます。     第一段階は、教室にあめやガムなどのごみが目につくようになり、机や壁へ    の落書きが始まります。また、生徒がつばを廊下や階段に吐くようになります。    どこの学校もそうでしょうが、調子が悪い、先生、熱をはかってくると言って    授業を受けず保健室へ行く生徒がふえています。トイレへ行くと言って授業中    に出ていき、そのまま教室に帰らないという状況もたびたび起こっています。    荒れていない中学校でもほとんどがこの段階にあります。     第二段階になりますと、先生の注意に対して、うるさいんじゃとか殺したろ    かといった暴言を吐くようになります。言うことを聞かなくなり、授業がしづ    らくなります。また、トイレにたばこの吸い殻が見られるようになります。     第三段階になりますと、スイッチが壊されたり、トイレのドアがけ破られた    り、窓ガラスをほうきで割ったりなど、器物破損が人の見えないところで行わ    れるようになります。また、授業に出てこない生徒集団があらわれてきます。     第四段階になりますと、生徒を少し注意しただけで暴れるということが頻繁    に起こるようになってきます。トイレが壊され、使えなくなります。この段階    では、生徒の喫煙も日常化しています。たばこも、最初は教師の見えないとこ    ろ、つまり校舎の陰とかトイレの中で隠れて吸っていますが、だんだんエスカ    レートして、教師の前で平気で吸ったりします。この段階以降を基本的に荒れ    た学校と私たちは認識をしております。     最後の第五段階になりますと、教員が暴力を振るわれるというケースが出て    きます。ある教師が、授業中なのに校庭でたむろし、たばこを吸っている生徒    たちを注意します。すると、その生徒たちが逆上して職員室に押しかけてきて、    先公出てこいやと大声を上げて暴れるといった事態も生じています。廊下に設    置してある消火器を教室や廊下にばらまくなど、学校の機能も麻痺状態になり    ます。 ○小山孝雄君 荒れていく模様が非常にリアルに伝わってまいるわけでございますけ    れども、続いて参考人にお尋ねしますが、そういう悪さをしたりあるいは暴力    を振るう生徒を先生が制止するということは難しいんでしょうか。どうですか。 ○参考人(佐藤泰典君) 毅然と注意する先生もいるんですが、注意をすると生徒た    ちはますます逆上して、殴られたりします。教員の側は、そういう状況でも生    徒に手を出すわけにはいきません。手を出したら、その状況がどうであろうと    マスコミに非難され、教育委員会に処分されるおそれがあります。     ですから、十人ぐらいで生徒が暴れて向かってくると、教員は殴られるまま    で抵抗することもできません。しかも、けがをしても、職員会議で教員の中か    ら、注意の仕方が悪かったからかえって怒らせてしまったんだろうとか、生徒    の心を理解できなかったことが問題なんだ、被害届を出すことは教育の敗北だ    ということが延々と話し合われまして、注意した教員が悪いということになり    ます。警察に被害届を出すことはまずありません。 ○小山孝雄君 三月二十四日に、文部省の児童生徒の問題行動等に関する調査研究協    力者会議というところから「学校の「抱え込み」から開かれた「連携」へ」と    題した報告書が提出されました。その中に、教員の正当防衛ということが明記    されたとマスコミは大きく報じたわけでありますけれども、今お話を承ってお    りますと、なるほどと、こういう気がするわけでございます。     参考人は、お聞きしますと柔道三段ということでありますけれども、そんな    猛者的な先生にも生徒たちは暴力を振るうことはありますか。 ○参考人(佐藤泰典君) 暴力を振るわれたこともございます。     一年生の入学式後のホームルーム中、近くで上級生が騒いでいたので、自分    の教室に帰りなさいと注意したわけです。そうしたらその生徒たちが私の教室    に押しかけてきて、佐藤出てこいや、偉そうなことを言うな、やってやろうか    とどなってきました。廊下に出たところ、生徒たちが私を取り囲んで殴ったり    けったりしてくるわけです。彼らは教員の私が手を出せないことをよく知って    いますから、まさにやりたい放題です。結局、私は逃げるしかありませんでし    た。     もし手を出していたら教員を続けることはできなかったと思います。しかし、    逃げることで教員としての権威は台なしです。荒れた生徒たちはますます増長    し、入学したての一年生は教師に失望し、以後相談に来なくなり、一層生徒指    導は難しくなりました。暴力を振るったぐらいでは学校が生徒を処分するとい    うことはとてもできません。 (9/48) 次の分割内容へ ○小山孝雄君 大変な状態を今聞かせていただいたわけであります。     結局は、教員というのは生徒から何をされても手は出せないし、逃げるわけ    にもいかない。しかし逃げるしかない。処分もできない。逃げたときには荒れ    た生徒は増長し、一般の生徒は失望した中でさらにそれに巻き込まれていくと    いう悪循環が繰り返されるわけであります。     そのことを今聞かせてもらったわけですが、一月二十八日、岩崎委員長の地    元でもございます栃木県の黒磯市での女性教諭刺殺事件というショッキングな    事件も、そういう状況の中で起こったのかなということを今想起するわけでご    ざいます。     ところで、あの事件以来、特にナイフというものに世間の注目が集まってお    りますが、参考人は、ナイフを持っている生徒を指導したり、あるいは持ち物    検査などはどのようになさっておられるんでしょうか。