142回-参-予算委員会-08号

教育関係

1998年3月23日(月)



○委員長(岩崎純三君) 関連質疑を許します。中曽根弘文君。 ○中曽根弘文君 自由民主党の中曽根弘文でございます。     私は教育問題、青少年問題、また高齢社会の問題等について質問をいたした    いと思います。     本題に入ります前に、ロシアのチェルノムイルジン首相が解任されたとの報    道があるようでございますが、総理は承知されておられますか。総理にお聞き    いたします。 ○国務大臣(橋本龍太郎君) 今お尋ねをいただきました第一報は、しばらく前に入っ    てまいりました。そして、その時点ではチェルノムイルジン首相だけのような    話でありましたが、今の時点で、その後幾つかの変化がありました中、一番最    後に参りましたもの、これをその文章のとおり読み上げさせていただきますと、    二十三日、エリツィン大統領はロシア政府の総辞職を決定したところ、インタ    ファクス通信の報道概要以下のとおりということであります。     エリツィン大統領は憲法第八十三条及び第百十七条に従い以下を決定した。    一つ、ロシア連邦政府を総辞職させる。二つ、連邦閣僚は新政府ができるまで    職務を継続する。三つ、エリツィン大統領が臨時に首相職を兼ねると。そして    なお、ネムツォフ第一副首相が、エリツィン大統領の決定に関するコメントは    避けながら、後刻、大統領と会談をするということを述べておられる。これは    大統領と新政府においての話し合い、地位に関する話し合いが排除されないと    いうことを述べたというのが一番新しい報道であります。そして、今情報を集    めさせておりますけれども、最新のものがただいま御報告をした内容でありま    す。     この結果、当然ながらロシアの政府は今のメンバーとはかわる、あるいは重    複しつつも全体において変化する内閣ができるのでありましょうけれども、私    は、日ロ関係は少なくとも日本側からこの今の流れを変えるつもりはない、あ    くまでもクラスノヤルスク合意に基づく前進を図る意思には変わりないことを    先ほど来外務大臣と話し合っておりました。 (34/39) 次の分割内容へ 中曽根弘文君 大変な事態が発生したわけでありますけれども、総理には日ロ交渉等、    またしっかりやっていただきたいとお願いを申し上げます。     それでは本題に入らせていただきますけれども、昨年、神戸で少年によりま    す連続児童殺傷事件が発生いたしましてからほぼ一年が経過しようとしており    ます。この事件が日本の社会に与えた衝撃というのは大変大きなものがありま    した。また、それ以降も、特にことしに入りましてから刃物を使った少年によ    る殺傷事件が多発をしております。このような不幸な事態、不幸な事件の再発    防止と青少年の健全な育成、これが今我が国の最大の課題の一つであろう、私    はそういうふうに思っております。     総理も教育改革を六大改革の一つに掲げられまして、大変積極的に取り組ん    でこられました。総理も御卒業になられました慶応義塾の創立者の福沢諭吉は    「教育とは人を教え育つるという義にして、人の子は、生れながら物事を知る    者に非ず。先きにこの世に生れて身に覚えある者が、その覚えたることを二代    目の者に伝え、二代目は三代目に授けて、人間の世界の有様を次第次第に良き    方に進めんとする趣意」であると言っておりますし、さらに「政治は人の肉体    を制するものにして、教育はその心を養うものなり」とも言っております。     総理は、家庭教育がすべての教育の出発点であり、親の果たす役割が極めて    重大であるとも述べておられました。三つ子の魂百までと言われるとおり、家    庭におきましては親が子に、子がまた孫に、人として社会生活を送る上での基    本的なルールをしっかりとしつけていくことが最も重要でないかと私も思って    おるところでございます。     核家族化や少子化が進む中で、家庭教育の機能は低下の一途をたどってきて    おりまして、その結果、学校に対して本来家庭が果たすべき役割まで求めるよ    うになってきておることは反省しなければならないと思います。今の子供たち    の姿が二十年後、三十年後の日本の姿となる、そういうことを考えますと、家    庭や学校やまた地域社会、そして行政、それぞれが教育問題に今真剣に取り組    まなければならないと思います。     青少年の犯罪はまるで流行ででもあるかのように今続発しておりますけれど    も、もはや現在の教育はがけっ縁に立たされていると言っても過言ではないと    思います。ここで、二十一世紀を見据えた、しっかりとした教育理念をつくり    上げて、それに基づいて教育システム全般の改革を行っていくことが重要であ    ると思いますが、総理の教育改革の理念と方針についてお考えをお伺いしたい    と思います。 ○国務大臣(橋本龍太郎君) 大変かた苦しくなく申し上げたいと思うテーマであり    ながら、どうしてもかたくなることを多少お許しいただきたいと思うものであ    ります。     今起きている事象の中から、要するに大人たちが子供たちにきちんと伝えて    いくべきもの、そういうものから議員の問いかけは始まりました。そして、当    然、私たちは子供たちに対して生命を尊重する心あるいは思いやり、倫理観と    か正義感、私はこうしたものが全部ひっくるまって豊かな人間性というものは    生まれるという言葉になるんだと思います。     その豊かな人間性をどうやったらはぐくめるかということと同時に、形式的    な平等性をどうやったら脱却できるだろう、そしてそれぞれの子供さんたちが    みずからの個性を伸ばしながら自分で本当にテーマを決めそれを追っかけられ    る、そうした創造性あるいはチャレンジ精神というものを重視できる教育がど    うやったらできるのだろう、そんな思いに駆られております。     先ほども私はちょっと触れましたけれども、私の子供たち、一番下の子を除    きましては小学校は全部地域の郷土の学校、公立の学校におりました。中学、    高校もほとんどの子供たちはそうであります。私自身は私学育ちでありますけ    れども、逆に自分の子供たちの育ち方を見ていて、地域における義務教育とい    うものはなかなかよいものを持っている、ここでなぜ問題が起きるんだろうと    いう思いをよくいたしました。そうすると、やっぱりそこに家庭というものと、    地域社会が自分の子供以外の子供にどう触れていくかという問題を避けて通る    ことができないと思います。     そして、そんな思いの中で文部省の諸君も今、家庭、地域社会、学校が力を    結集した心の教育の充実ということを言うようになりました。これは当然のこ    とながら責任も大きくなるわけでありますけれども、現場の自主性を尊重した    学校づくりということも地方教育システムの中で論ぜられるようになりました。    この場合、当然ながらその学校という中には父母の協力がなければうまくいく    ものではございません。ですから、自主性を持った教育現場をと言うからには、    それに父母も共同して責任が負えるような仕組みがどうすればつくれるかとい    うことを我々は考えていかなければならないと思います。     また、何といいましても子供たちの悩みを本当に受けとめられる先生方をど    うやって我々は確保していくのか、このテーマも捨てることはできません。     申し上げたいことは多々ありますが、そのような思いを持って教育改革とい    うことを言い始めたということだけはぜひおわかりをいただきたいと思うので    あります。 ○中曽根弘文君 ありがとうございました。     それでは、具体的な問題について質問してまいりたいと思いますけれども、    最初に道徳教育についてお尋ねをいたします。     今の教育現場を見ていますと、即刻解決しなければならない問題点が数多く    あります。例えば、子供たちの心を育てる上で中心となるのは道徳の時間であ    りますけれども、学校の道徳教育の実施の状況は必ずしも十分なものではない    ようであります。     道徳教育の実施状況と学習指導要領での道徳の学習指導計画がどうなってい    るのか、文部大臣にお尋ねいたします。 ○国務大臣(町村信孝君) 道徳教育の現在の姿をどう考えるかというお尋ねでござ    います。     よく知徳体と言われておりますが、この徳の部分であります。私は基本はこ    れも家庭による部分が実は相当大きいんだと思っておりまして、徳にかかわる    ものをすべて学校教育にというのには若干無理があったと思っておりますが、    さはさりながら、集団生活の中で学ぶこと、あるいは親以外の大人としての先    生から学ぶこと、いろいろあろうと思います。     