聞かせていただけます    か。 ○参考人(佐藤泰典君) 実際、学校でナイフで人をおどかした生徒がおり、指導し    たことがあります。相当数の生徒が持っているおそれがあります。しかし、持    ち物検査をしていないので実際の正確な数字はわかりません。     持ち物検査ですが、検査をするためにはまず校長の許可が必要ですが、なか    なかゴーサインが出ません。校長が許可をしても職員会議で諮ることになり、    生徒を疑うことになるとか生徒の思いや背景を理解するべきだといった意見が    出て、なかなか合意できません。もし職員会議で合意できても、クラスの全員    にまず持ち物検査をすることを十分納得してもらわないといけません。そうし    ないと、保護者からプライバシーの侵害だと批判されますし、生徒も応じてく    れないからです。しかし、ちょっと注意したぐらいで突っかかってくる生徒た    ちがおとなしく検査に応じてくれるわけがありません。結局、持ち物検査はで    きないということになります。 ○小山孝雄君 持ち物検査については文部省もいろいろと教育委員会を通じてという    ことで方針を出したりいたしておりますけれども、現状というのはかくのごと    しであるということを今聞かせていただいたわけであります。この後、所感を    聞かせていただきますが、参考人の意見をさらに続けて聞かせていただきます。     どんなことがあっても先生は逃げるしかない、目の前でナイフを見せられれ    ばともかく、持っているかもしれないと思っても検査することはできない。こ    んな状態の中で、そうした荒れ放題の中で授業というのは一体どんなふうな状    況でしょうか。 ○参考人(佐藤泰典君) 率直に申し上げまして、授業にはなりません。     どんな状況かといいますと、始業のチャイムが鳴って教員が教室に行ったと    き、生徒はほとんど席に着いておりません。その生徒たちを教室に入れて席に    着かせるのに五分から十分ぐらいかかります。やっとの思いで授業を始めても、    教室の窓から抜け出たり、もっとひどいときは廊下を自転車で二人乗りをして    イエーイと声を上げながら手を振って他の先生や生徒をからかっているという    状態です。教室に残った生徒も後ろの方でボール遊びをしたり机の上に足を上    げて漫画を読んでいます。     それでは先生はというと、生徒たちに背中を向け黒板に黙々と字を書いてい    るという状態です。何名かの生徒が黒板の近くに行って字を写しています。し    かし、こうしたまじめな生徒たちも言いがかりをつけられて校舎の裏や屋上に    呼び出されて殴られたり、お金を取られたり、いじめられたりします。全国で    いじめ自殺が相次いでいますが、その背景にはこういう荒れた学校の状況があ    ります。 ○小山孝雄君 本当にぞっとする思いがするわけでございます。     総理、そして文部大臣、また閣僚の皆さん、これは決して福山の特殊事情で    はないです。総理のすぐ近くで商売をやっていらっしゃる方がついこの前ある    方の紹介で見えられまして、中学校の生徒を持っている親御さんでございまし    たが、自分も学校を視察に行きました、そうしたら本当にそんな状況、今お話    しいただいたのと全く同じ状況があります、どうかこの現状を政治に携わる皆    さんは御理解くださいということを訴えておられました。     そしてまた、これはもう十年も前に出た本ですけれども、埼玉県の中学校の    教師の皆さんが編集した「子どもが変だ!」という現場からの訴えが、今と全    く同じような状況がたくさん出ております。「別冊 宝島」という子供たちに    も非常に人気のある雑誌だそうでございますが、そんな光景がこの中にもたく    さん書かれているわけでございます。     こうした荒れた学校の状態に対して、教員側はまさに手も足も出ないままと    いうことなんでしょうか。佐藤参考人にお聞かせいただきたいと思います。 ○参考人(佐藤泰典君) 全くないというわけではありません。大多数の教員は生徒    たちを何とかしたいと思って懸命に指導に当たっています。現に荒れた学校と    荒れない学校があります。また、荒れた学校の中にもきちんとしたクラス、ク    ラブもあるわけです。     では、荒れる荒れないはどこからくるかといえば、やはり教員の指導力にか    かっているのではないかと思います。     この指導力について、ベテランの先生の話を紹介したいと思います。     万引きの常習犯で月のうち一度は万引きをするという生徒がおりました。こ    の生徒がお店で捕まりました。親に連絡するから電話番号を言いなさいと言わ    れて、その生徒は親ではなくてその先輩教師の電話番号を言いました。電話連    絡を受けた先生が飛んでいくと、お店の人から延々と怒られました。おまえは    一体どんな教育をしているんだから始まって、ばり雑言を浴びせられ、その間    その先生はひたすら頭を下げ続けました。一時間余り怒られ続けて、やっとの    こと解放してもらいました。お店から出たとき、その男子生徒が、先生、何で    自分は担任で親じゃないと言わんかったん、そしたらそんなに言われんかった    のにとぽつんと言いました。それに対してその先生は、ばかじゃのう、学校じゃ    わしが担任じゃないかと言うと、その生徒は黙ったまま涙ぐんでいました。以    後、万引きは一度もなくなりました。     単に口先だけで注意しても生徒は変わりません。真心で生徒にぶつかってい    くと生徒の心が動くと思います。教師の中に信念がないと、たばこや暴力、い    じめの問題は解決できないと思っております。 ○小山孝雄君 ことしはマハトマ・ガンジーの没後五十年だということでありますが、    マハトマ・ガンジーが二十一世紀の先進国の模様を七つの項目に分けて描いた    言葉があります。その中の一つの、人格なき教育が行われるようになる、こう    いう言葉を今思い起こすのでありますが、まさに今のお話は、教師の人格と生    徒の人格がかちかちとぶつかり合って、そして生徒の目覚めがあったというす    ばらしいお話かな、こう思ったわけであります。     参考人御自身も随分御苦労なされて荒れた学校を体当たりで立て直されたと    いう御経験もおありだと、こう聞いておりますが、御紹介いただけますか。 (10/48) 次の分割内容へ ○参考人(佐藤泰典君) 私が立て直したというよりも、同僚の先生や保護者の皆さ    んの協力で立ち直ったということです。     荒れた生徒たちに共通していることは、学校にも家庭にも自分の居場所がな    いということです。自分は要らない人間なんだと思い込んでしまい、何とか学    校やクラスメートに自分たちの存在意義を示そうとしてわざとたばこを吸った    り威張って暴力を振るっているというわけです。     実はこうした生徒たちというのは、ある意味ですごいパワーがあり、影響力    を持っています。そこで、これらの生徒たちにエネルギーの別の使い方を指導    すればいいわけです。例えば体育大会のときに応援団のリーダーを任せたりす    るとうまくいくことが多いです。生徒たちも、自分で応援団をまとめ、チーム    を勝利に導く体験を持つと、自己実現、達成感を持つし、何よりも今までの疎    外感が吹き飛んでしまいます。そうした生徒たちが変わると、影響力のある生    徒たちばかりですから、学校の雰囲気も一変し、以後よい方向に進んでいきま    した。     また、私は柔道部の顧問をしていて、チームが県大会で優勝したり全国大会    に出場したりしたこともありますが、指導に際しては勝ち負けだけにこだわら    ないようにしています。社会のためになる人になってほしいとの願いを込めて、    集団生活をしていく上での基本的なルールを教えています。具体的には、時間    を守る、あいさつをする、正しい言葉遣いをするといったことです。当然、自    分自身も生徒に要求したことは必ず守るようにしています。こういうことが生    徒との信頼関係をつくるし、クラブの士気も高まるということになります。     実は、時間を守ることができない、つまり遅刻やチャイムが鳴っても席に着    かないといったささいなことから学校は荒れ始めていきます。 ○小山孝雄君 今るる聞かせていただいたわけでございますが、まず町村文部大臣、    今の現場からの報告、どのように受けとめられ、もろもろの投げかけがあった    と思います。どうぞお答えを願いたいと思います。 ○国務大臣(町村信孝君) 今、佐藤先生でいらっしゃいましたか、貴重なまた大変    リアルな学校現場のお話を聞かせていただきました。     私も、学校現場を訪れたり、中学校の先生あるいは養護教諭、こういう方々    と話をする機会が最近多うございます。求めてそういう場でいろいろな話を伺    いました。     先般も千代田区のある中学校に行ってまいりました。そこでその荒れた姿と    いうのをいろいろ伺いました。その学校も実は数年前大変に荒れていたそうで    あります。そして、それを正常な状態に戻すのに約二年かかったと。そこでは    校長先生以下すべての教員が同じ方向を向いて一生懸命努力をする、約一年半    から二年かけて。ただ、一人でも先生が崩れるとそれはだめになると言うんで    すね。やっぱり同じ方向でみんなが努力をするということによってこの学校も    荒れた状態から回復することができた。そういう話を聞きまして、今の佐藤教    諭のお話と非常に相通ずるものがあるな、こう思いました。     例えば、持ち物検査のお話も今出ました。先般の黒磯の事件があった後、私    は全国の教育委員会の皆さん方にお集まりをいただきまして、まず命の大切さ    を再三教えてもらう。そしてそれと同時に、必要あるときには持ち物検査もお    やりください、毅然とした対応をしてください、ただ、全部やりなさいとかそ    ういうことは申し上げない、クラスにより、学校により違いがあるわけであり    ますから、そこのところは申し上げました。ただ、先ほど、そうはいっても職    員会議等々の場でそれが結局うまくいかないというのが今までの学校の確かに    常識といいましょうか、社会の常識と学校の常識が著しくかけ離れていたんだ    ろうと思います。     でありますから、私は社会の常識が学校の中にも通ずるようにしてください    ねと申し上げましたら、相当の反発が現実に文部省にもありました。でも、そ    こは今明らかに少しずつでも変わってきているのかなというふうに私は受けと    めております。少しずつ社会の常識が学校の中にも通用するように変わりつつ    ある、こう思っております。     また、協力者会議、三月の上旬におまとめをいただいたわけですが、これは    問題行動が起きたときの対応の仕方ということで、一つは学校の中に全部抱え    込まないでくれと。     さっき、そういう届けを出すことはその学校現場の敗北である、そういう教    員室でのお話があったというせりふがありましたけれども、まさにそういう雰    囲気があるんです。それは、責任感を持って学校の中でよくしたいという気持    ちは私はとうといと思います。     