そのような意味で、戦後、昭和三十三年ごろからですか、道徳教育を導入し    てやってきているわけでありますが、率直に言って量、質ともにいささか不十    分である、こう私は認識をしております。年間三十五時間という目標はあるの    でありますが、実態はそれにやや未達でありますし、内容の面も、ややもする    と徳目を表面的に字面を追っておりまして、いまいち心にすっと入るような教    え方の工夫も足りないし、あるいは実体験とかボランティアの経験とかそういっ    た工夫もいささか足りないといったようなことから、今全体として見た場合に    余りいい成果を率直に言って上げ得ていない。     もちろんこれには、道徳教育の時間をつくるときに、戦前の修身の復活であ    る等々の批判がいろいろな方々からありまして、一部教職員組合からもありま    して、そんなことがこの道徳の時間の十分な活用といいましょうか、うまく使    われてこなかった一つの原因にもなっているのかな、こう思っております。     指導要領のことにつきましては、政府委員の方からお答えさせます。 ○政府委員(辻村哲夫君) 道徳教育につきまして、学習指導要領では全体計画と年    間指導計画を作成するということになってございます。     全体計画は、それぞれの学校の道徳教育の基本方針を示しますとともに、た    だいま大臣から御説明がございました、週一時間の道徳の時間の位置づけを明    確にする、そして全体としての道徳教育計画を明確にする、これが内容でござ    います。それに基づきまして年間の指導計画というものを作成するというふう    になってございます。道徳の時間におきます具体的な活動内容、これを計画的、    発展的に行うわけでございますけれども、その具体的な内容を明示する、これ    が年間指導計画の内容でございまして、この両々相まちまして道徳教育を展開    する、このように学習指導要領でなっております。 (35/39) 次の分割内容へ ○中曽根弘文君 学校の現場におきましては、学習指導要領に、道徳の指導計画につ    いては「固定的なものと考えず、必要に応じて計画に弾力性をもたせるものと    する。」と書いてある一節を都合のよいように勝手に解釈しまして、道徳の時    間を他の授業や体育祭や音楽会の練習や、あるいは教科名を道徳から人権と変    えている学校もありましたけれども、また、教職員団体が反対していることか    ら、道徳の授業が完全に形骸化しているところもあると聞いております。     お尋ねいたしますけれども、先ほど大臣も年間三十五時間が未達だとおっしゃ    いましたけれども、どれぐらいの学校が達成をしていないんでしょうか、ある    いはどれぐらいの学校が達成しているんでしょうか。 ○政府委員(辻村哲夫君) 三十五時間でございますけれども、小学校につきまして    は、三十五時間実施しております学校が五六・五%でございます。中学校は二    七・三%でございまして、全体の平均をいたしますと、小学校は三十五時間の    ところ三十三・三時間、中学校は二十九・三時間、これが現状でございます。 ○中曽根弘文君 ただいまの御答弁で、小学校の約四割、中学校の約七割で完全実施    されていない、逆にそういうことになります。文部省はこうした道徳教育の現    状をどのように考えておられますでしょうか。 ○政府委員(辻村哲夫君) 文部省といたしましても、三十五時間を確保するという    ことは当然のことであるという前提に立ちまして指導をしております。     悉皆をやるというのは随時でございますけれども、悉皆調査を行いました場    合には、その結果を踏まえまして、各都道府県教育委員会等を通しまして強く    その趣旨の徹底を図っているところでございますし、また指導部課長会議等そ    の他さまざまな場がございますが、そういう場におきましても道徳教育の重要    性をるる説明しその趣旨の徹底を期している、そういう努力をしているところ    でございます。 ○中曽根弘文君 道徳の時間の完全実施のためには、先ほど私が申し上げましたよう    に、指導計画について「固定的なものと考えず、必要に応じて計画に弾力性を    もたせるものとする。」と、こういう一節がありますから、勝手に解釈といい    ますか、いいように解釈をして道徳の時間以外の科目をやっているんではない    かと思います。この一節を削除したらいかがかと思いますが。 ○国務大臣(町村信孝君) 指導要領のあり方につきましては、今新しい指導要領を    教育課程審議会のもとで検討しておりまして、どのように表現をするか、今の    委員の御趣旨も踏まえながらと思っておりますが、弾力的にという意味はその    中身のことでありまして、時間数のことまでどうぞ適当にということではない    ことは委員の御指摘のあったとおりでございます。     実は平成五年の調査を受けて平成六年に通達を出しておるんですが、その通    達の結果が今どうなっているかということをきっちり追いかけていないもので    すから、新年度早々にも調査をやりまして、本当にどこまでしっかりとこの三    十五時間が現在実施をされているかとか、あるいは有効利用が本当にされてい    るのかどうだろうか、その辺の実態についてはもう一度最新時点での調査をし    て、調査を通じての周知徹底を図ってまいりたい、かように考えております。 ○中曽根弘文君 調査中ということでございますけれども、新しい指導要領をつくる    場合には誤解を生じるような文言は削除していただいて、はっきりとわかるよ    うに指導計画をつくっていただきたい、そういうふうに思います。     それから、現在、道徳の時間に使用する教科書はどうなっていますでしょう    か。文部省、お願いします。 ○政府委員(辻村哲夫君) 道徳の時間につきましては、市販の副読本あるいは教育    委員会等が作成いたします教材を使用して行われているところでございます。 ○中曽根弘文君 文部省の調査によりますと、道徳の時間が楽しい、または非常に興    味や関心を持っていると答えた子供は、小学校低学年で八四%、小学校の中学    年では六七%という高い率に達しております。文部省が決めたきちんとした教    科書のようなものがないのは私は問題ではないか、そういうふうに思っており    ます。     そこで、道徳教育を充実させるためには、今副読本のお話がありましたけれ    ども、これにつきましても生徒に配付しているところと配付していないところ    があるようでありますし、都道府県によってその内容もまちまちのようであり    ますので、副読本などに頼るのではなくて、やはりもっと子供たちの心に響く    教材をつくるべきであると考えますが、文部大臣の御見解をお願いいたします。 ○国務大臣(町村信孝君) 三十三年に道徳という科目ではなくて領域が新たに設定    をされました。そのとき相当強い御批判もありまして、これは戦前の修身の復    活ではなかろうかとかいろいろありました。そのときに、また修身の教科書を    つくるのかといったような御議論もあった結果、教科書という形はとるまいと    いうこともあって、結果的には副読本というような姿に当時の政治状況からし    てならざるを得なかったということは間違いなくあったようであります。     では、今日の状況でどうかというと、この種の教科書をつくるというのが果    たしてうまくできるのかなという、率直にそんな感じもいたします。教科書も    一つの方法かもしれませんが、もっと多様な教材が今検討され、開発され、ビ    デオをつくったり、あるいは実際に生きた人の話、例えばオリンピックのメダ    リストの話を聞くとか、そういう教え方、あるいはその地域の、立派な先輩が    いるでしょうから、そういう人の話を聞いたりとか、ただ決まった教科書を読    んでそれで何か徳目を暗記するということではないわけでありますから、そう    いう方法じゃなくて、多様な教え方、多様な学び方、あるいはさっきちょっと    申し上げましたようなみずから介護のボランティアの体験をするとか、老人ホー    ムに行っていろいろなお年寄りと接する、あるいは子供たちと接する、そんな    ような形がいいのではなかろうかと私は思っております。     ただ、委員の御指摘でもございますので、教科書の必要性をも含めてさらに    検討をさせていただきたい、こう思っております。 ○中曽根弘文君 確かに道徳はほかの科目みたいな教科ではないんですね。ですから、    教科書はつくれないんだろうと思いますけれども、やはり持っている子と持っ    ていない子、たとえこれが副読本にいたしましても、そういう差がある。家庭    に帰って自分で道徳の本を読みたい、道徳の本と言うとあれですが、そういう    子供もおられるかもしれません。ですから、教科書が無理ならば、例えば道徳    読本とか、そういうようなもので最低限の子供として習得しておいてほしいよ    うなものを記したものをつくられたらいかがか、そういうふうに思います。     