ただ、もうどうしようもなくなったときに、なおかつそれを抱え込むのは無    理があるということで、児童相談所とかあるいは警察等々と必要な連携を図る    こともこの際はためらうべきではないといったようなこと、あるいは先ほど殴    られるに任せたというお話もありました。これも一歩間違うと要するに体罰と    いうことで、原因のいかんを問わず体罰を起こした教師は処分されるというこ    れまでの姿がありました。     私は、もちろん学校の中で体罰を肯定するつもりはありません。ただ、もち    ろん正当防衛という言葉を使うこと自体が残念でありますが、それはそれで当    然だれしもが持っている権利としてあってもいいだろうし、要は子供と先生と    の間に本当に信頼感が少しずつでも生まれてくればそうした問題というのはな    くなってくるんだろうな、こう思っております。     いずれにいたしましても、今伺いましたそうした生々しいお話、非常に難し    い学校があることも事実でございましょう。このことをより根本的にどうやっ    ていくかというのは、結局私どもが今進めております教育改革をやっていくし    かないと思いますが、緊急対応ということで幾つか先般来私どもなりに対応を    打たせていただいた、こういうことでございます。 ○小山孝雄君 どうぞ教育改革をお進めになるその中で、今言った学校現場を直視し    て取り組んでいただきたいと強く思うわけであります。     総理、御所感を伺わせていただけますでしょうか。 (11/48) 次の分割内容へ ○国務大臣(橋本龍太郎君) 今、参考人として大変率直な話を聞かせていただきま    したことに私からも心からお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとう    ございました。     その上で、本院でも申し上げたことでございますけれども、私は自分の主義    として、五人の子供たちを、恐らく参考人は地名を御存じでありましょう、岡    山県総社市立の小学校、中学校に学ばせてまいりました。一番下の子供だけは、    私の生活が変わりまして小学校の四年から転校して東京に連れてまいりました    けれども、それぞれの子供、中には県内の中高一貫の私立を選んだ子が一人お    りますけれども、皆公立の中学、小学校をいずれも経験させております。それ    だけに、荒れてくる前兆、荒れている学校、父兄の立場から見てまいりました    それぞれの子供たちの登校当時を振り返りますと、私はそれなりに今の参考人    の御意見を事実関係として受け入れたいと思います。     その上で、最近そうした時間がとれなくなりましたけれども、もともとのボー    イスカウトであり、またスポーツ少年団の指導の一員でありました体験からは、    今のお話の中で、子供たちと地域社会とのつながり、あるいは父母の学校に対    する協力関係の中で学校外における活動への協力体制というものがどうなって    いるんだろうという感じをぬぐえませんでした。     実は、私自身そのスポーツ少年団の中で、子供が選手に選ばれる選ばれない    という親御さんのけんかを持ち込まれて、それが逆に学校にまでフィードバッ    クされるような厄介なことにもぶつかりまして、スポーツ少年団自身をどうし    たものかと悩んだこともございますけれども、おかげさまでお互いの理解が行    き届くようになりましてから、今非常にしっかりと根づいております。そして、    そうした活動があちこちで拡大していくにつれまして、私の郷里であります総    社市の場合、そうした問題はいつの間にかだんだん減っていったというのが私    の実感でありました。もちろん、それでも問題は時々起きます。     そして同時に、暴力に対して暴力で返すのではありませんが、恐らく参考人    も柔道の顧問という立場では遠慮なく生徒を鍛えておられると思います。課外    活動の中で、授業中あるいは学校内の暴力に対して無抵抗でおられる先生方が、    一たんスポーツマンとして教える立場に立ったとき本当はいかに強いか、そう    いうことを子供たちが知っているだけでも私は随分違うと思うんです。     そして、最後に御紹介のありました、先輩の教諭が、万引きの現場から親へ    の連絡ではなく先生への連絡を選び、そしてその先生が外に出てから、おれの    受け持ちじゃないかという一言を言われた。大変すばらしい話と感じました。     先日、次代を担う青少年について考える有識者会議にその日提出される資料    の一部を御報告申し上げましたが、あれを思い起こしていただきたいと思うん    です。補導の対象になる五人のうち三人までの親御さんがそれに対して感謝し    てくださるけれども、大体二人ぐらい、それがどうしたんだという答えが返っ    てくる。現場の悩みとして出されておりました。     同時に、あの日御紹介をいたしましたものの中に、非常にたくさんの事例が    集まっておりましたけれども、まさに非常に問題のある子供に全く違った切り    口から、激励の言葉というよりもよくやっているじゃないかという言葉をかけ    られたところからその子ががらりと変わったという例もございました。     今、学校だけにお任せをするのではなく、私たちも含め親、親というのを家    庭と言いかえてもいいのかもしれません、地域社会、どう手を携えていけば子    供たちの問題にこたえ得るのか。本年義務教育を終了いたしました子供を持ち、    この四月一日から高校に進む子供の親としても、今非常に真剣に聞かせていた    だいた次第です。 ○小山孝雄君 ありがとうございました。まさしくおっしゃるとおりだと思います。     きょうの朝刊に一斉に中央教育審議会の中間答申が出ております。