現在の道徳教育につきましての総理の御所見をお伺いしたいと思います。 (36/39) 次の分割内容へ ○国務大臣(橋本龍太郎君) そういえば、たしか私が大学の三年のときです。その    道徳というのが復活しそうだということで、私のころには大分はね上がった学    生運動もございましたので、そういう諸君が騒いでおりまして、何で教えちゃ    いけないんだいといって大変やり合いになった時代でございました。     その上で、今振り返ってお話を伺いながら、そういえば本当に子供たちの授    業の中で道徳という教科書はなかったな、だけれどもその意味ではどの子も先    生に恵まれたんだな、私の郷里の町の公立の小学校、中学校はなかなかよかっ    たな、率直に今そんな思いを持ちながら、同時に果たして教科書という形で活    字にして本当に人を打つものができるだろうかと。     しかし、例えば先般行われましたパラリンピックの、何の気なしにスイッチ    をつけられた方々は恐らくあの真剣な競技というものにはみんな心を打たれた    んじゃないでしょうか。あるいは、私は長野は大変いいことをされたと思うの    は、冬季オリンピックに参加される一つの国に小学校、中学校それぞれ一国一    校運動、一校一国運動でしたか、言い方は忘れましたが、その国のことをよく    勉強して親しむということをやられた。     先日、ニュージーランドの首相御夫妻が見えましたときに、官邸で行いまし    た晩さん会に、ニュージーランドの選手を担当した、またニュージーランドの    歴史を担当した小学校と中学校の校長先生に来ていただきましたが、その交歓    の写真なんかを見ましても、これが本当の教育というものじゃないのかな、そ    んなほのぼのとした思いでこれを私は眺めました。     私は、先ほど町村文部大臣の方から、教材というものの質の変化というもの    を受けて研究してみますという話がありました中にはこうした映像を利用した    もの等も含まれているといいな、そしてむしろ作り物ではない、あの選手たち    のみずからの記録に挑戦する姿、その一つだけでもすばらしい教材になるので    はないかな、それにしても授業の時間をとってくれないんじゃどうにもならな    いので時間はきちんととってもらいたいな、そのような思いで拝聴しておりま    した。 ○中曽根弘文君 道徳の教育というのはいろいろな形で行われるでしょうから、教科    書だけではありませんので幅広くやられたらいいと思いますが、よりどころと    なる教科書があればと、そういうふうに思いました。     また、都道府県によって子供さんに副読本が行っているところとないところ    があるわけですから、そういう意味では、たとえ副読本でも児童生徒が持てる    ように私は各教育委員会にお願いをしたい、そういうふうに思います。     ただいまパラリンピックの話がありましたけれども、さきの長野オリンピッ    クでは私は各国の選手たちの活躍に大変な感動を覚えました。健闘した選手の    皆さんの努力と栄誉に改めて敬意を表したい、たたえたいと思いますが、ただ    一つ残念に思いましたのは、外国人選手が自国のみならず他国の国旗や国歌に    対しても礼を尽くしている姿勢に比べて、我が国の選手の姿の中にそういうも    のが十分に感じられなかったことであります。それは選手個人の問題というよ    りも、学校教育において国旗・国歌を初めとする国際儀礼をきちんと教えてこ    なかったことに原因、責任があるものと思います。     学校における国旗・国歌の指導はどのようになっているのか、また具体的に    は何年生のどの科目でどういうふうに教えるのか、学習指導要領における取り    扱いについて御説明をお願いいたします。 ○国務大臣(町村信孝君) 現行の指導要領では、小学校、中学校の社会科において    国旗・国歌の意義とかそれを尊重する態度を育てるということを決めてござい    まして、特に小学校四年では、我が国や諸外国には国旗があることの理解、そ    れを尊重する態度の育成、さらに小学校六年生で同様に、我が国の国旗・国歌    の意義の理解、我が国及び諸外国の国旗・国歌を尊重する態度の育成というこ    とになっております。同様に音楽の時間では、国歌君が代は各学年を通じて指    導するということになってございます。 ○中曽根弘文君 国旗についてはわかりましたけれども、国歌君が代につきましては    音楽の時間で指導するということでありますが、君が代を知らない、歌えない    子供が大勢いるわけであります。何年生の音楽で指導するんでしょうか。 ○国務大臣(町村信孝君) 小学校一年から六年まですべての段階でございます。す    べての段階の教科書に入っております。     では何で知らない子がいるんだという御指摘があります。私の子供たちも札    幌の公立の学校に通っておりました。四年、五年、六年と公立の学校にいたの    でありますが、六年の終わりに娘たちが知らないことに気がつきました。どう    したんだと言ったら、先生がこれは覚えなくてもいいのよと言って飛ばしたと    言うんですね。これは明らかに問題であろう、私はこう思っております。     指導要領上は明確になっておりますし、さらに国歌君が代、そして国旗は入    学式や卒業式、そうした場において、その意義を踏まえて国旗を掲揚し、国歌    を斉唱するよう指導すると明記されております。その現実の実施状況というの    は都道府県によってばらつきがありますが、これを始めた平成二年ごろと比べ    ると大分改善はされてきております。平成七年の春で小学校の国旗掲揚率は九    八%、国歌斉唱率八八%、これは卒業式ですね。入学式の方では国旗掲揚率九    八%、国歌斉唱率八六%というぐあいで、従前よりはかなりの改善はしている    という実情にはございますが、地域により相当ばらつきがあるのも委員御承知    のとおりでございまして、私どもとしてはしっかりとした教育委員会を通じて    の指導に努めてまいりたいと思っております。 ○中曽根弘文君 大臣のお子さんも教わっていなかったということですから、私は大    変大きな問題だと思います。現実に歌えない子供がいるということは、学習指    導要領を遵守しない先生方がおられる、あるいは学校がある、そういうことだ    と思いますし、きちんと教えていないということになります。     日本の国民が日本の国歌を歌えないということは私は恥ずべきことだと思い    ますし、大変大きな問題ではないか、そういうふうに思います。ぜひ国歌君が    代につきましては、全生徒が歌えるようになりますように指導をよろしくお願    い申し上げます。     ところで、二〇〇二年にはサッカーのワールドカップが開催されますけれど    も、これを日本と共催するお隣の韓国では、小学校一年の教科書で、国旗に敬    礼しましょう、真っすぐに立って左胸に右手を置いて国旗に注目しますなどと    国旗に対する敬意の払い方などの国際常識をきちんと教えていると聞いていま    す。     我が国も世界が注視するワールドカップで選手が恥ずかしい思いをしないよ    うに、また外国に対して礼を失しないようにしなくてはなりません。自分の国    の国旗・国歌を尊重することのできない者が外国の国旗・国歌に対して敬意を    払うという国際マナーを持てるはずはないと思います。     教育改革プログラムにおきましては、文部大臣による教育長の任命、承認の    廃止など、県の教育委員会、学校現場の主体性を大幅に認める方向で改革を進    めているようです。私は自主性を尊重するということはいい方向だと思いまし    て賛成をいたしますけれども、県によっては教職員組合などが国旗・国歌に対    して否定的な見解を有することから、学習指導要領どおりに生徒に対しての指    導を行っていないところがあります。     学習指導要領を明らかに無視、違反した教育を教育委員会や学校が行った場    合には文部省は今後どのように対応するおつもりですか、文部大臣、よろしく    お願いします。 (37/39) 次の分割内容へ ○国務大臣(町村信孝君) 先日、ワールドカップ・サッカーの予選のときに、韓国    との試合が国立競技場でありました。どんなふうにやるのかなと思って実は心    配しておりましたけれども、日本の著名な歌手が歌いましたら、その辺でわあ    わあ騒いでいて上半身裸で一生懸命走り回っているというか、踊っているよう    に私には見えましたが、サポーターの人たちがぱんとみんな居ずまいを正して    一斉に君が代を歌い始めました。私はむしろその姿に感銘を覚えましたし、ぜ    ひこれから二〇〇二年に向けてそういったことがいろいろな機会に実行された    らいいなと思っております。     今、委員お尋ねの指導要領などを逸脱した場合、文部省はどうするのかとい    う御指摘でございます。     