その中に    も、家庭のしつけの基本を改めて提示したということで、幼児には親が本を読    んで聞かせよとか、子供にも家事を分担させよ、朝のおはようから始めて礼儀    を身につけさせよ、物の買い与え過ぎを控え子供に我慢を覚えさせよ、子供部    屋を閉ざすなとかいった、こんなことが果たして中教審の中に盛り込まれなけ    ればいけないものなのかなと思うことがたくさん満載された答申が出されたわ    けでございます。     今、この教育現場のすさまじさを見ましたときに、決してこれは、学校が悪    い、教師が悪いあるいは家庭が悪い、世の中が悪いあるいは政治が悪いという    言がかつてはあったやに記憶いたしておりますが、そのようなことで解決でき    る日本国の教育の現状ではないと強く思うわけでありまして、本当にみんなで    立て直しを図っていかなきゃいけない、教育の立て直しがなければ経済の立て    直しもない、私はそんなふうに強く感ずるわけであります。     次に、文部省にお尋ねをいたしますが、きょうのこの中教審の中にもござい    ますが、あるいはまた三月二十三日に先輩の中曽根弘文委員も取り上げられて    文部大臣とやりとりをされたことがあります。それは、道徳教育の大きな問題    点として、授業が十分確保されていない、こういう指摘がありました。     お尋ねをいたします。     小学校、中学校において必ず道徳の時間を週一時間時間割表に入れなければ    ならないというのが法令上の決まりだと思いますが、確認をさせていただきま    す。 ○政府委員(辻村哲夫君) ただいま先生御指摘のとおりでございまして、小中学校    におきましては道徳の時間を週一時間実施するということでございます。これ    は、学校教育法施行規則の上に明定されているものでございます。 ○小山孝雄君 この規定に違反した場合はどういう処分がありますか。 ○政府委員(御手洗康君) 学校におきます教育活動は、学校教育法施行規則あるい    はこの規定に基づきます学習指導要領の具体的規定に従って実施されるべきも    のでございます。学校を設置、管理する教育委員会、あるいは教育課程を実際    に責任を持って編成する校長並びに実際に道徳等の授業を担当する教員がこれ    らの規定を遵守しなければならないことは当然のことでございます。     したがいまして、仮にこれらの規定に違反するような行為がある場合には、    その具体的な事実関係に即して、まずはきちっとした是正措置をそれぞれの段    階で教育委員会あるいは校長等の権限においてやっていただくということは必    要でございますが、場合によっては、事実関係が極めて法令上著しく違反して    いるといったような場合が生じたとしますと、当然のことでございますけれど    も、地方公務員法の規定に基づきまして懲戒処分等の措置もとられることがあ    り得るものと考えております。 ○小山孝雄君 かつて教科書を使わずに授業をしたということで懲戒免職になった高    校教諭もおりました。これはまた最高裁まで争われまして、最高裁の支持する    ところでも懲戒免職処分はそのまま実行されたわけであります。ということで    ありますから、当然、学習指導要領に違反をして道徳の時間が設けられていな    いという場合には処分の対象になるということを今確認したわけであります。     ところで、文部省、私はきのうのうちに提出しておりますが、本当にごくご    く一部、一応北海道から沖縄まで、私が気安くしている方にお願いをして、も    しあなたのところに中学生がいらっしゃったら、ことし一年の時間割表を送っ    てもらえませんかと。どんなことになっているのかと思って調べてみました。    三十四校挙がってまいりまして、そのうち何と九校が道徳の時間がゼロでござ    いました。そのうち二校はけさ早く参ったものですからお渡ししておりません    が、昨日まで七校が道徳の時間ゼロという、時間割表がこうなっているよとい    う学校名、市町村名もお伝えしてあります。調査の結果、どうだったでしょう    か。 ○政府委員(辻村哲夫君) 先生から御指摘のありました学校につきまして、道徳の    実施状況につきまして、関係都道府県を通じまして関係の市町村の教育委員会    に確認をいたしましたところ、御指摘の学校につきましてはいずれも教育計画    上は道徳の時間を設定している、その旨の報告を市町村教育委員会にしている    ということを確認いたしております。 (12/48) 次の分割内容へ ○小山孝雄君 そうすると私の調査が間違っていたのか、各学校から市町村教育委員    会に報告が上がった段階で虚偽の記載がなされたのか、どちらかだと思います。     しかし、申すまでもなく、私は、子供さんたちが、お孫さんたちが使ってい    る時間割表をそのまま送ってくださいと。何を申したわけでもございません。    ないものを送ってくださいと言ったわけじゃないんです。たまたま知っている    方に、アトランダムに頼む頼むということで電話を入れたらこれだけ集まって    きた。その中の何と二五%の学校が時間割にすら、中身の問題はこれからです、    時間割にすら道徳の時間が入っていない、その現実はどのように受けとめられ    るんでしょうか。     学校管理規則に基づいて学校から教育委員会に提出される時間割表というの    は、これは公文書でございます。その公文書に虚偽の報告があるということは    虚偽公文書作成罪、刑法第百五十六条、三年以下の懲役または二十万円以下の    罰金ということも記載されております。どういうふうに思われますか。 ○政府委員(辻村哲夫君) 一般論として申し上げさせていただきたいと思いますが、    公務員がその職務に関しまして行使の目的で虚偽の文書等を作成した場合には、    ただいま先生御指摘のとおり、刑法上の虚偽公文書作成罪に該当するというふ    うに思われます。     具体の事案につきましては、これが虚偽公文書作成罪に当たり、犯罪が成立    するか否かにつきましては、証拠に基づきまして個別に判断をされるものとい    うふうに承知いたしております。 ○小山孝雄君 文部省が過去四十年間、道徳教育の時間が法令で設けられてから四十    年になりますが、その間で二回の調査をやっておりますが、その二回の調査の    中で全く行われていないというのはゼロだったわけでありまして、結果として    文部省はそのようなどうも怪しげな資料をもとに対策を立ててこざるを得なかっ    たのかということを思うわけであります。     私は、決して、処罰しろ、処分しろということを強調しているのではござい    ません。道徳の教育がきっちりと時間割表に入って、そして中身をきっちりと    教えなくちゃならないんだということはそれほどに重いんだということを確認    をしたかったわけであります。     文部省にお尋ねいたしますが、少なくとも私が提出をしたこの市のこの学校、    具体名まであなたのところへ渡しております。あえてここで私はその具体名は    申しませんが、その学校に対して個別の指導、調査を入れますか。 ○政府委員(辻村哲夫君) ただいま先生から具体の御指摘がありまして、私ども昨    日、関係の市町村教委を通してこうした事実を承知したわけでございますので、    さらに県の教育委員会を通しまして事実解明に努め、指導の徹底を期したいと    いうふうに思います。 ○小山孝雄君 ぜひしっかりと進めていただきたい、重ねて要請をいたします。     そしてまた、文部大臣、前回の総括質問のときに、新年度にもまた道徳教育    の実態調査を行うと、こういう御答弁がございました。その調査も、今までの    ようなやり方では全く意味がないということがもう証明されておりますので、    どういうふうにこれからその調査、そして指導のあり方というものをお進めに    なるおつもりか、お聞かせをいただきます。 ○国務大臣(町村信孝君) 昨日ですか、中央教育審議会の児童のころからの心の教    育のあり方ということで中間報告をいただきました。その中でも、学校教育の    より改善すべき一つの大きなポイントとして道徳教育の充実という項目が挙げ    られております。     また今、教育課程審議会で最終答申に向けまして新しい指導要領作成に向け    ての作業が進んでおりますが、その中でも同様の、道徳教育重視という方針は    今後とも当然のことながら維持されてしかるべきと、こういうふうに私は理解    をいたしております。     その方針に立ちまして、先般、中曽根弘文議員からの御指摘もございました    が、今年度早々にもそれぞれの学校でどういう道徳教育の授業が行われるかと    いうことについて調査をいたしたい、こう考えておりまして、調査のやり方等    も十分検討して、そしてまた調査の結果がこの指導を行えるだけの十分な根拠    になるような、そういう調査をやってみたい、こう思っております。     前回は平成五年の時点での調査でございまして、それに基づいていろいろな    実態を皆様方にも御報告したわけでございますが、いずれにしてもこれだけ心    の問題というのが大きく取り上げられている昨今でございます。それだけに、    道徳教育の重要性というものを多分すべての学校現場の先生方も私は改めて認    識をしているのではないだろうか。     ややもすると、組合の運動方針に基づいて、道徳教育の時間をできるだけそ    の実態を薄めていこう、あるいはないものにしていこうという動きがこれまで    はありましたが、今の実態を見ていまだにそういう運動方針を維持するとは私    は思いませんので、現にそうしたことも大きな方針として日本全体としては、    県により地域により差は現実にあるわけでありますが、全体としてはいい方向    に私は組合の皆さんだってもう向かわざるを得ない。先ほど佐藤教諭のような    お話が現場にあるわけでありますので、徐々にそうした面で改善が図られてい    るものと期待をしているわけでございますし、私どもも努力をしてまいりたい    と考えております。 ○小山孝雄君 道徳というのは最低限法律を守るというところから始めなければなら    ないわけでございまして、公文書をごまかしてみたり虚偽の報告をしたりとい    うことで、生徒たちに規則を守れとかルールを守れなんということは、そんな    ことは、生徒たちは大人の言っていることは信用ならないということをちゃん    と見抜いているわけでありまして、大変大事なことじゃないかなと思って取り    上げさせていただいたわけであります。     私もまた文部省のそうした方針を支持し、そして応援をします。たくさんの    皆さんから実際にどう行われているのか、時間割表を送っていただいたり、あ    るいはお話を聞いたりして、行政にそのまま率直に意見をぶつけていきたいと    思いますので、よろしくどうぞお願いを申し上げたいと思います。     実際どんなふうになっているかというのを二つばかり例を挙げます。(図表    掲示)     これは道徳の時間が全くゼロの時間割でございます。ちょっと変わった学科    がございまして、「日本語」というのがあるんですが、日本語というのはない    はずでございまして、そんなことも指摘したいわけでございますが、これは全    く道徳教育がないと。