これは文部省の役割というのは教育において一体何なのかという大きな問い    かけでもあるわけでありますけれども、要するに大きな教育の枠組みでありま    すとか、あるいは指導内容の、どういうところまで勉強してもらったらいいか    というような基準の設定といったこと、あるいは学校一クラスは何人ぐらいが    いいか、そういう大きなフレームワークを決めるのが文部省の役割で、個々の    都道府県、市町村、そして学校現場にできるだけ自主性を持たせていこうとい    うのが今の方針、考え方であります。しかし、さはさりながら必要な法令に基    づきまして必要に応じて指導、助言をやるというのが現在の姿でありますし、    これからも指導、助言というものは私はあっていいと思います。     ただ、かつてのように文部省がはしの上げ下げまでといったような批判もご    ざいました。私は、大きな意味で教職員団体のそれまでのいささか不正常であっ    た姿も今は正常化しつつある。これも県によって相当差があるのでありますが、    全体として見たときにはかなり正常化しているという状況を踏まえたときに、    生き生きとした教育が学校現場で行えるためには、先ほど総理もお答えになら    れましたように、校長先生の責任においてそれぞれの学校の中で一番いいと思    う教育をできるだけやってもらう。ただ、基準は基準としてしっかりと国が定    めるという中で工夫をしてもらうということがこれからの教育の中では極めて    大切だろう、こう思っております。 ○中曽根弘文君 自主性を尊重するということは先ほども申し上げましたように大事    なことだと思いますけれども、日本人としてどうしても身につけていなければ    ならないことはやはり文部省もきちっと指導をしていただきたいと思います。     国際人の育成ということについての総理の御所見を伺いたいと思います。 ○国務大臣(橋本龍太郎君) 私も、オリンピックの表彰台に日の丸がかかるとき、    また国歌が演奏されるとき、本当にすばらしい思いを皆受けるだろう、受けて    くれているだろう、そしてその感動がふだんのものになってほしいと心から願    います。その上で、私は、本当に国際人、先ほど一国一校運動ですか、一校一    国運動ですかの話に触れましたのは、これも一つの国際人というものを育てて    いく試みだ、そのような思いでこれを見ていたからです。     議員が先ほど来指摘をしておられるように、どこの国においても国歌・国旗    に対する姿勢というものは当然の礼儀として求められるものです。そうした基    礎的な要件、これは教育の中できちんと教えてもらわなければなりませんが、    国旗と国歌に対する礼だけを持てば国際人が育つわけではありません。私は、    その意味では基礎的に、どこの国に行こうが、お互いが守らなければならない    礼儀を身につけた上でより多くの人々がより多くの国際社会の中で活躍できる    ようなマナーを育てていってもらったらありがたい、そう思います。     なお、先ほど議員に道徳の教科書をつくるのは難しいんじゃないですかと申    し上げていたんですが、本当に要るのは型にはまった教科書ではなくて、道徳    の授業をする上での手引ではないでしょうか。むしろ、それぞれのふるさとに    おいてその地域の歴史等をも踏まえながら話していけるような、いわばその組    み立て方のような手引がいいんじゃないかなとさっきからずっと考えておりま    した。 ○中曽根弘文君 手引のようなものでももちろん結構だと思いますけれども、子供が    家に持って帰って、持ち歩いて、そして好きなときに読める、そういうものも    大事なのではないかと思います。     次に、歴史教育についてちょっとお伺いをしたいと思いますけれども、文部    大臣は歴史教育の重要性についてどのようにお考えでしょうか。 ○国務大臣(町村信孝君) もとより、それぞれの国の歴史、文化、そうしたものを    大切にするという気持ちがなければなりませんし、当然また日本人としての自    覚とか誇りというものが必要であることは歴史教育の大きな目的であろう、こ    う思っております。特に、先ほど来委員御指摘の国際化というものが現実に急    速なスピードで進んでおりますが、そういう中であればあるほど、むしろそれ    ぞれの自分の国の歴史を正しく理解し、また同時に外国の歴史、外国の動きと    いうものもしっかりと理解をするということが真の国際人としての要件ではな    かろうか、こう思っておりまして、そういう意味で歴史教育の重要性というの    は今後ますます高まるであろう、こう理解をいたしております。 ○中曽根弘文君 教育課程審議会では歴史教育の内容の改善について検討されている    というふうに伺いましたけれども、どのように検討しているのでしょうか。 ○政府委員(辻村哲夫君) 現在、教育課程審議会では次の教育課程の基準の検討を    行っております。     その中で歴史教育でございますが、小学校につきましては、国家、社会の発    展に大きな働きをした先人の業績あるいはすぐれた文化遺産に関心と理解を持    たせ、人物を中心に歴史に親しませる学習を展開すると。それから、中学校に    おきましては、中学校は通史の学習をするわけでございますけれども、歴史の    各時代の特色と移り変わりを理解させつつ、今日までの先人の努力等、あるい    は我が国の文化、伝統の特色といったものを広い視野に立って学習させる、こ    ういうことが重要であるというような議論が行われているところでございまし    て、こうしたこれまでの歴史教育の経験を踏まえながら、そして我が国の歴史    に対する理解と愛情を深める、こういった視点等に立ちまして今検討が行われ    ているところでございます。 ○中曽根弘文君 ということは、検討が終わりましたらば、どういうふうに扱うのか    よくわかりませんけれども、学習指導要領を改訂して教科書にそういう趣旨を    適切に反映するようにする、そういうことでございますか。文部大臣、お願い    します。 ○国務大臣(町村信孝君) 御指摘のとおりでございます。 ○中曽根弘文君 歴史教育の改善を図るためには教科書の充実が重要と考えます。教    科書に写真とか記述とか挿絵とかいろいろ載っておりますけれども、事実と違    うようなものも随分あるようでございます。時折、識者やマスコミに指摘され    て内容を変更することもあるようでありますけれども、内容の正確さを把握し    ないで教科書に載せるということは私は教科書の信頼性を著しく低下させると    いうふうに思います。そのためには、歴史についての記述の正確さだけではな    くて、写真とか挿絵とかあるいは証言とか、そういうものにつきましての正確    さを求める一つの基準、検定基準が必要ではないかと思いますが、御答弁をお    願いいたします。 (38/39) 次の分割内容へ ○政府委員(辻村哲夫君) すべての教科書に共通でございますけれども、教科書の    内容が公正かつ正確であるということは絶対必要なことでございます。そのた    めに、教科書の検定に当たりましては、専門家から成ります教科用図書検定調    査審議会におきまして、客観的な学問的成果あるいは適切な資料等に照らして    審議が行われ、それに基づいて検定が行われ、その誤りあるいは不正確がない    ような努力がされているところでございます。     今、先生具体の御指摘の写真とかあるいは挿絵の点でございますけれども、    この点につきましては、検定申請に当たりまして出典の一覧の提出を求めてい    るところでございます。そして、検定基準におきましても、引用、掲載された    教材や資料については必要に応じて出典、年次など学習上必要な事項が記載さ    れていること、あるいはまた著作物、資料などを引用する場合には評価の定まっ    たものや信頼度の高いものを用いること等の規定がございまして、写真や挿絵    などにつきましても、こうした基準に基づきまして教科用図書検定調査審議会    において厳格適正な審議が行われているところでございまして、誤りのない、    不正確なところのない教科書づくりにこれからも努力をしてまいりたいという    ふうに思います。 ○中曽根弘文君 では、現在、写真とか挿絵とかそういうものについてきちっと検定    しているということですね。その割にはそういう写真とか挿絵とかで事実と違    うものが随分あるようですので、検定はきちっとやっていただきたい、そうい    うふうにお願い申し上げます。     時間なので、私の本日の質問をこれで終わりにさせていただきます。 ○委員長(岩崎純三君) 残余の質疑は明日に譲ることといたします。     明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十七分散会 (39/39)
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