これが教育委員会に上がるときにはちゃんと道徳の時間    がありますという形で出ているんだということをぜひ御承知いただきたい、そ    の現実をきっちりと受けとめていただきたいと思います。統計だけで物をおっ    しゃらないでいただきたい。強く要請をいたします。       〔委員長退席、理事岡部三郎君着席〕     それから、これも道徳という時間はございません。これは現実に使われてい    るある学校のそのままでございます。(図表掲示)この赤で囲んでいるところ    に「人権」と書いてあるんですが、人権という教科はあるんでしょうか。 ○政府委員(辻村哲夫君) 人権という教科はございません。 ○小山孝雄君 そうすると、これも虚偽公文書作成罪に当たりますね。どうですか。 ○政府委員(辻村哲夫君) むしろ、そういった刑法上の犯罪要件を構成するという    よりも、教育の内容をそういう名称であらわしているんだろうと思います。そ    して、それは現行の小中学校学習指導要領の中にはそういう名称の教科、領域    等はない、そういうふうな点が問題であろうというふうに思われます。 (13/48) 次の分割内容へ ○小山孝雄君 私は、人権教育がいけないとか人権が大事だということを生徒たちに    教えることをとやかく申し上げているのではありません。そんなことは当然の    ことであります。こういう教科はないということを確認したかったまでであり    ます。     学習指導要領には道徳教育の内容を具体的に細かく記載しております。そし    て、各学年ごとに教育内容をまとめて、「日本人としての自覚をもって国を愛    し、国家の発展に尽くすとともに、優れた伝統の継承と新しい文化の創造に役    立つように努める。」と、実に立派なことが書いてあります。     しかし、二、三の例を挙げますが、実際行われている授業は人権という、本    当は届けられたときにはこれが道徳と改められたということも私は確証をつか    んでおりますけれども、そのことはもうこれ以上申しません。     そして、実際に行われているのは、ここに広島県の公立学校で広く使われて    おります「人権学習指導案」という資料がございます。この中にはこんなふう    にも書いてあります。一番の眼目、この人権学習の目標、天皇制(日の丸、君    が代、元号)は差別を助長してきたものであることを生徒に理解させ、生き方    を考えさせると学習のねらいが説明されているんです。国旗、日の丸を焼き捨    てた人の意見陳述書を使用して、天皇や日の丸、元号が差別を生んでいると、    こう教えております。     学習指導要領の特別活動の中には、「入学式や卒業式などにおいては、その    意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものと    する。」と、こうありますが、このようなことを実際に教室で教えるというこ    とは学習指導要領違反となると思いますが、いかがですか。 ○政府委員(辻村哲夫君) ただいまのような指導は学習指導要領の指示に反してい    るというふうに考えます。 ○小山孝雄君 続いて二、三紹介いたしますと、卒業式を迎える生徒全員に、人権学    習で学んだことを生かし、西暦だけの卒業証書を希望する人は担任に早く申し    出るようにと文書で呼びかけている資料もございます。そしてまた、中には、    私は元号で欲しいと申し出た生徒に対しては、おまえは一年間何を学んできた    のかといってしかりつけたという事実もあります。そんな状況でございます。     文部大臣、どうでしょう、道徳の時間が設けられていないのがこんなにある。    私が本当にアトランダムに当たった中で、中学校で三千二百校ぐらいが全く時    間割にも設けられていない。そしてまた、設けられていても、今申し上げたよ    うな教育が行われている。この現実に対してどんな所感をお持ちでしょうか。 ○国務大臣(町村信孝君) 道徳の時間がどのように使われているかという、その個々    の学校の中身にわたって全部文部省が把握することは不可能でございます。そ    れは、それぞれの教育委員会、そして教育委員会と個々の学校との関係でどこ    までそれを把握していただくかということかなと思います。     その中で、委員から今広島県というお話がございました。広島県の教育のい    ろいろな、今言われた括弧つき人権教育の実態につきましては、既にいろいろ    なマスコミ等でも報道されているところでありまして、文部省としても重大な    関心を持って、今広島県の教育委員会の方にその事実関係を調査の上回答あり    たいということを申し入れている、指導を行っているところであります。した    がって、目下、広島県教育委員会がその実態を調査しているもの、こう私は理    解をしておりまして、その結果を待ちまして、またしかるべき指導、助言を行っ    ていきたい、かように考えております。 ○小山孝雄君 教育委員会に調査を命じている、お願いをしているということであり    ますが、この前も文部大臣は中学校現場に足を踏み入れられて視察をなさった    ように、またひどい災害があれば国土庁長官はすぐ飛んでいきますよ、やっぱ    りその現場を見るということを文部行政の中に取り入れていただきたい。県教    育委員会そして市教育委員会という二段三段の壁があるところでは、なかなか    本当の実情というのはとらまえられないのじゃないでしょうか。ぜひこれはお    願いを申し上げます。(「広島へ行け」と呼ぶ者あり) 今、委員の方から広    島へ行けという発言もありましたけれども、いかがですか。 ○国務大臣(町村信孝君) 私は今、日本の大きな教育の流れというものを考えたと    きに、先週の金曜日に、中央教育審議会のこれからの地方教育行政のあり方と    いう中で、できるだけこれからは中央から、要するに文部省から地方へ権限を    いろいろ移していく、地方の教育委員会もできるだけ学校の現場に権限を移し    ていく、学校の現場中心にこれからは生き生きとした教育がやれるようにしよ    うという地方分権の大きな流れの中でこれからの文部行政を展開していきたい、    こう考えております。     したがいまして、私は、個々の学校の一々について文部省が一々出張していっ    てどうだこうだと言うことはやるべきではない、こう考えておりますし、それ    が現在の学校の教育に関する法令の立て方にもなっております。その原則を私    は変えるつもりはございません。 ○小山孝雄君 今、分権のお話が大臣からありましたが、果たしてそうした分権で生    き生きとした教育が、正しい教育が行われていくのかなと強い疑問を持ってお    ります。そのことを表明しておきます。     私に与えられた時間があと数分でありますので最後の質問になりますが、私    が今申し上げたような道徳教育の実態等であります。先般も先輩委員が質問に    立ちましたけれども、そして橋本総理、文部大臣に、せめて道徳教育の教科書    をつくったらどうだという意見もありました。やっぱりこれは考え直していた    だかなくちゃいけないのじゃないかと強く思いますが、この点いかがですか。 ○国務大臣(町村信孝君) 道徳教育の中身、やり方をより充実したものにしていく、    委員の御指摘は私ももっともだと思っております。     ただ、その際、その道徳の時間の進め方として果たして教科書というものが    なじむのかなじまないのか、私はもっといろいろな手法があっていいんだろう    と思います。     例えば、老人ホームに行くとか、いろいろなそういう体験をすることも一つ    でしょうし、あるいはインターネットなどを通じて金メダルをとった清水選手    の貴重な話を聞くという方法もあるでしょうし、あるいは地域のすぐれたリー    ダーに学校に来てもらってそこで話を聞くとか、余り座学で、項目一何々、項    目二何々と、教科書をただ字づらだけ、表面だけ読むということでは、これは    正直言っておもしろくありませんし、やっぱりそこにはもっともっと工夫があっ    ていいんだろう。その辺を今教育課程審議会等でも議論をしてもらっています    し、その辺がまた中教審でも御示唆をいただいているところかなと思っており    ます。     しかしながら、いろいろな適切な副読本とか教材あるいは現場体験、いろん    なものの組み合わせでその実を上げていくことが大切なんであろう、かように    思っております。 (14/48) 次の分割内容へ ○小山孝雄君 きょう発表になりました中教審の報告の中にも、子供の心に影響を及    ぼすいい教材、物語や偉人の伝記などを中心とするそうした資料、テキストを    提供したらどうかという提言もありますので、どうかひとつ前向きにお考えを    いただきたい、こう思うわけであります。     そしてまた、つい最近、朝日新聞、読売、産経等でも取り上げておりました    けれども、各地の社会教育の一環としてつくられております、いわゆる平和資    料館の中身が余りにもひどいじゃないかということで、例えば長崎などでは数    百カ所も訂正された。間違いの多い資料館ができて、巨額の費用が投じられて    いる。東京都議会は、その内容を改めざる限り計画を凍結するという都議会の    決議もつい先般行われたわけであります。     こうしたことも、どうして私こんなことを教育の中で問題にするのかといい    ますと、修学旅行のコースになっているんですね。それで、誤った歴史観をそ    こで植えつけられてしまうということを憂えるからでございます。どうかこの    点も文部大臣、視野に入れていただきたい、こんなふうに思うわけであります。     そしてまた、体を養う体育館などはたくさんできておるわけでございますが、    心を養う道徳教育の時間は今検証したとおりであります。総理がたびたび答弁    で申されましたように、その地域の伝承、その地域のすばらしさなどを学習す    ることも必要だということは全くそのとおりだと思います。       〔理事岡部三郎君退席、委員長着席〕     しかし、体を養う体育館はできても心を養う講堂がないよという有力な指摘    もちょうだいをいたしております。文部大臣、どんなふうにお考えでしょうか。 ○国務大臣(町村信孝君) 委員御承知のように、体育館は実際それは体育で使われ    るわけですが、その他、卒業式等々の行事でありますとか学芸会等の発表会と    か音楽の発表とか、あるいは保護者の集会をやったりとか、いろいろな目的に    使われる。そういう意味では多目的に使われているのが実情かなと思います。     したがいまして、確かに心の教育を進めるという観点から専用の講堂をつく    るというのは一つのいい御示唆かなと思っておりますが、敷地の問題とかそれ    ぞれの自治体の財政状況等、こんなこともございますので、今後、文部省とし    ては各地方公共団体の御要望などもよく承りながら検討してまいりたいと思っ    ております。 ○小山孝雄君 どうもありがとうございました。     私の質問は以上で終わらせていただきます。              《省略》 (15/48) 次の分割内容へ
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